077

エゾノツガザクラ(蝦夷の栂桜:Phyllodoce caerulea)

先日発行させていただいた西遊通信や弊社ホームページなどをご覧いただき、ここ数日国内ツアーへのお問い合わせが増えてきており、次々と催行決定ツアーが増えてきております。年末年始ツアーも「まもなく催行」のものも多くなっております。少人数ツアーのため、催行決定となればすぐに満席となってしまいますので、お悩みでしたら早めにお問い合わせください。

 

本日は「エゾノツガザクラ(蝦夷の栂桜:Phyllodoce caerulea)」をご紹介します。

 

エゾノツガザクラ(蝦夷の栂桜:Phyllodoce caerulea)

 

被子植物 双子葉類
学名:Phyllodoce caerulea
科名:ツツジ科(Ericales)
属名:ツガザクラ属(Phyllodoce caerulea)

 

今回ご紹介するエゾノツガザクラは、弊社森田(知床半島・羅臼「知床サライ」に在籍)が7月に実施した弊社ツアー「花の北海道フラワーハイキング」で撮影したものを掲載させていただきます。私も西遊旅行に入社する前、大雪山系の旭岳の麓で群生を観察したのを覚えています。

 

エゾノツガザクラ(蝦夷の栂桜:Phyllodoce caerulea)は、東北地方の北部から北海道に分布し、適度に湿り気のある岩場や草地に群生します。その他、北半球の寒冷地にも分布します。

 

草丈は10~30cmの常緑小低木で、枝に松葉状で長さ1㎝弱ほどの葉を多くつけます。
花期は7~8月、花の大きさは6~8㎜と小さく、形状は少し細長い壺型をしています。また、濃紅紫色が非常に印象的で、花の先端(キュっとしぼんだ部分)が浅く5裂して反り返っているのが可愛らしさを演出しているように感じます。また、花冠と花柄に若干の繊毛が確認できます。
観察しているとほとんど確認することができませんが、雄しべが10個あるそうです。

 

私自身、観察したことはありませんが、大雪山のガイドさんの話では時折花弁に小さな穴が確認できることがあるそうです。これはツガザクラ類を好むエゾオオマルハナバチという蜂が盗蜜した痕です(盗蜜痕と表記している資料もあります)。
もともと寒冷な環境に適応しているマルハナバチは高山帯でも活発に活動し、北海道では12種のうち6種が活動しているそうです。また、ある資料では盗蜜は受粉に役立たず、このままだとエゾノツガザクラが見られなくなってしまうというものもありました。

 

今回、この花を紹介するにあたり、花の名前を調べるのに一苦労しました。
それは「コエゾツガザクラ」という花(下写真)があるからです。
コエゾツガザクラ(Phyllodoce aleutica x P. caerulea)は、自然環境で自生するエゾノツガザクラと後日紹介するアオノツガザクラ(Phyllodoce aleutica)が交配して生まれた種です(雑種と記載もありますが、キレイな花で雑種というのも・・・ここは種と記載させていただきます)。
見た目はほとんど変わらず、色合いが淡いピンク色で、花冠と花柄の繊毛がエゾノツガザクラより若干少ないのが特徴です。
形状も似ていますが、エゾノツガザクラより丸みを帯びた壺型です。比較するために、エゾノツガザクラを紡錘型(円柱状でまん中が太く、両端がしだいに細くなる形)、コエゾツガザクラを壺型と表記している資料もありました。また、細長い花のほうがアオノツガザクラの遺伝子が少ないとも言われているそうです。※ほぼ遺伝子レベルの見分けなので、本当に難しいです。

 

大雪山をはじめとする北海道内の高山帯ではアオノツガザクラとエゾノツガザクラが混生するため、エゾノツガザクラが多く自生するそうですが、同じ北海道内の羊蹄山にはアオノツガザクラがないので純粋なエゾノツガザクラが観察できるそうですが、オオマルハナバチの盗蜜の痕が見られ始めているそうです。
オオマルハナバチの盗蜜痕も観察してもらいたい気もしますが、盗蜜痕のない純粋なエゾノツガザクラをゆっくりと観察してもらいたいです。

コエゾツガザクラ(小蝦夷栂桜:Phyllodoce caerulea)
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チングルマ(Sieversia pentapetala)

今年の夏は本当に暑いですね。コロナウイルス感染症対策としてマスクと合わせて、熱中症対策も行わなければいけない。悩ましい日々が続きますが、ここはしっかり両方の対策を講じて、一日でも早く安心できる日を迎えられるように頑張りましょう。

 

本日は「チングルマ(Sieversia pentapetala)」をご紹介します。

 

チングルマ(Sieversia pentapetala)

 

被子植物 双子葉類
学名:Sieversia pentapetalaまたはGeum pentapetalum
科名:バラ科(Rosaceae)
属名:チングルマ属(Sieversia)またはダイコンソウ属(Geum)
※学名が「Geum pentapetalum」と表記される場合もあり、これはチングルマ属(Sieversia)がダイコンソウ属(Geum)の1亜種として扱われることがあるためです。

 

今回ご紹介するチングルマの花は、弊社森田(知床半島・羅臼「知床サライ」に在籍)が7月に実施した弊社ツアー「花の北海道フラワーハイキング」で撮影したものを掲載させていただきます。

 

チングルマ(Sieversia pentapetala)は、北海道や本州の中部地方以北に分布し、海外ではサハリンやカムチャッカ半島、アリューシャン列島に分布します。

 

実はこのチングルマは草ではなく「地面を這うように生える落葉する低木」なのです。
草丈は3~10㎝と低く、地を這うようにしてチングルマは群生し、高山帯の雪渓の周辺や多湿地に自生し、大群落を形成することが多いのが特徴です。

様々な資料でチングルマは「雪田植物(せつでんしょくぶつ)」と紹介されています。
多雪地帯では小さな谷や窪地に多量の雪が積もり、その後夏期の遅くまで雪渓として雪が残ります。これを雪田と呼び、このような厳しい環境下で自生する植生を雪田植物と呼んでいます。雪田では雪がない時期というのが短く、その間に成長→開花→繁殖というサイクルを終わらせなければいけません。このため特殊な植物しか生育できず、そこに生育する種類も限られていますが、場所によって雪解けの時期が異なるため雪田の付近には多様な植物が自生します。

 

葉は奇数羽状複葉(鳥の羽根のような複葉で先端に1枚、両側に対で小葉が付く形態)で小葉は3~5枚、長さは1~1.5㎝ほど。葉には光沢も確認でき、少し厚みも感じられ、葉の縁に鋸歯も確認ができます。
葉は秋になると色鮮やかな赤色となり、森林限界以上では紅葉(草紅葉)の主役となります。

 

花期は6~8月。花柄はその長さが4~5㎝、枝先に単生(1つの花をつける)し、花弁は5枚、直径が3㎝ほどの小さく白い花を咲かせます。
多数の黄色い雌しべと雄しべがあり、花が終わると羽毛状になった雄しべが残り、これがチングルマの果実になります。果期になると花柄は7~10㎝ほどになり、タンポポの種のように風によって散布されます。これが「チングルマ」の名の由来なのです。
羽毛上の果実の形が子供の風車(かざぐるま)に見えたことから稚児車(ちごくるま)から転じて付けられたと言われています。

 

チングルマは「シーズンは3つある」と言われています。
①チングルマの花
②チングルマの果実(チングルマの穂と紹介されることもあります)
③チングルマの紅葉(草紅葉)

 

私自身、チングルマはこれまで幾度も観察しましたが、やはりチングルマと言えば「北海道・大雪山系」というイメージが強く、今でも大雪山の裾合平一帯に咲き誇るチングルマの群生、花後のチングルマの果実(穂)が広がる風景、裾合平が真っ赤に染まるチングルマの紅葉の風景は今でも目に焼き付いています。
また乗鞍岳の畳平周辺や山形県の月山でのフラワーハイキングの際もチングルマの花が群生していたのも忘れられません。

今回のブログでは「チングルマの花」の写真しか掲載できませんでしたが、私が9月に「日本で最も早い紅葉を観る!大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草」に同行させていただきますので、そこでチングルマの果実(穂)、紅葉(草紅葉)が観察できたら、改めて写真を掲載させていただきます。

チングルマの群生

 

<チングルマが観察できるツアー>
※これからは「チングルマの穂」や「チングルマの紅葉」が観察・撮影できるシーズンです。

 

”サンゴ草の紅葉と共にチングルマの紅葉も探しましょう”
日本で最も早い紅葉を観る!大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草

 

”乗鞍・畳平からご来光と共にチングルマの紅葉の撮影を”
秋の乗鞍・上高地を撮る ※私がオススメのツアーです。

 

”東北の八幡平もチングルマの群生地で有名です”
錦秋の奥羽ゆったり大縦断
ぐるっと岩手 紅葉の八幡平~遠野~北三陸ジオさんぽ
上鶴篤史氏同行シリーズ 錦秋の東北をめぐる写真撮影の旅
秋の東北スペシャル 
紅葉のみちのくの名峰7座登頂と7つの名湯巡り

074

ムニンヒメツバキ(無人姫椿:Schima mertensiana)

大変長らくお待たせしましたが、政府による旅行費補助「Go To トラベルキャンペーン」に関して、西遊旅行及び弊社の宿泊施設・知床サライもGo To トラベル参加事業者として認可を受け、キャンペーン価格でツアー掲載を開始いたしました。詳細は弊社ホームページをご確認ください。
Go To トラベルキャンペーンで日本の魅力を再発見

 

先日に引き続き、小笠原諸島で観察した固有種の1つ「ムニンヒメツバキ(無人姫椿:Schima mertensiana)」をご紹介します。

 

ムニンヒメツバキ(無人姫椿:Schima mertensiana)

 

被子植物 双子葉類
学名:Melastoma tetramerum
和名:無人姫椿
英名:Rose Wood
科名:ツバキ科(Theaceae)
属名:ツバキ属(Camellia)

 

ムニンヒメツバキ(Schima mertensiana)は小笠原諸島の固有種であり、小笠原村の花に指定されています。小笠原諸島の島内に広く分布しており、山地の中腹などで生育します。

 

ムニンヒメツバキは、ツバキ科の常緑高木で樹高は7~8mとなります。樹皮そのものは褐色(少し暗みを感じました)で、成木は樹肌が縦横に裂けるそうです。
葉は細長い楕円形が互生し、で少し光沢が確認できます。時折、葉裏に白い産毛のあるものもあるそうです。

 

花期は5~6月、今回は8月に観察しましたが、残りわずかなムニンヒメツバキの花を観察することができました。
※調べてみると、木(個体)によって8月ごろまで花をつけるものもあるようです。
花は真っ白な花弁を5枚つけ、サザンカ(山茶花)の花に似た花を咲かせ、花そのものは枝先に集中して咲きます。大きさは直径5㎝弱と小ぶりですが、山吹色の葯(花粉の袋)がとても印象的に伸びていることで、印象より少し大きく感じます。

 

ムニンヒメツバキは花が終わると、直径1㎝ほどの球体の果実がふくらみます。長い柄の先についた実は11月ごろから上部が裂けはじめ、実の中に入っている種子を弾き出し、弾き出た種子は春になると茎が細く赤褐色の芽(実生)が顔を出します。

 

ムニンヒメツバキの英名はRose Woodと言いますが、小笠原では「ロースード」と呼ばれています。これは英名のRose Woodが転訛したものと言われており「」バラのような花が咲く木」という意味があるそうです。

 

興味深い小笠原の植生ですが、季節を変えてゆっくりと林間を散策し、小笠原固有の植生を観察してみたいものです。個人的には⼩笠原諸島で固有の着⽣ランを探すツアーなんか楽しそうと思うのですが・・・いかがですか?

 

枝先に集中して花を付けるムニンヒメツバキ

 

<小笠原諸島の植生を楽しむことのできるツアー>
たっぷり小笠原6日間
小笠原諸島を歩く 6日間
小笠原諸島を歩く たっぷり小笠原12・13日間
たっぷり小笠原の海 マッコウクジラに出会う 12・13日間

073

ムニンノボタン(無人野牡丹:Melastoma tetramerum)

本日は「たっぷり小笠原6日間」で観察した小笠原諸島の固有種の1つ「ムニンノボタン(無人野牡丹:Melastoma tetramerum)」をご紹介します。

 

ムニンノボタン(無人野牡丹:Melastoma tetramerum)

被子植物 双子葉類
学名:Melastoma tetramerum
和名:無人野牡丹
科名:ノボタン科 (Melastomataceae)
属名:ノボタン属(Melastoma)

 

小笠原諸島は東京から南南東約1000kmの太平洋上に浮かぶ30余の島々の総称です。小笠原の島々は大陸から遠く離れた洋上に出現し、その後一度も大陸と陸続きになったことのない、ハワイ諸島やガラパゴス諸島と並ぶ典型的な海洋島です。
小笠原諸島が成立した際にはまったく生物・植物のない裸の島でした。小笠原には海流によって流れ着いたり、細かな種子や胞子が風で流れ着いたり、鳥によって運ばれたり、様々な要因で小笠原に辿り着き、海洋島として隔離された環境条件が小笠原に生育しない固有種が多くなった理由と言われています。

 

ムニンノボタンはノボタン科ノボタン属の低木で、小笠原諸島・父島の固有種です。
草丈は1~1.5mとなり、枝を多数分枝します。温暖な小笠原らしく、葉は一年を通じて常緑です。
葉は比較的先が尖った長楕円形をしており、約5~8㎝の葉が対生します。葉には若干短めの産毛が確認でき、若葉の方がより明確に確認ができました。

 

花期は7~8月、茎先に4弁の花弁をつける白い花を咲かせ、1つの枝先に花は1つのようです。今回は観察することはできませんでしたが、時折花便が5弁の個体もあるそうです。

 

ムニンノボタンのつぼみ(左)と実(右)

球体の蒴果(さくか:乾いた果実の一種で一つの果実が複数の癒着した袋状果皮から成るもの)をつけ、裂開すると黒い小さな種子が姿をみせます。
今回は裂開する前の蒴果を観察することができました(上写真の右が蒴果です)。

 

ニンノボタンの「ムニン」は、小笠原諸島の古い呼称である「無人島(むにんじま)」が由来で、これは英語による呼称「Bonin Islands」(ボニン・アイランズ)の由来でもあります。小笠原諸島には「ムニン」を和名に冠する植物が50種近くあります。

 

ムニンノボタンは小笠原諸島の父島の固有種ですが、同じ小笠原諸島の母島には淡い赤紫色の花を咲かせる「ハハジマノボタン(Melastoma tetramerum var.pentapetalum)」や北硫黄島の標高4~700mに自生する紫色の「イオウノボタン(Melastoma candidum var.alessandrense)」が生育します。

 

ムニンノボタンは環境省のレッドリストに登録され、絶滅が危惧されています(絶滅危惧ⅠA類)。1980年代には父島・東平に1株だけとなり絶滅が危惧されたそうですが、最後の1株から東大理学部付属植物園で増殖に成功し、父島で植えなおしが行われ、現在では順調に生育しているそうです。

 

私が観察したのも父島・東平の「アカガシラカラズバト・サンクチュアリー内の林間で、現地ガイドさんの説明ではこの株も植えなおしの株であるとのことでした。種を落としているそうですが、外来種として増えてしまったネズミが種を食べてしまい、新たな株が根付かないそうです(10年ほど前に父島・字東海岸にて40株ほどの自生地が見つかったという資料もありました)。

 

小笠原諸島には興味深い植生が多く、維管束植物(いかんそくしょくぶつ:体内に維管束をもつ植物群の総称でシダ植物,裸子植物および被子植物を含む)は300種で、その約40%が固有種、木本植物(もくほんしょくぶつ:茎が木質化し開花結実を繰り返し長い寿命を持つ植物)だけに限ると約70%が固有種だそうです。
小笠原と言えば「ボニンブルー」と称される海の美しさが有名ですが、独特な植生を楽しむために小笠原諸島に訪れるのもオススメです。

 

数少なくなったムニンノボタンの株

 

<小笠原諸島の植生を楽しむことのできるツアー>
たっぷり小笠原6日間
小笠原諸島を歩く 6日間
小笠原諸島を歩く たっぷり小笠原12・13日間
たっぷり小笠原の海 マッコウクジラに出会う 12・13日間

068

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense)

蕾が大きくなり花開く日も近いとお伝えしていた我が家の「アデニウム・オベスム(Adenium obesum)」。先日直径4~5㎝ほどの花を2つ咲かせました。真っ赤で色鮮やかな色合いが非常に美しく、砂漠のバラと称されていることに納得できる色合いと美しさでした。先端が真っ赤な蕾が現在5つ確認できていることから、この先がさらに楽しみです。

 

本日は「ゴゼンタチバナ(Cornus canadense)」をご紹介します。久々に私自身が撮影したものですが、日本の花として紹介しますが撮影した場所はサハリンです。

 

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense:御前橘)

 

被子植物 双子葉類
学名:Cornus canadense
和名:御前橘
科名:ミズキ科(Cornaceae)
属名:ミズキ属(Cornus)
属名:ゴゼンタチバナ(亜)属(Chamaepericlymenum)

 

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense:御前橘)は、本州(中部地方以北)、四国(石鎚山など)、北海道に自生するミズキ科(Cornaceae)の多年草です。
北海道では大雪山の稜線や道北の海岸近くの林下までと生育範囲が広いのも特徴のようです。
四国の石鎚山系と赤石山系が南限とされ、海外では北東アジアや北米などにも分布します。

 

和名の「御前橘」は、日本三霊山として知られる白山の最高峰「御前峰」に由来します。私も初めて観察したのは白山登山の時でした。白山は日本三霊山という点が有名ですが、花の百名山の1つでもあり、美しい花畑が広がる日本有数の花の山でもあります。
「ハクサン」の名が付く植物は別名(最高峰・御前峰の「ゴゼンタチバナ」など)を含め20種以上が自生しています。調べてみると、白山は日本で高山帯を有する山岳としては最も西に位置しているため、早くから植物の研究が進んでいたことから「ハクサン」と名の付く種が多いそうです。

 

草丈は5~15㎝、地下茎から広がった茎には「花を咲かせる茎」と「花を咲かせない茎」がそれぞれ立ち上がります。
葉は倒卵形(とうらんけい:相撲の行司が持つ軍配のような形)、写真でもわかるように枚数は6枚です。6枚が輪生(茎の一節に3枚以上が車輪状になってつくつき方)しているように見えますが、調べてみると2枚の対生葉(葉が茎の一つの節に2枚向かい合ってつくこと)と液性の短枝に2個ずつ葉が付き、計6枚の輪生に見えるそうです。さらに「花を咲かせない茎」には4枚の葉がつくそうで、葉の枚数にも違いがあるそうです。
私も初めて知った興味深い形状です。いつかゴゼンタチバナに再会した際には葉の付き方にも注目したいものです。

 

花期は6~8月、花は長さが1㎝ほどの苞(ほう:つぼみを包むように葉が変形した部分)が4枚付き、その中央部分に2.5㎜ほどの小さな筒状の花が密集して咲きます。一見すると白い小さな花のように見えますが、中央部の密集したものが本来のゴゼンタチバナの花です。
秋になると同じミズキ科のハナミズキ(花水木)に似て、直径5㎜ほどの赤い果実をつけます。

 

ゴゼンタチバナは環境省により、中部山岳国立公園、南アルプス国立公園、白山国立公園などで自然公園指定植物となっているそうです。環境省としての、レッドリストの指定はないようですが、絶滅の危機に瀕していることから保護管理計画など各地域で実施されているそうです。
可憐な形状のゴゼンタチバナだけではありませんが、私たちも花の観察を楽しむ際には十分気を付けて、大事に花の観察を楽しまなければいけないですね。

 

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense:御前橘)

 

<レブンシオガマが観察できるツアー>
花の季節に訪れる北海道最北の旅~利尻島・礼文島から宗谷岬、知床半島へ~
上鶴篤史氏同行シリーズ
礼文島「愛とロマンの8時間コース」と利尻島、サロベツ、宗谷丘陵ネイチャーハイキング
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夏の北海道を撮る 大雪山と富良野・美瑛&道東の湖めぐり
北海道大自然をぐるっとめぐる旅

066

レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)

先月、我が家の嫁さんが塊根植物の一種である「アデニウム・オベスム(Adenium obesum)」を購入し、その後も大事に育ててくれています。
少しずつですが成長しており、蕾も大きくなり、花が咲く日も近いようです。砂漠のバラと称される美しい花が咲くと聞いているので、非常に楽しみです。

 

本日は北海道・礼文島に咲く「レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)」をご紹介します。今回の写真は、弊社が知床半島・羅臼にて営業している「知床サライ」に在籍する森田が撮影したものを拝借させてもらいました。

 

レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)

 

被子植物 双子葉類
学名:Pedicularis chamissonis var rebunensis
和名:礼文塩竈
科名:ハマウツボ科(Orobanchaceae)
属名:シオガマギク属(Pedicularis)

 

レブンシオガマは北海道北部の礼文島に自生し、ハマウツボ科シオガマギク属の多年草、礼文島の固有種です。今回の写真も森田が6月末に礼文島で観察したもので、私も国内添乗員時代(まだ若かれし頃)に礼文島の桃岩展望台で群生を観察したことを覚えています。

 

資料によってはゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)に分類されていますが、分類の体系によって異なるそうですが、現在ではハマウツボ科に属します(私もゴマノハグサ科という認識でした)。

 

シオガマギク属は北半球に広く分布し、約500種もあります。
有名なヨツバシオガマ(四葉塩竈:Pedicularis japonica)、キタヨツバシオガマ(北四葉塩竈:Pediculasis chamissonis var. hokkaidoensis)、レブンシオガマ(礼文塩竈)などがありますが、実際に分類、見分けが非常に難しく、現場でも「シオガマですよ」と案内してしまうことが大半です。
キタヨツバシオガマ(北四葉塩竈)、レブンシオガマ(礼文塩竈)はヨツバシオガマの変種とされており、資料によってはキタヨツバシオガマとヨツバシオガマは区別をしない、ヨツバシオガマの大型種をハッコウダシオガマ(またはキタヨツバシオガマ)と呼ぶこともあるが、厳密に区別することはできないという資料など様々あり驚きました。

 

レブンシオガマは、草丈が70~100㎝で直立し、ヨツバシオガマに比べると大きく成長します。
葉の形状は羽状全裂で、見た目には鋸のような形状はシオガマギク属の特徴と同じですが、ヨツバシオガマとの大きな違いは、葉の付き方と数です。
ヨツバシオガマはその名のとおり、葉が4枚ずつ輪生(茎の一節に3枚以上が車輪状になってつくつき方)するのに対し、レブンシオガマは葉が5~6枚輪生するのが特徴です。
先程、見分けが難しいと記載しましたが、今回の写真を見た際にヨツバシオガマかレブンシオガマか非常に迷いましたが、写真を大きくアップにしてみると、葉が5枚輪生していることがわかり、レブンシオガマと判別しました(森田にも確認をしてもらいました)。

 

1つ1つの花は小さく、淡紫~紅紫色の色合いで、2㎝ほどの長さで2唇形の花弁を持ちます。
上唇の部分が鋭く尖って下向きになっています。まるでハチドリの嘴のような形状がシオガマギクの特徴で、印象深い姿をしています。

 

花期は6~7月、花は直立した茎に対して20~30段ほど輪生してつけ、花は下から順に咲いていきます。他のシオガマギク属の花に比べると輪生して花をつける段数が多いのも特徴です(背丈が高いのが原因かと)。

 

シオガマギク属の花の見分け方、分類などはまだまだ勉強が必要ですが、レブンシオガマをはじめとするシオガマギク属の花の可憐さ・美しさは必ず足を止めてゆっくりと観察したくなる魅力ある花の1つです。勉強の成果は・・・また後日。

 

レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)

 

<レブンシオガマが観察できるツアー>
花の季節に訪れる北海道最北の旅~利尻島・礼文島から宗谷岬、知床半島へ~
上鶴篤史氏同行シリーズ
礼文島「愛とロマンの8時間コース」と利尻島、サロベツ、宗谷丘陵ネイチャーハイキング
北海道大自然をぐるっとめぐる旅

 

065

イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)

7月に入り、いよいよ弊社でも国内ツアーが本格的にスタートしました。
特に7月は日本各地でも高山植物が花咲く季節のため、私自身も楽しみなシーズンでありますので、本日からしばらく「日本の花」をテーマにご紹介していきたいと思います。

 

以前、イワカガミダマシ(Soldanella alpina)という花を紹介しましたが、本日はダマシではなく「イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)」をご紹介します。今回の写真は、弊社東京本社に在籍(3月まで大阪支社に在籍)の島田が撮影したものを拝借させてもらいました。

 

イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)

 

被子植物 双子葉類
学名:Schizocodon soldanelloides
和名:岩鏡(イワカガミ)
科名:イワウメ科(Diapensiaceae)
属名:イワカガミ属(Schizocodon)

 

イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)は、イワウメ科イワカガミ属の多年草であり、山地の岩場や草原に自生します。
山地といっても高地だけではなく、低山帯にも自生します。
分布としては北海道(一部資料には北海道では限定的とあります)、本州、四国、九州と日本全国に分布しますが、日本固有種です。
私も国内添乗員だった頃、上高地などで観察した記憶があります。

 

草丈は10~20㎝ほどで直立し、茎の色が濃紫色をしているのが特徴です。
根元には3~6㎝程度の大きさの丸のある葉をつけ、葉には光沢が確認できます。
和名の「岩鏡」という名の由来が、岩場に自生し、この艶のある光沢の葉が鏡のように見えることから、名付けられました。改めて、粋な名前をつけたものだと感じます。
光沢がある葉であることだけが注目されていますが、よく観察すると葉の縁には鋸場があるのも特徴です。

 

花期は4~7月、茎頂にピンク色で漏斗状の花を3つほど咲かせます。花は1.5~2㎝ほどの大きさで下向きに咲き、花冠は5裂し、裂片の先端~真ん中あたりまで細かく裂けています。
花の中央にはクリーム色(黄色)の雄しべが5つ環状に並んでおり、漏斗状の花から覗き見ることもでき、ピンク色の花弁と相まって印象的な色合いとなります。
※ここがイワカガミダマシとの違いです。
イワカガミダマシも1~1.5㎝程度の花を下向きに咲かせますが、花弁の部分が基部までしっかりと切れ込みが入っており、花弁の先端部分が若干反り返り、花弁の中央に長い雄しべが突き出しているのが特徴的です。

 

イワカガミの学名の種小名「soldanelloides」は「サクラソウ科の Soldanella属に似た」という意味で、Soldanella はイタリア語の「soldo(小さいコイン)」に葉が似ることに由来します。
また、イワカガミダマシの時も紹介しましたがイワカガミ(Schizocodon soldanelloides)の種小名の soldanelloides は「Soldanella(イワカガミダマシ属)+oides(のような)」で「イワカガミダマシ属に似た」という意味を持つそうです。

 

若干間隔が空いてしまっての紹介でしたが、日本固有種のイワカガミとヨーロッパ原産のイワカガミダマシ。同じポイントで見比べることはできないですが、これまでのブログをご覧いただき、また下記写真を見比べていただき、どちらの花がお好みか見比べてみてください。
個人的には「イワカガミダマシ」が好みかな。

 

イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)
イワカガミダマシ(Soldanella alpina)

 

<イワカガミが観察できるツアー>
花の季節に訪れる北海道最北の旅~利尻島・礼文島から宗谷岬、知床半島へ~
花の北海道フラワーハイキング~世界遺産・知床から神々の遊ぶ庭・大雪山の花園を求めて~
山と森の信仰の地 出羽三山・蔵王・山寺
道南と青森の大自然をめぐる旅
上鶴篤史氏同行シリーズ  東北のブナと巨樹の森と花の湿原歩き&酒田・村上まち歩き
上鶴篤史氏同行シリーズ  霧ヶ峰・美ヶ原 中央分水嶺トレイル完全踏破と王ヶ頭ホテル
信越トレイル 80km完全踏破
上鶴篤史氏同行シリーズ  北アルプス縦走トレッキング 裏銀座から雲ノ平へ 雲上の絶景を歩く

 

 

064

エキノプス・コルニゲルス(Echinops cornigerus)

6月も終わり、いよいよ明日から7月に入ります。梅雨時期に咲くアジサイなどの花に隠れて、大きくなってきたユリの蕾が花開くシーズンです。
先日ネットニュースで「ユリ王国は極東にあり!日本の山野は美しい自生ユリの宝庫だった」という興味深い話が掲載されており、私も7月22日出発「甑島列島探訪と噴煙たなびく桜島」に同行させてもらい、甑島のカノコユリを観察を楽しむため、思わず夢中になって見てしまいました。
興味深いユリの話、またカノコユリの紹介などは、追ってさせていただきます。

 

先日に引き続き、キク科ヒゴタイ属の一種である「エキノプス・コルニゲルス(Echinops cornigerus)」をご紹介します。

 

エキノプス・コルニゲルス(Echinops cornigerus)

 

被子植物 双子葉類
学名:エキノプス・コルニゲルス(Echinops cornigerus)
科名:キク科(Asteraceae)
属名:ヒゴタイ属(Echinops)

 

エキノプス・コルニゲルス(Echinops cornigerus)は、アフガニスタンから中央ネパールに分布し、極度に乾燥した谷の礫地などに自生します。標高2,500~3,500mの高地に自生するものもあります。私がエキノプス・コルニゲルスを観察したのは、北部パキスタンのインダス川に沿ってカラコルム・ハイウェイを走行している道中でした。

 

草丈は50㎝から、1m近いものもあり、直立した茎は少し太さを感じるほどです。
葉は長さが15~30㎝ほどで羽状中裂し、鋸のような形状をした葉からは長さ2㎝ほどの鋭い棘が突き出ています。この葉の様子から「アザミの一種かな?」と感じてしまいます。

 

太い茎頂には直径7~8㎝ほどの球状頭花をつけるのですが、茎頂に1つだけ付ける頭花は、開花状況によって印象が異なります。
つぼみの状態の時は刺状の総苞片(つぼみを包むように葉が変形した部分)が目立つため、イガグリのように見えます。
つぼみから花が開き始めると長さが2㎝弱の白から淡紫色の細い花弁が確認でき、花弁の5裂して先端が少し反り返るため、全体の形状がより丸くなり、まるでくす玉のような形状となります。
この特徴は、先日ご紹介したオクルリヒゴタイ(Echinops latifolius Tausch)と同じです。

 

色合いが異なりますが、皆さんはどちらの色合いがお好みでしょうか。
個人的には淡い色合いのエキノプス・コルニゲルス(Echinops cornigerus)の方が好みです。

 

北部パキスタンへ訪れ、カラコルム・ハイウェイを走行しているとバス車中からこのエキノプス・コルニゲルスが咲いていないか、気が付いたら夢中になってあたりを探していることがあります。
是非、皆さんもエキノプス・コルニゲルスを観察するため、パキスタンへ訪れてみてください。その先には雄大なヒマラヤ山脈やカラコルム山脈の景観が待っており、各所で高山植物が楽しめる場所でもあります。
※ちなみに上写真は7~8分咲き、下写真はほぼ満開の状況です。

 

エキノプス・コルニゲルス(Echinops cornigerus)
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オクルリヒゴタイ(Echinops latifolius Tausch)

先日ネットニュースで「北海道の牧場は大忙し」という記事を見つけました。
6月中旬になると晩秋から冬の間の牛の貴重な食糧となる牧草の収穫が始まり、天気予報を注視し、牧草の収穫の日取りを決めるそうです。
一年ではじめに収穫される牧草は一番草と言い、一番草のおよそ50日後の8月上旬に収穫する牧草を二番草と言うそうです。ビールでいう「一番搾り」と同じでしょうか?
まだ6月で、これから夏の到来と思っていましたが、北海道の牧場では冬のための作業が始まっているという驚きのニュースでした。

 

本日は手毬のような球体の花が印象的な「オクルリヒゴタイ(Echinops latifolius Tausch)」をご紹介します。

 

オクルリヒゴタイ(Echinops latifolius Tausch)

 

被子植物 双子葉類
学名:エキノプス・ラティフォリウス(Echinops latifolius Tausch)
漢字名:奥瑠璃平江帯
モンゴル名:ウルグン・ハフチット・タィジィーンズス
科名:キク科(Asteraceae)
属名:ヒゴタイ属(Echinops)

 

ヒゴタイ(平江帯、学名:Echinops setifer)は、日本・朝鮮半島・中国が原産と言われるキク科ヒゴタイ属の多年草、日本でも西日本から九州に自生します。
本日ご紹介するオクルリヒゴタイ(Echinops latifolius Tausch)はロシアやモンゴルが原産と言われており、私が観察したのはモンゴルでフラワーハイキングを楽しんでいた道中でした。

 

長く伸びた茎は直立し、草丈は比較的背が高く、70~100㎝ほどです。
花は細長い楕円形をしており、葉の縁が刺々しく、葉も硬さを感じるほどです。この辺りが、アザミに似た品種と言われる所以かもしれません。

 

花期は7~8月、砂地の多い草原などで自生します。
濃紫色で1㎝弱の筒状の花が密集し、直径3~5㎝ほどの球体の姿をした花を咲かせます。花の付き方、花の形状は「手毬のように咲く」「くす玉のように咲く」「ぼんぼりのように咲く」と表現は様々ですが、見事な球体がとても印象的です。
似た花としてヨーロッパ原産のルリタマアザミ(瑠璃玉薊)やカラコルム・ハイウェイ(北部パキスタン)をドライブしていると道路脇でよく観察できるエキノプス・コルニゲルス(Echinops cornigerus)があります。

 

属名の「エキノプス(ヒゴタイ属:Echinops)」は「ハリネズミのような」という意味のギリシャ語に由来すると言われていますが、花の大きさから「イガ栗のような」という表現の方が良いと感じるような姿をしています。
特に蕾の状態の時は特に感じます(花を咲かせる前は緑色の球体です)。

 

オクルリヒゴタイは草丈が高いこともあり、フラワーハイキングを楽しんでいるとすぐに目に飛び込んでくる花です。
花の咲く前から形状は球体ですが、花が開き始める緑色から、徐々に淡い紫色となり、満開になると濃紫色へ変化します。
ハイキングの道中で一度足を止め、花の形状だけではなく、筒状の小さな花の1つ1つ、さらには観察の際の開花具合による花の色合いなど、じっくりと観察を楽しんでほしい花の1つです。

 

オクルリヒゴタイ(Echinops latifolius Tausch)
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イワカガミダマシ(Soldanella alpina)

先日、日本政府より外出自粛や休業要請等の段階的緩和、ステップ2への移行が発表され、都道府県をまたぐ移動が解禁となりました。
さっそく新幹線や空の便でも徐々に人出が戻り始めたというニュースも流れており、弊社も宿泊業・運送業及び各地の自治体のガイドラインに基づき、現地事業者とコロナウイルス感染症対策の打ち合わせを行った上で実施させていただきます。
旅行会社としてはようやくここまで来たという喜びとともに、行く先々での感染症予防対策をしっかりし、各地の方々へご迷惑をかけないよう、一層気を引き締めてツアーの実施に当たらなければいけないと感じました。

 

本日は名前が少し変わった「イワカガミダマシ(Soldanella alpina)」をご紹介します。

 

イワカガミダマシ(Soldanella alpina)

 

被子植物 双子葉類
学名:ソルダネラ・アルピナ(Soldanella alpina)
和名:イワカガミダマシ(岩鏡騙し)
英名:Alpine Snowbell
科名:サクラソウ科(Primulaceae)
属名:イワカガミダマシ属またはソルダネラ属(Soldanella)

 

イワカガミダマシ(Soldanella alpina)は、その名のとおり日本にも自生するイワカガミ(Schizocodon soldanelloides:イワウメ科イワカガミ属)に似ていることから名付けられました。確かに姿・形状はそっくりですが、イワカガミダマシはサクラソウ科の一種で、イワカガミダマシ属(Soldanella)に属します(資料によって属名そのままソルダネラ属と記載もあります)。

 

ピレネー山脈やヨーロッパ・アルプス、アペニン山脈(イタリア半島を縦貫する山脈)にかけて自生し、標高1,200m~3,000m弱の牧草地や遅くまで残雪の残る岩礫地などに自生します。
私がイワカガミダマシの花を観察したのは、イタリアのモンテ・ビアンコ(モンブランのイタリア名)の麓でフラワーハイキングを楽しんでいる時でした。

 

草丈は5~15㎝と高くなく、茎の根元に1~3㎝の大きさの円形の葉をつけ、長い柄を持ち、若干の光沢が確認できます。
鮮やかな緑色の根生葉が印象的ですが、直立する茎は褐色であるのが印象的です。

 

花期は6~7月、茎頂には3~4つの淡紫色の花をつけ、少し下向きに花を咲かせます。
1~1.5㎝ほどの釣鐘型の小ぶりな花ですが、花弁の部分が基部までしっかりと切れ込みが入っており、花弁の先端部分が若干反り返り、花弁の中央に長い雄しべが突き出しているのが特徴的です。

 

日本でも自生するイワカガミ(Schizocodon soldanelloides)も釣鐘型、若干下向きに花を咲かせますが、花弁の切れ込みが浅く、イワカガミダマシに比べて花弁の先端があまり広がりません。

 

ヨーロッパ・アルプスの高山帯では6月頃、雪解けとともに開花を迎え、現地ではイワカガミダマシの吸気の際に周囲の雪を溶かすとも言われています。実際は雪の中に物体があると太陽の熱を吸収してその物体付近から溶けると考えられているそうです。英名のアルパイン・スノーベル(Alpine Snowbell)の名の由来はここから来ているのかもしれません。

 

今回、イワカガミダマシのことを色々調べていると、イワウメ科イワカガミ属のイワカガミ(Schizocodon soldanelloides)の種小名の soldanelloides は「Soldanella(イワカガミダマシ属)+oides(のような)」で「イワカガミダマシ属に似た」という意味を持つそうです。
イワカガミダマシに似た花の名前がイワカガミ・・・逆のような気もしますが。

 

少々ややこしい花の名前、由来ですが、草丈の短い牧草地などで可憐に咲くイワカガミダマシは非常に魅力的な花の1つで、モンテ・ビアンコの麓で見つけた際には膝をついて、時折腹ばいになって観察・撮影を楽しんだ思い出のある花です。

 

イワカガミダマシ(Soldanella alpina)