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イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)

7月に入り、いよいよ弊社でも国内ツアーが本格的にスタートしました。
特に7月は日本各地でも高山植物が花咲く季節のため、私自身も楽しみなシーズンでありますので、本日からしばらく「日本の花」をテーマにご紹介していきたいと思います。

 

以前、イワカガミダマシ(Soldanella alpina)という花を紹介しましたが、本日はダマシではなく「イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)」をご紹介します。今回の写真は、弊社東京本社に在籍(3月まで大阪支社に在籍)の島田が撮影したものを拝借させてもらいました。

 

イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)

 

被子植物 双子葉類
学名:Schizocodon soldanelloides
和名:岩鏡(イワカガミ)
科名:イワウメ科(Diapensiaceae)
属名:イワカガミ属(Schizocodon)

 

イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)は、イワウメ科イワカガミ属の多年草であり、山地の岩場や草原に自生します。
山地といっても高地だけではなく、低山帯にも自生します。
分布としては北海道(一部資料には北海道では限定的とあります)、本州、四国、九州と日本全国に分布しますが、日本固有種です。
私も国内添乗員だった頃、上高地などで観察した記憶があります。

 

草丈は10~20㎝ほどで直立し、茎の色が濃紫色をしているのが特徴です。
根元には3~6㎝程度の大きさの丸のある葉をつけ、葉には光沢が確認できます。
和名の「岩鏡」という名の由来が、岩場に自生し、この艶のある光沢の葉が鏡のように見えることから、名付けられました。改めて、粋な名前をつけたものだと感じます。
光沢がある葉であることだけが注目されていますが、よく観察すると葉の縁には鋸場があるのも特徴です。

 

花期は4~7月、茎頂にピンク色で漏斗状の花を3つほど咲かせます。花は1.5~2㎝ほどの大きさで下向きに咲き、花冠は5裂し、裂片の先端~真ん中あたりまで細かく裂けています。
花の中央にはクリーム色(黄色)の雄しべが5つ環状に並んでおり、漏斗状の花から覗き見ることもでき、ピンク色の花弁と相まって印象的な色合いとなります。
※ここがイワカガミダマシとの違いです。
イワカガミダマシも1~1.5㎝程度の花を下向きに咲かせますが、花弁の部分が基部までしっかりと切れ込みが入っており、花弁の先端部分が若干反り返り、花弁の中央に長い雄しべが突き出しているのが特徴的です。

 

イワカガミの学名の種小名「soldanelloides」は「サクラソウ科の Soldanella属に似た」という意味で、Soldanella はイタリア語の「soldo(小さいコイン)」に葉が似ることに由来します。
また、イワカガミダマシの時も紹介しましたがイワカガミ(Schizocodon soldanelloides)の種小名の soldanelloides は「Soldanella(イワカガミダマシ属)+oides(のような)」で「イワカガミダマシ属に似た」という意味を持つそうです。

 

若干間隔が空いてしまっての紹介でしたが、日本固有種のイワカガミとヨーロッパ原産のイワカガミダマシ。同じポイントで見比べることはできないですが、これまでのブログをご覧いただき、また下記写真を見比べていただき、どちらの花がお好みか見比べてみてください。
個人的には「イワカガミダマシ」が好みかな。

 

イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)
イワカガミダマシ(Soldanella alpina)

 

<イワカガミが観察できるツアー>
花の季節に訪れる北海道最北の旅~利尻島・礼文島から宗谷岬、知床半島へ~
花の北海道フラワーハイキング~世界遺産・知床から神々の遊ぶ庭・大雪山の花園を求めて~
山と森の信仰の地 出羽三山・蔵王・山寺
道南と青森の大自然をめぐる旅
上鶴篤史氏同行シリーズ  東北のブナと巨樹の森と花の湿原歩き&酒田・村上まち歩き
上鶴篤史氏同行シリーズ  霧ヶ峰・美ヶ原 中央分水嶺トレイル完全踏破と王ヶ頭ホテル
信越トレイル 80km完全踏破
上鶴篤史氏同行シリーズ  北アルプス縦走トレッキング 裏銀座から雲ノ平へ 雲上の絶景を歩く

 

 

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イワカガミダマシ(Soldanella alpina)

先日、日本政府より外出自粛や休業要請等の段階的緩和、ステップ2への移行が発表され、都道府県をまたぐ移動が解禁となりました。
さっそく新幹線や空の便でも徐々に人出が戻り始めたというニュースも流れており、弊社も宿泊業・運送業及び各地の自治体のガイドラインに基づき、現地事業者とコロナウイルス感染症対策の打ち合わせを行った上で実施させていただきます。
旅行会社としてはようやくここまで来たという喜びとともに、行く先々での感染症予防対策をしっかりし、各地の方々へご迷惑をかけないよう、一層気を引き締めてツアーの実施に当たらなければいけないと感じました。

 

本日は名前が少し変わった「イワカガミダマシ(Soldanella alpina)」をご紹介します。

 

イワカガミダマシ(Soldanella alpina)

 

被子植物 双子葉類
学名:ソルダネラ・アルピナ(Soldanella alpina)
和名:イワカガミダマシ(岩鏡騙し)
英名:Alpine Snowbell
科名:サクラソウ科(Primulaceae)
属名:イワカガミダマシ属またはソルダネラ属(Soldanella)

 

イワカガミダマシ(Soldanella alpina)は、その名のとおり日本にも自生するイワカガミ(Schizocodon soldanelloides:イワウメ科イワカガミ属)に似ていることから名付けられました。確かに姿・形状はそっくりですが、イワカガミダマシはサクラソウ科の一種で、イワカガミダマシ属(Soldanella)に属します(資料によって属名そのままソルダネラ属と記載もあります)。

 

ピレネー山脈やヨーロッパ・アルプス、アペニン山脈(イタリア半島を縦貫する山脈)にかけて自生し、標高1,200m~3,000m弱の牧草地や遅くまで残雪の残る岩礫地などに自生します。
私がイワカガミダマシの花を観察したのは、イタリアのモンテ・ビアンコ(モンブランのイタリア名)の麓でフラワーハイキングを楽しんでいる時でした。

 

草丈は5~15㎝と高くなく、茎の根元に1~3㎝の大きさの円形の葉をつけ、長い柄を持ち、若干の光沢が確認できます。
鮮やかな緑色の根生葉が印象的ですが、直立する茎は褐色であるのが印象的です。

 

花期は6~7月、茎頂には3~4つの淡紫色の花をつけ、少し下向きに花を咲かせます。
1~1.5㎝ほどの釣鐘型の小ぶりな花ですが、花弁の部分が基部までしっかりと切れ込みが入っており、花弁の先端部分が若干反り返り、花弁の中央に長い雄しべが突き出しているのが特徴的です。

 

日本でも自生するイワカガミ(Schizocodon soldanelloides)も釣鐘型、若干下向きに花を咲かせますが、花弁の切れ込みが浅く、イワカガミダマシに比べて花弁の先端があまり広がりません。

 

ヨーロッパ・アルプスの高山帯では6月頃、雪解けとともに開花を迎え、現地ではイワカガミダマシの吸気の際に周囲の雪を溶かすとも言われています。実際は雪の中に物体があると太陽の熱を吸収してその物体付近から溶けると考えられているそうです。英名のアルパイン・スノーベル(Alpine Snowbell)の名の由来はここから来ているのかもしれません。

 

今回、イワカガミダマシのことを色々調べていると、イワウメ科イワカガミ属のイワカガミ(Schizocodon soldanelloides)の種小名の soldanelloides は「Soldanella(イワカガミダマシ属)+oides(のような)」で「イワカガミダマシ属に似た」という意味を持つそうです。
イワカガミダマシに似た花の名前がイワカガミ・・・逆のような気もしますが。

 

少々ややこしい花の名前、由来ですが、草丈の短い牧草地などで可憐に咲くイワカガミダマシは非常に魅力的な花の1つで、モンテ・ビアンコの麓で見つけた際には膝をついて、時折腹ばいになって観察・撮影を楽しんだ思い出のある花です。

 

イワカガミダマシ(Soldanella alpina)