054

クロユリ(Fritillaria camschatcensis)

非常事態宣言が続く中でのゴールデンウィークが終了しましたが、皆さんはどのようにゴールデンウィークを過ごされたのでしょうか。
私は数日に1回、自宅前のスーパーマーケットへの買い物以外は外出をせず、大半を自宅で過ごす中で「ぬか床づくり」をはじめました。また、ゴールデンウィーク最終日に買い物へ出かけた際、自宅マンションのつつじが満開となっており、非常事態宣言の中、心癒される風景でした。

 

本日は日本の大雪山系やロシアのサハリン(旧樺太)で観察した「エゾクロユリ(蝦夷黒百合)」をご紹介します。

 

エゾクロユリ(蝦夷黒百合:Fritillaria camschatcensis)

 

被子植物 単子葉類
学名:クロユリ(Fritillaria camschatcensis)
和名:エゾクロユリ(蝦夷黒百合)
英名:Kamchatka lily、Chocolate lily 他
科名:ユリ科(Liliaceae) 属名:バイモ属(Fritillaria)

 

クロユリ(Fritillaria camschatcensis)は、その姿と花の色からクロユリと名付けられていますが、ユリ科のユリ属ではなく、ユリ科のバイモ属の高山植物です。
日本の北海道、東北地方の月山、飯豊山、中部地方に分布し、西限は北陸地方の白山とされ、石川県では「郷土の花」に指定されています。
海外では、千島列島、ロシアのサハリン、カムチャッカ半島、北アメリカ北西部に分布し、学名の「camschatcensis」は生育地の「カムチャッカ」を意味します。

 

広義のクロユリはミヤマクロユリ(Fritillaria camtschatcensis var.alpina)とエゾクロユリ(Fritillaria camschatcensis)を含めたものとされ、ミヤマクロユリは亜高山帯~高山帯に自生し、エゾクロユリは低地、海岸近くの林の下でも生育、観察できることもあります。
※掲載した写真はサハリンの海岸線近くの藪の中で観察したエゾクロユリです

調べてみると、エゾクロユリとミヤマクロユリは草丈の違いもありますが、染色体数に違いがあるようです。ミヤマクロユリの染色体数は2 対24本(2倍体というそうです)、エゾクロユリは3 対36本(3 倍体)とのことです。

 

地下にある鱗茎(りんけい:球根の一種)は多数の鱗片からなり、茎は直立で10~50㎝の高さになります。葉は長さ3~10㎝の披針形をし、数段にわたり輪生(りんせい:茎の一節に葉が3枚以上つくこと)しています。

 

花期は6~8月で、花は鐘状で茎先にやや下向きに咲き、長さが約3㎝、6枚の黒褐色の花被片をつけ、表面には細かい斑点と筋模様が確認できる花を咲かせます。
クロユリの花は独特の臭いがあります。クロユリの花粉を運ぶのは大部分がハエと言われており、この臭いがハエを呼び寄せているとも言われています。
花が終わると徐々に上を向くように変化し、実が膨らみ羽をもった種子をたくさんつけますが、発芽率は良くなく、繁殖の大半は栄養繁殖と呼ばれる地下の鱗茎が分裂して数を増やしています。

 

私が初めてクロユリを観察したのが「北海道の大雪山縦走登山」をしているときでした。その後、日本では北陸地方の白山でも観察しました。
アイヌ語ではクロユリは「アンラコル」と呼ばれ、アンが「黒」、ラが「葉」、コルが「持つ」という意味で、アイヌ民族はクロユリの鱗茎を干したものを食用にしてきたそうです。

 

北海道の大雪山国立公園は高山植物の宝庫です。
緊急事態宣言の中、外出や旅行を自粛する中でゴールデンウィークは我慢して生活をしてきました。高山植物の開花が始まる頃には、安心して旅行を楽しめるようになることを願うばかりです。

その願いを込めて弊社でも「花の北海道フラワーハイキング」を発表しました。
大雪山国立公園へクロユリやチングルマ、高山植物の女王コマクサを求めて、北海道へ訪れてみませんか?

 

エゾクロユリ(蝦夷黒百合:Fritillaria camschatcensis)
031

ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)

アルゼンチンの最北の高原砂漠「ワイルド・プーナエクスプローラー」のツアーに添乗させていただいており、ブログ更新の間隔が空いてしまいました。

 

本日は前回に引き続きユリ科の一種「ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)」紹介させていただきます。その名の通り、ピレネー山脈の固有種のユリ科の花です。

Lilium pyrenaicum(ピレネー・ユリ)

被子植物 単子葉類
学名:ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)
英名:Yellow Turk’s Cap Lily/Yellow Martagon Lily
科名:ユリ科(Liliaceae) 属名:ユリ属(Lilium )

 

黄色の色合いがとても印象的な「ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)」はピレネー山脈の固有種ですが、スペインおよび東方の山岳地帯からコーカサスまで分布範囲は広がります。

標高1,200~2,000mの草地や林間に自生していることが多く、花の開花時期は6~8月となります。
私も初めてピレネー・ユリを観察したのは、陽光が気持ちの良い6月、ピレネーのプランス側のカバルニー大圏谷(1650m)でした。

 

前回ご紹介させていただいた「マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)」と同じく草丈は40~120㎝と高く、茎は直立して、10~15㎝ほどの細長い葉が互生しています。
日本でも同じユリ科の「エゾスカシユリ」も印象的な鮮やかなオレンジ色をしていますが、このピレネー・ユリも鮮やかな黄色の花弁が非常に印象的で、ユリ科の花の特徴である暗色の斑点も確認できます。
外側に反り返った花弁の中心から数本の雄しべが放射状に突き出しています。

 

上記の英名をご覧いただき、気付かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、「マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)」と英名が同じくトルコ人の被るターバンに似ているということから「Turk’s Cap Lily」という英名の頭に「Yellow (黄色)」がついたものとなります。

ハイキング中、ピレネー・ユリを最初に観察したときは正直驚き、「グロテスクな色合い」という印象でしたが、観察を続けていると徐々にその魅力的な花に心を奪われる結果となりました。

 

ブログ作成のため、ピレネーの花々を撮影した写真を眺めていると、私も久々にピレネー山脈に訪れ、固有種を探し求めてハイキングを楽しみたいと感じています。

Lilium pyrenaicum(ピレネー・ユリ)
030

マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)

8月に入り、猛暑日が続いておりますが、体調など崩されていないでしょうか。そんな猛暑日に路上に咲く花など観ると、ほんの少し癒される気分になります。

 

本日はユリ科の一種である「マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)」をご紹介します。

マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)

被子植物 単子葉類
学名:リリウム・マルタゴン(Lilium martagon) 英名:Turk’s Cap Lily
科名:ユリ科(Liliaceae) 属名:ユリ属(Lilium )

 

日本にも咲くクルマユリやオニユリに似たマルタゴン・ユリ(Lilium martagon)は、フランス東部からモンゴルまで、ユーラシア大陸の寒冷な温帯域に分布し、標高2,000m以上の草地や日差しの射し込みやすい林間などで観察することができます。
※写真は、イタリア・アルプスのコーニュ村の周辺で観察しました。

 

草丈は30~120㎝と高く、茎は直立して、最大15㎝ほどの葉が互生し、若干の光沢を確認できます。葉には斑点(よく観察すると紫や赤色の斑点)もあり、裏には毛も生えています。
茎頂にはたくさんの花を下向きに付け(資料によって50近くの花をつけるとも)、花の直径は3~6㎝、6枚の花弁が外向きに反り返っているのが特徴です。
花はピンクより少し濃い、紅紫色という色合いで、暗色の斑点が確認でき、外側に反り返った花弁の中心から6本の雄しべが放射状に突き出しています。

 

英名「Turk’s Cap Lily」は、この花がトルコ人の被るターバンに似ているところから名付けられ、マルタゴンという名もムハンマドⅠ世愛用のターバンという説もあると聞いたことがあります。

 

色合いが特徴的なユリ科のマルタゴン・ユリ。ヨーロッパには色合いの違ったユリ科がたくさん観察できます。また次回、別の色合いのユリ科の花を紹介させていただきます。

マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)