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レブンアツモリソウ(礼文敦盛草:Cypripedium marcanthum var. rebunense)

2024年も早いもので1ヶ月が過ぎ、2月となりました。
年が明けてからも弊社では夏~秋のツアー造成に社員一同で励んでおりますので、乞うご期待。

 

本日は「花の浮島」と紹介される北海島・礼文島に咲く「レブンアツモリソウ」(礼文敦盛草)をご紹介します。

 

レブンアツモリソウ(礼文敦盛草)

 

被子植物 単子葉類
学名:Cypripedium marcanthum var. rebunense
和名:レブンアツモリソウ(礼文敦盛草)
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:アツモリソウ属(Cypripedium)

 

みなさん、「アツモリソウ」と言えば何色をイメージされるでしょうか。
北海道・礼文島にてレブンアツモリソウを観察された方、一度は観察してみたいと思いながら写真をご覧になった方、大半の方が「アツモリソウと言えば、白色(またはクリーム色)」と言われます。
私も「アツモリソウ」というものを最初に観察したのが礼文島に咲くレブンアツモリソウだったので、そのイメージを長らく抱いていました。

 

実は、日本国内には数種のアツモリソウ属(Cypripedium)の花が自生します。
紅色(紫色)の色合いが印象的で私もロシアのサハリン南部で観察した「ホテイアツモリソウ」(布袋敦盛草)、茶色の萼片と黄色い袋状の唇弁の色合いの「カラフトアツモリソウ」(樺太敦盛草)、さらには私も観察したことはありませんがウツボカズラのような形状の「キバナノアツモリソウ」(黄花敦盛草)があります。

 

今回ご紹介する「レブンアツモリソウ」(礼文敦盛草)は、盗掘によって個体数が激減し(北海道のバスガイドさんから夜中に小舟で入島して盗掘した人がいたと聞いた記憶も)、1994年に「特定国内希少野生動植物種」(種の保存法)に指定されており、礼文島の固有変種で礼文でしか見ることができない貴重な花です。
現在では、礼文島北部の北鉄府地区にある「レブンアツモリソウ群生地」(保護区)でしか観察できません。
ここまで説明すると、お分かりかと思いますが、白いアツモリソウの方が珍しいのです。

 

草丈は15~30cmの多年草で、茎には縮毛が確認できます。
葉は先が尖った長楕円形をしており、長さは10cm前後です。単子葉類らしく真っすぐと伸びた葉脈がクッキリとしている点も特徴です。

 

花期は早春の5月下旬~6月中旬。茎頂に袋状の花を1つ咲かせます。
花の形状はユニークで、上萼片が帽子の庇(ひさし)のように突き出ており、側萼片が左右に垂れ下がっているのが特徴的です。
何より、アツモリソウ最大の特徴であるのが袋状の「唇弁」です。長さが3.5~5cmの袋状をしており、ぷっくりとして非常に可愛らしい形状です。

レブンアツモリソウ(礼文敦盛草)

 

レブンアツモリソウのことを色々と調べていると、「騙しによる受粉」という言葉がありました。
レブンアツモリソウは蜜を分泌せず、他のラン科の花と同じように花粉も大量に作る訳ではありません。
レブンアツモリソウの送粉者はニセハイイロマルハナバチ、巣を作り始めたばかりの越冬女王蜂がその役目を担うそうですが、蜜や花粉が得られる花だと思って花に潜り込むと、まるで食虫植物ウツボカズラの捕虫嚢に捕まってしまったかのように、袋状の唇弁に足を滑らせて落ち込んでしまいます。
袋状の唇弁から脱出できる経路は限られ、脱出する際には体中に花粉塊が粘着しており、ニセハイイロマルハナバチが再び別のレブンアツモリソウに騙されて落ち込んでしまい、同じように脱出するときに雌しべの柱頭に花粉塊が付着し、受粉が成立するそうです。
次回、レブンアツモリソウを観察する際、近くにハチが飛んでいたら・・・「騙されないで」と声を掛けるのか、迷いどころです。

 

みなさん、カナディアンロッキーにもアツモリソウが咲くのはご存じですか?
カラフトアツモリソウと同系種で、現地では「Yellow’s Lady’s Slipper」(女性のスリッパ)と呼ばれます。


形状はレブンアツモリソウと同じように袋状の唇弁をもち、黄色の袋状の唇弁の内部に赤い小さな斑点があるのが印象的です。
私は長年カナディアンロッキーに咲く黄色いアツモリソウ「グレーシャー・リリー」を観察したいと思い続けており、ようやく2024年に「花咲くカナディアンロッキー・ハイキング 黄色いグレーシャー・リリーをもとめて」というツアーを造成することができました。

 

礼文島でレブンアツモリソウを観察された方、まだ観察されていない方も、黄色いアツモリソウ「グレーシャー・リリー」をもとめて、カナディアンロッキーへご一緒しませんか?

 

<レブンアツモリソウが観察できるツアー>
花の利尻島・礼文島とサロベツ原生花園
※レブンアツモリソウの観察できる5月出発は催行決定しています!

花の利尻島・礼文島から世界遺産 知床半島へ
※レブンアツモリソウの観察できる6月出発は、まもなく催行です

 

<黄色いアツモリソウ「Yellow’s Lady’s Slipper」が観察できるツアー>
花咲くカナディアンロッキー・ハイキング 黄色いグレーシャー・リリーをもとめて
※黄色いカタクリ、黄色いアツモリソウが観察できるシーズン限定
※催行間近!! 大阪支社・高橋が同行予定です。

 

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ホテイアツモリソウ(Cypripedium macranthum var. hotei-atsumorianum)

先日、大阪城公園にて花見へ行ってきました。見頃の時期、さらには週末だったこともあり、人の多さに圧倒されてしまいましたが、キレイな桜とともに桃園では数種類の桃の観察も楽しむことができました。

 

本日ご紹介するのは、花の姿、形状が非常に見栄えが良く、地域変異のバリエーションが多いアツモリソウの一種である「ホテイアツモリソウ(Cypripedium macranthum var. hotei-atsumorianum)」です。
日本では「レブンアツモリソウ(礼文敦盛草 C. marcanthos var. rebunense)」が圧倒的な知名度ですが、ホテイアツモリソウは、花全体の色合いがとても美しく、観察を続けて行く中で、どんどん心が奪われていくアツモリソウです。

ホテイアツモリソウ:布袋敦盛草

被子植物 単子葉類
学名:Cypripedium macranthos var. hotei-atsumorianum
和名:ホテイアツモリソウ(布袋敦盛草)
科名:ラン科(Orchidaceae) 属名:アツモリソウ属(Cypripedium)

 

アツモリソウは、漢字では「敦盛草」と書きます。この漢字名の由来は、袋状の唇弁(しんべん)の部分が、平敦盛が背負った母衣に見立てて名付けられました。

 

アツモリソウの中でも日本が世界に誇れるホテイアツモリソウは、本州中部(長野:釜無、大鹿、経ヶ岳、霧ヶ峰、戸隠、安房、山梨:櫛形、八ヶ岳、新潟、岩手)や北海道に分布しており、海外では中国やロシアに分布しています。
※上の写真は、ロシアのサハリン南部で観察したものです。
盗掘・乱獲のために、既に絶滅してしまっている地域も多く、日本では1997年にレブンアツモリソウに相次いで特定国内希少野生動植物指定を受けました。

 

草丈は20~50cm、花は袋状で、茎の頂上に通常1つ、まれに2つの花つけこともあるそうです。径は6~10cm、幅の広い楕円形(時に円形に近いものがある)の葉を4~5枚互生(1つの節には1枚の葉しかつかない)し、アツモリソウに比べて全体に大きい印象を受けます。
色合いも、アツモリソウより濃く、桃色から紅色、黒ずんだ暗濃紅色の花と非常に多くの地域・個体バリエーションがあります。

 

サハリン南部で見つけたホテイアツモリソウの群生地。お客様とともに夢中になって観察したことを今でも覚えています。
日本でも観察できるアツモリソウですが、サハリンの地で観察するホテイアツモリソウも、また格別の美しさでした。
是非、ホテイアツモリソウを求めてサハリンの地へ。

ホテイアツモリソウ:布袋敦盛草

<ホテイアツモリソウが観察できるツアー>
花のサハリン紀行