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エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)

先週完成した「西遊通信」がそろそろ皆様のお手元に届いている頃かと思います。春から夏にかけて様々なツアーを発表しております。春の花、夏の花、高山植物を観察するツアーも充実しておりますので、ご興味あるコースがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

本日は大型のセリ科植物の「エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)」をご紹介します。

 

エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)※ベニア原生花園にて

 

被子植物 双子葉類
学名:Papaver fauriei
科名:セリ科(Apiaceae)
属名:シシウド属(Angelica)

 

高山植物を観察していると一際大きな存在感を放つのがセリ科の植物です。
セリ科の植物を見つけた際に「あれはセリ科の花」「ウドの仲間」と認識されている方も多いのではないでしょうか。それだけ見分けが難しい植物でもあり、私も自身がなく前述のように説明してしまうことが多い植物です。
「エゾニュウ(蝦夷ニュウ)」はセリ科シシウド属で、北海道の沿岸部の原生花園などで観察する機会が多いですが、国内では北海道以外にも本州の中部地方以北に、海外では千島列島、サハリン、カムチャッカ半島に分布し、沿岸部の草地から山地と幅広く自生します。

 

草丈は1.5m~2m、大きいので3mにも達するものもあり、太い赤みを帯びた茎が直立します。この赤みを帯びた太い茎は中空で直径10㎝にも及ぶものもあるそうです。

 

葉は比較的大型、二回三出複葉で小葉は長楕円形です。

  • 複葉とは、葉身(葉の平たい部分)が小葉と呼ばれる小さな部分に分かれている葉のことで、別々の小さな葉の集まりのように見えるものも、実は全てを合わせて1枚の葉と考えます。
  • 複葉の中にもいくつか種類があり、中央の1本の軸の左右に小葉が並んでいるものを「羽状複葉」、羽状複葉が集まって全体としてさらに大きな羽状複葉を構成している場合、複葉の回数に合わせて「ニ回羽状複葉」、 「三回羽状複葉」と言います。

 

茎頂に大きな蕾をつけ、蕾を覆う苞は深い皺がはいり、少々薄気味悪い印象を与えます。この苞の部分は開花直後に剝がれ落ちてしまいます。
※エゾニュウの蕾の状態の写真はありませんでしたが、同じセリ科の植物の蕾の写真を見つけました(サハリンで撮影)ので、イメージとして掲載しておきます。

 

セリ科の植物の蕾

 

花期は7~8月。複散形花序(花軸から放射状に柄を伸ばし、その先に散形花序をつける)で、白色(クリーム色)の小さな花を多数つけます。
エゾニュウの大花序は50個近く柄を伸ばし、その先につく小花序は30~40個ほどの柄を放射状に出し球形となります。その姿は、まるで打ち上げ花火が大きく広がったようにも見えます。
それぞれの花はルーペがないと見えないくらいの大きさですが、花弁が4~5枚、その中央に長い雄しべが伸びます。ある資料に「雄しべがにゅーっと伸びる」とあり、可愛らしい表現で、エゾニュウの説明にピッタリな表現でした。

 

エゾニュウは、秋田県では「ニョウサク」「サク」「ニオ」などと呼ばれ、塩蔵して冬に食べる越冬山菜の代表として紹介されています。
また、アイヌ語では「シウキナ(若い草)」と呼ばれ、ある資料にアクが強くアイヌでは若い茎の皮を剥いて生のまま『エゾニュウ甘くなれ』とおまじないをかけながら食べていた地域もあったと紹介されていました。

 

見分けが非常に難しいセリ科の植物ですが、また別の機会にセリ科の植物をご紹介したいと思います。まずは見分け方から勉強しないといけませんが・・・。

 

エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)②※ベニア原生花園にて

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エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)

我が家では嫁さんが多肉植物の栽培に凝っていることもあり、塊根植物の一種である「アデニウム・オベスム(Adenium obesum)」を購入しました。
色々と調べていると大きく肥大した塊根をもつキョウチクトウ科のコーデックスプランツで、アデニウム属の代表種で「砂漠のバラ」とも称されているようです。アフリカ大陸北部からサハラ砂漠以南や西アフリカ沿岸の国々が原産のようです。
主幹は太く丸みを帯び、頂部から細かく分枝したユニークな形をしており、ラッパ状の美しい花を咲かせるようで、「砂漠のバラ」と呼ばれる所以だそうです。
現在、光沢のある鮮やかな葉を沢山つけており、葉柄(葉身と茎を繋ぐ部分)から小さな蕾のようなものも確認ができ、「砂漠のバラ」と称される花が咲くことが楽しみの1つになりました。

 

では本題の「世界の花だより」です。
本日はセリ科の一種「エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)」をご紹介します。

 

エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)

 

被子植物 双子葉類
学名:エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)
別名:ピレネー青アザミ
科名:セリ科(Apiaceae)
属名:エリンジウム属またはヒゴタイサイコ属(Eryngiumm)

 

一見するとアザミの花を思わせる見た目、さらに「ピレネー青アザミ」という別名をご覧になり「青アザミなのにセリ科?」と気付かれた方も多いのではないでしょうか。
エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)はセリ科のエリンジウム属の一種であり、ピレネーの固有種の花の1つです。資料によって「スペイン~地中海沿地方原産」と記載しているものもありますが、私が観察したのもスペイン・ピレネー山脈でのフラワーハイキングで、現地ガイドさんも「ピレネーの固有の花」と紹介してくれていました。
エリンギウム属(Eryngium)はアザミに似た形状ですが、世界に230種ほど分布します。

 

草丈は15~45cmになるものもあり、茎の部分が花全体の色合いと同じ、淡紫色をしているのが特徴です(中には濃紫色のものもありました)。
葉は全体的に刺々しく3裂し、地表にロゼット状に広げ、若干の光沢と葉に白い斑点のようなものが確認できます。若い時期には葉の光沢はなく、生育過程の中で徐々に光沢が確認できる資料もありました。

 

細長い花弁が広がっている形状のように見えますが、実際には花弁ではなく、エリンギウム属の特徴である総苞(そうほう:花軸の一部で基部に生じる小形の葉のこと、花全体を保護する)です。
花期は初夏の5月~8月、実際の花は総苞の中心に直径15~20㎜の小さな球状の花を密集して咲かせます。

 

刺々しい葉、茎頂に密集して咲く花の形状をみて、初見ではアザミの花と勘違いしてしまう点が「ピレネー青アザミ」と言われる所以と、現地ガイドさんが説明していたのを覚えてきます。

 

非常に特徴的な形状のエリンジウム・ブルガティは、家庭園芸やガーデニングなどでも人気の花だそうですが、ピレネー山脈でフラワーハイキングを楽しんでいる際、自然に自生するエリンジウム・ブルガティを観察すると、その特徴的な形状に心を奪われ、気付いたら観察に夢中になってしまう花の1つです。

 

エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)