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リシリヒナゲシ(利尻雛罌粟:Papaver fauriei)

先日、国内ツアーをご紹介する「西遊通信」が完成し、間もなく皆さんのもとへ届く予定です。
春の花の観察を楽しむツアー、さらに夏の高山植物を観察を楽しむツアーも掲載しており、私も「花咲く千畳敷カール・駒ケ岳・上高地を歩く」と「花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く」を新たに造成させていただきました。ホームページでも随時更新していきますので、お楽しみに。

 

本日は久々に北海道の花、「リシリヒナゲシ(利尻雛罌粟:Papaver fauriei)」をご紹介します。

 

六甲高山植物園で観察したリシリヒナゲシ(利尻雛罌粟)

 

被子植物 双子葉類
学名:Papaver fauriei
科名:ケシ科(Papaveraceae)
属名:ケシ属(Papaver)

 

リシリヒナゲシ(利尻雛罌粟)は、日本固有種で、日本で唯一自生するケシの種類です。北海道・利尻島に聳える利尻山(利尻富士)の中腹から山頂部にかけての火山崩壊礫の斜面に自生します。

 

私も十数年前、国内添乗員だった頃に利尻山の登山ツアーに同行した際に観察しました。初めて観察したのは、登山開始直後から暴風雨に見舞われ、登山半ばで下山することを決定した直後でした。花の観察どころではないくらいの暴風雨の中、下山前に”キジ撃ち”をしようと男性数人で木陰に向かった際に斜面に咲く一輪のリシリヒナゲシを見つけました。暴風に煽られていたため、撮影どころではありませんでしたが、”キジ撃ち”を中断して皆さんと風にも負けず観察を楽しみました。登頂は断念して気落ちしていたところに、一輪の癒しを観察できたことが救いだったと今でもハッキリと覚えています。
今回掲載した上写真は、2019年に嫁さんと一緒に神戸・六甲高山植物園にて観察したものです。

 

草丈は20~30㎝ほどで直立し、茎全体に荒い毛(剛毛と表記する資料も)が密集しています。
葉は茎の根元に根生葉を付け、少し白みを帯びた緑色の葉の縁は細かく切れ込み(細裂)が確認できます。葉全体にも荒い毛(剛毛)が密集しているのが確認できます。

 

花期は7~8月。茎頂に直径5㎝ほどの花を上向きに咲かせます。
他のケシ科の花にも見られることですが、蕾の状態の時には茎頂の先端が垂れ下がり、蕾は下向きですが、開花すると茎頂も直立して上向きに花を咲かせます。ケシ科の花を観察する際、周囲に蕾の状態のものを探して開花時との茎頂の違いを観察してみるのも面白いかもしれません。

 

花弁を4枚つけ、透けて向こう側が見えるくらいの淡黄色の色合いがリシリヒナゲシが可憐に見える所以だと、個人的には感じています。

 

上の写真を一度確認してみてください。
淡い色合いが印象的なリシリヒナゲシですが、花の中央の部分も非常に印象的な形状をしています。
花の中央に緑色の団子のように見えるのは、雌しべの子房(種になる部分)です。雌しべの先に6~8本の柱頭(花粉を受け取る部分)が放射線状に伸びて柱頭盤をつくります。
雄しべは、緑色の子房部分の周辺に多数付けているのも確認ができます。

 

リシリシナゲシは、環境省のレッドリストでは、近い将来における絶滅の危険性が高いとされる絶滅危惧IB類(EN)に登録されています。

 

今回のブログ作成のために調べていると、「リシリヒナゲシの遺伝的解析」についての資料を見つけました。
自生地のリシリヒナゲシと利尻島の市街地(ホテルの庭などにも栽培されています)に咲くリシリヒナゲシが遺伝的に同一のものか定かでないこと、近縁の移入種との種間雑種ではないかという点が懸念されているという資料がありました。
また、別の資料では、遺伝子検査で外見が似ている外来種か栽培種が利尻山上部の自生地で本種と混じって生えていることが判明したというものもありました。
中には「モドキ」という表記を使っているものもありましたが、地元では遺伝子を確認しながら自生地に自生株を増やそうする努力は行われているようです。
下の写真は、利尻島のホテルで栽培されていたリシリヒナゲシの写真です。

 

火山崩壊礫の斜面、利尻山の中腹から山頂部という厳しい状況の中で可憐に咲くリシリヒナゲシ。自生株が無くならないことを願い、私たちも十分に気を付けながら観察する必要を、ブログを作成しながら感じました。

 

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日本各地で高山植物などの花々を楽しむツアーも続々と発表しております。ご興味のあるコースがありましたら、是非お問い合わせください。
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利尻島のホテルで観察したリシリヒナゲシ