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マイヅルソウ(舞鶴草:Maianthemum dilatatum)

ここ最近、花の観察ツアーへのお問い合わせが増えており、対応させていただく度に「私もこの花を観察したいです」と答えてしまうことが多くなりました。一日でも早く、日本各地で安心して旅ができ、花の観察を楽しめる日が訪れることを願うばかりです。

 

本日は「マイヅルソウ(舞鶴草:Maianthemum dilatatum)」をご紹介します。

 

雨上がりのマイヅルソウ(舞鶴草)

 

被子植物 単子葉類
学名:Maianthemum dilatatum
科名:キジカクシ科(Asparagaceae)
属名:マイヅルソウ属(Maianthemum)

 

マイヅルソウ(舞鶴草:Maianthemum dilatatum)は、キジカクシ科マイヅルソウ属に属する多年草です。キジカクシ科は旧分類ではユリ科に分類されていましたが、現在はキジカクシ科として分割されています。

 

日本では北海道から九州と広く分布し、海外でもユーラシア北東部(ロシア東部、朝鮮半島)とアメリカ北西部(アメリカ合衆国カリフォルニア州北部、オレゴン州、アラスカ州、アリューシャン列島など)など幅広く分布します。山地帯上部から亜高山帯の針葉樹林に多く群生しますが、北海道・札幌近郊では住宅街周辺の防風林内にも大きな群落地があるという資料もありました。

 

草丈は10~25cmほどで直立し、茎の途中で長さ2~4㎝ほどの柄が伸び、2枚の葉を付けます。葉の長さは5㎝前後、形状は卵心型で先が尖り基部が深く窪んでいるので、「ハート型」と言った方がイメージしやすいかもしれません。
全体的に湾曲しており、葉脈が非常に目立ちます。この2枚の葉が広がった様子が「鶴が羽を広げたような姿」に見えることが、和名の舞鶴草の名の由来です。資料によっては「葉の模様が家紋の舞鶴紋に似る」という点が和名の由来というものもあります。

 

花期は5~7月。茎頂に真っ白な小さな花を多数総状に付けます。1つ1つの花は直径5㎜ほどと非常に小さいですが、よく観察してみると2mm程度の長さの花被片が4枚、それぞれ反り返っていることが確認できます。また、花の中央から4本の雄しべが目一杯伸びており、中央には雌しべの柱頭、クリーム色の子房も確認できます。じっくり観察するにはルーペが必要かもしれません。

 

鮮やかな緑色の2枚の葉と小さな可愛い花が印象的なマイヅルソウですが、果実(液果)は直径5㎜ほどの球形で真っ赤な実を付け、1つの実に種子が1~2個あるそうです。

 

1つ1つの花をじっくり観察するのも良いですが、林床などに群生するマイヅルソウも心和む風景です。
鮮やかな緑色のハート形の葉が密集する群生地に、遠慮がちに伸びる多数総状のマイヅルソウを観察すると思わず足を停めて観察したくなる風景です。
私が初めてマイヅルソウの群生地を観察したのが、梅雨時期の6月の上高地でした。もう十数年前の話です。
せっかくのガイドウォークだったのですが、カッパを着ながら下を向いて歩いてばかりでしたが、ガイドさんがふと足を止めた場所でマイヅルソウが群生しており、雨のおかげでハート形の葉がキラキラと光り、中央から伸びる多数総状の花も満開でした。今でも雨の上高地で観察したマイヅルソウの風景は忘れることができません。

 

マイヅルソウ(舞鶴草)の群生

 

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