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ムラサキベンケイソウ(紫弁慶草:Hylotelephium pallescens)

本日は「ムラサキベンケイソウ(Hylotelephium pallescens)」をご紹介します。

 

ムラサキベンケイソウ(紫弁慶草:Hylotelephium pallescens)

 

被子植物 双子葉類
学名:Hylotelephium pallescens
科名:ベンケイソウ科(Crassulaceae)
属名:ムラサキベンケイソウ属 (Hylotelephium)

 

ムラサキベケイソウ(紫弁慶草)は、ベンケイソウ科に属する多年草です。
日本では北海道に分布し、山地をはじめ草地などに自生します。中部以北に分布するという資料もありましたが、同じムラサキベンケイソウ族のベンケイソウ(Hylotelephium erythrostictum)が中部以北に分布と記載している資料が多いので、もしかしたらそちらのことかと思われます。
海外では、シベリアやモンゴル、中国などにも分布します。
因みに、ムラサキベンケイソウ属はベンケイソウやオオベンケイソウなどの種がこの属に属し、東アジアを中心に28種ほどが分布します。

 

草丈は30~50㎝ほど、9月にサロマ湖畔で観察した際にも腰の位置より少し低いくらいでした。
葉は深緑色で互生、対生とまちまちのようです。
葉の形状は楕円形で少し卵型にも見え、長さは5cmほど、幅は1.5~3㎝で縁が鋸歯になっており、ほんの少し肉厚な葉であることが確認できます。

 

花期は8~9月。
茎頂に直径1cm弱の小さな花を密集させ、散房状(全体がドーム状)に花を咲かせます。
花弁は淡いピンク色をしていますが、よく観察すると先端部がピンク色、根元部分(中心部に近い部分)が白色となっているので、全体的に淡い色合いに見えるのかもしれません。花弁は先端がとがっており、5枚。星形といった表現がぴったりな形状です。
花の中央より雄しべが10本前後直立しており、上の写真をごらんいただくと、雄しべの先端の葯(やく:花粉を入れる袋状構造)が黄色くなっているのが判るかと思います。この黄色いのは、葯が裂開して花粉が出ている状態です。裂開する前は濃紅色です。
中央に饅頭(小さな饅頭が4つ)のようにみえる部分は子房です。

 

私が9月下旬に北海道・サロマ湖畔で観察した際には、最盛期が過ぎていたのか、花を咲かせているのはわずか1~2本ほどでしたが、密集して花を咲かせる姿は美しく、1つ1つの小さな花をじっくりと観察してみると、より美しさを感じる花でした。

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モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)

私の暮らすマンションの入口では管理人さんが様々な花を大切に育てており、季節ごとの花を楽しませてくれます。ここ1、2週間はあじさいの花が見事に咲きそろっており、出勤前の楽しみの1つでした。

本日は「モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)」をご紹介します。

モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)

被子植物 双子葉類   時期:6~8月
学名:Sempervivum montanum
英名:Mountain Housleek 和名:クモノスバンダイソウ
科名:ベンケイソウ科(Crassulaceae) 属名:クモノスバンダイソウ属(Sempervivum)

 

ヨーロッパ南部の山岳地帯に自生し、西はピレネー山脈から東はカルパチア山脈(中央ヨーロッパ・東ヨーロッパの山脈)に分布する多年草です。
標高1,500~3,000m前後の、岩場やガレ場(酸性岩地帯に多いと言われています)に生息し、草丈は5~20㎝ほどです。
根生葉(地上茎の基部についた葉のこと)は、1㎝前後の先の尖った形をし、先の尖った葉が集まり球形となり、次第に外に開きます。
全体的に緑色ですが、その先端部が若干赤みを帯びていることもあります。
これらの球形の根生葉が密集しマット状になり、そこからのびる茎は、先の尖った長さ2㎝ほどの葉が互生して茎全体を覆っています。

 

茎頂には、長さ1㎝ほどの赤紫色した先の尖った花びらを10~15枚付け、1つの茎に3~8個ほどの花を咲かせます。

 

属名にある「クモノス(蜘蛛の巣)」という名は、根生葉の表面に生える腺毛(せんもう:植物の表皮に生じる毛のような突起物で、特殊な液体を分泌する)があることから名付けられたそうですが、このモンタヌム・バンダイソウは腺毛はほとんど付きません。
また属名「Sempervivum(センペルビブム)」は「常に生きる」という意味から、不死のシンボルとされています。※実際は、開花後に身を付けてから枯れてしまいます。

 

このバンダイソウの仲間は、ヨーロッパ・アルプスでは昔から雷避けとして屋根や壁、バルコニーに植えられていたそうです。
※かの有名なカール大帝(西ローマ皇帝を号した、 後の神聖ローマ皇帝の祖)は、自分の所有する建物にこのバンダイソウを屋根に植えるように命令書を出していたとも言われています。

 

この「モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)」は、その葉なの大きさだけではく、その色合いや異形ぶりから非常に目立った花の1つです。ただ、その1つ1つをじっくり観察すると、非常に魅力ある姿をしています。

「モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)」