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グンナイフウロ(郡内風露:Geranium onoei var. onoei f. onoei)

■注目! 6月26日出発コース 催行決定!
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※尾瀬に咲く花が最盛期を迎える季節です!

 

■注目! 催行決定まであと一歩!!一緒に植生観察を楽しみませんか?
花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※5月23日出発 まもなく催行!(シャクナゲの花咲く季節)

 

花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※4月29日出発 まもなく催行!(北飛騨の森にミズバショウが咲く季節)


 

本日は「グンナイフウロ(郡内風露:Geranium onoei var. onoei f. onoei)」をご紹介します。

 

グンナイフウロ(郡内風露:Geranium onoei var. onoei f. onoei)

 

被子植物 双子葉類
学名:Geranium onoei var. onoei f. onoei
科名:フウロソウ科(Geraniaceae)
属名:フウロソウ属(Geranium)

 

グンナイフウロ(郡内風露)は、フウロソウ科フウロソウ属に分類される多年草です。科名のグンナイ(郡内)とは、山梨県東部にあった都留郡(つるぐん:現在の北都留郡、南都留郡)で最初に発見されたことが由来です。

 

北海道、本州(中部地方以北:福島県・磐梯山から滋賀県・伊吹山に分布と記載の資料もあり)に分布し、山地~亜高山帯の草地に自生します。
今回掲載の写真は昨年7月に上高地の河童橋から徳沢を目指す奥上高地自然探勝ハイキングを楽しんでいる際に観察したものです。

 

草丈が30~50㎝ほど。
葉は花に比べて比較的大きく、幅5~12cmほどで掌状に5~7深裂し、それぞれの裂片がさらに浅裂(細かくギザギザ)しています。
おもしろいのが葉の付き方です。基本は茎葉は互生しているようですが、最上部では対生しているそうです。私もそこまで深く観察したことがないので、次回じっくり観察してみたいと思います。

 

茎、葉柄には開出毛(かいしゅつもう:茎や葉などの面に対して直角に伸びている毛)と腺毛(せんもう:先端が小球状に膨らんでいて液体を分泌する毛)が確認できます。資料によっては茎の上部は腺毛が多いとのことでした。また、葉の両面にも開出毛が確認でき、裏面には腺毛が混じるそうです。
この点も「粗めの毛がつく」という認識だったので、直角に伸びる開出毛、腺毛の違いなど、次回の観察の際の宿題としないといけません。

 

花期は6~8月。高原に咲くハクサンフウロ(白山風露:次回紹介予定)などより、1ヶ月ほど早く花を咲かせると言われています。
茎の上部で枝分かれした花枝の先に集散状(10個前後)に直径2.5~3cmほどの花を咲かせ、雄しべは5本ずつ2列に並びます。
花の色は淡紫色~濃紫色と個体によって変異があり、今回掲載した上高地で観察したもの(それぞれ別の場所で観察)は白色と言ってよいほど淡い色合いでした。
資料によっては、白花のものは「シロバナグンナイフウロ(白花郡内風露)」と紹介されており、これも一種の変異とされているとのことでした。
フウロソウ科の花の特徴ともいえる花弁にある5~7条の脈もグンナイフウロでも確認できますが、上高地で観察したものは白色に近い花弁に淡い紫色の脈が付いており、何とも言えない上品さを感じる色合いの組み合わせでした。

 

花柄、萼(卵型で先端が尖る形状)にも葉柄などと同じく開出毛と腺毛が確認できます。また、ユニークなのが花床(花の中央部)に長く白色の軟毛が確認できる点です。これは他のフウロソウ科の花にも見られますが、ここまで明確に確認できるのは他にはないかもしれません。

 

[近縁種]
■タカネグンナイフウロ:高山性で花色が濃く。葉裏の脈上にのみ毛がある。
■エゾグンナイフウロ :毛が少なく花色が濃い。

 

フウロソウ科の花は、ひとまとめに「フウロソウの花」として覚えてしまいがちですが、1つ1つの違いを見分けてみると興味深いものです。
今回のグンナイフウロ(郡内風露)と見分けていただくため、次回はハクサンフウロをご紹介します。

 

グンナイフウロ(郡内風露:Geranium onoei var. onoei f. onoei)

 

<春~夏の花の観察ツアー>
まもなく催行!
花咲く秘島・甑島へ 島の山野草をもとめて 4日間
※甑島の絶景と島を彩る山野草の観察を楽しむ旅

 

5月23日出発 まもなく催行!(シャクナゲの花咲く季節)
花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

 

5月1日出発 満席! 5月5日出発 まもなく催行!
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる 5日間
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間
※親海湿原でミツガシワの群生が観察できるかも!

 

4月29日出発 まもなく催行!
花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く
※5月は上高地にニリンソウが、宇津江でクリンソウが咲く季節

 

6月26日出発 催行決定!(尾瀬の花の最盛期)
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※高山植物の最盛期を迎える尾瀬で楽しむフラワートレッキング
※尾瀬ヶ原でウラジロヨウラクやナガバノモウセンゴケの観察へ!

 

7月10日出発、7月17日出発 間もなく催行!
花咲く北アルプスへ 白馬・乗鞍・上高地を歩く
※2つの高山植物の宝庫と奥上高地の徳沢にも訪れる自然観察の旅

 

※7月18日出発、7月25日出発 間もなく催行!
花の北海道フラワーハイキング
※世界遺産・知床から「神々の遊ぶ庭」大雪山の花園をめぐる

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センジュガンピ(千手岩菲:Lychnis gracillima)

■注目! 催行決定まであと一歩!!一緒に植生観察を楽しみませんか?
花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※5月23日出発 まもなく催行!(シャクナゲの花咲く季節)

 

花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※4月29日出発 まもなく催行!(北飛騨の森にミズバショウが咲く季節)


 

本日は「センジュガンピ(千手岩菲:Lychnis gracillima)」をご紹介します。

 

センジュガンピ(千手岩菲:Lychnis gracillima)

 

被子植物 双子葉類
学名:Lychnis gracillima
科名:ナデシコ科(Caryophyllaceae)
属名:センノウ属(Lychnis)

 

「センジュガンピ(千手岩菲)」は、ナデシコ科センノウ属の多年草。
センノウ属はあまり聞きなれない属名ですが、京都市右京区、五山送り火の一つ鳥居形が点火される曼荼羅山(まんだらやま)の山頂にかつて建てられていた仙翁寺(せんおうじ)に咲く「仙翁花(せんのうげ/せんのうけ)」というナデシコ科の多年草(学名:Lychnis bungeana Senno)が由来とされています。元々は中国原産とされ、古くより観賞用、特に茶花として栽培されてきたそうです。
本州内の中部地方から東北地方に分布し、山地、亜高山帯の林内などに自生します。
私も昨年7月に上高地の河童橋から徳沢を目指す奥上高地自然探勝ハイキングを楽しんでいる際に観察しました。

 

草丈は30~100cm。細い茎が真っすぐに伸び、よく観察すると茎に軟毛が確認できます。5~15㎝ほどの細長い披針形で先が鋭く尖る葉が対生し、葉柄はありません。

 

花期は7~8月。まっすぐに伸びた茎の頂に直径約2cmほどの小さく白い可憐な花を数個咲かせます。
花弁は5枚で花弁の先端が浅く2裂、それぞれの裂片がさらに浅く不規則に裂けています(歯牙状と表記される資料も)。個人的には「ナデシコの花は花弁が2裂や不規則(ギザギザ)に裂けている」というふうに覚えています。
5枚の花弁には、各花弁に2枚ずつ付属帯と呼ばれる短く小さな花弁のようなものも確認できます。雄しべは2列に分かれ、計10本ついています。
花の直径が2㎝ほどと小さいため、各花弁に付く付属帯や雄しべなどを確認するのは大変でルーペが必要なほどですが、是非確認してみてください。

 

センジュガンピ(千手岩菲)は、中国産の「ガンピ(岩菲)」の花によく似ており、栃木県日光・中禅寺湖の西端にある千手ヶ浜(日光開山の祖である勝道上人が、かつてそこで千手観音を見て建てたといわれる千手観音堂があった場所)で発見されたことが名の由来です。
名の由来の千手ヶ浜のことを調べていると、6月にはクリンソウが咲き誇るスポットのようです。

 

白く小さな花は散策道中では見逃しやすいですが、センジュガンピは草丈が高いため、比較的目立つ花の1つです。夏に上高地など林間でのフラワーハイキングを楽しむ際には、見逃さずじっくりと観察してみてください。

 

センジュガンピ(千手岩菲:Lychnis gracillima)

<春~夏の花の観察ツアー>
まもなく催行!
花咲く秘島・甑島へ 島の山野草をもとめて 4日間
※甑島の絶景と島を彩る山野草の観察を楽しむ旅

 

5月23日出発 まもなく催行!(シャクナゲの花咲く季節)
花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

 

5月1日出発 満席! 5月5日出発 まもなく催行!
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる 5日間
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間
※親海湿原でミツガシワの群生が観察できるかも!

 

4月29日出発 まもなく催行!
花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く
※5月は上高地にニリンソウが、宇津江でクリンソウが咲く季節

 

6月26日出発 まもなく催行!(尾瀬の花の最盛期)
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※高山植物の最盛期を迎える尾瀬で楽しむフラワートレッキング
※尾瀬ヶ原でウラジロヨウラクナガバノモウセンゴケの観察へ!

 

7月10日出発、7月17日出発 間もなく催行!
花咲く北アルプスへ 白馬・乗鞍・上高地を歩く
※2つの高山植物の宝庫と奥上高地の徳沢にも訪れる自然観察の旅

 

※7月18日出発、7月25日出発 間もなく催行!
花の北海道フラワーハイキング
※世界遺産・知床から「神々の遊ぶ庭」大雪山の花園をめぐる

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キバナノヤマオダマキ(黄花の山苧環:Aquilegia buergeriana var. buergeriana f. flavescens)

先日、オオヤマオダマキ(大山苧環)をご紹介しましたが、本日はヤマオダマキの黄花種である「キバナノヤマオダマキ(黄花の山苧環)」をご紹介ます。
6月「花の尾瀬フラワートレッキング」で宿泊した草津温泉のホテル敷地の森、さらに7月「花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く」では駒ケ岳ロープウェイの山麓・しらび平駅周辺や奥上高地自然探勝ハイキング時(明神エリア周辺)に観察することができました。

 

草津で観察したキバナノヤマオダマキ(黄花の山苧環)

 

被子植物 双子葉類
学名:Aquilegia buergeriana var. buergeriana f. flavescens
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae)
属名:オダマキ属(Aquilegia)

 

キバナノヤマオダマキ(黄花の山苧環)は、ヤマオダマキ(Aquilegia buergeriana var. buergeriana)の黄花種です。キバナノヤマオダマキとヤマオダマキは花の色以外、基本的な部分は同じです。

 

草丈は30~60cmで直立し、上部でいくつかに枝分かれし、直径3~4cmの花を下向きに咲かせます。
葉は、根生葉が2回3出複葉(葉柄から三つの小葉を出し、その小葉がさらに3つの小葉に分かれるもの)、小葉は2~4cmの扇形で2~3裂します。

 

花期は6~8月。枝分かれしたそれぞれの茎の先端部に直径3~4cmほどの花を下向きに付けます。
形状は前回ご紹介したオオヤマオダマキ(大山苧環)と同じですが、キバナノヤマオダマキも花弁状の萼片(横に広がる5枚の萼片)、中央部の花弁(長さ1~1.5㎝、花弁も5枚)に分かれ、花弁状の萼片はやや白に近い淡黄色、花弁の方が若干濃い黄色という印象です。

 

先日、ヤマオダマキとオオヤマオダマキの違いをご紹介しましたが、少し追記です。
・オオヤマオダマキ(大山苧環)
→萼と距が赤茶色、花弁は淡黄色、距の先端が下向きのもの
・キバナノオオヤマオダマキ(黄花の大山苧環)

→オオヤマオダマキの黄花種。
 萼、距、花弁ともに淡黄色、萼の先端が下向きのもの

 

・ヤマオダマキ(山苧環)
→萼と距が赤茶色、花弁は淡黄色、距の先端が真っすぐのもの
・キバナノヤマオダマキ(黄花の山苧環

→ヤマオダマキの黄花種
 萼、距、花弁ともに淡黄色、萼の先端が真っすぐのもの

 

写真をご覧いただくと、「距」(花の後ろに突き出した中空の角状のもの、花弁や萼が変化したもの)が真っすぐに伸びているので、「ヤマオダマキの黄色種」であることが判ります。
また、上写真の距のあたりをご覧いただくと、少し赤味の残る部分が確認できます。中にはもう少し濃く残る個体もありますが、ヤマオダマキやオオヤマオダマキの萼片(赤茶色)の色合いに比べると明らかに濃淡の差がありますので、見分けるにあたり、ややこしい点ではありません。

 

苧環という和名は、距が伸びた花の様子が苧(カラムシ)や麻(アサ)などの繊維を巻いた管に似ていることが名の由来です。

 

前回に続き、ヤマオダマキの仲間をご紹介しましたが「ヤマオダマキ(山苧環)」「オオヤマオダマキ(大山苧環)」「キバナノヤマオダマキ(黄花の山苧環)」「キバナノヤマオダマキ(黄花の大山苧環)」など、見分け方は難しくはないので、次回しっかりと観察してみてください。
因みに「ミヤマオダマキ(深山苧環)」は・・・また機会(撮影ができれば)があればご紹介します。

 

上高地で観察したキバナノヤマオダマキ(黄花の山苧環)
オオヤマオダマキ(山苧環:Aquilegia buergeriana var. oxysepala)

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
8月23日出発が催行決定!まだ間に合います!!
屋久島・照葉樹林の森と花の黒味岳フラワートレッキング
亜熱帯植物や照葉樹林の植生観察と1泊2日プラン「黒味岳フラワートレッキング」へご案内。屋久島の垂直分布を深く知ることのできる季節限定企画。

 

<おすすめ!! 紅葉シーズンに自然探勝を楽しむツアー>
※紅葉のシーズンの10月18日出発がまもなく催行!
「清流の国」岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング
小坂の滝、天生県立自然公園、五色ヶ原の森と名勝・上高地を専門ガイドと歩く5日間。
※近日中にツアーレポート「日本の名勝・上高地」を公開予定

 

※紅葉のシーズンの10月18日出発がまもなく催行!
北信濃の小菅神社・戸隠神社五社参拝と鬼無里フットパスを巡る
専門ガイドと共に寺社仏閣を巡り、由緒を知り、御朱印をいただく旅。自然美溢れる鬼無里でもガイドウォークを楽しむ5日間。

 

※9月18日出発、19日出発とも間もなく催行!
日本で最も早い紅葉を観る!大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草
黒岳、旭岳、十勝岳、三国峠など大雪山山系の原生林と紅葉の名所を巡る5日間。

 

※10月5日出発、10月10日出発ともまもなく催行!
秋の千畳敷カール・乗鞍・上高地を撮る
傑出した山岳景観を誇る中央アルプスから中部山岳国立公園を巡る4日間。撮影目的でなくても、自然、風景を満喫できます。

 

※9月29日出発、10月9日出発とも、まもなく催行!
秋色に染まる尾瀬・奥日光・谷川連峰を撮る
美しい紅葉や山岳風景の撮影をご堪能いただく日程。尾瀬は2泊3日でゆっくりと巡り、秋色に染まる尾瀬を堪能いただけます。

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マイヅルソウ(舞鶴草:Maianthemum dilatatum)

ここ最近、花の観察ツアーへのお問い合わせが増えており、対応させていただく度に「私もこの花を観察したいです」と答えてしまうことが多くなりました。一日でも早く、日本各地で安心して旅ができ、花の観察を楽しめる日が訪れることを願うばかりです。

 

本日は「マイヅルソウ(舞鶴草:Maianthemum dilatatum)」をご紹介します。

 

雨上がりのマイヅルソウ(舞鶴草)

 

被子植物 単子葉類
学名:Maianthemum dilatatum
科名:キジカクシ科(Asparagaceae)
属名:マイヅルソウ属(Maianthemum)

 

マイヅルソウ(舞鶴草:Maianthemum dilatatum)は、キジカクシ科マイヅルソウ属に属する多年草です。キジカクシ科は旧分類ではユリ科に分類されていましたが、現在はキジカクシ科として分割されています。

 

日本では北海道から九州と広く分布し、海外でもユーラシア北東部(ロシア東部、朝鮮半島)とアメリカ北西部(アメリカ合衆国カリフォルニア州北部、オレゴン州、アラスカ州、アリューシャン列島など)など幅広く分布します。山地帯上部から亜高山帯の針葉樹林に多く群生しますが、北海道・札幌近郊では住宅街周辺の防風林内にも大きな群落地があるという資料もありました。

 

草丈は10~25cmほどで直立し、茎の途中で長さ2~4㎝ほどの柄が伸び、2枚の葉を付けます。葉の長さは5㎝前後、形状は卵心型で先が尖り基部が深く窪んでいるので、「ハート型」と言った方がイメージしやすいかもしれません。
全体的に湾曲しており、葉脈が非常に目立ちます。この2枚の葉が広がった様子が「鶴が羽を広げたような姿」に見えることが、和名の舞鶴草の名の由来です。資料によっては「葉の模様が家紋の舞鶴紋に似る」という点が和名の由来というものもあります。

 

花期は5~7月。茎頂に真っ白な小さな花を多数総状に付けます。1つ1つの花は直径5㎜ほどと非常に小さいですが、よく観察してみると2mm程度の長さの花被片が4枚、それぞれ反り返っていることが確認できます。また、花の中央から4本の雄しべが目一杯伸びており、中央には雌しべの柱頭、クリーム色の子房も確認できます。じっくり観察するにはルーペが必要かもしれません。

 

鮮やかな緑色の2枚の葉と小さな可愛い花が印象的なマイヅルソウですが、果実(液果)は直径5㎜ほどの球形で真っ赤な実を付け、1つの実に種子が1~2個あるそうです。

 

1つ1つの花をじっくり観察するのも良いですが、林床などに群生するマイヅルソウも心和む風景です。
鮮やかな緑色のハート形の葉が密集する群生地に、遠慮がちに伸びる多数総状のマイヅルソウを観察すると思わず足を停めて観察したくなる風景です。
私が初めてマイヅルソウの群生地を観察したのが、梅雨時期の6月の上高地でした。もう十数年前の話です。
せっかくのガイドウォークだったのですが、カッパを着ながら下を向いて歩いてばかりでしたが、ガイドさんがふと足を止めた場所でマイヅルソウが群生しており、雨のおかげでハート形の葉がキラキラと光り、中央から伸びる多数総状の花も満開でした。今でも雨の上高地で観察したマイヅルソウの風景は忘れることができません。

 

マイヅルソウ(舞鶴草)の群生

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

春をつげる雪割草を求めて 早春の佐渡島
※南北に大佐渡、小佐渡の山地が連なり、中央には国中平野が広がる佐渡島。大佐渡山麓と世阿弥の道にてゆっくりとフラワーハイキングをお楽しみいただきます。

 

佐渡島・花咲く金北山縦走トレッキングと佐渡周遊の旅
※春の花咲くシーズンの佐渡の山旅。絶景ロッジ・ドンデン山荘に宿泊し、佐渡の最高峰金北山を目指し、花咲く楽園・アオネバ渓谷のハイキングも楽しみます。

 

花の利尻・礼文島とサロベツ原生花園
※6月から7月にかけて高山植物の開花の季節となる利尻・礼文島。専門ガイドの案内で、フラワーウォッチングや様々な植物の観察を満喫する5日間。

 

花の利尻・礼文島から世界遺産・知床半島へ
※5月下旬から高山植物の季節が始まる利尻・礼文島から、オホーツク海沿岸を走り世界遺産・知床へ。利尻島・礼文島、知床半島を一度に楽しむ旅。

 

花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※専門ガイドとのんびりと花の観察を楽しみながら、尾瀬ヶ原から尾瀬沼へのフラワートレッキング。花咲く尾瀬を訪れる季節、8名様限定のツアーです。

 

花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く
※高山植物の宝庫として知られる千畳敷カールや乗鞍・畳平でフラワーハイキング。旅の後半は、専門ガイドと共に静寂に包まれた奥上高地の徳沢を目指す。高山植物の観察と合わせて絶景も楽しむ5日間。

 

日本各地で高山植物などの花々を楽しむツアーも続々と発表しております。ご興味のあるコースがありましたら、是非お問い合わせください。
「花の季節」に訪れるツアー 一覧へ

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ヤチトリカブト(谷地鳥兜:Aconitum senanense ssp. paludicola)

2020年最後の投稿となります。
今年はコロナウイルスの影響に伴い、とんでもない一年になってしまいました。
4月に緊急事態宣言が出され、弊社でもテレワークの日々が続いたこともありました。その頃から日本国内の花の紹介を続けてきましたが、2020年最後は「ヤチトリカブト(谷地鳥兜:Aconitum senanense ssp. paludicola)」をご紹介します。

 

ヤチトリカブト(谷地鳥兜:Aconitum senanense ssp. paludicola)

 

被子植物 双子葉類
学名:Aconitum senanense ssp. paludicola
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae)
属名:トリカブト属(Aconitum)

 

トリカブト属は、ドクウツギやドクゼリと並んで日本三大有毒植物の一つとされており、日本国内には約20種が自生しています。
本州の北アルプスに分布し、亜高山帯~高山帯の湿った草地などに自生する日本固有の花です。
「ヤチ」とは湿地を意味することから、和名に用いられています。
私も上高地で観察したことがありますが、その際に「上高地で最初に発見された種類」とガイドさんより伺ったことを覚えています。
※今回掲載の写真は、弊社大阪支社・楠と東京本社・島田が「北アルプス 槍ヶ岳銀座ルート登山」のツアーに同行させていただいた際、上高地をスタートした直後に観察・撮影した写真です。

 

草丈は70~150㎝で直立し、葉は3~5裂、中裂~深裂しています。
花期は8~9月。茎頂は分枝し、葉の付け根部分から花柄を伸ばし、先端に5~10個の青紫の色鮮やかな花を咲かせます。
花の付き方も、標高の高低によって異なり、高山帯では散房花序(さんぼうかじょ:主軸が短く、長い柄をもった花が間を詰めて花がつく)、標高が比較的低い場所では円錐状花序(複総状花序とも言い、主軸が長く伸び、柄のついた間隔を開けて伸び、その先端にさらに同様に総状花序がつくもの)となります。
雄しべは無毛で、萼と花柄には開出した単純毛と腺毛が多く確認できます。

 

ある資料にトリカブトの見分け方が紹介されており、トリカブトで見られる花柄の毛は3種類あるそうです。
ヤチトリカブトは花柄の毛が開出毛(茎に対して直角に生える毛)であるのが特徴と記されていました。
その他、ガッサントリカブトやミヤマトリカブト、キタダケトリカブトなどは花柄全体が屈毛(先が曲がった毛)、タカネトリカブトは無毛とのことでした。
この点を観察の際に見分けるには虫メガネがルーペが必要かもしれませんが、非常に興味深い見分け方の紹介でした。来夏、上高地へ自然観察を楽しむツアーの造成を予定しておりますが、その際にはトリカブトの観察のため、ルーペを持って出掛けたいと思います。

 

トリカブトの名前の由来は、古来の衣装である鳥兜・烏帽子に似ているからとも、鶏の鶏冠(とさか)に似ているからとも言われ、海外では「僧侶のフード(monkshood)」と呼ばれています。
以前、ピレネー山脈で観察した「060.リコクトヌム・トリカブト(Aconitum lycoctonum)」も是非ご覧ください。

 

2021年もしばらくの間は感染症対策に気を付けながらの生活が続くと思います。
この「世界の花だより」のブログが少しでも皆様の気晴らしページとなるよう、2021年も頑張って更新していきたいと思います。
また、2021年07月に乗鞍や上高地でフラワーハイキングを、さらには尾瀬でのフラワートレッキングのツアー造成を進める予定です。
興味がある方は、是非大阪支社へご連絡ください。

 

<おすすめ!! 春の花の観察ツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

春をつげる雪割草を求めて 早春の佐渡島
※南北に大佐渡、小佐渡の山地が連なり、中央には国中平野が広がる佐渡島。大佐渡山麓と世阿弥の道にてゆっくりとフラワーハイキングをお楽しみいただきます。

 

ヤチトリカブト

 

 

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サラシナショウマ(晒菜升麻、更科升麻:Cimicifuga simplex)

2020年も早いもので残すところあと一週間です。
例年だと、ウユニ塩湖やパタゴニア方面の年末ならびに年明けツアーの最終確認などで忙しくしていた時期ですが、今年は2020年1月に現地で購入したパタゴニアのカレンダーを寂しく眺めているだけとなってしまいました。
早く、パタゴニアへ再訪したいものです。

 

前回に引き続き、弊社大阪支社・楠と東京本社・島田が「北アルプス 槍ヶ岳銀座ルート登山」のツアーに同行させていただいた際に観察・撮影した「サラシナショウマ(晒菜升麻、更科升麻:Cimicifuga simplex)」をご紹介します。

 

サラシナショウマの花

 

被子植物 双子葉類
学名:Cimicifuga simplex
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae)
属名:サラシナショウマ属(Cimicifuga)

 

サラシナショウマ(晒菜升麻、更科升麻)は、キンポウゲ科サラシナショウマ属の多年草。日本では、北海道から九州、低山帯~亜高山帯と広い範囲で分布し、落葉樹林の林や草地に自生します。排水の良い肥沃な土地を好むという資料もあります。

 

草丈は50~120㎝で直立し、葉は左右に小葉がいくつか並ぶ「羽状複葉(うじょうふくよう)」で、小葉は長さ3~8㎝の卵型や楕円形で2~3裂し、先端が尖っており、葉の縁には不揃いの鋸歯が確認できます。また、両面にほんの少し短毛が確認できます。

 

花期は8~10月、夏から秋にかけて花を咲かせます。
茎頂に長さ5~10㎝ほどの花柄を出し、穂状に真っ白な花を多数つけます。花穂(かすい:穂のような形で咲く花)の長さは30㎝近くあり、一つ一つの花は非常に密集して花を付けるため、遠目からはブラシの花や、キツネの尻尾かと思ってしまう形状です。
上写真は、真っ白で小さな花が満開の状態ですが、色合いが非常に印象的で思わず目を奪われてしまう姿をしています。
下写真は、蕾が開き始めた状態のものですが、1つ1つの蕾がまるでツガザクラやスズランを思わせる花の形状の様に見え、この状態でも印象的な姿をしています。
蕾が開く前と、花が満開となった時、これほどまでに姿に変化が出るものかと、2枚の写真を比べていただくと、その驚きが判っていただけるかと思います。

 

サラシナショウマの蕾が開き始めた状態

 

花は独特の香りがあり、雄花と両性花があります。
花弁が3枚で、長さ7mmほどの雄しべを多数つけます。長さ5㎜ほどの花柄には細毛が確認できるそうです。
サラシナショウマのことを調べていると、「花弁と萼片は早く落ちてしまい、長い雄しべだけが残って目立つ花」とありましたが、確かにその通りの印象です。短い花柄の細毛と合わせ、3枚の花弁や萼片、花柄の細毛など、1つ1つの花にも注目して観察したいと思います。

 

和名のサラシナショウマは、若芽を茹で、水にさらして山菜として食べていたことに由来し、別名でヤマショウマ、ヤサイショウマとも呼ばれているそうです。
また、サラシナショウマ属の根茎は「ショウマ(升麻)」という生薬で、発汗や解熱、解毒、消化不良などに効果があるそうです。
ある資料には、2gほどの升麻を煎じたものをうがい薬として用いるというものもありました。

 

個人的には、上高地が日本の名勝の中でも大好きな場所の1つです。
国内添乗員の頃には「目を閉じたまま、歩いても河童橋まで歩ける」というくらい訪れ、個人的にも若かれし頃に北アルプスの縦走登山の際に何度も訪れ、嫁さんとの旅行でも訪れました。
実は、2021年07月に上高地で自然観察をするツアーの造成を検討しているところです。是非、上高地での植生にご興味がある方は、大阪支社へご連絡ください。

 

<おすすめ!! 春の花の観察ツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

春をつげる雪割草を求めて 早春の佐渡島
※南北に大佐渡、小佐渡の山地が連なり、中央には国中平野が広がる佐渡島。大佐渡山麓と世阿弥の道にてゆっくりとフラワーハイキングをお楽しみいただきます