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ウラジロヨウラク(裏白瓔珞:Menziesia multiflora)

本日は「ウラジロヨウラク(裏白瓔珞:Menziesia multiflora)」をご紹介します。

 

ウラジロヨウラク(裏白瓔珞:Menziesia multiflora)

 

被子植物 双子葉類
学名:Menziesia multiflora
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:ヨウラクツツジ属(Menziesia)

 

ウラジロヨウラク(裏白瓔珞)は、北海道、本州の東北、中部地方、関東地方に分布し、資料によっては日本海側に多く分布するというものもあります。山地や亜高山帯、草地、岩場、林縁、高層湿原などに自生する落葉低木の一種です。
私も昨年6月末に尾瀬ヶ原で鈴なりに咲くウラジロヨウラクをたくさん観察することができました。

 

草丈は30cm前後から高いもので2mもの高さになるものもあります。尾瀬で観察した際は、高さは1mにも満たないものが大半だったので、2mもの高さになるものもあるという資料には驚きました。
葉は倒卵形~楕円形で2~5cmほどの小さな葉を枝先に集め、互生します(輪生状に互生するという資料も)。
葉の縁にはほんの少し粗めの毛が確認でき、裏面は少し白みを帯びています。花名にある「ウラジロ(裏白)」はその点が由来となっています。ウラジロを名の付く花は多いですが、その名の付く花を目にした際は葉の裏面に注目してみてください。

 

花期は5~7月。淡紫色~ピンク色、若干白みを帯びている印象で、壺型(釣鐘型)の花を枝先に5~10個ほど咲かせます。
花冠は1~1.5cmほどと小さく、壺型の花冠の先端は少しキュッとしぼんでいる印象です。よく観察すると先端が浅く5裂し、その先端が少し反り返っているのが判ります。
花柄が花冠の長さ以上に長く、あまり目立たない萼片と共に繊毛が確認できます。よく観察しないと確認できないほどです。

 

花冠は下向きに咲くので少々確認しづらいこともありですが、私自身もしっかり確認したことはありませんが、雄しべが10本ほど付けるそうです。
雄しべのことを調べていると、ある資料に花後の果実は蒴果(さくか:乾いた果実(乾果)の一種で、一つの果実が複数の癒着した袋状果皮から成るもの)で、花と違って上向きに付け、雌しべの花柱が長く残り、独特の形状になるとありました。写真を見ましたが、銀杏の実に爪楊枝を1本差したような形状でした(酒飲みの表現です)。

 

花名の由来は葉の裏側が白く、花の形がヨウラク(瓔珞:仏像の首や胸にかける珠玉の飾り)に似ているが由来です。今度お寺で菩薩像や仏像を拝観させていただいた際、注目してみたいと思います。

 

尾瀬の木道を歩いていると、淡紫色や白みを帯びたピンク色の花が鈴なりに咲いていると、自然と足を止め、可愛らしい花冠に見惚れてしまい、気付いたら夢中になって観察してしまいます。是非、尾瀬に訪れ、ウラジロヨウラクの観察を楽しんでみてください。

 

尾瀬ヶ原で観察したウラジロヨウラク(裏白瓔珞:Menziesia multiflora)

 

<春~夏の花の観察ツアー>
まもなく催行!
花咲く秘島・甑島へ 島の山野草をもとめて 4日間
※甑島の絶景と島を彩る山野草の観察を楽しむ旅

 

5月23日出発 まもなく催行!(シャクナゲの花咲く季節)
花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

 

5月1日出発 満席! 5月5日出発 まもなく催行!
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる 5日間
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間
※親海湿原でミツガシワの群生が観察できるかも!

 

4月29日出発 まもなく催行!
花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く

 

6月26日出発 まもなく催行!(尾瀬の花の最盛期)
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※高山植物の最盛期を迎える尾瀬で楽しむフラワートレッキング
※尾瀬ヶ原でウラジロヨウラクを観察へ行きましょう!

 

先日、ツアーを発表!
花咲く北アルプスへ 白馬・乗鞍・上高地を歩く
https://www.saiyu.co.jp/itinerary/new/GJNA31/
※2つの高山植物の宝庫と奥上高地の徳沢にも訪れる自然観察の旅

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ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅:Tripetaleia paniculata f. paniculata)

先日、春の花の観察ツアーを3つの発表させていただき、さらに1つ追加で発表させていただきました。おかげさまでそれぞれのツアーをご検討いただけている方から問合せ、さらにはお申し込みもいただき、嬉しい限りです。
まだご覧いただいていない方は、このブログの最後に掲載しておりますので、是非ご覧ください。

 

本日は「ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅:Tripetaleia paniculata f. paniculata)」をご紹介します。

 

ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅:Tripetaleia paniculata f. paniculata)

 

被子植物 双子葉類
学名:Tripetaleia paniculata f. paniculata
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:ホツツジ属(Elliottia)

 

ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅)は屋久島と名の付く花ですが、屋久島の固有種ではなく、四国、九州にも分布し、屋久島が南限となります。様々な資料を確認しましたが、ヤクシマと名の付く由来などを記載する資料はありませんでした。
比較的標高が高く、日当たりの良い岩場などに自生し、屋久島では標高1,500mを越えるエリアに自生します。私も黒味岳山頂の岩場でのんびりと景観を楽しんでいた際、足を踏み出すには躊躇するような場所に咲いているのを観察することができました。

 

ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅)は、高さ1~2mになるツツジ科の落葉低木。根元に近い下部から分枝し、上部で生い茂ります。
葉は赤褐色の枝先に輪生状(互生と記載する資料もあり)に4~5枚に付け、4~5cmほどの大きさの葉には光沢は確認できません。

 

花期は7~8月。花は葉の付いた枝先から赤褐色の枝が伸び、総状花序で5~10個の花を付けます。
3枚の花弁に見える花冠は深く3裂し、1cmほどの裂片が外に向けて反り返っている(丸まっている)のが印象的です。写真では少し判りづらいですが、裂片の先端が淡いピンク色であるのが、より花を可憐に見せる印象です。

 

さらに特徴的なのが中央から突き出す雌しべの花柱です。長さは反り返った裂片と同じく1cmほど、写真では全体が白色の花柱ですが、個体によっては根元の部分が淡いピンク色のものもありました。花柱の根元にはクリーム色の子房も確認できます。雄しべは子房の脇から花糸から数本伸びているのが確認できます。

 

ヤクシマの名を付けないホツツジ(穂躑躅)がありますが裂片の先端は尖っておらず、裂片の先端が若干尖っている印象のヤクシマホツツジと区別する資料も多いですが、2つを区別しない見解、図鑑などもあるようです。

 

今回は屋久島の黒味岳の山頂から一歩踏み出すには恐怖を感じる場所に咲いていたので、細かな部分を観察できませんでしたが、次に観察する機会があれば、反り返った裂片の先端部も確認してみたいと思います。

 

<冬から春 オススメのツアー>
12月コースは催行間近!
桜島の溶岩ウォークと鹿児島の2つの半島を巡る旅
※薩摩半島の指宿では、12月~1月は名の花の咲くシーズン

 

2月21日出発は満席! 2月14日出発は催行間近!
冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界
※流氷の上を歩く流氷ウォーク®と美瑛の丘で絶景スノーシュー体験

 

※間もなく催行!!
冬の八甲田山の樹氷・奥入瀬渓流の氷瀑・男鹿の夕景を撮る
※東北の冬景色の撮影と秘湯の湯を楽しむ旅
※撮影をされない方も、東北の冬風景と名湯を楽しめます

 

静岡の美景めぐり 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ
※伊豆半島ジオパークから奥大井の秘境「寸又峡」を巡る
※干潮時には象島まで砂州が出現する「堂ヶ島トンボロ現象」

 

<春の花の観察ツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間

 

花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く

 

花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

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シラタマノキ(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

先日、「屋久島・照葉樹林の森と花の黒味岳フラワートレッキング」に同行させていただき、屋久島の亜熱帯植物や照葉樹林の植生を楽しみ、黒味岳の1泊2日の登山では屋久島固有の矮小化した高山植物や様々な苔類の観察を楽しむことができました。

 

以前、シラタマノキの実をご紹介しましたが、本日は「シラタマノキの花(白玉の木:Gaultheria pyroloides)」をご紹介します。

 

シラタマノキの花(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gaultheria pyroloides
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:シラタマノキ属(Gaultheria)

 

ツツジ科の常緑小低木であるシラタマノキ(白玉の木)は、本州・中部地方の以北から北海道にかけて分布し、海外でも東北アジアからアラスカにかけて広く分布します。亜高山帯~高山帯にかけて、比較的乾燥した岩石地、林縁 草地などに自生します。

 

茎は地を匍い、草丈が10~20cmほどになります。葉は1.5~2.5cmの楕円形で少し厚みもあり、少し光沢も確認できます。葉の縁の鋸歯、葉の表裏にくっきりとした葉脈があるのが特徴です。

 

花は枝分かれした茎の上部に花柄を伸ばし、2~5個ほどの花が垂れ下がるように付いています。大きさは0.5cmほどと小さく、丸みのある壺型で花の先端がキュっとしぼんだ形状が何とも言えない愛らしさを感じます。よく観察すると、キュッとしぼんだ先端部分が浅く5裂していることも判ります。

 

シラタマノキは、9月を過ぎると1cm弱の小さく、白い球状の実を付けます。この事が和名「シラタマノキ」の名の由来であり、別名を「シロモノ」とも言います。
因みに、同じツツジ科でアカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)という花もあり、白い花を咲かせますが、赤い実を付けることから「アカモノ」と呼ばれます。
上の写真は、6月に群馬県中之条町のチャツボミゴケ公園を散策している際に観察したものですが、遊歩道を挟んで向かい側にアカモノの花も咲いており、振り返りながら2つの花を見比べることができました。

 

アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)

 

シラタマノキの実は、筋肉疲労などの塗り薬でも使われる「サロメチール(サリチル酸)」の匂いがすることで有名ですが、一粒摘み採り口に入れると、わずかな甘味と清涼感が口に広がるそうですが、生食より果実酒に利用されるそうです。ある資料に焼酎に漬け込み、3ヶ月後に実を出して熟成させるとあり、花以上に興味のある情報でした。

 

シラタマノキの実(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

 

<おすすめ!! 紅葉シーズンに自然を楽しむツアー>
※10月18日出発:まもなく催行!
「清流の国」岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング
“岐阜の宝もの”小坂の滝、天生県立自然公園、五色ヶ原の森と名勝・上高地を専門ガイドと歩く5日間。

 

※10月18日出発:まもなく催行!
北信濃の小菅神社・戸隠神社五社参拝と鬼無里フットパスを巡る
専門ガイドと共に寺社仏閣を巡り、由緒を知り、御朱印をいただく旅。また、自然美溢れる鬼無里でもガイドウォークを楽しむ5日間。

 

※9月19日出発:催行決定!
日本で最も早い紅葉を観る!大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草
黒岳、旭岳、十勝岳、三国峠など大雪山山系の原生林と紅葉の名所を巡る5日間。
※エゾオヤマリンドウに出会えるかもしれません。

 

※10月5日出発:催行決定!/10月10日出発:まもなく催行!
秋の千畳敷カール・乗鞍・上高地を撮る
傑出した山岳景観を誇る中央アルプスから中部山岳国立公園を巡る4日間。撮影目的でなくても、自然、風景を満喫できます。

 

※10月9日出発:まもなく催行!
秋色に染まる尾瀬・奥日光・谷川連峰を撮る
美しい紅葉や山岳風景の撮影をご堪能いただく日程。尾瀬は2泊3日でゆっくりと巡り、秋色に染まる尾瀬を堪能いただけます。

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ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)

本日も尾瀬で観察した「ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)」をご紹介します。
ツルコケモモ(蔓苔桃)も、前回ご紹介したヒメシャクナゲ(姫石楠花)と同様に「花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く」を造成する際、尾瀬を訪れて観察したいと強く思った花の1つです。

 

ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)

 

被子植物 双子葉類
学名:Vaccinium oxycoccos
英名:Common Cranberry、Northern Cranberry(クランベリー)
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:スノキ属(Vaccinium)

 

ツルコケモモ(蔓苔桃)は、本州の中部地方以北から北海道にかけて、海外では北欧、北アジア、北米など、北半球の寒い地域に広く分布し、亜高山帯~高山帯の高層湿原でミズゴケ類の中に自生する常緑低木です。

 

草丈は10cmほどで細い濃赤紫色の茎を伸ばしますが、茎は所々で根を出し、ミズゴケの上を這うように広がり、先端部が立ち上がる形状です。葉は互生し、1cm前後で狭披針形~楕円形、葉の先端はそれほど鋭さは感じない程度に尖っているという印象です。葉の縁はほんの少し裏側の方へ反り返っており、葉裏は白みを帯びています。葉は秋には赤褐色に紅葉します。

 

花期は6~7月。細く伸びた濃赤紫色の茎から同色で短毛が確認できる花柄を1~4本伸ばし、その先端に直径1~2cmほどの淡いピンク色の小さな花を1つずつ咲かせます。
花冠は基部から4裂し、長さ7~9mmほどの裂片はカタクリの花のように外側に反り返るのが最大の特徴です、
特徴的な反り返った花弁も面白い形状ですが、その中央から突き出た部分にも注目です。
根元の濃赤紫色(花柄より少し濃い印象)の部分が子房で白い(花弁の淡いピンクに近い色)筋が入っているのが確認できます。また、子房の先端にオレンジ色の部分が束になった雄しべ、さらにその先端から雌しべが1本伸びており、まるで「芯が飛び出したシャーペン」のような形状が非常にユニークです。ただ、ツルコケモモは想像より小さな花のため、細かな形状を確認するには腹這いになって観察するか、ルーペが必要かもしれません。

 

ツルコケモモは9~10月に花の大きさでは想像できない直径1cmほどの赤く球体の実を付けます。ツルコケモモの実はその近縁種と共に「クランベリー」としておなじみで、花の大きさでは想像できない直径1cmほどの赤く球体の実を付けます。ジャムやジュースなどとして利用されます。
ある資料には、湿原は栄養分が少ないこともあり「全ての個体で花や果実を付けるわけではない」とありました。

 

ミズコケの生える湿原に咲く淡いピンク色、さらに想像より小さな花であるため、尾瀬フラワートレッキングの際にも危うく見逃してしまいそうな場面もありましたが、ツルコケモモの花を見つけるとその形状や花の美しさに魅了され、思わず撮影に夢中になってしまう花でした。

 

ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)②

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
8月23日出発が催行決定!まだ間に合います!!
屋久島・照葉樹林の森と花の黒味岳フラワートレッキング
亜熱帯植物や照葉樹林の植生観察と1泊2日プラン「黒味岳フラワートレッキング」へご案内。屋久島の垂直分布を深く知ることのできる季節限定企画。
※私(大阪支社 高橋)が同行させていただきます。

 

<おすすめ!! 自然探勝を楽しむツアー>
8月11日出発が催行決定!残席わずかです!!
支笏湖カヌーとネイチャーウォーク 北海道自然満喫の旅

支笏湖カヌー体験、美瑛の丘やニセコ山麓で専門ガイドと共にネイチャーウォークを楽しむ5日間。

 

「清流の国」岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング
“岐阜の宝もの”小坂の滝、天生県立自然公園、五色ヶ原の森と名勝・上高地を専門ガイドと歩く5日間。

 

北信濃の小菅神社・戸隠神社五社参拝と鬼無里フットパスを巡る
専門ガイドと共に寺社仏閣を巡り、由緒を知り、御朱印をいただく旅。また、自然美溢れる鬼無里でもガイドウォークを楽しむ5日間。

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ヒメシャクナゲ(姫石楠花:Andromeda polifolia)

先日「花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く」へ同行させていただきました。
中央アルプス・宝剣岳の直下に広がる千畳敷カール、長野県と岐阜県の県境に位置する北アルプス・乗鞍岳の登山口でもある乗鞍・畳平では高山植物の花々を楽しみ、北アルプス・穂高連峰の麓に広がる上高地では3日間滞在し、上高地の植生や自然風景を堪能することができました。

 

本日も尾瀬で観察した「ヒメシャクナゲ(姫石楠花:Andromeda polifolia)」をご紹介します。

 

ヒメシャクナゲ(姫石楠花:Andromeda polifolia)

 

被子植物 双子葉類
学名:Andromeda polifolia
別名:ニッコウシャクナゲ(日光石楠花)
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:ヒメシャクナゲ属(Andromeda)

 

ヒメシャクナゲ(姫石楠花)は、北海道、長野県以北に分布、海外では北半球の寒冷地に分布し、亜高山帯~高山帯のミズゴケの生える湿原などに自生するツツジ科の常緑(落葉)小低木です。

 

草丈は5~25cmと低いですが、根元では茎が地上を這うように伸び、上部が斜上しています。
葉は互生し、長さ1.5~3cmほどの細長い葉(広線形~狭長楕円形)をつけ、葉の縁が全体的に裏面の方に向けて反り返り、葉裏は白っぽいのが特徴です。

 

花期は6~7月。花は散形花序で茎頂に2~6個ほど小さなピンク色の花を付け、直径が5㎜ほどで、(私はギャンブルは一切しませんが)パチンコ玉より一回り小さいイメージです。
壺型の花の先端はおちょぼ口のようになり、先端が5裂し、ほんの少しですが先端が外向きに反り返っています。全体的に下向きに花を咲かせますが、ある資料に「花粉をアリやハエに盗まれないようにするための工夫」とありました。また、同じ資料に「恥ずかしがり屋は下向きに花を咲かせる」とあり、こちらの方がイメージにピッタリかもしれません。

 

萼と花柄も花と同色という資料が多い中、確かに同色と感じる個体もありましたが、個人的には萼、花柄の方が花本体に比べると若干濃いピンク色だった印象です。
雄しべは10本、雌しべは1本付け、上写真では雌しべの部分のみが残っている花も確認できます。また、果実は直径3~4mmの蒴果となるそうです。

 

6&7月ツアーとして設定した「花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く」を造成する際、尾瀬を訪れて観察したいと強く思った花の1つが「ヒメシャクナゲ(姫石楠花)」でした。湿原に咲く小さなヒメシャクナゲの花を見つけた時の喜びは今でもハッキリと覚えています(と言っても、まだ一ヶ月しかたっていませんが)。

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
8月23日出発が催行決定!まだ間に合います!!
屋久島・照葉樹林の森と花の黒味岳フラワートレッキング
亜熱帯植物や照葉樹林の植生観察と1泊2日プラン「黒味岳フラワートレッキング」へご案内。屋久島の垂直分布を深く知ることのできる季節限定企画。
※私(大阪支社 高橋)が同行させていただきます。

 

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支笏湖カヌー体験、美瑛の丘やニセコ山麓で専門ガイドと共にネイチャーウォークを楽しむ5日間。

 

「清流の国」岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング
“岐阜の宝もの”小坂の滝、天生県立自然公園、五色ヶ原の森と名勝・上高地を専門ガイドと歩く5日間。

 

北信濃の小菅神社・戸隠神社五社参拝と鬼無里フットパスを巡る
専門ガイドと共に寺社仏閣を巡り、由緒を知り、御朱印をいただく旅。また、自然美溢れる鬼無里でもガイドウォークを楽しむ5日間。

 

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ギンリョウソウ(銀竜草:Monotropastrum humile)

先日、中日新聞のサイトにて「金沢市内各地でヒメリュウキンカ駆除の動き」というニュースを見ました。ヒメリュウキンカは欧州原産で観賞用として日本に持ち込まれ、野生化し、日本各地に分布した花ですが、非常に繁殖力が強いため、金沢城公園の二の丸広場 などで金沢城・兼六園管理事務所の職員数名が駆除作業を行っているそうです。昨年から鈴木大拙館(同市本多町)横の散策路では駆除作業を始めていたそうですが、駆除後には在来種のショウジョウバカマ、カタクリなどが再び姿を見せたそうです。
花そのものはキレイなヒメリュウキンカですが、在来種の保護のためには仕方がない措置なのかもしれません。

 

本日は「ギンリョウソウ(銀竜草:Monotropastrum humile)」をご紹介します。以前より、この「世界の花だより」で紹介したいと思っていたのですが、なかなか観察する機会に恵まれずにいましたが、数年前に嫁さんと訪れた屋久島旅行の際の写真を整理していたら、今回掲載する写真が出てきたので、紹介することができました。

 

ギンリョウソウ(銀竜草、学名:Monotropastrum humile)

 

被子植物 双子葉類
学名:Monotropastrum humile
別名:ユウレイダケ
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:ギンリョウソウ属(Monotropastrum)

 

ギンリョウソウ(銀竜草)は、日本全土に分布し、海外では千島列島、樺太、中国、ヒマラヤなどに分布し、薄暗い湿り気のある林床に自生します。今回掲載した写真は、屋久島の苔むす森でおなじみの「白谷雲水峡」にて観察したものです。

 

ギンリョウソウはツツジ科ギンリョウソウ属の多年草で、腐生植物として知られています。
菌類に依存して栄養を得ている植物を腐生植物といい、キノコ類の菌が本種の根に侵入しつつ腐敗物を分解し、それを本種が栄養にしています。直接的には菌類に寄生し、間接的には菌類と共生する樹木が光合成により作り出している有機物を菌経由で得て自生している植物です。
※古い資料などでは「腐葉土から栄養を得る」と記載がされていますが、腐葉土から栄養を得る能力は持っていないようです。確かに過去「腐葉土で生育する」と解説を聞いたことがあるような気がします。

 

草丈は10~20㎝で直立していますが、花が咲く時期以外は地上では姿は見られず、4~8月頃に地下から花茎を伸ばします。葉は、茎に葉が退化したものとされる長楕円形の鱗片葉が多数互生してつけます。

 

枝分かれせず直立した茎頂に若干下向きに花を1つ咲かせます。
形状は円筒状で先端がやや広がっており、花弁も萼片も3~5枚、花弁の方が少しだけ長く先端が少し広がり、ほんの少しだけ毛も確認ができるのが特徴です。
雄しべは10本前後あり、上写真をご覧いただくと花の内部にオレンジ色の部分が確認できますが、これが雄しべの葯(花粉を入れる部分)となります。写真では判りづらいですが、雄しべの花糸部分にも若干の毛が確認できます。
雌しべの柱頭は先端が円盤の様に広がっており、濃紫色(黒色に見えることも)。下向きに咲く花を覗き込むと、目玉が花の外を覗いているように見える(目が合ったような錯覚も)部分です。

 

ギンリョウソウ(銀竜草)は、全体が白色で葉緑体を持たない植物です。
「銀竜草」という漢字名は、下向きに咲く花と鱗片に包まれた姿を竜に見立てたことが由来とされ、また別名の「ユウレイダケ」は、林床の薄暗い場所に真っ白な姿で自生する姿から幽霊に見立てたと言われています。
花の姿と合わせて、内部を覗き込んだ際、円盤状の雌しべの柱頭が「目玉」に見え、恐怖におののくから「幽霊」という名が付いたという話も聞いたことがあります。

 

形状なども非常に似ている「ギンリョウソウモドキ(Monotropa uniflora:ツツジ科)」という花もありますが、花の咲く時期がことなり、ギンリョウソウモドキは夏の終わりから秋にかけて花を咲かせます。

 

ギンリョウソウを実際に観察すると、本当に驚きの一言です。
葉緑体を持たず、真っ白で光沢こそありませんが、その姿は非常に魅力ある姿をしており、覗き込んだときの「目玉」など、非常に興味を引く花であります。
次回は是非、柱頭の目玉の部分以外にも花弁や萼片、鱗片葉、オレンジ色の雌しべなどにも注目して観察してみてください。

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
一番のオススメ!

屋久島の植生観察、高山植物の観察に重点をおいた季節限定企画!!
屋久島・照葉樹林の森と花の黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物や照葉樹林の植生観察と1泊2日プランで森林限界を目指す「黒味岳フラワートレッキング」へご案内。屋久島の垂直分布を深く知ることのできる季節限定企画。

 

ニッコウキスゲの咲く7月コースも、間もなく催行です!
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※のんびりと花の観察を楽しみながら、尾瀬ヶ原から尾瀬沼へのフラワートレッキング。花咲く尾瀬を訪れる季節、8名様限定のツアーです。

 

残席わずか オススメのツアーです!!
花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く
※高山植物の宝庫・千畳敷カールや乗鞍・畳平でフラワーハイキングと静寂に包まれた奥上高地の徳沢を目指す。高山植物の観察と合わせて絶景も楽しむ5日間。

 

ご好評につき、追加設定!!
花の北海道フラワーハイキング
※チングルマ、ミヤマキンバイ、エゾコザクラの観察、また銀泉台のコマクサ平では高山植物の女王『コマクサ』が観察できる季節限定ツアーです。

 

続々と催行決定コースも!是非ご検討を!!
花の利尻・礼文島とサロベツ原生花園
※6~7月は高山植物の開花の季節となる利尻・礼文島。専門ガイドと共にフラワーウォッチングや様々な植物の観察を満喫する5日間。

 

続々と催行決定コースも!是非ご検討を!!
花の利尻・礼文島から世界遺産・知床半島へ
※高山植物の季節が始まる利尻・礼文島から、オホーツク海沿岸を走り世界遺産・知床へ。利尻島・礼文島、知床半島を一度に楽しむ5日間。

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イワヒゲ(岩髭:Cassiope lycopodioides)

先日、社内にて教育研修として「日本の花」について、3日間にわたり講義を担当させていただきました。ツアー等でお客様へ高山植物の名前などをお伝えするのとは違い、高山植物についての講義となると私も初めての経験でしたが、私自身も非常に勉強になった3日間でした。
高山植物の特徴や春~夏の花の紹介などをしているうちに5月1日出発「花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る」の添乗がより一層待ち遠しくなりました。

 

先日に引き続き、本日もツツジ科「イワヒゲ(岩髭:Cassiope lycopodioides)」をご紹介します。

 

イワヒゲ(岩髭:Cassiope lycopodioides)

 

被子植物 双子葉類
学名:Cassiope lycopodioides
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:イワヒゲ属(Cassiope)

 

イワヒゲ(岩髭)は、ツツジ科イワヒゲ属に属する常緑小低木です。
日本では本州中部地方以北から北海道にかけて分布し、海外では千島列島、カムチャッカ、アラスカまでの北太平洋地域に分布し、高山帯の風の強い岩場の裂け目などに自生します。

 

草丈は10㎝ほど、茎は分枝し、ひも状(針金状という資料もあります)となり、岩場を這うように自生します。
可愛らしい花の形状に目が向いてしまいますが、イワヒゲの葉にも注目してみてください。
葉は鱗片状に重なりながら茎に密着しており(茎全体を覆うという資料もあります)、大半の資料にはヒノキの葉のように見えるとあります。
個人的には、しめ縄飾りや女の子の三つ編み、おさげ髪のように見えるイメージです。

 

花期は7~8月。茎の上部に長さ2~3㎝ほどの花柄を伸ばし、その先に細長い鐘型の花を1つ下向きに咲かせます。花柄にぶら下がって咲いているというイメージです。
長さ7~8㎜ほどの白い鐘型の花の先端は浅く5裂し、その先端は外側へ少しだけ反り返っています。雄しべは鐘型の花の内部にあり、雌しべの花柱は1本で糸状で、花柱も雄しべも外側からは少し判りづらいかもしれません。

 

果実は球体で真っ赤な実をつけますが、これまで一度も見たことがありませんでした。
今回色々と調べている際、果実の写真が掲載されていましたが、細い柄の先に丸くて赤い実が刺さっているような姿をしており、まるでお祭りの夜店でよく売っていた「リンゴ飴」のような姿をしていました。

 

和名の「岩髭」は、茎の細さが髭にみえることが名前の由来です。
真っ白な鐘型の小さな花がぶら下がるように咲くイワヒゲは、可憐な花の形状も美しく、岩場の隙間などに群生するイワヒゲを見つけると足を止めて観察したくなります。
先程も記載しましたが、群生するイワヒゲを観察する際は、是非葉の形状にも注目してみてください。花期を終えた7月後半には、足元に小さな「リンゴ飴」も観察できるかもしれません。

 

イワヒゲ(岩髭:Cassiope lycopodioides) ②

 

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コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)

先日、出勤途中に桜の木に数輪の花を咲かせているのを見つけました。ネットニュースなどでは、今年は桜などの開花が早まる可能性があるとのことでした。
また、三重県松阪市の湿原では、春の訪れを告げる「ザゼンソウ」が例年より1週間ほど早く見頃を迎えたというニュースがありました。

 

本日は「コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)」をご紹介します。

 

コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)

 

被子植物 双子葉類
学名:Vaccinium vitis-idaea
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:スノキ属(Vaccinium)

 

コケモモ(苔桃)は、ツツジ科スノキ属に属する常緑小低木です。
日本では、北海道から九州まで幅広く分布し、海外ではユーラシア大陸北部や北アメリカの森林など温帯から北極圏に近い地域まで分布します。
亜高山帯~高山帯のハイマツ帯や草地、岩場、砂礫地などに自生し、酸性の土壌を好みます。多くのツツジ科の植物と同じく、栄養分の少ない土地でも耐えることができ、-40℃以下という極寒地でも耐えることができる耐寒性をもちます。

 

樹高は5~30㎝ほど、直立した幹は密集しています。地中の根茎を広げることで株を増やします。
葉は楕円形で互生し、1~2㎝ほどの小さな葉は少し硬く(革質と表記される資料もあります)、光沢が目立ちます。
葉の縁に鋸歯はあるのですが、ほとんど確認できないくらい僅かなものです。
寒冷地に自生する広葉樹ですが、冬でも葉は落としません。

 

花期は5~7月。枝先に白色~淡いピンク色(淡紅色)で5㎜ほどの鐘型の花を3~8個ほど総状に付け、花は下向きに咲かせます。
花弁の先端は浅く4裂、少し外に開いている印象です。また、萼も4裂し、先が尖った三角形をしています。
雄しべは鐘型の花の中に確認ができ、上の写真では少し判りづらいですが、雌しべ(花柱)は花の中央から少し花柱の先端が顔を出しています。

 

果実は5㎜ほどの球体で、真っ赤に熟します。
コケモモの実は、酸味が強く、生のまま食すより、ジャムやコンポート(砂糖煮)、果実酒が有名です。また、日本ではあまり見かけませんが、海外へ行くとビタミンC、βカロチンなどが豊富なため、ジュースで販売されているのをよく見かけます。また、コケモモの葉は、利尿効果や尿路殺菌作用もあるそうです。

 

「苔桃」という和名の由来は、地面を這うように自生する様子が「苔」に例えられ、「モモ」は方言で「木の実」を意味します。また、種小名の vitis-idaea はギリシャ神話に出てくる「クレタ島のIda山のブドウ」という意味です。

アカモノシラタマノキエゾノツガザクラアオノツガザクラなど、ツツジ科で鐘型の小さな花を咲かせる植物はいくつかあり、花の色以外で見分けが難しいものもあります。ただ、ゆっくりと特徴を確認しながら観察を楽しんでいると、それぞれの良さを見つけることができます。
コケモモは、白色~淡紅色の色合いが色鮮やかで光沢のある葉と非常にマッチし、葉の光沢と色合いが花の可憐さがより際立っているように感じます。
コケモモの実に手を伸ばすのも楽しいかもしれませんが、花咲くコケモモの前でも是非足を止めてみてください。

 

コケモモ(苔桃:Vaccinium vitis-idaea)②

 

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アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)

朝の出勤時も寒くなってきており、コートを着て出勤されている方の姿が多くなってきました。皆さんもコロナウイルスの感染症対策も大事ですが、風邪対策にも十分お気を付けください。

 

本日は「アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)」という名の花をご紹介します。
今回の花の写真は弊社東京本社・島田が裏磐梯の方で撮影したものです。私も観察したことがあるのですが、日本のどこだったかな~、思い出したらお知らせします。

 

アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gaultheria adenothrix
別名:イワハゼ(岩黄櫨)
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:シラタマノキ属 (Gaultheria)

 

アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)は、ツツジ科の常緑小低木、先日ご紹介したシラタマノキの実と同じシラタマノキ属に属します。
アカモノ(赤物)は日本固有の植物で、本州では近畿以北の日本海側に分布し、その他、北海道や四国にも分布し、低山帯から亜高山帯に自生します。

 

上の写真の花は白いですが、和名はアカモノ(赤物)。少々可笑しなネーミングですが、名の由来は赤い実をつけることから「アカモモ」から転じたものと言われています。色々と調べていると、実が白いものもあるそうで、それは「シロミノアカモノ」と言われるそうです。頭が混乱しそうです。
また、別名「イワハゼ(岩黄櫨)」とも呼ばれ、実が蝋を取るハゼの実に似ている事が由来です。

 

草丈は10~20㎝、葉は2~5㎝弱の卵型、楕円形の葉が互生し、茎と若枝には短い腺毛が確認でき、ほんの少し葉の光沢も確認できます。

 

花期は5~7月。直径5~7mmの小さな釣鐘型の花を下向きに咲かせ、縁が浅く5裂しており、ほんの少しだけカールしていることが確認できます。
花を支える萼は非常に鮮やかな赤色をしており、花全体の色合いのアクセントになっています。この萼にも茎や若枝と同様、腺毛が密生していることが確認でき、萼の部分の腺毛は短いものと長いものが混在しています。

 

花期が終わると、シラタマノキの実と同様、萼の部分が大きく肥大し、果実となります。ただ、シラタマノキの白い実とは違い、赤い身を上向きにつけます。

 

釣鐘型の真っ白な小さな花、花弁の表面にカールした縁の部分から萼の方に向かってうっすらと紅を引いたような線、色鮮やかな萼、本当に花の色合いのバランスが美しく、形状のバランスやカールした先端部分の可愛らしいさも含め、非常に魅力あふれる花の1つです。

 

アカモノ(赤物:Gaultheria adenothrix)

 

 

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シラタマノキの実(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

本日は、9月に北海道・旭岳の麓で観察した「シラタマノキ(白玉の木:Gaultheria pyroloides)の実」をご紹介します。

 

シラタマノキの実(白玉の木:Gaultheria pyroloides)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gaultheria pyroloides
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:シラタマノキ属(Gaultheria)

 

シラタマノキ(白玉の木)はツツジ科の高さが10~30㎝程度の常緑小低木です。
日本では本州・中部地方の以北から北海道に分布し、海外では東北アジアからアラスカまで分布します。亜高山帯~高山帯にかけて、比較的日当たりの良い礫地などに自生します。

 

葉は楕円形をしており、ほんの少し厚みがあり、光沢も若干確認ができます。葉脈が表も裏もくっきりと出ており、葉の縁が少し鋸歯となっています。

 

この9月には観察できませんでしたが、花は長さが0.5㎝程度と小さく、丸みを帯びた壺型で下向きに垂れ下がるように咲き、花の先端(キュっとしぼんだ部分)が浅く5裂しています。
アオノツガザクラなどと花の形状は壺型でよく似ていますが、個人的にはシラタマノキの花の方が少し角ばっている印象があり、アオノツガザクラの方がより丸い形状をしている印象です。
また、南米パタゴニアで観察したチャウラも同じシラタマノキ属です。花の形状は似ていますが、実は真っ赤です。

 

花期が過ぎ、9月を過ぎると萼の部分が大きくなり、果実を覆います。1㎝弱の小さな果実が、上の写真のように真っ白な玉状の実をつけることから「シラタマノキ」という和名になったと言われています。別名で「シロモノ」ともよばれ、同じシラタマノキ属で「アカモノ」という花もあります(別名はイワハゼ)。

 

シラタマノキの実は、口にすると甘味はあるそうですが・・・実は筋肉疲労などの塗り薬でも使われる「サロメチール(サリチル酸)」の匂い、味がします。
私は口にしたことはありませんが、落ちていた実を割って匂いは確認したことがあります。皆さん、是非匂いを確認してみてください・・・と言いたいところですが、生っている実を採ってはいけませんよ。

 

今年はシラタマノキの花を観察することができなかったので、いつの日か観察した際に花の方も改めてご紹介します。