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ギンリョウソウ(銀竜草:Monotropastrum humile)

先日、中日新聞のサイトにて「金沢市内各地でヒメリュウキンカ駆除の動き」というニュースを見ました。ヒメリュウキンカは欧州原産で観賞用として日本に持ち込まれ、野生化し、日本各地に分布した花ですが、非常に繁殖力が強いため、金沢城公園の二の丸広場 などで金沢城・兼六園管理事務所の職員数名が駆除作業を行っているそうです。昨年から鈴木大拙館(同市本多町)横の散策路では駆除作業を始めていたそうですが、駆除後には在来種のショウジョウバカマ、カタクリなどが再び姿を見せたそうです。
花そのものはキレイなヒメリュウキンカですが、在来種の保護のためには仕方がない措置なのかもしれません。

 

本日は「ギンリョウソウ(銀竜草:Monotropastrum humile)」をご紹介します。以前より、この「世界の花だより」で紹介したいと思っていたのですが、なかなか観察する機会に恵まれずにいましたが、数年前に嫁さんと訪れた屋久島旅行の際の写真を整理していたら、今回掲載する写真が出てきたので、紹介することができました。

 

ギンリョウソウ(銀竜草、学名:Monotropastrum humile)

 

被子植物 双子葉類
学名:Monotropastrum humile
別名:ユウレイダケ
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:ギンリョウソウ属(Monotropastrum)

 

ギンリョウソウ(銀竜草)は、日本全土に分布し、海外では千島列島、樺太、中国、ヒマラヤなどに分布し、薄暗い湿り気のある林床に自生します。今回掲載した写真は、屋久島の苔むす森でおなじみの「白谷雲水峡」にて観察したものです。

 

ギンリョウソウはツツジ科ギンリョウソウ属の多年草で、腐生植物として知られています。
菌類に依存して栄養を得ている植物を腐生植物といい、キノコ類の菌が本種の根に侵入しつつ腐敗物を分解し、それを本種が栄養にしています。直接的には菌類に寄生し、間接的には菌類と共生する樹木が光合成により作り出している有機物を菌経由で得て自生している植物です。
※古い資料などでは「腐葉土から栄養を得る」と記載がされていますが、腐葉土から栄養を得る能力は持っていないようです。確かに過去「腐葉土で生育する」と解説を聞いたことがあるような気がします。

 

草丈は10~20㎝で直立していますが、花が咲く時期以外は地上では姿は見られず、4~8月頃に地下から花茎を伸ばします。葉は、茎に葉が退化したものとされる長楕円形の鱗片葉が多数互生してつけます。

 

枝分かれせず直立した茎頂に若干下向きに花を1つ咲かせます。
形状は円筒状で先端がやや広がっており、花弁も萼片も3~5枚、花弁の方が少しだけ長く先端が少し広がり、ほんの少しだけ毛も確認ができるのが特徴です。
雄しべは10本前後あり、上写真をご覧いただくと花の内部にオレンジ色の部分が確認できますが、これが雄しべの葯(花粉を入れる部分)となります。写真では判りづらいですが、雄しべの花糸部分にも若干の毛が確認できます。
雌しべの柱頭は先端が円盤の様に広がっており、濃紫色(黒色に見えることも)。下向きに咲く花を覗き込むと、目玉が花の外を覗いているように見える(目が合ったような錯覚も)部分です。

 

ギンリョウソウ(銀竜草)は、全体が白色で葉緑体を持たない植物です。
「銀竜草」という漢字名は、下向きに咲く花と鱗片に包まれた姿を竜に見立てたことが由来とされ、また別名の「ユウレイダケ」は、林床の薄暗い場所に真っ白な姿で自生する姿から幽霊に見立てたと言われています。
花の姿と合わせて、内部を覗き込んだ際、円盤状の雌しべの柱頭が「目玉」に見え、恐怖におののくから「幽霊」という名が付いたという話も聞いたことがあります。

 

形状なども非常に似ている「ギンリョウソウモドキ(Monotropa uniflora:ツツジ科)」という花もありますが、花の咲く時期がことなり、ギンリョウソウモドキは夏の終わりから秋にかけて花を咲かせます。

 

ギンリョウソウを実際に観察すると、本当に驚きの一言です。
葉緑体を持たず、真っ白で光沢こそありませんが、その姿は非常に魅力ある姿をしており、覗き込んだときの「目玉」など、非常に興味を引く花であります。
次回は是非、柱頭の目玉の部分以外にも花弁や萼片、鱗片葉、オレンジ色の雌しべなどにも注目して観察してみてください。

 

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