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ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)

本日も尾瀬で観察した「ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)」をご紹介します。
ツルコケモモ(蔓苔桃)も、前回ご紹介したヒメシャクナゲ(姫石楠花)と同様に「花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く」を造成する際、尾瀬を訪れて観察したいと強く思った花の1つです。

 

ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)

 

被子植物 双子葉類
学名:Vaccinium oxycoccos
英名:Common Cranberry、Northern Cranberry(クランベリー)
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:スノキ属(Vaccinium)

 

ツルコケモモ(蔓苔桃)は、本州の中部地方以北から北海道にかけて、海外では北欧、北アジア、北米など、北半球の寒い地域に広く分布し、亜高山帯~高山帯の高層湿原でミズゴケ類の中に自生する常緑低木です。

 

草丈は10cmほどで細い濃赤紫色の茎を伸ばしますが、茎は所々で根を出し、ミズゴケの上を這うように広がり、先端部が立ち上がる形状です。葉は互生し、1cm前後で狭披針形~楕円形、葉の先端はそれほど鋭さは感じない程度に尖っているという印象です。葉の縁はほんの少し裏側の方へ反り返っており、葉裏は白みを帯びています。葉は秋には赤褐色に紅葉します。

 

花期は6~7月。細く伸びた濃赤紫色の茎から同色で短毛が確認できる花柄を1~4本伸ばし、その先端に直径1~2cmほどの淡いピンク色の小さな花を1つずつ咲かせます。
花冠は基部から4裂し、長さ7~9mmほどの裂片はカタクリの花のように外側に反り返るのが最大の特徴です、
特徴的な反り返った花弁も面白い形状ですが、その中央から突き出た部分にも注目です。
根元の濃赤紫色(花柄より少し濃い印象)の部分が子房で白い(花弁の淡いピンクに近い色)筋が入っているのが確認できます。また、子房の先端にオレンジ色の部分が束になった雄しべ、さらにその先端から雌しべが1本伸びており、まるで「芯が飛び出したシャーペン」のような形状が非常にユニークです。ただ、ツルコケモモは想像より小さな花のため、細かな形状を確認するには腹這いになって観察するか、ルーペが必要かもしれません。

 

ツルコケモモは9~10月に花の大きさでは想像できない直径1cmほどの赤く球体の実を付けます。ツルコケモモの実はその近縁種と共に「クランベリー」としておなじみで、花の大きさでは想像できない直径1cmほどの赤く球体の実を付けます。ジャムやジュースなどとして利用されます。
ある資料には、湿原は栄養分が少ないこともあり「全ての個体で花や果実を付けるわけではない」とありました。

 

ミズコケの生える湿原に咲く淡いピンク色、さらに想像より小さな花であるため、尾瀬フラワートレッキングの際にも危うく見逃してしまいそうな場面もありましたが、ツルコケモモの花を見つけるとその形状や花の美しさに魅了され、思わず撮影に夢中になってしまう花でした。

 

ツルコケモモ(蔓苔桃:Vaccinium oxycoccos)②

 

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