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グラキアリス・キンポウゲ(Ranunculus glacialis)

昨日ネットニュースにて、メキシコ南東部にあるマヤ文明の「アグアダ・フェニックス遺跡」で、紀元前1000年~同800年にかけて造られた巨大な土造りの祭祀施設が発見され、マヤ文明で最古、最大の公共建築物ということです。
コロナウイルスが終息し、1日でも早くマヤ文明の遺跡など見学するツアーが再開できることを願うばかりです。

 

本日はキンポウゲ科の一種である「グラキアリス・キンポウゲ(Ranunculus glacialis)」をご紹介します。

 

グラキアリス・キンポウゲ(Ranunculus glacialis)

 

被子植物 双子葉類
学名:Ranunculus glacialis(ラヌンクルス・グラキアリス)
英名:Glacier buttercup
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae)
属名:キンポウゲ属(Ranunculus)

 

グラキアリス・キンポウゲ(Ranunculus glacialis)は、ヨーロッパ・アルプスやピレネー山脈など標高2,000~4,000m地帯の岩場や岩礫地、アルプスでも最も高所に自生します。
また、スヴァールバル諸島(北極圏にあるノルウェー領の群島)やグリーンランドなど極地にも自生するキンポウゲの花です。
私がグラキアリス・キンポウゲを観察したのは、イタリアのモンテ・チェルビーノ(ヨーロッパの名峰マッターホルンのイタリア名)の麓でフラワーハイキングを楽しんでいた時でした。

 

種小名の「glacialis」は「氷河」という意味のため、直訳すると「氷河キンポウゲ」となりますが・・・「glacialisは氷河を意味する」という紹介はあっても「氷河キンポウゲ」と表記された資料はありませんでした。さすがに直訳すぎますね。

 

草丈は5~25㎝、写真では少し判りずらいですが茎の色は紫色なのが特徴的です。
根生葉は少し肉厚で掌状に3裂し、茎の上部に披針形(先が少し尖り細長い形)の葉をつけます。葉や茎は無毛と有毛の個体があるという資料もありました。

 

茎頂には直径2㎝ほどの白い花を1~2個咲かせ、丸みのある花弁が5枚あり、花弁が隙間なく重なり合っているのがキンポウゲの花らしい部分です。
葯(おしべ先端の,花粉を入れる袋状構造)の鮮やかな黄色。花弁の白色と葯の部分の黄色の色合いが何ともいえない可憐さを感じさせます。
萼片(花弁の付け根の最外側にある緑色の小さい葉のようなもの)も5つあり、茶色い毛が密集しています。
グラキアリス・キンポウゲの咲き始めは写真の様に白色の可憐な花を咲かせますが、時間の経過とともにピンク色から赤橙色に変化していきます。

 

厳しい環境の岩場や岩礫場に突如として鮮やかな白色のキンポウゲを見つけたのが、小休止をしている時でした。休憩そっちのけでグラキアリス・キンポウゲの観察を楽しんでいました。

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マウントクックリリー(Mount cool lily)

日本、北半球の花のシーズンも一段落し、紅葉のシーズンが待ち遠しく感じる日々。それと同時に南半球では花のキレイなシーズンを迎えるところが多く、今シーズンはどのような花と出会えるのか、楽しみで仕方ありません。

 

という訳で、本日は南半球に咲く花、ニュージーランドの在来種である「マウントクックリリー(Mount cool lily)」をご紹介します。

マウントクックリリー(Mount cool lily)

被子植物 双子葉類
学名:Ranunculs lyallii
別名:ジャイアント・バターカップ(Giant Buttercup)
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae) 属名:キンポウゲ属(Ranunculus)

 

マウントクックリリーという名の花ですが、ユリ科の花ではなく「キンポウゲ科」に属する花です。この花の葉がスイレン(ウォーター・リリー)に似ていることから名付けられました。
世界最大種のキンポウゲ(Buttercup)と言われており、別名「ジャイアント・バターカップ(Giant Buttercup)」とも呼ばれる花です。

 

マウントクックと付いている花ですが、ニュージーランド最高峰のマウントクック(標高3,724m)の聳えるフッカーバレーのみに生息する訳ではなく、ニュージーランド南島とスチュアート島の比較的標高の高いエリア(700〜1,500m)、花の時期としては11~1月にかけて観察することができます。

 

私が初めてマウントクックリリーを観察したのは、ニュージーランドで最も人気のトレックルート「ミルフォード・トラック」のマッキノン峠付近でした。

 

花径は5~7cm、10~20枚の透明感のある真っ白な花弁を付け、中央の黄色い雄しべと相まってとても印象的な色合いをしています。ほのかに甘い香りのするのも特徴です。
頑丈な根茎を持ち、葉は光沢のある濃緑色、草丈は40cmから大きなもので100cmにも達するものがあり、キンポウゲ種の中での最大種であることがうなずける大きさです。

 

この種は、スコットランドの著名な植物学者であり医師でもあるデビッド・ライオール(1817~95年)によって発見されたと言われています。

 

透明感のある印象的な色合い(高貴な花と紹介されていることもあります)でありながら、大きさの割には控えめな印象もあるマウントクックリリーは、ニュージーランドを代表する高山植物の1つです。マウントクックリリーを観察するため、是非ニュージーランドのミルフォード・トラックへ訪れてみてください。

マウントクックリリー(Mount cool lily)