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ミヤマリンドウ(深山竜胆:Gentiana nipponica)

昨日、昨年に引き続き「大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草」に同行させていただきました。能取湖のサンゴソウ、さらには大雪山国立公園での紅葉が素晴らしく、お客様と共に素晴らしい景観を楽しませていただきました。

 

本日は「ミヤマリンドウ(深山竜胆:Gentiana nipponica)」をご紹介します。

 

ミヤマリンドウ(深山竜胆:Gentiana nipponica):大雪山系・旭岳山麓にて

 

被子植物 双子葉類
学名:Gentiana nipponica
科名:リンドウ科(Gentianaceae)
属名:リンドウ属(Gentiana)

 

ミヤマリンドウ(深山竜胆)は、北海道から本州の中部地方以北に分布し、高山の湿った草地などに自生する日本固有のリンドウ科の多年草で、フデリンドウ(筆竜胆:Gentiana zollingeri )の高山種と紹介されています。
今夏は、7月に千畳敷カール、9月(先日)に大雪山系の旭岳山麓にて観察することができました。

 

地表を這うように伸びた茎から花茎を立ち上げ、草丈は5~15cmほどとなり、茎はやや赤紫色を帯びています。
葉は葉柄がなく、長さ5~12mmほどで広披針形~卵状長楕円形の形状の葉を対生してつけます。横に展開するように付く葉は先が尖らず、少し厚みを感じ、少し光沢も確認できます。根生葉はありません。

 

花期は7~9月。茎頂や上部の葉腋に1.5~2cmほどの青紫色の小さな花を1~数個咲かせます。花冠の先端は5裂、裂片間に副片があり、平開します。萼の先端はやや反り返っている印象です。私は観察したことがありませんが、稀に白花種もあり「シロバナミヤマリンドウ」と呼ばれています。

ミヤマリンドウ(深山竜胆:Gentiana nipponica):中央アルプス・千畳敷カールにて

 

形状などが非常によく似ているタテヤマリンドウ(立山竜胆:Gentiana thunbergii var. minor)との見分け方のポイントとして、葉の違いがよく紹介されています。その他の見分け方もありますので、下記を参考にしてください。

 

<タテヤマリンドウとミヤマリンドウの見分け方>
①茎葉の違い
タテヤマリンドウは横に展開しない(上向き)、ミヤマリンドウは横に展開する

②花茎につく花の数
タテヤマリンドウは茎頂に1つずつ、ミヤマリンドウは1~数個

③花の中央部付近の斑点の有無
タテヤマリンドウには斑点が付き、ミヤマリンドウには斑点がない

④5裂した花冠の間の副花冠(副片)
ミヤマリンドウは細長く、先が不規則に裂ける、タテヤマリンドウは先は避けず短い

 

その他、変種として飯豊連峰の飯豊山に特産する「イイデリンドウ(飯豊竜胆)」や近縁種として「ハルリンドウ(春竜胆)」などが紹介されています。

 

リンドウの花は一見派手な色合いをしておりますが、ゆっくり観察をすると1つ1つの花の形状が美しく、気付くと心奪われる魅力ある花であります。

 

ミヤマリンドウ(深山竜胆:Gentiana nipponica):大雪山系・旭岳山麓にて
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タテヤマリンドウ(立山竜胆:Gentiana thunbergii var. minor)

今回の花ブログが更新される頃、私は屋久島の高山植物を求めて黒味岳を目指す登山ルートを歩きながら、屋久島の固有種・固有変種の花々の観察を楽しんでいるところです。

 

本日は「タテヤマリンドウ(立山竜胆:Gentiana thunbergii var. minor)」をご紹介します。こちらも6月の尾瀬で高層湿原の尾瀬ヶ原を歩いている際に観察・撮影を楽しむことができた花の1つです。

 

タテヤマリンドウ(立山竜胆:Gentiana thunbergii var. minor)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gentiana thunbergii var. minor
科名:リンドウ科(Gentianaceae)
属名:リンドウ属(Gentiana)

 

タテヤマリンドウ(立山竜胆)は、北海道から本州(中部以北・日本海側)に分布し、高山や亜高山帯の湿地に自生する1〜越年草です。母種ハルリンドウ(春竜胆:Gentiana thunbergii)の高山性の変種とされています。

 

草丈は5~15cmと低く、根元から数本の茎が直立します。
葉は卵形でロゼット状に広がり、花期に残る根生葉を持ち、茎葉は5~10cm弱で披針形の小さな葉が茎を抱くように上向きに付いています(対生)。
よく似た高山に咲くミヤマリンドウ(フデリンドウの高山種)の茎葉は横に展開しますが、タテヤマリンドウの茎葉は横に展開しない点が見分け方の特徴です。

 

花期は5~7月。長さ1~2cmの花冠は5裂し、裂片間に副片があり茎頂にそれぞれ1つ漏斗状の淡青紫色の花を上向きに咲かせます。花の萼裂片は反り返りません。
色はミヤマリンドウや母種のハルリンドウに比べて薄いのが特徴です。

 

リンドウ科の花は、陽があたる時だけ花を開き、曇天・雨天時は筆先の形をした蕾状態になって閉じた状態となります。これは花粉を間持つためと言われています。今回は幸いにも天候に恵まれたので、尾瀬ヶ原の各所で花の開くタテヤマリンドウの観察を楽しむことができました。

 

タテヤマリンドウは、花の中央部付近に暗紫色の斑点が多数ついているのも特徴の1つです。ある資料に「ソバカス美人」という表現をするものがあり、まさにその表現がピッタリの姿をしています。

 

タテヤマリンドウの花は、雄性先熟という性質を持ちます。
最初は雄しべが先に成熟して花粉を放出する「雄性期」。次に花粉を放出しきった雄しべを押しのけて雌しべが成長し雌しべが成熟する「雌性期」となります。
雄しべ雌しべの成熟時期をずらすことで自家受粉を避け、昆虫が運んでくれる他の株の花粉で受粉、子房に種子を作ります。
今回の2枚の写真は、共に「雄性期」の花ですが、雌性期となると真っ白で先が2裂する雌しべが確認することができます。

 

<タテヤマリンドウとミヤマリンドウの見分け方>
①花の中央部付近の斑点の有無
タテヤマリンドウには斑点が付き、ミヤマリンドウには斑点がない
②茎葉の違い
タテヤマリンドウは横に展開しない、ミヤマリンドウは横に展開する
③5裂した花冠の間の副花冠(副片)
ミヤマリンドウは細長く、先が不規則に裂ける、タテヤマリンドウは先は避けず短い

 

広大な尾瀬ヶ原で可憐に咲くタテヤマリンドウ。
草丈も低く、花冠の大きさも小さいため、そばに近づくまで花の開花に気付かないことが多いですが、一度見つけると辺り一面にたくさん咲いており、可憐なタテヤマリンドウに心を奪われることもしばしばでした。

 

タテヤマリンドウ(立山竜胆:Gentiana thunbergii var. minor)

 

<おすすめ!! 紅葉シーズンに自然を楽しむツアー>
※10月18日出発:まもなく催行!
「清流の国」岐阜から上高地へ 4つの自然探勝ハイキング
“岐阜の宝もの”小坂の滝、天生県立自然公園、五色ヶ原の森と名勝・上高地を専門ガイドと歩く5日間。

 

※10月18日出発:まもなく催行!
北信濃の小菅神社・戸隠神社五社参拝と鬼無里フットパスを巡る
専門ガイドと共に寺社仏閣を巡り、由緒を知り、御朱印をいただく旅。また、自然美溢れる鬼無里でもガイドウォークを楽しむ5日間。

 

※9月19日出発:催行決定!
日本で最も早い紅葉を観る!大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草
黒岳、旭岳、十勝岳、三国峠など大雪山山系の原生林と紅葉の名所を巡る5日間。
※エゾオヤマリンドウに出会えるかもしれません。

 

※10月5日出発:催行決定!/10月10日出発:まもなく催行!
秋の千畳敷カール・乗鞍・上高地を撮る
傑出した山岳景観を誇る中央アルプスから中部山岳国立公園を巡る4日間。
撮影目的でなくても、自然、風景を満喫できます。

 

※9月29日出発、10月9日出発とも、まもなく催行!
秋色に染まる尾瀬・奥日光・谷川連峰を撮る
美しい紅葉や山岳風景の撮影をご堪能いただく日程。尾瀬は2泊3日でゆっくりと巡り、秋色に染まる尾瀬を堪能いただけます。

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アケボノソウ(曙草:Swertia bimaculata)

先日「姫島にも泊まる大分周遊」に同行させていただきました。
大分の見どころを凝縮した6日間では非常に天候にも恵まれ、耶馬渓では見事な紅葉を観賞することができ、各所での名物料理・郷土料理も満喫できる充実したツアーでした。春にも設定させていただく予定にしております。

 

本日は、先日に引き続き熊野古道・中辺路で観察した「アケボノソウ(曙草:Swertia bimaculata) 」をご紹介します。

アケボノソウ(曙草:Swertia bimaculata)

 

被子植物 双子葉類
学名:Swertia bimaculata
別名:キツネノササゲ
科名:リンドウ科(Gentianaceae)
属名:センブリ属 (Swertia)

 

アケボノソウ(曙草)は、リンドウ科センブリ属に属する二年草です。
二年草(二年生植物)とは、1回の生活環を完了するのに2年を要する植物のこと。
二年草は、1年目に茎や葉、根などの栄養器官を形成し、休眠して越冬します。2年目の春または夏に開花し、種子を生産して枯れ、生活環を終えます。

 

日本では北海道、本州、四国、九州と広く分布し、伯耆富士とも呼ばれる鳥取県では代表的な花として紹介されることもあります。海外では中国、朝鮮半島の温帯地方に分布します。

 

草丈は60~90㎝で直立し、非常に鮮やかな緑色の茎の色合いが印象的です。
葉は長さ5~10㎝程度、披針形または卵型で先が尖っているので少し細長い卵型という印象を受ける形状です。光沢はほとんど確認はできません。
根生葉は茎葉に比べて大きく、花が開くと落ちてしまうと資料にありましたが、私が観察した際には根生葉も残っていました。

 

花期は9~10月。茎から枝分かれして伸びる長さ1~5㎝程度の花柄に、直径1.5~2㎝ほどの真っ白な花を数個ずつ咲かせます(集散状円錐花序)。
花弁が5弁のように見えますが、実際は花冠は深く5裂しており、基部で合着している形状です(今回観察するまで5弁の花弁と思っていましたが、観察して驚きました)。

 

花弁のように見える裂片に緑色の斑点が2つずつ付いていることが確認できます。
これは「蜜腺」です。ここから蜜を分泌し、昆虫(特にアリ)が蜜を採取しているのも観察することがよくあります。
また、アケボノソウ(曙草)の最大の特徴ともいえる裂片につく斑点が多数ついており、この斑点を「夜明けの空」に見立てたことが「曙草」という名前の付いた所以です。
まれに花冠に斑点がない品種として「ホシナシアケボノソウ(フナシアケボノソウ)」という名のアケボノソウもあります。

果実は蒴果で花冠より少しだけ長く裂開し、黒褐色で長さ1 mmほどの表面に細かい粒状突起で黒褐色の種子を出します。発芽後の1年目はロゼットのまま過ごします。

 

今回は熊野古道・中辺路ルートでの道中、牛馬童子に到着する間際に咲いていたアケボノソウを観察しました。
10月末であったため、花の観察は期待していませんでしたが、先日紹介したアサマリンドウや今回のアケボノソウなどの花々に心癒される時間もあり、1000年以上にわたって多くの人々が歩んだ中辺路を、熊野古道の魅力を感じながら語り部と共に歩く旅は本当に充実した旅でした。

 

熊野古道に咲くアケボノソウ
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アサマリンドウ(朝熊竜胆:Gentiana sikokiana Maxim)

11月に入り肌寒い日が続いており、そろそろコートも必要なシーズンになってきました。
私は先日「熊野古道巡礼 中辺路を歩き熊野三山を巡る旅」に同行させていただきました。私自身、十数年ぶりの熊野古道、那智山の観光でしたが、非常に天候に恵まれ、また語り部さんの解説も非常に勉強になるものでした。

 

本日は、熊野古道の道中や新宮市の神倉神社の参道で観察した「アサマリンドウ(朝熊竜胆:Gentiana sikokiana Maxim)」をご紹介します。

 

アサマリンドウ(朝熊竜胆:Gentiana sikokiana Maxim)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gentiana sikokiana Maxim
和名:朝熊竜胆
科名:リンドウ科(Gentianaceae)
属名:リンドウ属 (Gentiana)

 

アサマリンドウ(朝熊竜胆)は、リンドウ科・リンドウ属に分類され、日本の固有種です。本州の紀伊半島・南部、中国地方、四国、九州に分布します。
和名の「アサマ」は、長野県の「浅間山」と思ってしまいそうですが、アサマリンドウは三重県の「朝熊山」で最初に発見されたため、「アサマ」の名がつきました。

 

草丈は10~25cmで直立し、葉は長さが5㎝前後の卵型(長楕円形のものも)で、少し光沢のある葉が数個が対生します。また、葉の縁が少し波打っている(しわがある)ことも確認できました。

 

花期は9~11月。茎頂に長さ4~5㎝の淡い青紫色の花を1~4個、漏斗状・鐘型の花を上向きに咲かせます。花弁の先端は5裂し、筒部の内部に白縞模様が入っており、この縞模様がリンドウらしい特徴です。今回観察したものは、筒部の内部に斑点があるのを確認しましたが、斑点がつかないものもあるそうです。
萼は緑色、裂片は卵型で5裂し、平らに開きます。上の写真で少しボケていますがその様子が判ります。

 

和名のことを調べていると「朝熊七草」という言葉が出てきました。
1932年、三重県の植物誌著者・伊藤武夫氏が『三重県植物誌』の中で「朝熊山七草」を発表したそうです。七草とは、以下の7つだそうです。
1.アサマギク、2.ティショウソウ、3.スズコウジュ、4.アサマリンドウ、5.トリガタハンショウヅル、6.ミスミソウ、7.チャボホトトギス
いつの日か、朝熊七草を探すツアーも実施したいものです。

 

今回は熊野古道を歩きながら、また熊野三所⼤神が最初に降臨した地といわれる新宮市の熊野速玉大社の摂社である「神倉神社」の参道階段で観察することができました。
特に、神倉神社の参道階段ではたくさん群生しており、非常に心癒される瞬間でした。ただ、538段の階段はしんどかった・・・。

 

神倉神社でアサマリンドウ(朝熊竜胆)の群生に出会う

 

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エゾオヤマリンドウ (蝦夷御山竜胆:Gentiana triflora var. japonica f. montana)

先日、西遊通信を発行させていただき、弊社ホームページでも12月から冬にかけてのツアーを次々と発表しております。
私も春の訪れを感じる花々を観察を楽しむことができるツアーを現在造成中です。

 

本日は、9月末に訪れた北海道の大雪山・層雲峡で観察した「エゾオヤマリンドウ (蝦夷御山竜胆)」をご紹介します。

 

エゾオヤマリンドウ (蝦夷御山竜胆)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gentiana triflora var. japonica f. montan
科名:リンドウ科(Gentianaceae)
属名:リンドウ属(Gentiana)

 

エゾオヤマリンドウ(蝦夷御山竜胆)は、日本原産のリンドウであり、北海道と本州では山形県より以北に分布します。主に亜高山~高山帯、湿った草地などに生育します。
同じリンドウ科の花で似た名称のエゾリンドウ(蝦夷竜胆:Gentiana triflora var. japonica)がありますが、エゾオヤマリンドウはエゾリンドウの高山種となります。また、同じくオヤマリンドウ(御山竜胆:Gentiana makinoi)もありますが、これら3つの区別は非常に難しいです。

 

エゾオヤマリンドウの草丈は20~40㎝で直立し、低地に生育するエゾリンドウに比べて少し草丈が低くなります。
葉は長さが5~8cmほどで披針形、長楕円形、先端が尖った形状をしており、茎に対生し、葉の裏面は表面に比べて若干白色を帯びています。鮮やかな緑色の葉ですが、秋になると葉は少し紅葉を思わせる色合いへ変化していきます。

 

花期は8~9月、茎頂や茎上部に少数の花を束状に咲かせます。秋の訪れを知らせる花ですが、7月中旬頃から咲きだす個体もあるそうです。
花はリンドウらしい濃青紫色の色合いで長さ3~5㎝弱の釣鐘型の形状で、先端が浅く5裂していますが、私が観察したときは先端が閉じてしまっていたので5裂している部分は確認することができませんでした。他のリンドウ科の花のように目一杯花が開くわけではなく、開花時は先端部がほんの少しだけ開く程度です。黒岳ロープウェイの係員さんに伺ったところ「花が咲くのは晴れた日の日中だけで、雨や曇りのときは日中でも花は閉じてしまっています」とのことでした。
花を支える萼片が濃紫色で長さはバラバラでした。

 

今回エゾオヤマリントウを観察していると周囲に白色のリンドウが咲いており、別のリンドウ科の種類かと思っていましたが、前述の黒岳ロープウェイの係員さんに伺ったところ「エゾオヤマリントウは時折白花種も咲かせる」とのことでした。

 

高山に咲く「リンドウ」は漢名で「竜胆」と書きますが、リンドウの根が非常に苦く、熊の胆よりももっと苦いことから、熊よりランクの高い竜(架空の動物)の胆の苦さにあて、竜胆という漢字名がついたと言われています。

 

今回、北海道の層雲峡で黒岳ロープウェイへ乗車し、その後リフトへ乗り換えて黒岳7合目を目指しながら、秋の紅葉を楽しむツアーでした。今年は色付きが非常に遅く、想像していたような紅葉ではありませんでしたが、それでも所々の紅葉・黄葉は素晴らしいものでした。
また、リフト乗車時や黒岳7合目周辺には秋の訪れを告げるエゾオヤマリントウがたくさん咲いており、北海道の秋を楽しむことができました。

 

エゾオヤマリンドウ (蝦夷御山竜胆)の白花種
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プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)

海外出張のため、しばらくお休みさせていただいておりました「世界の花だより」を本日より再開させていただきます。

皆様は「リンドウの花」と言えば、何色の花を想像されるでしょうか。

通常は、世界の花だよりのブログでもご紹介した「チャボリンドウ(Gentiana acaulis)」のような濃い青色~青紫の色合いをイメージされる方が大半かと思います。
日本では、北海道や尾瀬(以前、私がこの2ヶ所で観察した思い出があります)で見られるようなトウヤクリンドウは他のリンドウ科の花とは違った黄白色の色合いの花を楽しめるリンドウですが、その色合いに負けない驚きを見せてくれるのが、本日ご紹介する「プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)」です。

プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)

被子植物 双子葉類   時期:7~8月
学名:Gentiana Purrurea  英名:Purple Gentian
和名:英名からムラサキリンドウと紹介されていることも
科名:リンドウ科(Gentianaceae) 属名:リンドウ属(Gentiana)

 

プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)は、ヨーロッパ・アルプスの草原や牧草地に生息し、草丈は20~60cm、茎頂には2~5つほどの花をつけ、花の長さは3~4cmとなります。
このプルプレア・リンドウを現場で紹介すると、最初はリンドウと信じてもらえない時もあります。それは葉の形状が明らかに他のリンドウと異なるからかもしれません。5~6cmほどの長さの葉が四方に伸びる形状は、確かに他のリンドウとは大きく異なります。

 

この花は、マルハナバチ(丸花蜂)が好むバラのような香りを放ち、マルハナバチ(丸花蜂)は花から花へ飛び回り、受粉を引き受けてくれます。

 

ヨーロッパのレストランなどにあるお酒の1つに「シュナップス(蒸留酒)」というものがあります。本来は、アプリコットや洋ナシなどのフルーツで作られるのですが、リンドウの根を使用して作られるものもあり、最高級のリンドウ・シュナップスは、このプルプレア・リンドウの根を使用して作られています。
リンドウ・シュナップスはお酒として美味しいだけでなく、地方によっては病気(特に胃の病気)に効くと言われています。
虫もこの花を好み、雅の毛虫が堅い根を好んで食べると言われています。

 

「花はほとんど開かない」「雪解けの時期に咲くリンドウのため、自身の保護のため花は開かない」と紹介されることもありますが、もちろん花は開きます。
チャボリンドウや、日本のトウヤクリンドウのように黒い斑点が特徴的で、花の内部がほのかに黄色く、とても印象的な色合いです。
なかなか開花したプルプレア・リンドウに出会うのは難しいかもしれませんが、是非観察できたときには全体の姿と合わせて、ほのかに黄色い内部にも注目をしてみてください。

開花したプルプレア・リンドウ

 

<プルプレア・リンドウに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)

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チャボリンドウ(Gentiana acaulis)

本日は、アルプス三大名花の1つ「チャボリンドウ(Gentiana acaulis)」をご紹介します。

先日よりご紹介しておりますアルペンローゼ、エーデルワイス、そして今回のリンドウが「アルプス三大名花」と言われている花です。

被子植物 双子葉類  時期:58
学名:チャボリンドウ(Gentiana acaulis)
科名 : リンドウ科(Gentianaceae) 属名 : リンドウ属(Gentiana)

 

ヨーロッパ・アルプスを訪れると、地面からトランペット状の大きな花がご覧いただけます。今回ご紹介するチャボリンドウは茎がほとんど無いうえ、花の長さが45㎝と非常に大きいことから、比較的簡単に見つけていただくことのできる花です。
同じようにトランペット状に花を咲かせるリンドウは、ヨーロッパ・アルプスには今回ご紹介するチャボリンドウ(Gentiana acaulis)、英名でトランペット・リンドウと称されるクルシイ・リンドウ(Gentiana clusii)、花の長さが他より3㎝程度と少し小さいアルピナ・リンドウ(Gentiana alpina)の3種類あり、3種とも非常似た姿をしており、見分けるのは非常に難しいです。

 

見分けるポイントの1つが「葉」の違いです。違いは以下のとおりです。
1.チャボリンドウの葉は長楕円形、葉が柔らかく、葉の長さはそれほど変化はありません。
2.クルシイ・リンドウの葉は長楕円形、葉は硬く、地面に近い方の葉が長く伸びます。
3.アルピナ・リンドウの葉は花茎のすぐ下に短い楕円形の葉を持ちます。

 

また、「花の内側」にも見分けるポイントがあります。
1.チャボリンドウは花の内側にオリーブ色の筋があり、盛り上がった黒っぽい斑点があります。
2.クルシイ・リンドウにも黒っぽい斑点がありますが、小さくあまり目立ちません。

チャボリンドウとクルシイ・リンドウは、正直2つ並べられても見分けるのは難しいかもしれません・・・。

 

上記の3種以外にも、群青色や紫色の様々なリンドウが咲きそろっており、大半のリンドウが58月と長い期間で観察ができるため、1回のハイキングで様々なリンドウが観察できますので、皆様のお好みのリンドウを探していただくのも、ヨーロッパ・アルプスでのフラワーハイキングの楽しみの1つです。

 

<アルペンローゼに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)
究極のマッターホルン展望トレッキング(スイス)