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ハマベンケイソウ(浜弁慶草:Mertensia maritima subsp. asiatica)

先日、近所にある学校の脇を歩いていると、敷地内に咲くコブシの花が満開間近となっており、思わず歩道で足を止めて観察を楽しんでしまいました。歩道から背伸びをし、目一杯手を伸ばして撮影もさせていただきました。

 

本日は「ハマベンケイソウ(浜弁慶草:Mertensia maritima subsp. asiatica)をご紹介します。

 

ハマベンケイソウ(浜弁慶草:Mertensia maritima subsp. asiatica)

 

被子植物 双子葉類
学名:Dactylorhiza aristata
英名:Oyster plant 、Oyster leaf
科名:ムラサキ科(Boraginaceae)
属名:ハマベンケイソウ属(Mertensia)

 

ハマベンケイソウ(浜弁慶草)は、日本の北海道ならびに本州の太平洋側では東北地方以北、日本海側では隠岐の島以東に分布し、海外では朝鮮半島、サハリン、千島列島、アリューシャン列島、オホーツク海沿岸まで幅広く分布します。主に海岸の砂地や礫地に自生する多年草です。
北米には、ハマベンケイソウ属は20種ほどあるそうです。

 

草丈は低い印象を受けますが、実はよく観察すると茎がよく分岐し、礫地上の地表を這うように広がっており、茎の長さは1m以上のものもあります。
葉は広楕円形~広卵形をしており、長さは5㎝ほど、幅は3~5㎝ほどの大きさです。また、少し厚みがあり全縁です。茎も含めて、植物全体が無毛で白みを帯びた緑青色であるもの印象的です。色々と調べていると、下部の葉、根出葉(こんしゅつよう:地上茎の基部についた葉)には長さ10㎝ほどの葉柄が付いているという資料もあり、また、葉は乾燥すると黒褐色になるとのことでした。次回、観察の際には注目してみたいと思います。

 

花期は7~8月。枝先に長さ1~1.5㎝ほどの青紫色の小さな花を数個下向きに付け(総状花序)、葉と同じ形の小さな苞(つぼみを包むように葉が変形した部分)も確認できます。
筒状(鐘形)で、花弁の先端は浅く5裂、萼片が5つで無毛です。5本雄しべが筒状の花弁よりほんの少しだけ頭を出しており、その形状がハマベンケイソウが可愛らしく感じる所以かもしれません。雌しべは1つです。

 

和名の「ハマベンケイソウ(浜弁慶草)」は、海岸に自生し、多肉質で葉の形や色がベンケイソウ科の植物に似ていることが由来です。また、種小名(maritima は、「海の、海浜生の」を意味し、亜種名 asiatica は「アジアの」を意味します。
英名は「Oyster plant」や「Oyster leaf」と呼ばれます。日本ではあまり知られていませんが(私も初めて知りました)、生牡蠣のような味を持ち、フランスでは生食を始め食用にも用いられているそうです。

 

淡い色合いのハマベンケイソウですが、礫地などで群生した風景をご覧いただくと、淡い色合いもより良く映え、ゆっくりと観察したくなる風景です。

 

ハマベンケイソウ(浜弁慶草:Mertensia maritima subsp. asiatica)

 

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エキウム・ウィルドプレッティ(Echium wildpretii)

早いもので2019年も3月を迎え、春の訪れを知らせてくれる花々もまもなく開花を迎える時季となってきました。皆さんのご近所に咲く「春の訪れを知らせる花」の開花状況はいかがでしょうか。

 

長らく「パタゴニアの花」の紹介を続けておりましたが、パタゴニアの観光シーズンもひと段落したので、まだまだご紹介したい花はたくさんありますが、続きは次の観光シーズンが始まる前にさせていただきます。
パタゴニアのパンフレット造成も少しずつ初めており、6月ごろに発表予定です。

 

本日は5月に花の季節が到来する、アフリカ大陸の北西沿岸に近い大西洋上にある7つの島からなるスペイン領の群島「カナリア諸島」の花をご紹介させていただきます。
カナリア諸島と言えば、やはりムラサキ科の「エキウム」です!!
この日紹介させていただくのは「エキウム・ウィルドプレッティ(Echium wildpretii)」です。

エキウム・ウィルドプレッティ(Echium wildpretii)

被子植物 双子葉類
学名:Echium wildpretii 英名:Tower of Jewels(宝石の塔)
現地名:タヒナステ・ロホ(Tajinaste rojo)
科名:ムラサキ科 (Boraginaceae) 属名:エキウム(シャゼンムラサキ)属(Echium)

 

大陸から離れたカナリア諸島では、太古の時代から独自の生態系が育まれて、カナリア諸島には700種以上もの固有植物が存在します。

 

カナリア諸島を代表する植物の1つである「エキウム(Echium)」は、ムラサキ科エキウム属の半耐寒性2~3年草です。
種類も多種多様で、赤、青、紫、白など様々な色のエキウムが生息します。
日本では京都府立植物園で初めて栽培開花させ、現在では東京ディズニーシーでも見られるという話を聞いたことがあります。

 

その中でも「エキウム・ウィルドプレッティ(Echium wildpretii)」はカナリア諸島固有植物として世界的にも知られています。
高さ3mを超えて育ち、淡紅色の花穂の長さも1m超すことがあります。
根元から15~20㎝の灰緑色をした細長い葉が下向きに生えています。よく観察してみると白い毛が生えているため、そのような色合いに見えるのです。
多くの日照時間を必要とし、乾燥条件でも育ち、霜に対しても耐性があり、摂氏-5度までは耐性があると言われています。
カナリア諸島の1つテネリフェ島のテイデ山(スペイン最高峰)の亜高山帯針葉樹林にも生育しています。

 

その姿から「宝石の塔(Tower of Jewels)」とも呼ばれ、5月中旬から6月上旬にかけて見頃を迎えます。

 

エキウムをゆっくりと観察していると、その草丈に驚かされますが、花の数にも驚かされます。
1mを超す花穂に、赤~薄紅色の小さな花がなんと10,000~15,000個(資料によっては20,000個というものもあります)の円錐状の花が、らせん状に花を付けています。
1つ1つの花を観察すると、ムラサキ科の花であることがすぐに判ります。
ミツバチも、このエキウム・ウィルドプレッティの蜜が好きなのでしょうか、観察していると、ミツバチがエキウムの小さな花に顔を突っ込んでいる姿も観察できます。

カナリア諸島へ訪れ、エキウムを観察する際には、周りの風景やエキウムの大きさだけではなく、小さな花の1つ1つもゆっくりと観察してみてください。

エキウム・ウィルドプレッティの花

<エキウム・ウィルドプレッティが観察できるツアー>
花のカナリア諸島自然紀行
スペイン最高峰テイデ山登頂と花のカナリア諸島