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ゼラニウム・ファエウム(Geranium phaeum)

先日23日、「尾瀬国立公園の山開き」というニュースを見ました。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、尾瀬保護財団や環境省などは当面の入山自粛を求めている中、尾瀬ヶ原周辺では雪解けが進み、ミズバショウが見頃を迎えているそうです。
尾瀬は私が高山植物に興味を持ったきっかけとなった場所の1つ(北海道・大雪山、北海道・礼文島、尾瀬国立公園の3ヶ所への添乗がきっかけでした)ということもあり、1日でも早く気兼ねなく「遥かな尾瀬のフラワーハイキング」を楽しめることを願うばかりです。

 

前回に引き続きフウロソウ科フウロソウ属の一種、今回は珍しい色合いのフウロソウである「ゼラニウム・ファエウム(Geranium phaeum)」、日本の図鑑で「クロバナフウロソウ(黒花風露草)」と紹介されてる種を紹介します。

 

ゼラニウム・ファエウム(Geranium phaeum)

 

被子植物 双子葉類
学名:Geranium pyrenaicum 和名:クロバナフウロソウ(黒花風露草)
科名:フウロソウ科(Geraniaceae)
属名:フウロソウ属(Geranium)

 

世界各地に分布するフウロソウ科の花は淡い色合いのものが多いですが、今回ご紹介するゼラニウム・ファエウム(Geranium phaeum)は暗紫色が印象的なフウロソウです。
ヨーロッパ各地に分布し、平地の草原や山岳地帯などに自生します。私が観察したのはスペイン・ピレネー山脈でフラワーハイキングを楽しんでいる時でした。

 

草丈は50~80㎝で根茎をもち、茎は上部で枝分かれし、全体的に長めの白毛が確認できます。

 

根生葉はロゼット状につき、掌状に広がり15㎝ほどの大きさで5~7つに裂けています。
茎葉は互生(ごせい:茎の一つの節に1枚ずつ方向をたがえてつくこと)につき、葉に紫褐色の斑紋が広がっていることも確認できます。撮影をした際はあまりの花のキレイさに気を奪われすぎで、葉の撮影を忘れてしまったことが心残りです。

 

花期は5~8月、花は2~3㎝ほどの大きさで5枚の花弁をもち、若干後ろ向きに反り返っているのが特徴です。
暗紫色の花弁の色合いが特徴ですが、中央のおしべが突出し、おしべの周辺が白くなっており、そのことでゼラニウム・ファエウムの美しさを際立たせているように感じます。

 

開花後は他のフウロソウ科の花と同じく蒴果(さくか:果実のうち乾燥して裂けて種子を放出する裂開果のうちの一形式)をつけます。

 

日本を含む世界各地で様々なフウロソウ科の花が観察でき、各地で群生している風景は何とも言えない美しさです。
3回続けてフウロソウ科フウロソウ属の花を紹介させていただきましたが、群生するフウロソウを観察するだけではなく、一度1つのフウロソウをゆっくり、じっくりと観察してみてください。