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ウトリクラリア・フンボルティ(Utiricularia humboldtii)

今回は、ベネズエラ・ギアナ高地のチマンタ山塊のテプイの山上で観察した『ウトリクラリア・フンボルティ』(Utiricularia humboldtii)をご紹介します。

 

ウトリクラリア・フンボルティ(タヌキモ科)

 

被子植物 双子葉類
学名:Utricularia humboldtii
科名:タヌキモ科(Lentibulariaceae)
属名:タヌキモ属(Utricularia)

 

タヌキモ属(Utricularia)には、2つのタイプが存在します。
①水中に浮遊するもの:和名でタヌキモと呼ばれるもの
②湿地に自生するもの:和名でミミカキグサと呼ばれるもの

 

今回ご紹介するウトリクラリア・フンボルティ(Utiricularia humboldtii)は②ミミカキグサ類に属する大型の多年生の食虫植物です。南米大陸のベネズエラ・ギアナ高地をはじめ、ガイアナ、ブラジルに分布し、標高1,200~2,500mの間で観察できるものですが、標高300mの低地でも発見されているという資料もありました。

 

ミミカキグサと言えば、指先より小さな花という印象ですが、ウトリクラリア・フンボルティはタヌキモ属の中でも最大の花を咲かせます。初めてギアナ高地で観察した際、お客様と「ゾウのミミカキくらいの大きさ」などと話題にしていたくらいです。

 

ブロッキニアに寄生したウトリクラリア・フルボルティミミカキグサ類は、土の中へ地中茎を伸ばし、補虫袋(捕虫嚢:ほちゅうのう:捕獲用トラップ)を付けていますが、木の幹に着生したり、開けたサバンナの浅瀬や湿った土壌などに自生すると一般的に言われていますが、自生地では上の写真のように(ギアナ高地・チマンタ山塊で観察したもの)大型のブロメリア(ブロッキニア等のパイナップル科の総称)の水の溜まった葉筒内に寄生するように生育するのが特徴です。

 

葉筒内に地下茎から葉が伸びる仕組み

 

一般的な補虫嚢は0.2~2.5mmとされていますが、ウトリクラリア・フンボルティなタヌキモ属の中でも最大の捕虫嚢(1cm前後)を持つとされ、最大1.2cmのものもあるという資料もあります。また、大小2つのタイプの捕虫嚢をもつ種でもあります。
ギアナ高地で観察した際、確かに米粒より小さな補虫嚢をたくさんつけた地下茎、1cm前後の補虫嚢をいくつかつけた地下茎の両方を観察しました。下の2つの写真を比べてもらうとその大きさは一目瞭然です。

 

ウトリクラリア・フンボルティの小さな補虫嚢
ウトリクラリア・フンボルティの大きな補虫嚢
葉筒内に地下茎から葉が伸びる仕組み

補虫嚢は、アンテナ状の部分が獲物(水中のミジンコなどの微生物)を誘導する役割があり、補虫嚢が外液を取り込んで膨らむ際に微生物が補虫嚢内に吸い込まれる仕組みとなっています。取り込まれた獲物は、通常数時間内に消化酵素によって溶かされます。とある資料には、ゾウリムシが補虫嚢に取り込まれたら75分ほどで消化されるとありました。

 

ギアナ高地のテプイ山上で忽然と姿を見せるウトリクラリア・フンボルティの淡い紫色の花は目を惹く美しさですが、ミミカキグサと考えれば、その大きさに驚きます。また、自生(着生)する仕組みや補虫嚢のことを知ると、より興味深い植生となります。

 

ウトリクラリア・フンボルティに興味を持たれた方は、是非ギアナ高地へご一緒しませんか?

 

<ウトリクラリア・フンボルティに出会えるツアー>
固有種の花咲く原始境へ 太古の台地アウヤン・テプイをゆく
※私は9月26日出発コースへ添乗予定です。

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エバーラスティング・デージー(Everlasting Daisies)をもとめて西オーストラリアへ

本日は、このブログ「世界の花だより」で初めて西オーストラリアの花、『エバーラスティング・デージー』(Everlasting Daisies)と呼ばれる花をご紹介します。

 

皆さんは「エバーラスティング・デージ」という花の名前を聞いたことはあるでしょうか。「デージーなら聞いたことある!」と思われた方は多いと思います。最後に紹介するツアーを弊社前川が造成を開始するまで「エバーラスティング・デージー」という言葉は聞いたことがありませんでした。

 

現地で「イエローポンポン」と呼ばれるエバーラスティング・デージー(Everlasting Daisies)

 

被子植物 双子葉類
英名:エバーラスティング・デージー(Everlasting Daisies)
科名:キク科(Asteraceae)
属名:ムギワラギク属(Xerochrysum)/ヘリクリサム属(Helichrysum)

 

日本の約24倍の面積を誇る広大な島国オーストラリアは、動植物の変化に富み、種類も多く、どの地域を訪れても独特の植生、生態系を観察することができます。
そんな中でも西オーストラリアは最も多くの野生植物が観察でき、その種類の多さ、美しさは世界の野生植物の宝庫と言われる南アフリカにも劣らないと言われています。

 

オーストラリア大陸は2/3は砂漠地帯。
砂漠地帯や乾燥地帯に自生する植生のイメージと言えば、アメリカ大陸ではサボテン類、アフリカ大陸では多肉植物、それぞれ茎葉に水分を多く蓄えて多肉化して乾燥から身を守るように進化しているという認識ですが、オーストラリアの砂漠地帯や乾燥地帯では多肉化した植生は少なく、その代わりに根を深く張るものが多く、ムギワラギクのような、花に珪酸質を含みカサカサした乾燥花が多く自生するのが特徴です。

 

珪酸質を含みカサカサとした乾燥花は、特にキク科の花が多く、その種類は数百種にも及ぶという資料もあり、これらキク科の花を総称して「エバーラスティング」(Everlastings)、「永久花」 と呼ばれてるそうです。
「永久花」と聞くと「年中枯れずに咲き続ける」とイメージしてしまいそうですが、ある資料で「外見上の新鮮さと自然のままの色を長期にわたって保有できる事でエバーラスティングと呼ばれるようになった」とのことでした。

 

エバーラスティングと呼ばれるキク科の花は、資料によっては『ムギワラギク属』(Xerochrysum)、少し古い資料だと『ヘリクリサム属』(Helichrysum)と表記されています。どうやら、20世紀末から21世紀初頭にかけての分類見直しの結果、ムギワラギクはXerochrysum属の種ということになり、ムギワラギク属の和名もXerochrysum属を指して用いられるようになったそうです。

 

エバーラスティング・デージーと呼ばれる花々は群生をなして咲き乱れることが多いため、花のシーズンに訪れると、カラフルなデージーが一面に咲き誇る素晴らしい景観を楽しむことができます。
ワイルドフラワーの宝庫と称される西オーストラリア、エバーラスティング・デージーに興味をお持ちの方は是非西オーストラリアを訪れてみてください。

 

<エバーラスティング・デージーに出会えるツアー>
春の西オーストラリア ワイルドフラワー探訪
※8月下旬、西オーストラリアは冬から春への移ろいを迎え、州全域が色とりどりのワイルドフラワーで彩られます。

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メコノプシス・アクレアタ(Meconopsis aculeata) ~ブルーポピーをもとめて 西部ヒマーチャルへ

節分も終わり(西南西を向いて恵方巻は食べましたか?)、まもなく春を迎えようとする中、寒い日が続きますが、体調を崩されずにお過ごしでしょうか

 

突然ですが、皆さんは『ブルーポピー』を観察したことはありますか?
ブルーポピーと言っても、多種多様。
ブルーポピーと呼ばれる種は、俗にケシ科メコノプシス属に属するもので西ヨーロッパ、中央アジア、ヒマラヤの高山地帯(パキスタン、インド北部、ネパール、ブータン、中国・チベット自治区)、中国の青海省、甘粛省、雲南省と隔離分布し、50種近くの草本が確認されています。

 

メコノプシス属は花弁が青色の種だけではなく、青紫色、紫紅色、紅色(淡~暗)、白色、黄色など多彩で、気象条件などで色の変化も多いのが特徴です。また、近縁種と交雑しやすいと言われ、同定すること、個体ごとに花名を見極めるのは困難と言われています。実際、辞書を片手に観察しても混乱することがあります。

 

本日は、インドのヒマーチャル・プラデーシュ州で観察できるブルーポピー『メコノプシス・アクレアタ』(Meconopsis aculeata)をご紹介します。

 

メコノプシス・アクレアタ(Meconopsis aculeata Royle)

被子植物 双子葉類
学名:メコノプシス・アクレアタ(Meconopsis aculeata Royle)
科名:ケシ科(Papaveraceae)
属名:メコノプシス属(Meconopsis)

 

 

メコノプシス・アクレアタ(Meconopsis aculeata)は、西ヒマラヤ~チベット、インドでは北部のカシミール、ウッタラーカンド州の東側のクマーウーン、ヒマーチャル・プラデーシュ州などに分布します。
今回は、インドのヒマーチャル・プラデーシュ州を訪れるツアーで観察したものをもとに解説します。

 

直立して伸びる花茎は20~40cmほどで、高山帯の岩場や岩の割れ目、岩礫質の草地などで自生し、花茎全体に赤褐色の毛が確認でき、よく観察すると刺毛であることが判ります。
私も観察したことはないですが、資料には「地下にゴボウ状の根が長く伸びる」とあります。観てみたい気もしますが、現場でブルーポピーを掘り起こす添乗員、ガイドが居たら・・・想像しただけでも恐ろしいです。

 

基部には、長さが5~10cmほどの柄を付けた長円形の葉をつけ、葉の長さは5cmほどで羽根状に深裂し、裂片には丸みが確認できます。基部の葉に比べて上部の葉は小さい印象で、基部の葉とは違い無柄であるのも確認できます。また、花茎と同様、葉全体にも赤褐色の刺毛が確認できます。

 

花期は自生エリアによって前後はありますが、6~9月と言われ、インドのヒマーチャル・プラデーシュ州では7月に観察できました。

 

1つの花茎に5~10個ほどの花を咲かせ、花弁は丸に近い卵型の花弁を4枚付け、色は淡青色で光の加減で透きとおった色合いが何とも印象的なものです。
ただ、このメコノプシス・アクレアタの花弁の色は淡青色だけではなく、淡紫紅色の個体もあります。写真(下の写真の方が判りやすいかも)をご覧いただくと、ブルーポピーらしい淡青色の一部分に淡紫紅色の色合いが確認できます。観察する際「ブルーじゃないから残念」と言わず、色合いの違いを楽しんでください。

 

メコノプシス属のすべての種がそうではありませんが、このメコノプシス・アクレアタは一回結実性(1世代に1回しか開花・結実しないで結実後は自然に枯死してしまう植物のこと)です。

 

花の中央部に山吹色の雄しべが密集しているのが確認できますが(山吹色は雄しべの葯の部分)、その中央部分に白色の花柱(雌しべ)が確認できます。花の周辺にイガグリのように見える子房(雌しべの下部の膨らんだ部分)も確認できます。

 

次回ブルーポピーを観察する際に是非注目してほしいのが、雄しべ葯の部分を支える花糸の部分です。ご存じの方もいるかもしれませんが、この花糸も「青色」なのです。花弁に比べて少し濃い青色ですが、ブルーポピーというのは、花弁だけが蒼い訳ではないのです。私もこのことを現地フラワーガイド(四姑娘山麓の日隆のガイドだった記憶が・・・)に教えてもらったときは衝撃的でした。

 

今回は、インドのヒマーチャル・プラデーシュ州で観察できるメコノプシス・アクレアタ(Meconopsis aculeata Royle)をご紹介しましたが、ブルーポピーは奥が深いもの。またいつか別の種のブルーポピーをご紹介したいと思います。

 

<メコノプシス・アクレアタに出会えるツアー>
花の西部ヒマーチャル 最奥のパンギ渓谷を訪ねて
※多く高山植物の観察ができる7月限定ツアーで、催行間近(2月現在)です。
メコノプシス・アクレアタをもとめて西部ヒマーチャルへ出掛けてみませんか?

メコノプシス・アクレアタ(Meconopsis aculeata Royle)

 

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ガビレア・アラウカナ(Gavilea araucana)

遅くなりましたが、2025年最初の投稿となります。

 

本日は、先日パタゴニアで観察した「ガビエラ・アラウカナ」(Gavilea araucana)をご紹介します。何度も訪れているパタゴニアでなかなか観察機会に恵まれず、ようやく観察できたランの花です。

 

ガビレア・アラウカナ(Gavilea araucana)

 

被子植物 単子葉類
学名:ガビレア・アラウカナ(Gavilea araucana)
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:ガビレア属(Gavilea)

 

ガビレア・アラウカナ(Gavilea araucana)はチリ・パタゴニアのパイネ国立公園のあるマガジャネス・イ・デ・ラ・アンタルティカ・チレーナ州やアルゼンチンに分布し、湖の畔や明るい林床に自生します。
今回私が観察したのが、チリ・パタゴニアのパイネ国立公園でした。

 

草丈が30~40cm(資料には70cmに成長するものもあるとのこと)で直立し、花茎が枝分けれし、それぞれの花茎の頂に淡いクリーム色~白色の花をつけ、1つの個体に5~8個の花を咲かせます。
葉は花をつける上部には確認できず、根元の部分に数枚の根生葉を対生するようにつけ、照葉樹の葉とまでは言いませんが、光沢のある披針形の葉が確認できます。

 

ガビレア・アラウカナの花期は12月(南半球なので夏です)。
花の形状がとても印象的で、外花被片3枚と内花被片2枚から構成されています。
外花被片3枚は、上向きの背萼片が1枚、横向きに対を成すように側萼片が2枚延びており、それぞれが細長い卵型をしているのですが、先端部を「ひとつまみ」したようにみえるのが特徴的でした。また、内側に対を成すように外花被片より小さい(というより短い)内花被片2枚が確認できます。内花被片2枚、外花被片3枚とも、花茎と同じ色合いの緑色の筋が入っており、基部の方がより色濃い筋が確認できます。

 

内花被片2枚の間には唇弁が垂れ下がっており、唇弁は萼片の筋とは違い、色合いは同じ緑ですが、斑点模様になっているのがとても印象的、さらに唇の両縁がレモン色となっているのも印象的な花です。個人的にはこの唇弁の両縁のレモン色が心を惹きつける要因だと感じています。
ただ、今にして思えば、このレモン色・・・花粉だったのか?今後の宿題です。

 

大好きなパタゴニアで新年を迎えることができ、念願だったランの花「ガビレア・アラウカナ」も観察でき、催行の2025年のスタートを切ることができました。
今年も1つでも多く、世界中に咲く花々を紹介していきますので、お楽しみに。

 

<2025年:新たな花の観察へ出掛けませんか?>

花咲くブランカ山群へ
アンデスの固有種 紅色のプカ・マカをもとめて

05月07日(水) ~ 05月16日(金) 10日間(催行決定)

 

花咲くカナディアンロッキー・ハイキング
黄色いグレーシャー・リリーをもとめて
06月23日(月) ~ 07月01日(火) 9日間(催行決定)
07月17日(木) ~ 07月25日(金) 9日間

 

春の西オーストラリア ワイルドフラワー探訪
08月19日(火) ~ 08月27日(水) 9日間

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【新企画】花咲くブランカ山群へ アンデスの固有種 紅色のプカ・マカをもとめて

2024年も各地へ添乗させていただき、様々な花を観察させていただきました。

 

2024年に観察した花の中で一番の思い出は・・・、実際には比べることは難しいですが、やはり『グレーシャー・リリー』でした。
この花を観察したいというほぼ個人的な想いからツアーを造成させてもらい、実際に現場(カナディアンロッキー)に立ち、その花を目にした時は「希望が叶った」という嬉しさを感じ、少しこみあげてくるものがありました。
加えて、一番の衝撃は同じカナディアンロッキーで観察した『マウンテン・レディース・スリッパー』でした。どの資料にも「個体数が減少」とあった小ぶりで真っ白なアツモリソウを観察できた時の衝撃は忘れられません。

 

「2025年も素晴らしい花や未だ観ぬ花を観察したい!」
そんな思いを胸に下記のツアーを発表させていただきました。

 

花咲くブランカ山群へ アンデスの固有種 紅色のプカ・マカをもとめて
05月07日(水) ~ 05月16日(金) 10日間(高山植物の花咲く季節)

アンデス固有の紅色のリンドウ「プカ・マカ」

ある資料を見ている際に「紅いリンドウ科の花!?」と衝撃を受けたのが、3年前のことでした。
その花がペルー・ブランカ山群に咲いているという情報を得て、現地手配会社やフラワーガイドさんと連絡を重ね、ようやくツアーを発表することができました。

 

山麓の村・ワラスで6連泊しながら、現地の英語ガイド、さらには現地のフラワーガイド(日本語)と共にブランカ山群の絶景ポイント、高山植物の観察ポイントへ専用車にて巡るツアーです。
発表した直後から少しずつお問い合わせも増えており、気付けばまもなく催行決定という状況です。
ご興味を抱かれた方は、是非西遊旅行大阪支社へご一報ください。

「オキ・マカ」と呼ばれるリンドウ科の花
ウルタ渓谷よりブランカ山群の山々を展望

 

また、グレーシャー・リリーを観察するカナディアンロッキーのフラワーハイキングのコースも発表しておりますので、併せてご検討ください。

 

花咲くカナディアンロッキー・ハイキング 黄色いグレーシャー・リリーをもとめて
06月23日(月) ~ 07月01日(火) 9日間(催行決定:高山植物の花咲く季節)

グレーシャー・リリー(Erythonium grandiflorum)
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インディアン・ペイントブラシ(Castilleja miniata)

今年も10月末になり、北海道や山形県の月山で初雪・初冠雪のニュースを見たかと思えば、翌日には全国的に夏日に近い気温となり、何とも不思議な天気が続いています。このブログも半袖シャツを着ながら作成しています。

 

本日はカナディアンロッキーで観察した『インディアン・ペイントブラシ』(Castilleja miniata)をご紹介します。

 

インディアン・ペイントブラシ(Castilleja miniata)

 

被子植物 単子葉類
学名:Castilleja miniata
和名:インディアン・ペイントブラシ
英名:Great Red Paintbrush
科名:ハマウツボ科/ゴマノハグサ科(Orchidaceae)
属名:カスティレア属(Castilleja)

 

インディアン・ペイントブラシ(Castilleja miniata)は、北米大陸西部とカナダ中部に分布する多年草で、湿った川岸や草地、林床など、様々な生息環境に適応して自生します。
6月末に訪れたカナディアンロッキーでも各所で観察することができました。ある資料では、カナディアンロッキーの中で最も色の種類の多い花と紹介されています。確かに、現場で観察をした際に濃い色合い~淡い色合いまで、観察するたびに「ここのは少し色が濃いね」などとお客様とお話ししながら観察を楽しんでいました。

 

ペイントブラシという名のとおり、その姿が「絵筆」に見立てられて名付けられたそうです。日本でも女性の口紅を塗る筆に見立てられて「ケショウヤナギ」がありますが、それらと発想は同じようです。

 

草丈は20~70cm、濃い紫色の花茎を真っすぐに伸ばし(分岐しないそうです)、茎頂付近(花序の付近)に若干の繊毛が確認できました。葉は切れ込みなどのない披針形で花茎の根元付近から茎頂まで規則正しく付けています。

 

花期は6~8月。まっすぐに伸びた茎頂に鮮やかな赤色~淡い橙色の色合いが特徴的です。ただ、赤色~淡い橙色に見える部分は花弁ではなく、萼片でもなく『苞葉』(芽やつぼみを包んでいる特殊な形をした葉)です。よく観察すると苞葉には切れ込みが確認でき、苞葉の根元部分に花茎と同様に若干の繊毛が確認できます。

 

この苞葉の色合いには変異が多く、ピンク色やウエスタン・ペイントブラシと呼ばれるクリーム色の個体もあるそうです。ある資料には、「カスティレア属はインディアン・ペイントブラシの総称」と紹介され、200種ほどあるそうです。また、そのほとんどが北米西部に分布するとのことです。

 

花は苞葉の内側に黄緑色の筒状花があり、花弁のくちばしは徐々に苞葉の左記へ突き出てくるようです。写真をご覧いただくと淡い橙色の苞葉から黄色い筒状の花(蕾かな?)が突き出ているのが判るかと思います。

 

インディアン・ペイントブラシは、他の植物の根に自分の根を規制して栄養を取っているそうです。そのため、資料によっては「半寄生性」と紹介されています。そういった特性もあり、インディアン・ペイントブラシは異種交配しやすく中間種が生まれやすいため、分類を困難にしているそうです。観察する場所によって色合いに変化があったのも頷けます。

 

これまでカナディアンロッキーの花をいくつか紹介してきました。
現在2025年シーズンのツアー造成を進めており、まもなく弊社ホームページにて発表予定です。ロッキー山脈の風景と共に可憐に咲くカナディアンロッキーの花々に興味のある方は・・・もう少しお待ちください。

 

インディアン・ペイントブラシ(Castilleja miniata)
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ヴィーナス・スリッパー(Calypso bulbosa)

以前、カナディアンロッキーに咲く『レディース・スリッパー』、さらには『北米と南米に咲くレディース・スリッパー』についてご紹介しました。
それらの花々の紹介ブログを作成する中、「そういえば、カナディアンロッキーでもう1つスリッパーと紹介のあったな~」と思い出し、今回は『ヴィーナス・スリッパー』(Calypso bulbosa)という花をご紹介します。

 

ヴィーナス・スリッパー(ラン科ホテイラン属)

 

被子植物 単子葉類
学名:Calypso bulbosa
英名:ヴィーナス・スリッパー(Calypso bulbosa)
フェアリー・スリッパー(Fairy slipper)
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:ホテイラン属(Calypso)

 

『ヴィーナス・スリッパー』(Calypso bulbosa)は、日本でいうところの『ホテイラン』(布袋蘭)。色々と調べてみると、日本のホテイラン(ヒメホテイラン)の変種(近縁種)のようです。

 

北米大陸のカナダではブリティッシュ・コロンビア州やアルバータ州からニューファンドランド州まで比較的広範囲に分布し、アメリカ合衆国でもアラスカ、カルフォルニア州など北西部に分布します。また、ユーラシア大陸にも自生するという資料もありました。

 

カナダでは『ヴィーナス・スリッパー』と呼ばれており、ローマ神話の愛と美の女神『ヴィーナス』の名が付く花です。属名『Calypso』はギリシャ神話に出てくる蒼穹を支える巨人アトラースの娘で海の女神。『隠す』という意味があります。
その他、『妖精のスリッパー』(Fairy slipper)とも呼ばれています。

 

一般的に花期は5~6月。針葉樹林の林床、日陰を好んで自生・群生し、カナディアンロッキーの中で最初に咲くランの1つと紹介されています。

 

草丈は10~20cmほど。根元に濃い色合いで3~5cmほどの楕円形の葉をつけています。単子葉類・ラン科らしく、平行に伸びる葉脈がはっきりと見て取れます(写真には写っていませんが・・・)

 

花弁に近い色~濃紅色の花茎を伸ばし、花茎の頂部に垂れ下がるように1つの花を咲かせます。
長さ1~2cmほどの萼片(中3枚)と側花弁(両脇2枚)はピンク色~紫色、日本のホテイランより若干濃い印象の色合いです。
また、中央に同じ色合いで帽子のひさしのようになって花弁状に見える部分は雌しべと雄しべが合体したずい柱です。袋状になっている唇弁のフタのような構造になっており、ずい柱の内側に花粉の塊がついています。
特徴的な唇弁は1~3cm、萼片や側額弁とほぼ同じ長さで大きく下に垂れ下がっています。唇というより『舌』と表現したほうが良い気もします。
唇弁は先端部(下部)は白色(薄いピンク色のものの)ですが、基部の部分は線状で濃い紫色の斑紋があるのが特徴です。この線状の斑紋も日本のホテイランに比べて濃い印象ですが・・・個体差かな?
唇弁の中央に3列の黄色毛(花粉塊かな?)があり、これがこの花の色合い(見た目)を印象的なものにしてくれています。

 

ヴィーナス・スリッパー(Calypso bulbosa)には、日本のホテイランも含め、様々な品種(変種、自然交雑種など)があるそうです。
日本でも観察できるホテイランと同系種ですが、遠く離れたカナディアンロッキーで観察すると、一味違って見えるのが不思議です。

 

ヴィーナス・スリッパー(ラン科ホテイラン属)

 

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北米と南米に咲く『レディース・スリッパー』の違い

8月も終わろうとしていますが、8月はブラジルのレンソイス、カナダのユーコンと2つの添乗業務が続いたため、嫁さんとは合間に買い物に出掛けたくらいで、特にどこにも出掛けられませんでした。のんびり温泉旅行でも計画したいと思います・・・もう少し涼しくなってから。

 

前々回は『イエロー・レディース・スリッパー』、前回は『マウンテン・レディース・スリッパー』という、北米大陸のカナディアンロッキーで観察した花を紹介しましたが、英名や現地名で『レディース・スリッパー』(Lady’s slipper)と呼ばれる花が南米大陸の最果ての地パタゴニアにも存在することはご存じでしょうか。

 

過去の『世界の花だより』の中でも紹介させていただきましたが、今回は北米大陸に咲く『レディース・スリッパー』と南米大陸に咲く『レディース・スリッパー』、それぞれの違いをご覧いただきたいと思います。

 

◆北米大陸・カナディアンロッキーに咲く『レディース・スリッパー』

イエロー・レディース・スリッパー(Cypripedium parviflorum)

①イエロー・レディース・スリッパー(Cypripedium parviflorum)
こちらはカナディアンロッキーに咲くラン科アツモリソウ属の黄色いアツモリソウです。現地では『婦人のスリッパ―』と呼ばれており、先住民族の酋長の娘がウサギを助けるために自身が履いていた履き物を与えたという言い伝えから、『モカシン』(バッファローの皮で作った靴)とも呼ばれています。

 

 

マウンテン・レディース・スリッパー(Cypripedium montanum)

②マウンテン・レディース・スリッパー(Cypripedium montanum)
こちらもカナディアンロッキーに咲くラン科アツモリソウ属の白い色のアツモリソウです。マウンテン・レディース・スリッパーも現地では『婦人のスリッパ―』と呼ばれており、その他『白い婦人のスリッパー』『女王のスリッパー』などと紹介する資料もありました。

 

◆南米大陸・パタゴニアに咲く『レディース・スリッパー』

ビフローラ・カルセオラリア(Calceolaria biflora)

①ビフローラ・カルセオラリア(Calceolaria biflora)
花名を『レディース・スリッパー』、女性の履き物に例えられた花を最初に観察したのが『ビフローラ・カルセオラリア』(Calceolaria biflora)で、現地では『トパトパ』と呼ばれ、こちらも『婦人のスリッパー』や『女王のスリッパー』と呼ばれています。こちらの花は南米大陸の最果ての地パタゴニアに咲くゴマノハグサ科キンチャクソウ属の花で、確かに花の容姿は『巾着袋』に似ています。

 

ユニフローラ・カルセオラリア(Calceolaria uniflora)

②ニフローラ・カルセオラリア(Calceolaria uniflora)
ビフローラ・カルセオラリア(現地名:トパトパ)と同じく南米大陸の最果ての地パタゴニアに咲くゴマノハグサ科キンチャクソウ属の花。こちらは『レディース・スリッパー』と呼ばれている訳ではありませんが、1831年から5年にわたりビーグル号の世界一周航海に加わったチャールズ・ダーウィンに因み『ダーウィンのスリッパ』(Calceolaria darwinii)と呼ばれています。この花は、ダーウィンが発見したと言われているそうです。

 

北米大陸・カナディアンロッキーで観察できる『レディース・スリッパー』は共にラン科アツモリソウ属ですが、一方で南米大陸のパタゴニアで観察できる『レディース・スリッパー』はゴマノハグサ科キンチャクソウ属。
科名や属名に違いはあれど、遠く離れた4つの花を女性の履き物(うち1つは男性のスリッパーですが、そのへんはご愛嬌)に例えるところはオシャレに感じるところです。因みに、南米大陸・パタゴニアで観察できる2つの花の学名『Calceolaria』(カルセオラリア)という名前は、ラテン語で小さな靴(スリッパ)を意味する「カルセオルス」という言葉に由来します。

 

いかがでしたか、スリッパーに例えられた4つの花。皆さんはどの花が好みだったでしょうか。
北米大陸・カナディアンロッキーに咲く2種の花が好みの方は、来シーズンの『花咲くカナディアンロッキー・ハイキング』の発表をお待ちください。
南米大陸・パタゴニアに咲く2種の花が好みの方は、すでに『パタゴニアの旅』は発表しておりますので、すぐに弊社大阪支社へご連絡を!

 

2つの『Calceolaria』(カルセオラリア)が観察できるパタゴニアの旅やパタゴニアの魅力を紹介した特集ページ『風と氷河の大地パタゴニア』を是非ご覧ください。

 

そういえば、カナディアンロッキーにもう一つ『スリッパーの花』が・・・そろそろお時間となりましたので、その話はまた次回ということで。

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マウンテン・レディース・スリッパー(Cypripedium montanum)

8月3日、大阪の『なにわ淀川花火大会』が行われました。
今シーズンも嫁さんと我が家のベランダから次々と上がる花火を鑑賞することができました。ベランダや廊下から同じマンションの住民の方々が鑑賞しており、最後の大花火が終わった時、マンション中に拍手喝采が広がったのが印象的で、1つの夏の風物詩が終わったと感じた瞬間でもありました。

 

本日は『マウンテン・レディース・スリッパー』(Cypripedium montanum)をご紹介します。6月に同行させていただいたカナディアンロッキー・ハイキングにおいて、黄色いアツモリソウ『イエロー・レディース・スリッパー』の観察を楽しんでいた際にその傍らに咲いていた、個人的に最も衝撃を受けた花の1つでした。

 

マウンテン・レディース・スリッパー(Cypripedium montanum)

 

被子植物 単子葉類
学名:Cypripedium montanum
英名:マウンテン・レディース・スリッパー(Mountain Lady’s Slipper)
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:アツモリソウ属(Cypripedium)

 

今回ご紹介する『マウンテン・レディース・スリッパー』(Cypripedium montanum)は、カナダでは、ブリティッシュコロンビア州、アルバータ州、サスカチュワン州、アメリカ合衆国ではアラスカ州やカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州、アイダホ州、モンタナ州などに分布します。
ただ、先日ご紹介したイエロー・レディース・スリッパー(Cypripedium parviflorum)に比べて個体数は少ないそうです。私が6月に訪れたアルバータ州やブリティッシュ・コロンビア州でも絶滅を危惧されている花の1つで個体の保全活動に努めているという資料もありました。

 

マウンテン・レディース・スリッパーは、林床内の湿った場所に自生し、草丈は10~40cmほど。イエロー・レディース・スリッパーに比べて大きな大差はありませんが、ほんの少し草丈が高かった印象です(観察した個体に限ったことかな?)。

 

葉はイエロー・レディース・スリッパー同様、披針形の葉が4~5枚の互生して付けています。

 

花期はカナディアンロッキー周辺では標高によって差はありますが、7月頃。茎の頂部に1~3つほど花をつけるという資料が多かったですが、私たちが観察した個体は花を1つ付けたものだけでした。

 

袋状の唇弁は3cm弱、白く淡い色合いの唇弁と帽子のひさしのように垂れ下がる鮮やかな黄色の背萼片との色の組み合わせが何とも言えない魅力を感じさせるものでした。袋状の唇弁をよく見ると「赤い斑点」が・・・これも酋長の娘のやさしさの跡(血の跡)なのかな?

 

袋状の唇弁の両脇に垂れ下がるように伸びる部分は側花弁は、イエロー・レディース・スリッパーと同じくひねりが入る特徴的なものでした。

 

6月に実施した『花咲くカナディアンロッキー・ハイキング 黄色いグレーシャー・リリーをもとめて』のツアー造成をするにあたり、グレーシャー・リリーを観察したいという想いと同時に「白いアツモリソウ=マウンテン・レディース・スリッパー」を観察したいという想いもありました。ただ、どの資料をみても「個体数が少ない」という文言が多く、ツアーページ内で紹介することを断念・・・いつしかその想いを胸にしまい込んでいました。
それだけに今回のマウンテン・レディース・スリッパーを見つけた時の衝撃と感動・・・添乗員という立場を忘れ、夢中になって観察・撮影を楽しませていただきました。

 

そう言えば『レディース・スリッパー』って名のついた花・・・どこかで聞いたことがある方もいらっしゃるのでは??
私の大好きな『最果ての地』にも・・・。そろそろお時間が来たようなので、この続きは次回。

 

マウンテン・レディース・スリッパ―(ラン科アツモリソウ属)
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イエロー・レディース・スリッパー(Cypripedium parviflorum)

気付けばパリ・オリンピックが開幕しました。東京オリンピックか3年(延期になったため)が経過していたのかと思うと、時が過ぎるのが早い、早すぎる気もします。

 

本日は、カナディアンロッキーで観察した黄色いアツモリソウ『イエロー・レディース・スリッパー』(Cypripedium parviflorum)をご紹介します。

 

イエロー・レディース・スリッパー(Cypripedium parviflorum)

 

被子植物 単子葉類
学名:Cypripedium parviflorum
英名:イエロー・レディース・スリッパー(Yellow Lady’s Slipper)
現地名:婦人のスリッパ―、モカシン
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:アツモリソウ属(Cypripedium)

 

みなさん、「アツモリソウ」と言えば何色をイメージされるでしょうか。
ブログにてこれまで紹介したアツモリソウは白色の『レブンアツモリソウ(礼文敦盛草)』と紅色の『ホテイアツモリソウ(布袋敦盛草)』の2種、今回は3種目の黄色いアツモリソウをご紹介します。

 

今回ご紹介する『イエロー・レディース・スリッパー』(Cypripedium parviflorum)は、カナダのユーコン州~ブリティッシュコロンビアを経て東部海岸地帯~ニューファンドランドまで、アメリカはアラスカ南東部~ワシントン州、オレゴン州を経て東部海岸まで、南はルイジアナ州~テキサス州、ニューメキシコ州まで、アリゾナ州にも分布しているようで、かなり広範囲に分布します。また、分布が広いため個体差が幅広く、草丈や花色、形に様々な変化がでるようです。
今回はカナダ・アルバータ州のバンフ国立公園、ブリティッシュ・コロンビア州のヨーホー国立公園で観察することができました。

 

一般的に花期は5~7月。林床内の湿った場所などを好み自生し、草丈は10~30cmほど。ある資料には茎や葉に微毛が確認できるとありましたが、花の撮影に夢中になり過ぎて確認することができませんでした。来シーズンの宿題です。

 

その微毛が確認できるという葉の長さ5~10cmほどの披針形、4枚前後の葉を互生して付けていましたが、日本で観察したレブンアツモリソウ、サハリン南部で観察したホテイアツモリソウの若干丸みのある楕円形の葉に比べて、シュッとした印象を持ちました。また、花のすぐ後ろに苞葉が1枚付いています。

 

茎の頂部にアツモリソウの特徴である袋状(唇弁)の花を1つ付けます。
この種の資料にも「稀に2つ付ける」とありましたが、今回観察したバンフ国立公園やヨーホー国立公園では、2つ付けた個体は確認できませんでした。

 

アツモリソウ最大の特徴である花の袋状の部分(唇弁)は3cm弱とレブンアツモリソウに比べて一回りも二回りも小さい印象。ここまで「黄色いアツモリソウ」と紹介していましたが、色合いは先日紹介した『グレーシャー・リリー』と同様、レモンイエローという表現がぴったりの色合いです。

 

袋状の唇弁の両脇に垂れ下がるように伸びる部分は側花弁、2枚の側花弁の真ん中から帽子のひさしのように垂れ下がるのが背萼片。レブンアツモリソウやホテイアツモリソウの側花弁や背萼片は袋状の唇弁とほぼ同色ですが、このイエロー・レディース・スリッパーの側花弁は唇弁と全く色合いが異なり、薄黄緑色~赤茶~茶色の色合いとなり、色合い以上にユニークだったのが、側花弁がらせん状に捻りが入っていたことです。

 

もう一度イエロー・レディース・スリッパーの写真をご覧ください。
袋状の唇弁に『赤い斑点』があるのが確認できませんか?この赤い斑点、現地では面白い言い伝えが残っていましたので、最後にご紹介します。

 

昔、ある先住民の酋長の娘が森で遊んでいたら、1匹のウサギが足に怪我を負い、涙を流して泣いていたそうです。
可愛そうに思った娘は、ウサギがこれ以上足を痛めないように彼女の穿いていた『モカシン』(バッファローの皮で作った靴)をあげたそうです。
その後、ウサギと別れた娘は集落へ戻ったのですが、ウサギにモカシンをあげて裸足になった娘の足の裏には擦り傷ができ、それでも集落を目指して森を歩き続ける中、あまりの痛さと疲労で森の中で倒れ、そのまま気を失ってしまいました。
しばらくして、小鳥がこの娘を見つけ、この心優しい娘を助けてくれるよう、偉大な森の精霊にお願いしました。
娘が目を覚ますと、木の幹に美しい黄色いモカシンが吊るされており、娘は血が出ている足にこのモカシンを履き、無事に集落へ戻ることができたそうです。
もうお気づきかと思いますが、イエロー・レディース・スリッパーの赤い斑点は、森の精霊からプレゼントされたモカシンを履いた心優しい娘の血の跡と言われています。

 

今回、ツアー前半のバンフ国立公園で観察でき、後半のヨーホー国立公園でも観察できました。後半のヨーホー国立公園でイエロー・レディース・スリッパーの観察に夢中になっていると、その傍らに! 何と・・・!?
そろそろお時間のようなので、この続きはまた次回。

 

イエロー・レディース・スリッパー(ラン科アツモリソウ属)
イエロー・レディース・スリッパー(ラン科アツモリソウ属)