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念願だったステゴレピス・ガイアネンシス(Stegolepis guianensis)

先日は、この一年でより一層強い想いが芽生えた花として『トロリウス・リラキヌス』(Trollius lilacinus)をご紹介しましたが、本日は2023年に長年の念願が叶い出会うことができた花の1つである『ステゴレピス・ガイアネンシス』(Stegolepis guianensis)の花をご紹介します。

 

ステゴレピス・ガイアネンシスの花(Stegolepis guianensis)

被子植物 単子葉類
学名:ステゴレピス・ガイアネンシス(Stegolepis guianensis)
科名:ラパテア科(Rapateaceae)
属名:ステゴレピス属(Stegolepis )

 

『ステゴレピス・ガイアネンシス』という名を聞くと「恐竜の名前なの?」と思われる方も・・・いるとか、いないとか。ただ、『ガイアネンシス』と聞くと、察しが付く方もいるかもしれませんが、ギアナ高地の固有種の1つです。

 

実は、今回ご紹介する花『ステゴレピス・ガイアネンシス』(Stegolepis guianensis)は一度過去にご紹介した花の1つです。
まだご覧になっていない方は、まずはそちらの紹介ブログから先にご覧ください。

051.ステゴレピス・ガイアネンシス(Stegolepis guianensis)

 

前回のブログ(2020.04.25更新)では、2018年11月に実施したチマンタ山塊の山上で植生の観察を楽しむツアーで観察した際の写真を掲載しましたが、苞葉に包まれた状態の個体(写真)しか紹介できませんでした。
その際にも開花したステゴレピス・ガイアネンシスを観察したのですが、個体に近づくことができずカメラレンズをズームにしてようやく確認できる程度、肉眼で観察したとは言い難い状況での観察でした。

 

2018年11月以降、ベネズエラでの情勢悪化に伴い、長らくギアナ高地のツアーを実施できておらず、さらには『悪夢のコロナウィルスによる空白の3年』もありました。
そんな中、弊社では5年ぶりとなる2013年10月に『秘境ギアナ高地をゆく』を実施させていただき、私も添乗員として同行させていただきました。
5年ぶりのギアナ高地に心躍らせる中、5年ぶりのギアナ高地の自然に触れる喜びとともに、私が密かに抱いていた想い(目的)が「ステゴレピス・ガイアネンシスの花を観察する」ことでした。

 

エンジェルフォール遊覧飛行を終え、グラン・サバナで各地を流れる滝の数々を見学し、チバトンというエリアの宿泊施設に到着した日のことです。
道中で車の調子が悪くなったため、チバトンの宿泊施設で車の修理・チェックをすすめるスタッフの脇で別のスタッフと作戦会議をしている時でした。
そのスタッフの背中越しに黄色(山吹色)の花が目に留まりました。作戦会議の途中でしたが、話を遮り、黄色い花に近づいてみると、私の身長(174cmです)ほどの草丈の花茎の頂部に直径2cmほどの小さな花を咲かせるステゴレピス・ガイアネンシスを発見ました。

 

実は、作戦会議をしていたスタッフというのは、2018年11月にチマンタ山塊へ同行してくれたスタッフで「散々観察したやん!」と言っていましたが、「あの時は肉眼では観察できなかったから、念願の花やねんって」と伝えると(もちろん関西弁ではなく英語で)、彼も私の思いを汲んでくれ、作戦会議は後にして夢中になって撮影を楽しませてもらいました。

 

ステゴレピス・ガイアネンシスは、花茎の頂部に頭状に集まった花序をつけて2枚の発達した苞葉(ほうよう:蕾を包むように葉が変形した部分)に包まれているのですが、頂部に可憐で小さな花を咲かせます。この日は1輪だけ可憐に咲く個体がいくつかあり、どれも素晴らしい色合いで、3枚の萼と3枚の花弁を有していることがハッキリ確認できる花でした。

 

2023年、5年ぶりにギアナ高地のツアーを再開できたこと、添乗員として同行させてもらったことが私にとって一番の出来事でした。
ギアナ高地のツアーは2024年も発表を予定しておりますので、ギアナ高地に興味がある方も、ギアナ高地の植生に興味がある方も楽しみにしておいてください。

 

2024年はどのような年になるのでしょうか。実は現在『カナディアンロッキーのフラワーハイキング』のツアーを造成中です。発表までまもなくです。
2024年も新たな植生、新たな花に出会えることを願うばかりです。

 

ステゴレピス・ガイアネンシス(Stegolepis guianensis)
ステゴレピス・ガイアネンシス(Stegolepis guianensis)②
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ドロセラ・ロライマエ(Dorosera roraimae)

先日ネットニュースで福岡県八女市にある樹齢600年を超えた国の天然記念物「黒木の大藤」を観賞する『八女黒木大藤まつり』がコロナウィルスの影響で中止、悲しいことに藤の花が刈り取られてしまったということでした。
外出自粛のゴールデンウィークも終盤となりました。そんな中、非常事態宣言が5月末まで延長されました。近所の花や、世界各地での高山植物の鑑賞などを楽しむことのできる日が1日でも早く訪れることを願いながら、頑張って乗り越えましょう。

 

本日も前回に引き続き、ギアナ高地の食虫植物の1つ「ドロセラ・ロライマエ(Dorosera roraimae)」をご紹介します。

 

ドロセラ・ロライマエ(Dorosera roraimae)

 

被子植物 双子葉類
学名:ドロセラ・ロライマエ(Dorosera roraimae)
和名:モウセンゴケ(毛氈苔)
科名:モウセンゴケ科(Droseraceae) 属名:モウセンゴケ属(Drosera)

 

ドロセラ・ロライマエ(Dorosera roraimae)は、ブラジル、ガイアナ、ベネズエラ原産、ロライマエという学名でお気づきの方も多いかと思いますが、ギアナ高地固有のモウセンゴケです。
今回掲載させていただく写真は、2018年11月にギアナ高地のチマンタ山塊(ベネスエラ)で観察・撮影をしたものです。

 

1~2㎝ほどの葉柄(ようへい:葉身と茎を接続している小さな柄状の部分)がロゼット状に伸び、先端に腺毛(せんもう:先が球状になった毛のこと)のある丸い捕獲葉をつけています。腺毛からはネバネバとした酸性の粘液を分泌し、小昆虫を捕まえ消化吸収し、栄養源として育ちます。

 

ドロセラ・ロライマエの茎の高さは5~10㎝弱と短く、他の地域の種と大きな差はありません。
ただ、他の地域の種と違い、古くなった(枯れた)捕獲葉が下向きに垂れた後に株立ちした状態になり、その株立ちとなった部分から新たなドロセラ・ロライマエが自生し始めるのが特徴です。

 

株立ちのドロセラ・ロライマエを「高床式モウセンゴケ」と現地で呼んでいました。

 

古い株立ちの上に自生するドロセラ・ロライマエを観察すると、茎丈が非常に高い種であると勘違いしてしまいそうになります。現地で、株立ちの状態のドロセラ・ロライマエを観察した際、お客様と「高床式モウセンゴケ」と名付けたのを覚えています。

 

モウセンゴケの花といってもあまりイメージできない方も多いと思います。私もモウセンゴケというものを初めて観察した(立山・弥陀ヶ原でした)際には、捕獲葉自体が花と思っていました。

 

小さな蕾をつけたドロセラ・ロライマエ(Dorosera roraimae)

 

ドロセラ・ロライマエは、茎の根元近くで直立または湾曲した長さが8〜20cmの軸の先に白またはピンク色の小さな花を咲かせます。
私は蕾の状態までしか観察したことがなく、小さな花の開いたドロセラ・ロライマをいつの日か観察したいものです。

 

茎の根元から湾曲した軸を伸ばすドロセラ・ロライマエ

 

 

 

 

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ブロッキニア(Brocchinia)

先日、嫁さんと買い物へ行った際、近所の公園で花咲く「のだふじ」を観賞しました。
外出自粛と言われている時期でしたが、淡い藤色や鮮やかな白色ののだふじの花を観て、少し心が癒された瞬間でした。1日でも早く、気兼ねなく散歩を楽しめる日に戻ることを願うばかりです。

 

前回に引き続き、ギアナ高地の植生の1つ「ブロッキニア(Brocchinia)」をご紹介します。

 

ブロッキニア(Brocchinia)

 

被子植物 単子葉類
学名:
・ブロッキニア・レズクタ (Brocchinia reducta)
・ブロッキニア・ヘクチオイデス(Brocchinia hectioides)
科名:パイナップル科(Bromeliaceae) 属名:ブロッキニア属(Brocchinia)

 

ブロッキニア(Brocchinia)は、ギアナ高地に自生する食虫植物の1つです。
あまり聞き慣れない「パイナップル科(Bromeliaceae)」の植物で、葉腋に水を溜める特徴を持ち、その中でも上記で記載したブロッキニア・レズクタ(Brocchinia reducta)とブロッキニア・ヘクチオイデス(Brocchinia hectioides)の2 種のみが、食虫習慣があるとして、1984 年に食虫植物の仲間入りをしたそうです。

 

葉は上に向かって真っすぐに伸び、形状は長い剣状、断面はU字型にカーブしているため、葉が重なり合って筒状になっています。高さは50㎝から1mにも及ぶものもあります。

 

筒状のブロッキニアを真上から撮影

 

数枚の葉が重なり合い、その中心に水を溜め、その水は甘い香りを放ち虫を誘引するようです。葉の内側はクチクラ質(植物においては表皮の外側を覆う透明な膜で蝋を主成分とするもの)のため、中に入りこんだ虫が逃げられないような構造になっています。
黄緑色の葉の色合いが、広いグラン・サバンナでは非常に目立ち、虫をたくさん捕らえられているとも言われています。

 

溜まった水は強い酸性であり、その水で昆虫を殺し、液中に共生しているバクテリクテリアが捕まった昆虫を分解し、それを栄養源にしているようです。ギアナ高地では、ブロッキニアを分解して中に溜った昆虫(大半が蟻でした)も観察し、その量に驚かされました。

 

ブロッキニアを分解すると、中には蟻など昆虫の死骸がたくさん確認できました

 

筒の内側には、消化液を分泌する腺毛(無柄腺)があり、消化液は分泌せず、消化酵素の分泌も確認されていないと認識していたのですが、このブログを作成している中で色々と調べていると、ブロッキニア・レズクタ(Br.reducta)には「ホスファターゼ」という消化酵素を分泌していることが最近の研究で報告されているそうです。まだまだ勉強の余地があるようです。

 

私はこれまで幾度となくギアナ高地へ添乗させていただきましたが、2018年11月以来訪れていません。ベネズエラの情勢が安定し、1日でも早くギアナ高地の絶景と植生を楽しめるようになってほしいものです。

 

ブロッキニアの群生の向こうにはロライマ山
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ステゴレピス・ガイアネンシス(Stegolepis guianensis)

先日、天気予報サイトにて「のだふじ前線」のニュースが掲載されていました。
私の近所ののだふじも開花が始まり、淡い紫の藤の花が何とも言えない美しさです。今年の花見は諦めないといけない状況なのが残念です。
藤の花は春の終わりから夏の初めにかけて咲きます。新緑のシーズンを迎えるころ、気兼ねなく外出を、散歩を楽しめるよう、1日でも早い終息を願うばかりです。
※天気サイト「tenki.jp」は日本各地の花の開花ニュースや興味深い花の話なども掲載されており、オススメです。

 

本日は南米の中でも「秘境の代名詞」ともいえる場所であり、独特の植生が観察できるギアナ高地の花の1つ「ステゴレピス・ガイアネンシス(Stegolepis guianensis)」をご紹介します。

 

ステゴレピス・ガイアネンシス(Stegolepis guianensis)

被子植物 単子葉類
学名:ステゴレピス・ガイアネンシス(Stegolepis guianensis)
科名:ラパテア科(Rapateaceae) 属名:ステゴレピス属(Stegolepis )

 

ギアナ高地には約4,000種の植物が分布し、うち75%が固有種とも言われています。
有名なガラパゴス諸島の固有種が53%とも言われ、いかにギアナ高地が独自の進化を遂げてきたのかが解ります。

 

ステゴレピス・ガイアネンシス(Stegolepis guianensis)は、ラパテア科の一種。
ラパテア科(Rapateaceae)は、単子葉類の1つであるイネ目(Poales)に属します。南米と西アフリカの熱帯地帯に約100種が分布し、西アフリカの一種を除き、南米に自生し、多くの属はギアナ高地の固有属です。
ステゴレピス・ガイアネンシスも「ガイアネンシス(guianensis)」の名前からも解るとおり、ギアナ高地の固有種です。

 

ステゴレピス・ガイアネンシスの多くは湿地帯や岩場の隙間などに生息し、高さは60㎝~1mほどで、大きいものになると2m近くまで成長するものもあるそうです。

葉は長楕円形で少し肉厚、葉は根元で重なり合い、茎を包む葉鞘(ようしょう:葉の基部が鞘状になり茎を包む部分)になる葉が多数あり、長いもので1m以上のものもあります。

花茎の頂部に頭状に集まった花序をつけ,花序は2枚の発達した苞葉(ほうよう:蕾を包むように葉が変形した部分)に包まれています。

花は1~2㎝と小型で,3枚の萼と3枚の花弁を有しています。

 

2018年11月、ブラジルとの国境に位置するサンタ・クルスとエンジェル・フォールとの間に位置するチマンタ山塊の山上で植生の観察を楽しむツアーに同行させていただいた際、今回掲載した写真を撮影しました。
手元には苞葉に包まれた状態の写真しかなく、当日には開花したものも観察したのですが・・・撮影できる状況ではなかったので、開花したステゴレピス・ガイアネンシスの写真を掲載できないのが残念です。
現在、ベネズエラの情勢悪化の影響でツアー実施ができない状況ですが、ツアーが再開され、ステゴレピス・ガイアネンシスの花の撮影ができた際、改めてご紹介したいと思います。

 

ステゴレピス・ガイアネンシス(Stegolepis guianensis)②