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白亜の大砂丘レンソイスで見つけた可憐な花

久々の花ブログの更新です。長らく更新ができず、申し訳ありませんでした。
お客様からも最近更新しなかったことで「もうやらないの?」という声も多数いただきました。中には「退社したの?」という方も(そう思っていた社員も)・・・まだまだ辞める予定は有りませんので、ご安心を。
ネタはたくさんあるのですが、種(写真)がなく、花を咲かせること(ブログ更新)ができなかったのが理由でした。
これからものんびりとしたペースで更新していきますので、お楽しみに。

 

本日は、数年ぶりに海外の花、2022年に訪れたブラジル・レンソイスで観察した「アメリカコトリミミカキグサ(Utricularia subulata L.)」をご紹介します。「えっ、レンソイスでお花?」と思われた方もいるのではないでしょうか。

 

アメリカコトリミミカキグサ(Utricularia subulata L.)

 

被子植物 双子葉類
学名:Utricularia subulata L.
別名:スブラタ と紹介される資料もありました
科名:タヌキモ科(Lentibulariaceae)
属名:タヌキモ属(Utricularia)

 

2022年8月に「白亜の大砂丘レンソイス縦断ハイキング」へ添乗員として同行させていただいた際、誰もいないレンソイスの⾵景にも驚きましたが、⼀番驚いたのが砂丘の上に咲く⼩さな花の存在でした。私⾃⾝そんなに何度もレンソイスに訪れている訳ではないですが、日帰り観光で数回訪れた中で花の存在を確認したことがなかったので、本当に驚きました。⾼⼭植物好きな私にとってはラグーンの⾵景以上に興奮した瞬間でした。

 

アメリカコトリミミカキグサ(Utricularia subulata L.)は、タヌキモ科タヌキモ属に属する食虫植物です。
「タヌキモ」と「ミミカキグサ」という名前は耳にすることがありますが、両方ともタヌキモ科タヌキモ属。「ミミカキグサとタヌキモは同じ」と思っている方も多いようです(私もその一人でした)。
タヌキモ属(ウトリクラリア:Utricularia) には、①水中に浮遊するものと②湿地に生えるものの2タイプが存在し、①をタヌキモ、②をミミカキグサという和名で区別しているそうです。

 

アメリカコトリミミカキグサは、南米、中米、アフリカ、東南アジア、オーストラリア大陸東部など広く分布し、同属の中では最も広く分布する種と紹介される資料もありました。また、日本でも帰化されたもの(外来食虫植物)があるそうで、私が調べたもので北海道、岡山県などで確認がされているとのことでした。

 

私が観察したのは、ほんのりと地下水が染み出たレンソイス砂丘の麓でした。
花序は直立し、高さ15~20cmほど、花柄が上向きに数本伸びており、その先端に1cmに満たない小さな黄色い花を咲かせます。
花弁は他のミミカキグサにも見られる上唇部と下唇部に分かれており、アメリカコトリミミカキグサは上唇は広卵形、下唇は深く3裂しています。
アメリカコトリミミカキグサは一年草に分類される種で、夏に黄色の花を咲かせ、秋には種を実らせて株は枯死するそうです。自然に種子が飛び散り、繁殖する性質を持っており、その繁殖力はすさまじいようです。
アメリカコトリミミカキグサ(タヌキモ科)は、過酷な環境の中で地下茎(地表に張り付くように茎を横に伸ばしているそうです)や葉に捕⾍嚢(ほちゅうのう︓捕まえるための袋状の器官)を付けていて、⼩さな⾍などを捕⾷して⾃⽣しています。

真っ青な青空の中、真っ白な大砂丘に咲く可憐な花。雄大な景色を堪能していると、見落としてしまうかもしれません。
白亜の大砂丘に咲く可憐な花に出会うため、是非レンソイスへ訪れてみてください。日帰りで訪れる観光では観察できないかもしれませんので、是非縦断ハイキングへ。

 

ミミカキグサと言えば、数年前にギアナ高地のあるテプイ(卓状台地)の上でどんでもない種を観察したのを思い出しました。ご紹介は・・・またいずれ。

 

<アメリカコトリミミカキグサを観察したツアー>
白亜の大砂丘レンソイス縦断ハイキングと大瀑布イグアスの滝
※ツアーでは2泊3日のハイキング(1日3~4時間)をしながら白亜の大砂丘レンソイスを満喫!

白亜の大砂丘でハイキングを楽しむ
星降るレンソイスでキャンプ泊
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ムシトリスミレ(Pinguicula longifolia)

前回に引き続き、ピレネー山脈の花の1つ、石灰岩質の岩場や少し湿った場所などに生育する食虫植物の1つ「ムシトリスミレ(Pinguicula longifolia)」をご紹介します。

ムシトリスミレ(Pinguicula longifolia)

被子植物 双子葉類
学名:Pinguicula longifolia 和名:ムシトリスミレ
科名:タヌキモ科(Lentibulariaceae) 属名:ムシトリスミレ属(Pinguicula)

 

食虫植物と言えば、皆様はどのような花をイメージされるでしょうか?
日本などでも観察ができるモウセンゴケ(モウセンゴケ科)、マレーシアのキナバル山やボルネオ島などでも観察できるウツボカズラ(ウツボカズラ科)、ベネズエラのギアナ高地で観察できるヘリアンフォラ(サラセニア科)など、世界各地に食虫植物は生育しています。

 

今回ご紹介する「ムシトリスミレ(Pinguicula longifolia)」は、一見すると淡い紫色の花弁が印象的な可憐な花ですが、食虫植物の一種です。
「スミレ」という名が付く花ですが、タヌキモ科(世界の熱帯から温帯に3属300種以上が分布し、日本にもいくつかの自生種があります)の一種となります。
私もこの花を見つけたときは「スミレの花」と思い近づいて観察を始めたくらいです。

 

ムシトリスミレ(Pinguicula longifolia)は、春に芽が開き、最初の葉が現れます。その後、6~15㎝と比較的不規則な長さまで徐々に成長を続け、淡い紫の不均等な花弁が印象的な花は、初夏に咲き始めます。

 

食虫植物であるムシトリスミレは、花の部分で捕虫するのではなく、葉の部分で捕虫するのが特徴です。
ムシトリスミレの葉の両側には、粘液を分泌する腺を持ち、その粘液で昆虫などを捕えます。ピレネー山脈は、アルカリ土壌(土質)で、窒素分が少ないため、昆虫などから栄養分(窒素分)を得ているのです。
私も初めてピレネー山脈でムシトリスミレの花を観察した際、葉の粘液を指先で触れてみて、想像以上の粘性に驚いたことを今でも覚えています。

 

以前、ピレネー山脈で花の観察をしていた際、現地ガイドよりムシトリスミレの葉は、家畜(主に牛)の傷口に塗る薬に利用されていたという話を伺ったことあります(記憶違いでしたら、申し訳ありません)。
また、この花ブログを作成している際に見つけた情報として、スウェーデンではヤギのミルクで作る発酵乳製品を固めるために、このムシトリスミレの葉を使っているとのことでした。

 

一見すると食虫植物とは思えない可憐な花「ムシトリスミレ」を求めて、是非ピレネー山脈を訪れてみてください。

虫が絡みつくムシトリスミレの葉