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ミリ・ミリ(Bomarea dulcis)

久々の投稿です。
10月半ばまでは半袖に軽く上着を羽織る程度の服装で出勤していたのに、急に朝晩・日中共に肌寒くなりましたが、体調を崩されずお過ごしでしょうか。

 

先日ペルーのブランカ山群に咲くペルー固有種「アウリンシャ」をご紹介しましたが、本日は同エリアで観察できるもう1つのユリズイセン科の花「ミリ・ミリ」をご紹介します。

 

ミリ・ミリ(Bomarea dulcis)

 

被子植物 単子葉類
学名:Bomarea dulcis(ボマレア・ダルキス)
現地名:ミリ・ミリ(Milli milli)/マンカ・パキ(Manca-paqui)
科名:ユリズイセン科 又は アルストロメリア科(Alstroemeriaceae)
属名:ボマレア属(Bomarea)

 

先日ご紹介した「アウリンシャ」はペルー固有種でしたが、本日ご紹介の「ミリ・ミリ」(Bomarea dulcis)は、ペルー以外にもボリビア、チリのアンデス地域に自生し、標高約3,900~4,900mの岩塊付近に生育します。
私も5月にペルー・ブランカ山群へ訪れた際、ウルタ渓谷(標高約4,700m)の岩場の斜面にて観察しました。

 

直立性の草本で、大きく枝を張る木に巻き付くように(つる植物)1.5~2mほどの長さに成長し、茎の先端に約3~5mの花を2~5つ程つけると資料にありますが、私が観察した際は7つ付ける株もありました。

 

葉は細長く、アウリンシャに比べて葉裏が表面より白みがかっていた印象はなく、葉も密集している印象はありませんでした。また、若干表面に光沢を感じました。もしかしたら、ウルタ渓谷で観察した時が小雨模様だったかも・・・。

 

花はユリズイセン科らしい筒状で、赤みの強いピンク色の萼片の内側に黄色い花弁を伸ばし、萼片・花弁共に縁が緑色から黒色へ変化するそうです。
アウリンシャに比べて色合いは濃い印象で、現地では縁の色の変化がアウリンシャとミリ・ミリの花を区別する目安となりました。

 

色々と調べてみると、「ミリ・ミリ」は現地ケチュア語で「双子」を意味します。
また、もう1つの現地名であるマンカ・パキ(Manca-paqui)は同じケチュア語で「マンカ」は「土鍋」、「パキ」は「壊れる」を意味し、花を摘んで持ち帰ると土鍋が割れると信じている人々もいたことからそう呼ばれるようになったそうです。

 

ペルー固有種「アウリンシャ」、今回ご紹介した「ミリ・ミリ」が観察できる『花咲くブランカ山群へ アンデスの固有種 紅色のプカ・マカをもとめて』も催行決定となりました。まだ残席もございますので、是非2つの花を見比べにブランカ山群へ訪れてみませんか?

 

ミリ・ミリ(Bomarea dulcis)
ペルー固有種『アウリンシャ』(Bomarea albimontana)
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アウリンシャ(Bomarea albimontana)

先日、ベネズエラ・ギアナ高地『 固有種の花咲く原始境へ 太古の台地アウヤン・テプイをゆく』へ同行させていただき、2018年に同じギアナ高地のチマンタ山塊のテプイの山上で観察したウトリクラリア・フンボルティ(Utiricularia humboldtii)に再び出会うことができ、さらに多種多様なランの花の観察を楽しむことができました。

 

前回に引き続き、ペルーのブランカ山群に咲くペルー固有種「アウリンシャ」をご紹介します。

 

ペルー固有種『アウリンシャ』(Bomarea albimontana)

 

被子植物 単子葉類
学名:Bomarea albimontana
現地名:アウリンシャ(Aurinsha)/シュユ・シュユ(Shullu-shullu)
科名:ユリズイセン科 又は アルストロメリア科(Alstroemeriaceae)
属名:ボマレア属(Bomarea)

 

アウリンシャ(Bomarea albimontana)は、ユリズイセン科ボマレア属に属するペルー固有種の1つで、標高3,900~4,800mの高地に自生し、5,000~6,000m級の氷雪峰が聳えるブランカ山群のワスカラン国立公園などでいくつか自生地が確認されています。

 

ペルーの先住民族ケチュア族の言葉で 「アウリンシャ」(Aurinsha)は、花の特性から「つる植物」を意味し、現地フラワーガイドさんが、鈴なりに咲くアウリンシャが風になびく際に鳴らす音がもう1つの現地名「シュユ・シュユ」(Shullu-shullu)の名の由来であると教えてくれました。

 

アウリンシャという現地名のとおり「つる植物」で、たくさんの花を咲かせるため重さで倒れないようにケニュアルという高地の木や他の植物などに絡みついて成長します。

 

葉は細長く少し柔らかい印象、葉裏が表面より白みがかっていた印象です。また花を中心に放射線状に葉を広げていたのが非常に印象的でした。資料によっては「羽根複葉」と記しているものもあります。

 

花は淡いピンク色(オレンジ色にも見えます)が印象的ですが、実際は淡いピンクの萼片が紫色の斑点のある黄色の花弁(6枚という資料もあります)を覆っているベル型の花を咲かせます。
2~3cmほどの小さな花を20個近く密集して咲かせるため、散策をしながら観察しているとすぐに目に飛び込んできます。ただ、つる性の植物だからなのか(?)花があっちの方向に向いていたり、重みの影響で下を向いていることが多いのが難点です。

 

ある資料には「地元の人々にとっては自然の象徴のひとつ」というものもあり、冷涼で湿度のある環境を好む花であるとのことでした。

 

似た花(同じユリズイセン科ボマレア属)で現地で『ミリ・ミリ』と呼ばれる花もブランカ山群のワスカラン国立公園に咲きます。
その花のお話しは・・・またいつの日か。

 

アウリンシャの実(ユリズイセン科)
手で手繰り寄せて花をアウリンシャの花を観察