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エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)

我が家では嫁さんが多肉植物の栽培に凝っていることもあり、塊根植物の一種である「アデニウム・オベスム(Adenium obesum)」を購入しました。
色々と調べていると大きく肥大した塊根をもつキョウチクトウ科のコーデックスプランツで、アデニウム属の代表種で「砂漠のバラ」とも称されているようです。アフリカ大陸北部からサハラ砂漠以南や西アフリカ沿岸の国々が原産のようです。
主幹は太く丸みを帯び、頂部から細かく分枝したユニークな形をしており、ラッパ状の美しい花を咲かせるようで、「砂漠のバラ」と呼ばれる所以だそうです。
現在、光沢のある鮮やかな葉を沢山つけており、葉柄(葉身と茎を繋ぐ部分)から小さな蕾のようなものも確認ができ、「砂漠のバラ」と称される花が咲くことが楽しみの1つになりました。

 

では本題の「世界の花だより」です。
本日はセリ科の一種「エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)」をご紹介します。

 

エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)

 

被子植物 双子葉類
学名:エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)
別名:ピレネー青アザミ
科名:セリ科(Apiaceae)
属名:エリンジウム属またはヒゴタイサイコ属(Eryngiumm)

 

一見するとアザミの花を思わせる見た目、さらに「ピレネー青アザミ」という別名をご覧になり「青アザミなのにセリ科?」と気付かれた方も多いのではないでしょうか。
エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)はセリ科のエリンジウム属の一種であり、ピレネーの固有種の花の1つです。資料によって「スペイン~地中海沿地方原産」と記載しているものもありますが、私が観察したのもスペイン・ピレネー山脈でのフラワーハイキングで、現地ガイドさんも「ピレネーの固有の花」と紹介してくれていました。
エリンギウム属(Eryngium)はアザミに似た形状ですが、世界に230種ほど分布します。

 

草丈は15~45cmになるものもあり、茎の部分が花全体の色合いと同じ、淡紫色をしているのが特徴です(中には濃紫色のものもありました)。
葉は全体的に刺々しく3裂し、地表にロゼット状に広げ、若干の光沢と葉に白い斑点のようなものが確認できます。若い時期には葉の光沢はなく、生育過程の中で徐々に光沢が確認できる資料もありました。

 

細長い花弁が広がっている形状のように見えますが、実際には花弁ではなく、エリンギウム属の特徴である総苞(そうほう:花軸の一部で基部に生じる小形の葉のこと、花全体を保護する)です。
花期は初夏の5月~8月、実際の花は総苞の中心に直径15~20㎜の小さな球状の花を密集して咲かせます。

 

刺々しい葉、茎頂に密集して咲く花の形状をみて、初見ではアザミの花と勘違いしてしまう点が「ピレネー青アザミ」と言われる所以と、現地ガイドさんが説明していたのを覚えてきます。

 

非常に特徴的な形状のエリンジウム・ブルガティは、家庭園芸やガーデニングなどでも人気の花だそうですが、ピレネー山脈でフラワーハイキングを楽しんでいる際、自然に自生するエリンジウム・ブルガティを観察すると、その特徴的な形状に心を奪われ、気付いたら観察に夢中になってしまう花の1つです。

 

エリンジウム・ブルガティ(Eryngium bourgatii)
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ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)

アルゼンチンの最北の高原砂漠「ワイルド・プーナエクスプローラー」のツアーに添乗させていただいており、ブログ更新の間隔が空いてしまいました。

 

本日は前回に引き続きユリ科の一種「ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)」紹介させていただきます。その名の通り、ピレネー山脈の固有種のユリ科の花です。

Lilium pyrenaicum(ピレネー・ユリ)

被子植物 単子葉類
学名:ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)
英名:Yellow Turk’s Cap Lily/Yellow Martagon Lily
科名:ユリ科(Liliaceae) 属名:ユリ属(Lilium )

 

黄色の色合いがとても印象的な「ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)」はピレネー山脈の固有種ですが、スペインおよび東方の山岳地帯からコーカサスまで分布範囲は広がります。

標高1,200~2,000mの草地や林間に自生していることが多く、花の開花時期は6~8月となります。
私も初めてピレネー・ユリを観察したのは、陽光が気持ちの良い6月、ピレネーのプランス側のカバルニー大圏谷(1650m)でした。

 

前回ご紹介させていただいた「マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)」と同じく草丈は40~120㎝と高く、茎は直立して、10~15㎝ほどの細長い葉が互生しています。
日本でも同じユリ科の「エゾスカシユリ」も印象的な鮮やかなオレンジ色をしていますが、このピレネー・ユリも鮮やかな黄色の花弁が非常に印象的で、ユリ科の花の特徴である暗色の斑点も確認できます。
外側に反り返った花弁の中心から数本の雄しべが放射状に突き出しています。

 

上記の英名をご覧いただき、気付かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、「マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)」と英名が同じくトルコ人の被るターバンに似ているということから「Turk’s Cap Lily」という英名の頭に「Yellow (黄色)」がついたものとなります。

ハイキング中、ピレネー・ユリを最初に観察したときは正直驚き、「グロテスクな色合い」という印象でしたが、観察を続けていると徐々にその魅力的な花に心を奪われる結果となりました。

 

ブログ作成のため、ピレネーの花々を撮影した写真を眺めていると、私も久々にピレネー山脈に訪れ、固有種を探し求めてハイキングを楽しみたいと感じています。

Lilium pyrenaicum(ピレネー・ユリ)