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キバナシオガマ(黄花塩竃:Pedicularis oederi)

現在、「大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草」のツアーに同行させていただいており、秋の紅葉と共にわずかに残る秋の花も楽しんでいます。

また後日、このブログで紹介させていただきます。

 

本日は「キバナシオガマ(黄花塩竃:Pedicularis oederi)」をご紹介します。

 

キバナシオガマ(黄花塩竃:Pedicularis oederi)

 

被子植物 双子葉類
学名:Pedicularis oederi
科名:ハマウツボ科(Orobanchaceae)
属名:シオガマギク属(Pedicularis)

 

キバナシオガマ(黄花塩竃)を含むシオガマギク属は、ハマウツボ科に分類されます。資料によってはゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)と記載のあるものもあり、私自身もゴマノハグサ科という認識を持っていました。これはいくつかある分類体系によるもののようです。

 

キバナシオガマは北半球の高山帯や寒冷地の礫地や草地に分布し、日本国内では北海道の大雪山の一部にのみ生育します。私も以前、大雪山縦走登山ツアーの添乗の際、昼食タイムの際に観察したのを覚えています。今回使用した写真も弊社森田が大雪山・銀泉台で観察・撮影したものです。

 

先日ご紹介したレブンシオガマなど、シオガマの花の種類は多く、日本国内にも15種ほど分布し、その多くが日本固有の種です。そんな中でも黄色の花を咲かせる種はキバナシオガマのみです。数も少ないことから、絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されています。
海外では黄色のシオガマギク属の花は比較的観察され、以前に紹介したペディクラリス・ロンギフロラ・トゥビフォルミス(Pedicularis longiflora tubiformis)もその1つです。

 

草丈は10~20㎝で直立し、茎は根の部分で分枝します。
葉は長さ1~1.5㎝で全体的に根元に集中し、羽状に切れ込みが入っています。ただ、茎の上部に向かって付く葉もあり互生しています。
また、根元にある葉は皺の寄ったように見える形状をしているのも特徴的です。いつの日か観察した際にお客様が「かわいい毛虫みたい」って表現されたことを今でも覚えています。

 

花期7~8月、花は長さ2㎝ほどで淡いレモン色の花で小鳥の嘴を思わせる上唇の先端が赤褐色(茶色に感じることも)という色合いで、シオガマの花特有の形状が見られます。茎の上部から茎頂に総状花序を作り、10個ほどの花を密集して付けます。

 

ある資料にシオガマ(塩竃)という和名の由来は、シオガマは花だけでなく葉まで(浜で)美しいことから、海辺で趣のある塩竃(海水を汲み入れて塩を精製するかまど)の名がついたと言われているそうです。私も初めて知った由来でした。

 

キバナシオガマ(黄花塩竃:Pedicularis oederi)②

 

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レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)

先月、我が家の嫁さんが塊根植物の一種である「アデニウム・オベスム(Adenium obesum)」を購入し、その後も大事に育ててくれています。
少しずつですが成長しており、蕾も大きくなり、花が咲く日も近いようです。砂漠のバラと称される美しい花が咲くと聞いているので、非常に楽しみです。

 

本日は北海道・礼文島に咲く「レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)」をご紹介します。今回の写真は、弊社が知床半島・羅臼にて営業している「知床サライ」に在籍する森田が撮影したものを拝借させてもらいました。

 

レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)

 

被子植物 双子葉類
学名:Pedicularis chamissonis var rebunensis
和名:礼文塩竈
科名:ハマウツボ科(Orobanchaceae)
属名:シオガマギク属(Pedicularis)

 

レブンシオガマは北海道北部の礼文島に自生し、ハマウツボ科シオガマギク属の多年草、礼文島の固有種です。今回の写真も森田が6月末に礼文島で観察したもので、私も国内添乗員時代(まだ若かれし頃)に礼文島の桃岩展望台で群生を観察したことを覚えています。

 

資料によってはゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)に分類されていますが、分類の体系によって異なるそうですが、現在ではハマウツボ科に属します(私もゴマノハグサ科という認識でした)。

 

シオガマギク属は北半球に広く分布し、約500種もあります。
有名なヨツバシオガマ(四葉塩竈:Pedicularis japonica)、キタヨツバシオガマ(北四葉塩竈:Pediculasis chamissonis var. hokkaidoensis)、レブンシオガマ(礼文塩竈)などがありますが、実際に分類、見分けが非常に難しく、現場でも「シオガマですよ」と案内してしまうことが大半です。
キタヨツバシオガマ(北四葉塩竈)、レブンシオガマ(礼文塩竈)はヨツバシオガマの変種とされており、資料によってはキタヨツバシオガマとヨツバシオガマは区別をしない、ヨツバシオガマの大型種をハッコウダシオガマ(またはキタヨツバシオガマ)と呼ぶこともあるが、厳密に区別することはできないという資料など様々あり驚きました。

 

レブンシオガマは、草丈が70~100㎝で直立し、ヨツバシオガマに比べると大きく成長します。
葉の形状は羽状全裂で、見た目には鋸のような形状はシオガマギク属の特徴と同じですが、ヨツバシオガマとの大きな違いは、葉の付き方と数です。
ヨツバシオガマはその名のとおり、葉が4枚ずつ輪生(茎の一節に3枚以上が車輪状になってつくつき方)するのに対し、レブンシオガマは葉が5~6枚輪生するのが特徴です。
先程、見分けが難しいと記載しましたが、今回の写真を見た際にヨツバシオガマかレブンシオガマか非常に迷いましたが、写真を大きくアップにしてみると、葉が5枚輪生していることがわかり、レブンシオガマと判別しました(森田にも確認をしてもらいました)。

 

1つ1つの花は小さく、淡紫~紅紫色の色合いで、2㎝ほどの長さで2唇形の花弁を持ちます。
上唇の部分が鋭く尖って下向きになっています。まるでハチドリの嘴のような形状がシオガマギクの特徴で、印象深い姿をしています。

 

花期は6~7月、花は直立した茎に対して20~30段ほど輪生してつけ、花は下から順に咲いていきます。他のシオガマギク属の花に比べると輪生して花をつける段数が多いのも特徴です(背丈が高いのが原因かと)。

 

シオガマギク属の花の見分け方、分類などはまだまだ勉強が必要ですが、レブンシオガマをはじめとするシオガマギク属の花の可憐さ・美しさは必ず足を止めてゆっくりと観察したくなる魅力ある花の1つです。勉強の成果は・・・また後日。

 

レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)

 

<レブンシオガマが観察できるツアー>
花の季節に訪れる北海道最北の旅~利尻島・礼文島から宗谷岬、知床半島へ~
上鶴篤史氏同行シリーズ
礼文島「愛とロマンの8時間コース」と利尻島、サロベツ、宗谷丘陵ネイチャーハイキング
北海道大自然をぐるっとめぐる旅