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ハマナス(浜茄子:Rosa rugosa)

先日、大分県日田市立博物館で「ウシ柄のウナギ」が話題を呼んでいるというニュースを見ました。昨年10月に市内の養殖所で見つかったそうですが、白黒のまだら模様のニホンウナギで、数万匹に一匹の突然変異の個体のようです。

 

本日は「ハマナス(浜茄子:Rosa rugosa)」の花をご紹介します。

 

ハマナス(浜茄子:Rosa rugosa)

 

被子植物 双子葉類
学名:Rosa rugosa
英名:Ramanas rose、Rugosa rose、Japanese rose
科名:バラ科(Rosaceae)
属名:バラ属(Rosa )

 

『知床の岬に はまなすの咲くころ 思い出しておくれ 俺たちのことを』

 

個人的にはハマナスの花を見るたびに、加藤登紀子さんの「知床旅情」の歌を思い出します。私は44歳のため、この曲がリリースされたときは生まれていませんが、国内添乗員だった頃に北海道ツアーへ行くとバス車中でバスガイドさんがよく歌ってくれたのを覚えています。

 

ハマナス(浜茄子)と言えば、北海道の花という印象で、北海道の花にも指定されています。
日本国内では、北海道以外にも本州にも分布し、太平洋側では茨城県が、日本海側では島根県(確か大山だったような記憶も)が南限とされています。太平洋側と日本海側で大きな距離があるので調べてみると、ハマナスが砂浜・砂丘植物であることが太平洋側に自生する場所が少ない原因のようです。海外でもサハリン、千島列島に分布し、主に海岸線や砂地に自生します。

 

地下茎を延ばして群生し、草丈1~1.5mに成長する落葉低木。海岸線と内陸で草丈に差が出るようです。幹は叢生(そうせい:草木などが群がって生えること)し、茎は多方面に枝分かれして立ち上がります。
私もここまでは認識していたのですが、ある資料によると「樹皮が灰黒色から徐々に灰色となり、短い軟毛がある」とあり、驚きました。これまでハマナスを観察する際に注目していなかった部分だったので、次回は樹皮も注目してみたいと思います。枝には大小の棘があるので、観察時には十分気を付けて観察しなければいけません。

 

葉は、奇数羽状複葉で互生(ごせい:茎の周りに葉が螺旋状につくこと)します。
奇数羽状複葉とは、前回(103.エゾニュウ)にご紹介しましたが、中央の1本の軸の左右に小葉が並んでいるものを「羽状複葉」といい、奇数なのでてっぺんに一枚の小葉、2列目以降は左右に並んで小葉がつくものを言います。
小葉は長さ3cmほどの長楕円形、葉脈がハッキリとしており、葉縁には若干の鋸歯が確認できます。葉はほんの少し厚みがあり、表面は光沢が確認でき、裏面には少し細かい毛も確認できます。
全体に棘や細かい毛が多いのは、潮風による塩分付着を防止するためという解説を聞いたことがあります。

 

花期は6~8月。鮮やかなピンク色が印象的な花で、直径が10㎝ほど、花弁は5枚。
花の中央には多数の雄しべをつけ、淡い黄色色の雄しべが花弁のピンク色をより鮮やかなものにしています。群生して咲いていることが多いので、長らく咲いている印象の方も多いようですが、実は色鮮やかなハマナスの花は開花後5日前後で枯れてしまいます。

 

花後にできる真っ赤な実は、偽果(ぎか:子房ではなく、子房以外の部分に由来する果実)で、熟すと甘酸っぱい味がし、以前はバスガイドさんが「ハマナスのジャム」をよく紹介していました。ただ、昨年9月に久々に北海道へ訪れた際に「1つの実から採れる果肉が少ないため、最近ではあまり土産店で売っていない」と聞きました。また、最近では、薬用植物としての研究も進んでいるそうです。

 

ハマナスは根が染料となり、花はお茶になり、果実はローズヒップやジャムとして使われます。
ハマナスの名の由来は諸説ありますが、前述した甘酸っぱい果実が「梨」に例えられたことが由来とされています。
では、なぜ和名で「茄子」と付くのか・・・調べてみると、江戸時代の書籍に「茄子の如し、食に耐えたり、故にハマナスと呼ぶ」とあったことが由来するそうですが、茄子とは似てないという指摘(ツッコミ)もあるようです。

 

今回ハナマスのことを色々と調べていて一番驚いたのが、ハマナスは「皇后・雅子様のお印」となっていることでした。ちなみに天皇徳仁様のお印は「梓」とのことでした。
ハマナスは何度も観察した花ですが、改めて色々と調べてみると非常に興味深い花でした。

 

ハマナス(浜茄子)の実

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

春をつげる雪割草を求めて 早春の佐渡島
※南北に大佐渡、小佐渡の山地が連なり、中央には国中平野が広がる佐渡島。大佐渡山麓と世阿弥の道にてゆっくりとフラワーハイキングをお楽しみいただきます。

 

佐渡島・花咲く金北山縦走トレッキングと佐渡周遊の旅
※春の花咲くシーズンの佐渡の山旅。絶景ロッジ・ドンデン山荘に宿泊し、佐渡の最高峰金北山を目指し、花咲く楽園・アオネバ渓谷のハイキングも楽しみます。

 

花の利尻・礼文島とサロベツ原生花園
※6月から7月にかけて高山植物の開花の季節となる利尻・礼文島。専門ガイドの案内で、フラワーウォッチングや様々な植物の観察を満喫する5日間。

 

花の利尻・礼文島から世界遺産・知床半島へ
※5月下旬から高山植物の季節が始まる利尻・礼文島から、オホーツク海沿岸を走り世界遺産・知床へ。利尻島・礼文島、知床半島を一度に楽しむ旅。

 

花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※専門ガイドとのんびりと花の観察を楽しみながら、尾瀬ヶ原から尾瀬沼へのフラワートレッキング。花咲く尾瀬を訪れる季節、8名様限定のツアーです。

 

花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く
※高山植物の宝庫として知られる千畳敷カールや乗鞍・畳平でフラワーハイキング。旅の後半は、専門ガイドと共に静寂に包まれた奥上高地の徳沢を目指す。高山植物の観察と合わせて絶景も楽しむ5日間。

 

日本各地で高山植物などの花々を楽しむツアーも続々と発表しております。ご興味のあるコースがありましたら、是非お問い合わせください。
「花の季節」に訪れるツアー 一覧へ

072

クルマバツクバネソウ(Paris verticillata)

昨日まで「たっぷり小笠原6日間」のツアーへ同行させていただいており、小笠原諸島の海でイルカにも出会え、お客様とともに童心に戻ったように楽しませていただきました。また、小笠原諸島特有の植生も楽しむことができ、小笠原の植生については、追ってご紹介させていただきます。

 

本日は形状がユニークな「クルマバツクバネソウ(Paris verticillata)」をご紹介します。

 

クルマバツクバネソウ(Paris verticillata)

被子植物 単子葉類
学名:Paris verticillata
和名:車葉衝羽根草
科名:シュロソウ科(Melanthiaceae)
属名:ツクバネソウ属(Paris)

 

日本では、北海道、本州、四国、九州と全国に分布し、山地帯から亜高山帯の林内に生息します。
私が初めてクルマバツクバネソウを観察したのは尾瀬ヶ原から尾瀬沼へ抜けるフラワートレッキングを楽しんでいた時で、この花を紹介された際にはその形状に驚いたことを覚えています。
日本以外では、朝鮮半島、中国、千島列島、樺太(サハリン)に分布します。

 

草丈は20~40㎝で直立、茎頂に6~8枚の楕円形状の葉を輪生し、長さは5~15㎝ほどです。
茎頂から花柄(花序などを支えるための茎)を伸ばし、直径5~7㎝で黄緑色の花を咲かせます。

 

この花の形状、見た目に「どこが花?」というのが難しい部分です。

 

黄緑色の花弁のように見える部分は「外花被片」と呼ばれ、いわゆる萼片です。長さは3~4㎝ほどで枚数は4枚です。
その外花被片の間から細く垂れ下がる部分が「内花被片」で花弁となる部分。こちらも4枚あり、黄色を帯びています(写真では外花被片と同じく緑色でした)。

 

クルマバツクバネソウを特徴づける中央に細長く上向きに伸びた部分は「雄しべ」で長さは5~8㎜で本数は8~10本です。
雄しべの黄色い部分が「葯(花粉を入れる袋状の部分)」であり、葯の先端には「葯隔(やくかく:花粉塊を隔てる壁、二分する葯の接合部)」が長く伸びています。
雄しべの中央には黒色の「雌しべ」があり、花柱が4つに分かれている(4裂)のが特徴です。

 

クルマバツクバネソウの名は、葉が車輪のように輪生する姿から「車葉」、花の形状が羽子板遊びの羽根「衝羽根(つくばね)」に似ていることが由来とのことです。

 

クルマバツクバネソウに似た「ツクバネソウ(Paris tetraphylla)」との違いについて、下記のとおり非常に判りやすくまとめてくれていた資料がありましたので、参考にさせていただきました。
●ツクバネソウの葉は4枚(たまに5枚~6枚)、クルマバツクバネソウは6~8枚
●クルマバツクバネソウは葯隔(やくかく)が突き抜ける
●ツクバネソウは花弁が無い、クルマバツクバネソウは糸状の花弁が4個
●ツクバネソウの子房(雌しべの基部)は緑色、クルマバツクバネソウの子房は黒色
●ツクバネソウの葉は長楕円形、クルマバツクバネソウは倒披針形

 

見た目に目立たず、パッと見ただけでは花弁の落ちて雄しべだけが残っているような形状のため、フラワーハイキングなどをしていると見落としがちのクルマバツクバネソウですが、私も尾瀬で初めて観察した際には、その形状をゆっくり説明してもらいましたが、そのユニークな形状を細かく説明してもらううちに、いつの間にか心を奪われてしまった花でした。

 

クルマバツクバネソウ(Paris verticillata)
069

ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)

私は7月22日より「甑島列島探訪と噴煙たなびく桜島5日間」のツアーへ同行させていただき、現在上甑島から下甑島へ向かっているところです。

 

本日も日本の花の1つ、白山を冠した18種の植物のうちの1つである「ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)」をご紹介します。

 

ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)

 

被子植物 単子葉類
学名:Dactylorhiza aristata
和名:ハクサンチドリ(白山千鳥) 別名:シラネチドリ
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:ハクサンチドリ属(Dactylorhiza)

 

ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata:白山千鳥)は、本州の中部以北から北海道にかけて、亜高山帯から高山帯の草地に自生し、本州では高山植物として知られているが、北海道内では山岳地帯から海岸近くまで幅広く分布しています。海外でも北太平洋地域、アラスカまで分布します。
私も白馬岳の登山の際に観察し、北海道・礼文島で群生を観察したのを覚えています。上の写真はサハリンにて観察したものです。

 

草丈は10~40㎝ほどで直立し、葉は細長の楕円形(広線形)から披針形をし、長さ10~15㎝ほどの葉が数枚互生(ごせい:茎の一つの節に1枚ずつ方向をたがえてつくこと)します。

 

花は直立した茎の真ん中から頂部にかけて、2㎝ほどの小さな花を密集して総状につけます。
色合いは鮮やかな紫色や暗赤紫色など変異が多く、中には白い花のものも見られます。
唇弁(しんべん:下側にある花弁が他面のより大きく、花を下から受けるように広がる形になる花弁のこと)はくさび形で先端が3裂し、中裂片の先端は鋭く尖った形状が特徴です。
萼片や花弁も先端が鋭くとがっており、萼片(側萼片)が左右に広がり、まるで鳥が翼を広げているように見えることから「チドリ」の名がついたとも言われています。
花弁と萼片が左右から蕊柱(ずいちゅう:雄蕊と雌蕊が合体したもの)を包み込むような形状をしていますが、蕊柱は小さすぎて目立たないので、虫眼鏡などで観察する必要があります。

 

ハクサンチドリは形状と色には変異が多く、有名なものは下記の2種です。
1.ウズラバハクサンチドリ(鶉葉白山千鳥:Dactylorhiza aristata f. punctata)
・葉に暗紫色の斑点、ウズラの卵に似た模様の葉を持つ。

2.シロバナハクサンチドリ(白花白山千鳥:Dactylorhiza aristata f. albiflora)
・その名の通り、白い花を咲かせる(下写真)。

 

日本ではラン科の高山植物の中で一番よく見かけると言われるハクサンチドリ。特に北海道では驚く量の群生が見られることもあります(資料によっては「雑草のごとく生えている」と)。
色合いや特徴ある形状の観察とともに、周囲を見渡してシロバナハクサンチドリやウズラバハクサンチドリも探してみてはいかがでしょうか。

 

シロバナハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata f. albiflora)

 

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068

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense)

蕾が大きくなり花開く日も近いとお伝えしていた我が家の「アデニウム・オベスム(Adenium obesum)」。先日直径4~5㎝ほどの花を2つ咲かせました。真っ赤で色鮮やかな色合いが非常に美しく、砂漠のバラと称されていることに納得できる色合いと美しさでした。先端が真っ赤な蕾が現在5つ確認できていることから、この先がさらに楽しみです。

 

本日は「ゴゼンタチバナ(Cornus canadense)」をご紹介します。久々に私自身が撮影したものですが、日本の花として紹介しますが撮影した場所はサハリンです。

 

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense:御前橘)

 

被子植物 双子葉類
学名:Cornus canadense
和名:御前橘
科名:ミズキ科(Cornaceae)
属名:ミズキ属(Cornus)
属名:ゴゼンタチバナ(亜)属(Chamaepericlymenum)

 

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense:御前橘)は、本州(中部地方以北)、四国(石鎚山など)、北海道に自生するミズキ科(Cornaceae)の多年草です。
北海道では大雪山の稜線や道北の海岸近くの林下までと生育範囲が広いのも特徴のようです。
四国の石鎚山系と赤石山系が南限とされ、海外では北東アジアや北米などにも分布します。

 

和名の「御前橘」は、日本三霊山として知られる白山の最高峰「御前峰」に由来します。私も初めて観察したのは白山登山の時でした。白山は日本三霊山という点が有名ですが、花の百名山の1つでもあり、美しい花畑が広がる日本有数の花の山でもあります。
「ハクサン」の名が付く植物は別名(最高峰・御前峰の「ゴゼンタチバナ」など)を含め20種以上が自生しています。調べてみると、白山は日本で高山帯を有する山岳としては最も西に位置しているため、早くから植物の研究が進んでいたことから「ハクサン」と名の付く種が多いそうです。

 

草丈は5~15㎝、地下茎から広がった茎には「花を咲かせる茎」と「花を咲かせない茎」がそれぞれ立ち上がります。
葉は倒卵形(とうらんけい:相撲の行司が持つ軍配のような形)、写真でもわかるように枚数は6枚です。6枚が輪生(茎の一節に3枚以上が車輪状になってつくつき方)しているように見えますが、調べてみると2枚の対生葉(葉が茎の一つの節に2枚向かい合ってつくこと)と液性の短枝に2個ずつ葉が付き、計6枚の輪生に見えるそうです。さらに「花を咲かせない茎」には4枚の葉がつくそうで、葉の枚数にも違いがあるそうです。
私も初めて知った興味深い形状です。いつかゴゼンタチバナに再会した際には葉の付き方にも注目したいものです。

 

花期は6~8月、花は長さが1㎝ほどの苞(ほう:つぼみを包むように葉が変形した部分)が4枚付き、その中央部分に2.5㎜ほどの小さな筒状の花が密集して咲きます。一見すると白い小さな花のように見えますが、中央部の密集したものが本来のゴゼンタチバナの花です。
秋になると同じミズキ科のハナミズキ(花水木)に似て、直径5㎜ほどの赤い果実をつけます。

 

ゴゼンタチバナは環境省により、中部山岳国立公園、南アルプス国立公園、白山国立公園などで自然公園指定植物となっているそうです。環境省としての、レッドリストの指定はないようですが、絶滅の危機に瀕していることから保護管理計画など各地域で実施されているそうです。
可憐な形状のゴゼンタチバナだけではありませんが、私たちも花の観察を楽しむ際には十分気を付けて、大事に花の観察を楽しまなければいけないですね。

 

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense:御前橘)

 

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055

チシマフウロ(Geranium erianthum)

昨日、日本では緊急事態宣言が39県で解除されました。また、世界の一部の国・地域でも6月や7月から国境をオープンするという緩和情報も入ってきておりますが、国境オープンという情報があっても、国際線の再開や空港オープンの明確な情報はありません。
日本全体で回復傾向であるというニュースも多いですが油断はせず、世界各国の渡航緩和がされた際、「日本からの渡航者なら問題なし」と思ってもらえるよう、今一度気を引き締めて頑張らなければいけないと、ニュースを観て感じました。

 

本日はフウロソウの一種である「チシマフウロ(Geranium erianthum)」をご紹介します。

 

サハリンで観察したチシマフウロ(Geranium erianthum)

 

被子植物 双子葉類
学名:Geranium erianthum  和名:千島風露
科名:フウロソウ科(Geraniaceae)
属名:フウロソウ属(Geranium)

 

フウロソウ科(Geraniaceae)は花は約420種ともいわれ、日本の低地から高山帯、世界各地にも分布します。
フウロソウ属の学名はGeraniumですが、日本国内で「ゼラニウム」と呼ばれる品種の多くがテンジクアオイ属です。フウロソウ属の多くは、国内ではハクサンフウロやエゾフウロなど「地域の名前○○+フウロ」というふうに呼ばれています。

 

チシマフウロ(Geranium erianthum)は、本州北部では亜高山帯や高山帯に分布し、北海道は海岸地帯にも分布・生育します。海外ではサハリン、千島列島、北太平洋沿岸域を回りこんでカナダ北西部まで分布します。

 

日当たりの良い草地や砂礫地に自生し、草丈は20~50㎝。
葉は掌状に5~7裂に裂け、切れ込みは浅く裂片の先はそれほど鋭く尖らない形状をしています。姿がそっくりのエゾフウロ(蝦夷風露:Geranium yezoense)の葉は切れ込みが深いため、見分けるポイントと言われています。

 

花は茎頂に直径3㎝ほど、5枚の花弁で左右対称で青紫色の花をいくつか咲かせます。花期は6~8月です。
北海道の中央高地では淡い色のチシマフウロが多いという資料もありました。

 

花弁に比べ、葯(やく:おしべの一部で花糸の先端に生じ花粉形成が行われる袋状の部分)の部分が若干濃い紫色であるため、この色合いの違いが花の美しさであると個人的に思っています。

 

花弁の基部や萼(がく:花全体を支える役割の花弁の付け根にある緑色の小さな葉のような部分)には産毛のような白毛が確認できます。学名の「erianthum」は「軟毛の生えた花の」という意味を持つそうです。

 

フウロソウ科は日本を含め、世界各地で観察ができます。そのため、それぞれを見分けることが非常に難しく、お客様へも「フウロソウですよ」と説明しがちになり、まだまだ勉強が必要です。
北海道の中央高地にはチシマフウロの花色の淡いものが「トカチフウロ(Geranium erianthum f. pallescens)」として区別され、完全な白花品をシロバナノチシマフウロ(Geranium erianthum DC. f. leucanthum)とされています。
色々と調べていると、この3種を「チシマフウロの三兄弟」と表現されているブログがあり、非常に印象的な面白い表現で、私もいつしかこの三兄弟の観察・撮影を楽しみたいものです。

 

チシマフウロ(Geranium erianthum)
054

クロユリ(Fritillaria camschatcensis)

非常事態宣言が続く中でのゴールデンウィークが終了しましたが、皆さんはどのようにゴールデンウィークを過ごされたのでしょうか。
私は数日に1回、自宅前のスーパーマーケットへの買い物以外は外出をせず、大半を自宅で過ごす中で「ぬか床づくり」をはじめました。また、ゴールデンウィーク最終日に買い物へ出かけた際、自宅マンションのつつじが満開となっており、非常事態宣言の中、心癒される風景でした。

 

本日は日本の大雪山系やロシアのサハリン(旧樺太)で観察した「エゾクロユリ(蝦夷黒百合)」をご紹介します。

 

エゾクロユリ(蝦夷黒百合:Fritillaria camschatcensis)

 

被子植物 単子葉類
学名:クロユリ(Fritillaria camschatcensis)
和名:エゾクロユリ(蝦夷黒百合)
英名:Kamchatka lily、Chocolate lily 他
科名:ユリ科(Liliaceae) 属名:バイモ属(Fritillaria)

 

クロユリ(Fritillaria camschatcensis)は、その姿と花の色からクロユリと名付けられていますが、ユリ科のユリ属ではなく、ユリ科のバイモ属の高山植物です。
日本の北海道、東北地方の月山、飯豊山、中部地方に分布し、西限は北陸地方の白山とされ、石川県では「郷土の花」に指定されています。
海外では、千島列島、ロシアのサハリン、カムチャッカ半島、北アメリカ北西部に分布し、学名の「camschatcensis」は生育地の「カムチャッカ」を意味します。

 

広義のクロユリはミヤマクロユリ(Fritillaria camtschatcensis var.alpina)とエゾクロユリ(Fritillaria camschatcensis)を含めたものとされ、ミヤマクロユリは亜高山帯~高山帯に自生し、エゾクロユリは低地、海岸近くの林の下でも生育、観察できることもあります。
※掲載した写真はサハリンの海岸線近くの藪の中で観察したエゾクロユリです

調べてみると、エゾクロユリとミヤマクロユリは草丈の違いもありますが、染色体数に違いがあるようです。ミヤマクロユリの染色体数は2 対24本(2倍体というそうです)、エゾクロユリは3 対36本(3 倍体)とのことです。

 

地下にある鱗茎(りんけい:球根の一種)は多数の鱗片からなり、茎は直立で10~50㎝の高さになります。葉は長さ3~10㎝の披針形をし、数段にわたり輪生(りんせい:茎の一節に葉が3枚以上つくこと)しています。

 

花期は6~8月で、花は鐘状で茎先にやや下向きに咲き、長さが約3㎝、6枚の黒褐色の花被片をつけ、表面には細かい斑点と筋模様が確認できる花を咲かせます。
クロユリの花は独特の臭いがあります。クロユリの花粉を運ぶのは大部分がハエと言われており、この臭いがハエを呼び寄せているとも言われています。
花が終わると徐々に上を向くように変化し、実が膨らみ羽をもった種子をたくさんつけますが、発芽率は良くなく、繁殖の大半は栄養繁殖と呼ばれる地下の鱗茎が分裂して数を増やしています。

 

私が初めてクロユリを観察したのが「北海道の大雪山縦走登山」をしているときでした。その後、日本では北陸地方の白山でも観察しました。
アイヌ語ではクロユリは「アンラコル」と呼ばれ、アンが「黒」、ラが「葉」、コルが「持つ」という意味で、アイヌ民族はクロユリの鱗茎を干したものを食用にしてきたそうです。

 

北海道の大雪山国立公園は高山植物の宝庫です。
緊急事態宣言の中、外出や旅行を自粛する中でゴールデンウィークは我慢して生活をしてきました。高山植物の開花が始まる頃には、安心して旅行を楽しめるようになることを願うばかりです。

その願いを込めて弊社でも「花の北海道フラワーハイキング」を発表しました。
大雪山国立公園へクロユリやチングルマ、高山植物の女王コマクサを求めて、北海道へ訪れてみませんか?

 

エゾクロユリ(蝦夷黒百合:Fritillaria camschatcensis)
019

ホテイアツモリソウ(Cypripedium macranthum var. hotei-atsumorianum)

先日、大阪城公園にて花見へ行ってきました。見頃の時期、さらには週末だったこともあり、人の多さに圧倒されてしまいましたが、キレイな桜とともに桃園では数種類の桃の観察も楽しむことができました。

 

本日ご紹介するのは、花の姿、形状が非常に見栄えが良く、地域変異のバリエーションが多いアツモリソウの一種である「ホテイアツモリソウ(Cypripedium macranthum var. hotei-atsumorianum)」です。
日本では「レブンアツモリソウ(礼文敦盛草 C. marcanthos var. rebunense)」が圧倒的な知名度ですが、ホテイアツモリソウは、花全体の色合いがとても美しく、観察を続けて行く中で、どんどん心が奪われていくアツモリソウです。

ホテイアツモリソウ:布袋敦盛草

被子植物 単子葉類
学名:Cypripedium macranthos var. hotei-atsumorianum
和名:ホテイアツモリソウ(布袋敦盛草)
科名:ラン科(Orchidaceae) 属名:アツモリソウ属(Cypripedium)

 

アツモリソウは、漢字では「敦盛草」と書きます。この漢字名の由来は、袋状の唇弁(しんべん)の部分が、平敦盛が背負った母衣に見立てて名付けられました。

 

アツモリソウの中でも日本が世界に誇れるホテイアツモリソウは、本州中部(長野:釜無、大鹿、経ヶ岳、霧ヶ峰、戸隠、安房、山梨:櫛形、八ヶ岳、新潟、岩手)や北海道に分布しており、海外では中国やロシアに分布しています。
※上の写真は、ロシアのサハリン南部で観察したものです。
盗掘・乱獲のために、既に絶滅してしまっている地域も多く、日本では1997年にレブンアツモリソウに相次いで特定国内希少野生動植物指定を受けました。

 

草丈は20~50cm、花は袋状で、茎の頂上に通常1つ、まれに2つの花つけこともあるそうです。径は6~10cm、幅の広い楕円形(時に円形に近いものがある)の葉を4~5枚互生(1つの節には1枚の葉しかつかない)し、アツモリソウに比べて全体に大きい印象を受けます。
色合いも、アツモリソウより濃く、桃色から紅色、黒ずんだ暗濃紅色の花と非常に多くの地域・個体バリエーションがあります。

 

サハリン南部で見つけたホテイアツモリソウの群生地。お客様とともに夢中になって観察したことを今でも覚えています。
日本でも観察できるアツモリソウですが、サハリンの地で観察するホテイアツモリソウも、また格別の美しさでした。
是非、ホテイアツモリソウを求めてサハリンの地へ。

ホテイアツモリソウ:布袋敦盛草

<ホテイアツモリソウが観察できるツアー>
花のサハリン紀行