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尾瀬フラワートレッキングの魅力 ~尾瀬で過ごす3日間

本日も私がおすすめしたい場所をご紹介します。第3弾は「尾瀬国立公園」です。

 

■関連ツアー
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く

 

■ブログ『世界の花だより』
尾瀬の花 尾瀬の花

 

■ツアーブログ
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く

 

尾瀬と言えば、思い出されるのは童謡・唱歌『夏の思い出』でしょうか。雄大な湿原の風景でしょうか。
私が真っ先に思い浮かべるのは、高山植物の花々です。高山植物への興味を抱くようになったきっかけを作ってくれた場所の1つが「尾瀬国立公園」なのです。

 

尾瀬国立公園は、2007(平成19)年に日光国立公園から分割、会津駒ケ岳、田代山などを新たに編入し、福島県、栃木県、群馬県、新潟県の4県に跨る、29番目の国立公園として誕生しました。それ以前には、1960(昭和35)年に国の特別天然記念物に指定され、自然生態系の価値が評価されて2005(平成17)年にラムサール条約湿地に登録されました。

 

尾瀬のツアーと言えば、日帰り(●時間滞在)で散策を楽しむスタイルが大半です。
西遊旅行「花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く」では、鳩待峠からスタートし、尾瀬ヶ原・見晴、尾瀬沼それぞれの山小屋で宿泊し、2泊3日でのんびりと縦走するプランとし、魅力ある尾瀬の花を楽しむための日程としております。

 

1.時間に追われず尾瀬の風景や花の観察を楽しむ
これまで屋久島、上高地をご紹介した際にもお伝えした通り、自然・花の観察では時間的に十分な余裕を確保したいという点が、ツアーのポイントとして最も重要な点でした。
特に尾瀬ヶ原では様々な高山植物が観察でき、先々の時間を気にしながら歩くと、ゆっくりと花の観察を楽しめず、また思いがけない花を見逃す結果になってしまうこともあります。
6月にツアーを実施した際には、群生するコバイケイソウ(シュロソウ科)の「両性花と雄性花の違い」をゆっくり観察したり、大小1800とも言われている池塘(ちとう)と呼ばれる池の水面に咲く1輪のオゼコウホネ(スイレン科)を見つけることができました。水面のオゼホオコケは黙々と歩いていると、確実に見逃していました。

 

尾瀬ヶ原~尾瀬沼を縦走するプランは1泊2日が通常プランとして紹介されています。尾瀬沼でも宿泊する2泊3日プランとした理由は、上記1のポイントも理由の1つですが、観光客の少ない朝夕の風景を楽しむためでもあり、山小屋周辺の花々をのんびりと観察するため、到着後に周辺を散策するためでもあります。
尾瀬は歩く先々で咲いている花に変化があります。歩いている道中で咲いていない花も、1時間ほど先に進むと観察できることもよくあることです。それは山小屋周辺をのんびりと散策していても同じです。山小屋に荷物を置き、のんびりと周辺を散策する中で目的の花を見つけた際の喜びは格別です。6月の際には、お客様と尾瀬ヶ原・見晴の山小屋周辺をのんびり散策していると、念願のトキソウ(ラン科)を見つけて、歓喜したのが思い出です。残念ながら、6月には夕焼けに染まる尾瀬の風景は楽しめませんでしたが、こういった点も山小屋に早く入り、のんびりと散策を楽しむことのメリットです。

 

3.1日の歩行時間・距離を短くし、体力的な不安を軽減する
尾瀬を2泊3日プランとすることで、1日の歩行距離を10km以内、歩行時間も4~5時間としています。
尾瀬ヶ原・見晴から白砂峠を越え、尾瀬沼に入った後、頑張ればゴールの大清水までは時間的には問題なく歩くことができますが、花の観察を楽しむにあたり、尾瀬沼で大江湿原の散策は絶対に外すことができません。
6月にも、大江湿原でレンゲツツジとコバイケイソウが同じ場所で群生しており、朱色と白色の色合いが相まって美しい風景を見学でき、さらにはミツガシワ(ミツガシワ科)アマドコロ(キジカクシ科)など、道中で観察できなかった花々も観察できました。

 

せっかく2泊3日プランなので「●●方面にも足を伸ばしたい」というお気持ちの方もいるかもしれません。
2022年も発表させていただいた「花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く」では、あえて多方面に足を伸ばさず、シンプルな縦走ルートとしています。目一杯歩くプランではなく、時間に追われることのないシンプルな日程であるプランだからこそ、また山小屋の周辺をのんびり散策できるプランだからこそ、初めて尾瀬に訪れる方には尾瀬の魅力を十分に感じることができ、尾瀬へ再訪される方にも尾瀬の新たな魅力を感じていただけるプランになっています。
ツアーは、尾瀬に咲く花が最盛期を迎える6月末尾瀬にニッコウキスゲが咲く7月中旬に設定しております。
2022年は是非一度尾瀬を訪れてみてください。

 

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奥上高地自然探勝ハイキングの魅力 ~上高地で過ごす3日間

本日も私がおすすめしたい場所をご紹介します。第2弾は「上高地」です。

 

■関連ツアー
花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング

 

23歳より添乗員を始め、もう何年が経つでしょうか。国内添乗員だった頃から遡ると、添乗へ出向いた先で最も多く訪れている場所の1つが上高地です。それと合わせて、プライベートでも数えきれないくらい訪れている場所でもあり、穂高連峰の裾野に広がる日本屈指の景勝地・上高地は、何度訪れても飽きることなく、毎回魅了される風景が広がります。
その素晴らしい上高地を訪れるツアーを造成するにあたり、他とは違った方法で案内することができないか、過去に訪れたことがある方も満喫できる方法がないか、のんびりと歩き上高地を深く知る方法はないか・・・。
色々と考えた結果、思い切って上高地で2泊するプランを造成するに至りました。

 

上高地は、長野県の北アルプス南部の梓川上流部に位置し、長野県・岐阜県・富山県・新潟県の4県に跨る中部山岳国立公園の一部(上高地は全域が長野県松本市)であり、国の文化財(特別名勝・特別天然記念物)に指定されています。
季節を問わない景勝地として名高く、火山活動、氷河時代やその後の浸食作用など、途方もない時を経て形成された上高地は、今なお私たちを魅了し続けています。

 

1.大正池エリア
河童橋から約4km。梓川の下流部に位置する大正池は、上高地散策のスタート地点でもあります。梓川沿いに聳えるトロイデ型の活火山・焼岳の風景を楽しんだ後、河童橋を目指します。

 

2.田代池エリア
大正池と共に大正時代の焼岳大噴火の影響で梓川の支流である千丈沢を堰き止めてできた田代池は、正面に聳える霞沢岳などの砂礫層を経由した伏流水によって養われた池です。枯れた水草や周囲から流れ込む土砂などが堆積し、長い年月をかけて湿原化された田代湿原から望む穂高連峰の風景もオススメのポイントです。

 

3.河童橋エリア
言わずと知れた上高地のシンボル・河童橋。河童橋周辺から眺める穂高連峰は圧巻の風景です。上高地の夜は静けさと暗闇に包まれます。夜の凛とした空気の中に広がる煌めく星空の風景は上高地で滞在した方だけの贅沢なひとときを味わう事ができます。もちろん、夜明けを迎え、朝焼けに染まる穂高連峰の風景も見逃すことのできない風景です。

 

4.明神エリア
河童橋から約4km上流に位置する明神エリア。立つ稲穂のように鋭く「穂高明神の為の山」という意味を持つ明神岳の風景とともに、穂高見神(ほたかみのかみ)を祀る穂高神社奥宮、針葉樹林に囲まれた穂高神社奥宮の境内に梓川の古い流路に明神岳からの湧水が溜まってできた明神池をご覧いただけます。

 

5.徳沢エリア
河童橋から約7km、梓川の上流部に位置する徳沢エリア。かつては「徳沢牧場」と呼ばれていて、残雪の山々を背景にした放牧風景は古き良き時代の牧歌的な光景として登山者に親しまれていたそうです。上高地の中でも訪れる観光客が少ないため、静寂に包まれた奥上高地の雰囲気を堪能できます。5月はニリンソウが咲く季節です。

 

ツアーでは、3日間に渡り上高地を堪能するプランを設けております。

 

1日目:大正池~河童橋~バスターミナル(約4.5km)
のんびりと上高地の風景をお楽しみいただきます(自由散策)。
河童橋から徒歩2分の「西糸屋山荘」に宿泊。夕食後は、河童橋へ出向いて星空の風景を楽しみます。

 

2日目:奥上高地自然探勝ハイキング(河童橋~明神池~徳沢)
夜明けから朝焼けに染まる穂高連峰の風景を堪能した後、専門ガイドと共に「奥上高地自然探勝ハイキング」(約7km)を楽しみます。
上高地の奥座敷・徳沢では、井上靖の長編小説『氷壁』の舞台となった「徳澤園」に宿泊。
※午後は、横尾エリアを目指すこともでき、上高地を端(大正池)から端(横尾)まで完全踏破することも。

 

3日目:自由に河童橋へ自由散策
明神エリアからは梓川右岸を歩き、岳沢湿原もゆっくり見学(自由散策)。
河童橋周辺のカフェで優雅にコーヒーとレアチーズケーキと共にのんびりと過ごし、上高地を出発。

 

7月にご一緒した奥上高地自然探勝ハイキングは非常に興味深いものでした。
専門ガイドが各所で上高地の自然・植生・地勢など幅広く解説してくれ、何より上高地への愛情がこちらへも伝わってくる素晴らしいガイド案内でした。
初めて上高地を訪れる方はもちろん、何度も上高地を訪れたことがある方にもオススメのプランです。
弊社ツアー「花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング」は、残雪が残る穂高連峰の風景が楽しめるゴールデンウィークニリンソウが咲く季節の5月にそれぞれ設定しておりますので、是非ご検討ください。

 

<5月に観察できる花>

<7月に観察できる花>

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屋久島・黒味岳フラワートレッキングの魅力

昨年7月頃から日本各地で観察した花をご紹介してきましたが、本日からは少し趣向を変え、実際に私がツアーに同行させていただき、花の観察を楽しんだ場所、おすすめしたい場所をご紹介したいと思います。
本日は、2021年8月にツアーを実施した際の情報をもとに「黒味岳フラワートレッキングの魅力」をご紹介します。

 

■関連ツアー
花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング

 

■ブログ『世界の花だより』
屋久島の花

 

私が植生観察ツアーを造成する際に注意することは「時間的に十分な余裕を確保する」ことです。
屋久島最高峰・宮之浦岳まで足を伸ばすと、投石平周辺などで高山植物を楽しむことはできますが、「距離&歩行時間が長くなってしまう?」と感じてしまい、日程と理想がなかなか合致することがありませんでした。
そこで、あえて欲張らずに「高地植物の宝庫」と紹介される黒味岳に着目してみると、ちょうど良い距離感、山頂からの好展望、さらには森林限界を越えて黒味岳山頂周辺で観察できる花々を見て、登る前から魅了され、ツアー造成に至りました。

 

1.屋久島の植生を堪能できる理想的な距離感と歩行時間
※参考資料:屋久島観光協会HPより(http://yakukan.jp/doc/pdf/tozancourse2.pdf)
淀川登山口より1泊2日で往復する平均的なプランの場合、日本最南端の高層湿原・花之江河を経て黒味分岐(黒味分かれ)までは、宮之浦岳も黒味岳も同ルートを歩きます。
黒味分岐(黒味分かれ)から黒味岳へは1.4kmの往復、宮之浦岳へは栗生岳を経て往復6.0km往復があります。時間にすると、黒味分岐から黒味岳への往復は80分、宮之浦岳への往復は4時間30分を要します。
屋久島最高峰を目指すという魅力はありますが、屋久島の植生観察を楽しむためには、この約3時間の時間は非常に大きいです。その点、黒味岳は理想的な距離感と共に時間的に余裕があるため、ゆっくりと専門ガイドの解説を聞きながら屋久島の自然や植生を堪能できる点が魅力です。因みに、開花状況によって、黒味分岐から投石平(投石小屋)まで足を伸ばしても往復で1時間です。

 

※黒味岳の場合:合計13.4km(標高差:471m)
①日目 約5.5km(淀川登山口→淀川小屋→花之江河→石塚小屋)
②日目 約7.9km(石塚小屋→花之江河→黒味分岐→黒味岳→黒味分岐→花之江河→淀川小屋→淀川登山口)

 

※宮之浦岳の場合:約18km(標高差:576m)
①日目:約12.5km(淀川登山口→淀川小屋→花之江河→黒味分岐→宮之浦岳→黒味分岐→花之江河→石塚小屋)
②日目:約5.5km(石塚小屋→花之江河→淀川小屋→淀川登山口)
※白谷雲水峡へ縦走する1泊2日プランの歩行距離は約24kmです。

 

2.ゆっくりと歩き、植生の垂直分布を実感
スタート地点である淀川登山口の標高は1,365m。スタート直後から屋久杉やモミ・ツガなどの針葉樹の巨樹が分布し、それぞれの巨樹に苔がつき、苔の水分を得て樹木に着生する着生植物などを観察しながらのんびりと歩きます。因みに、8月は平均タイムが50分と表記される登山口~淀川小屋までの区間を1時間30分かけて観察を楽しみながら歩きました。

 

到着した淀川小屋ではリュックを降ろし、清らかな淀川の流れを見学し、淀川の森に自生する苔類などの観察を楽しみます。

 

淀川小屋以降は、針葉樹に着生する着生植物、火砕流の跡を示す地層、木々の合間から覗く展望を楽しみながら、のんびりと標高を上げていくと、森の中でも屋久島の花も徐々に姿を現し始めます。8月は屋久島の固有種など、様々な花を観察することができました。
時間の余裕ができるプランだからこそ、標高1,500m付近から森林限界、さらには標高1,700m以上に分布する高山植物など、植生分布を実感しながら植生を楽しむことができる点が黒味岳フラワートレッキングの魅力です。
平均タイムが登り110分とされる淀川小屋~花之江河の間でも2時間30分(昼食タイムを差し引いた時間)をかけて植生をのんびり楽しみながら歩きました。徐々に姿・形を変えていく高盤岳のトーフ岩の展望も楽しめます。

 

3.黒味岳山頂からは屋久島随一の絶景を望む
やはり最高峰登頂という言葉の魅力は絶大です。そういった点で言えば、屋久島第6の高峰である黒味岳は宮之浦岳に比べて見劣りしてしまいます。
ただ、黒味岳の山頂に立つと見劣りする部分は一掃されます。屋久島三岳と称される宮之浦岳、永田岳、栗生岳、さらには宮之浦岳へ続く主稜線も一望でき、眼下には日本最南端の高層湿原である花之江河もご覧いただけます。また、南側には遠く太平洋を望みます。
黒味岳は屋久島で最も美しい山岳風景が楽しめる場所と言っても過言ではありません。
黒味分岐から黒味岳山頂の平均タイムは往路45分、復路35分と表記されますが、高山植物の花々を楽しみながら、ゆっくりと歩き、8月の際は山頂でのんびり絶景と高山植物を楽しみながら30分ほど過ごしました。

 

現在、弊社では屋久島を周遊し亜熱帯植物や照葉樹林の植生を観察、苔類や屋久杉の巨樹を楽しむ白谷雲水峡、森林限界を目指す「黒味岳フラワートレッキング」へご案内する「花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング」を発表しており、4月は白谷雲水峡の太鼓岩からヤクシマオナガカエデの新緑とヤマザクラが咲く絶景をご覧いただける季節、5月は黒味岳周辺にヤクシマシャクナゲが花咲く季節に設定しております。
屋久島に興味がある方、植生に興味がある方、このブログを見て屋久島の植生に興味を持たれた方、一度屋久島に訪れた方がある方も、是非一度黒味岳フラワートレッキングを体感してみてください。

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アキチョウジ(秋丁字:sodon longitubus)

本日は「屋久島・黒味岳の魅力をご紹介」の予定でした、先に11月初旬に観察した花「アキチョウジ(秋丁字:sodon longitubus)」をご紹介します。

 

アキチョウジ(秋丁字:sodon longitubus)

 

被子植物 双子葉類
学名:Sodon longitubus
別名:キリツボ
科名:シソ科(Lamiaceae)
属名:ヤマハッカ属(Isodon)

 

アキチョウジ(秋丁字)は、11月初旬に同行させていただいた「原生林・芦生の森と京都の奥座敷・鞍馬と貴船」で京都大学・芦生研究林(芦生の森)へ訪れた際に観察したのですが、最初に見た際は形状からタツナミソウ(シソ科タツナミソウ属)の仲間か、屋久島で観察したヤクシマママコナ(ハマウツボ科ママコナ属)の仲間と思っていました。
現地ガイドさんより「アキチョウジ(秋丁字)」という名を教えていただき、初めて聞く名前の花だったので、後々調べてみると非常に興味深い花でした。

 

アキチョウジ(秋丁字)は、シソ科ヤマハッカ属の多年草で、本州では岐阜県以西、さらには四国、九州に分布し、主に山地の半日陰の自生する日本固有の花です。
草丈は比較的大きく70~100cmで直立し、茎には非常に短い細毛が確認できます。
葉は長さ10cmほどの狭卵形で対生し、少し長めの葉柄があり、先端が尖り、縁には浅い鋸歯も確認できる形状です。また、葉の裏面には若干の細毛も確認できます。

 

花期は9~10月。茎先や上部の葉腋から集散花序(しゅうさん:主軸の先端に花がつき、少し下から横枝が出てその先に花がつく花序)で花を付け、花柄の先に青紫色の花を多数咲かせます。
花の付き方がユニークで、上の写真でもご覧いただけるとおり、同じ方向に偏った花穂を作ります。
花の長さは2cm弱、筒状の部分が長いのが特徴です。先端部は上唇部と下唇部に分かれ、上唇は浅く4裂、下唇は先をキュッと摘まんだような形状(舟形、ボート形と表記する資料もあり)をして前に突き出た印象です。
花冠の中の雄しべと雌しべを包んだ焼売(しゅうまい)のようなイメージの形状です。
和名の「秋丁字」は、秋に「丁」の字のような形の花を咲かせることが由来のようです。

 

非常に興味深かった点は、アキチョウジは「霜柱をつくる植物」として紹介されていた点です。
いつも花のことを色々と調べる際の参考資料『山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花』(山と渓谷社)にて紹介されていましたので、ご紹介します。

 

<霜柱をつくる植物>
初冬のころ、枯れ始めた茎の根元から霜柱のような氷柱が立つ植物があり、その代表的なものが「シモバシラ(Keiskea japonica)」です。
シモバシラ(シソ科シモバシラ属)以外にも、氷の花を咲かせるものがいくつかあり、シソ科のものが多いようですが、キク科にも氷の花ができるものがあるようです。

 

<氷の花が咲くメカニズム>(原文のママ)
冬になって外気が氷点下になり、地上部が枯れても、地中はまだ暖かく、根は生きている。そこで、水を吸い上げる力の強いものはまだまだ水を吸い上げる。茎の中の導管を上がってきた水は、茎の途中などから染み出し、これが外気に触れて凍り始める。そして、茎がどんどん破れ広がるとともに、氷の花も次第に大きくなる。最後は導管も破れてしまい、また地中も凍って水を上げることができなくなり、氷の花(霜柱)は見られなくなってしまう。

 

山渓ハンディ図鑑で紹介されていた霜柱をつくる植物には、シモバシラ(シソ科シモバシラ属)、アキチョウジ(シソ科ヤマハッカ属)以外にもアズマヤマアザミ(キク科アザミ属)、カシワバハグマ(キク科コウヤボウキ属)、カメバヒキオコシ(シソ科シモバシラ属)、シロヨメナ(キク科シオン属)が紹介されていました。
別の資料では、何度も氷結を繰り返すと茎が裂けてボロボロになり、小さいものしかできなくなるとあり、大きめの氷の花(霜柱)を観察できる期間はわずかのようです。

是非一度、氷の花の観察も楽しんでみたいものです。

 

<冬から春 オススメのツアー>
12月コースは催行間近!
桜島の溶岩ウォークと鹿児島の2つの半島を巡る旅
※薩摩半島の指宿では、12月~1月は名の花の咲くシーズン

 

2月21日出発は満席! 2月14日出発は催行間近!
冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界
※流氷の上を歩く流氷ウォーク®と美瑛の丘で絶景スノーシュー体験

 

2月21日出発 催行間近!
冬の八甲田山の樹氷・奥入瀬渓流の氷瀑・男鹿の夕景を撮る
※東北の冬景色の撮影と秘湯の湯を楽しむ旅
※撮影をされない方も、東北の冬風景と名湯を楽しめます

 

静岡の美景めぐり 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ
※伊豆半島ジオパークから奥大井の秘境「寸又峡」を巡る
※干潮時には象島まで砂州が出現する「堂ヶ島トンボロ現象」

 

<春の花の観察ツアー>
4月3日出発 催行間近!
花咲く秘島・甑島へ 島の山野草をもとめて 4日間
※甑島の絶景と島を彩る山野草の観察を楽しむ旅

 

5月1日出発 催行間近!
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる 5日間
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間

 

4月29日出発 催行間近!
花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く

 

5月23日出発 催行間近!
花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

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イッスンキンカ(一寸金花:Solidago minutissima)

本日は「イッスンキンカ(一寸金花:Solidago minutissima)」をご紹介します。

 

イッスンキンカ(一寸金花:Solidago minutissima)

 

被子植物 双子葉類
学名:Solidago minutissima
別名:屋久島一寸金花
科名:キク科(Asteraceae)
属名:アキノキリンソウ属(Solidago)

 

イッスンキンカ(一寸金花)は、屋久島のみに自生するアキノキリンソウ(秋の麒麟草:Solidago virgaurea subsp. asiatica)の近縁種です。
森林限界を越える標高1,600m以上、岩場で少し湿った場所で自生します。私も花之江河を越え、黒味岳山頂を目指して森林限界を越えたあたり、さらには黒味岳山頂でも観察することができました。

 

草丈は3~5cmと低く、和名の「一寸(=3.03cm)」はこの草丈の小ささが由来とされています。茎には短毛が確認でき、茎の上部で分枝します。
アキノキリンソウ(秋の麒麟草)は草丈が30~100cmとなりますが、近縁種という割に草丈には大きな差があります。そのため、イッスンキンカはアキノキリンソウの極小型種と紹介されています。これまでも何度かご紹介してきた屋久島の植生の矮小化を表す例ですが、それにしても10~30倍という大きさの違いがあるのは驚きです。
葉は長楕円状披針形で長さは1~2cmほどと小さく、ほんの少し光沢が確認できるものもあります。

 

花期は8~9月。茎の先端に直径1cm弱の鮮やかな黄色い頭花を1~5輪を咲かせる頭状花序です。1つ1つの頭花をご覧いただくと、中央部に筒状花(つつじょうか:花弁が筒状になったもののこと)が密集しており、花弁のように広がっている舌状花(ぜつじょうか:基部の構造は筒状花と同じで、花弁の先端が片方に大きく伸びて広がっているもの)が確認できます。
上写真の下部に花が開く前の状態のものが確認できますが、筒状花が密集している構造が判りやすいかと思います。

 

■頭状花序(とうじょうかじょ)
タンポポをはじめとするキク科の花序は多数の花が集まってまるで1個の花のように見える花序。頭状花序を構成する一つ一つの花のことを「小花」、一つの花のように見える花序のことを「頭花」とも呼びます。
キク科の小花には、花弁が筒状に融合した筒状花(管状花)と舌状に広がった舌状花の2種類があります。

 

ここ1ヶ月、8月の屋久島・黒味岳フラワートレッキングで観察した高山植物、花をご紹介してきました。屋久島の花の矮小化も非常に興味深いものですが、植生全体も非常に興味深いものです。季節を変えて黒味岳へ訪れると違った高山植物、花に出会えます。
是非一度、屋久島・黒味岳を訪れてみてください。
次回、少し花のご紹介から外れ、屋久島・黒味岳の魅力をご紹介します。

 

<冬から春 オススメのツアー>
12月コースは催行間近!
桜島の溶岩ウォークと鹿児島の2つの半島を巡る旅
※薩摩半島の指宿では、12月~1月は名の花の咲くシーズン

 

2月14日出発は催行間近!
冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界
※流氷の上を歩く流氷ウォーク®と美瑛の丘で絶景スノーシュー体験

 

※間もなく催行!!
冬の八甲田山の樹氷・奥入瀬渓流の氷瀑・男鹿の夕景を撮る
※東北の冬景色の撮影と秘湯の湯を楽しむ旅
※撮影をされない方も、東北の冬風景と名湯を楽しめます

 

静岡の美景めぐり 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ
※伊豆半島ジオパークから奥大井の秘境「寸又峡」を巡る
※干潮時には象島まで砂州が出現する「堂ヶ島トンボロ現象」

 

<春の花の観察ツアー>
花咲く秘島・甑島へ 島の山野草をもとめて 4日間
※甑島の絶景と島を彩る山野草の観察を楽しむ旅

 

※5月1日出発 まもなく催行!
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる 5日間
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間

 

※4月29日出発 まもなく催行!
花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く

 

花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

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ツクシゼリ(筑紫芹:Angelica longeradiata)

ここ1ヶ月、春の花の観察ツアーの造成に励んでいたため、花の写真をたくさん見る機会がありました。そのため、春の花がとても恋しくなってきました。少々気が早いかもしれませんが、早く暖かくなってくれないかと思う日々が続いています。

 

本日は「ツクシゼリ(筑紫芹:Angelica longeradiata)」をご紹介します。

 

ツクシゼリ(筑紫芹:Angelica longeradiata)

 

被子植物 双子葉類
学名:Angelica longeradiata
科名:セリ科(Apiaceae)
属名:シシウド属(Angelica)

 

ツクシゼリ(筑紫芹)は、本州の岡山以南から九州にかけて分布し、屋久島が南限と言われています。山地の岩礫地に自生する多年草です。私も8月に屋久島・黒味岳の山頂の岩場にて観察しました。

 

草丈は5~40cmと記載される資料があり、本州や九州本土では高さが20~40cmと背丈は高くなりますが、屋久島の植生は矮小化しているものが多く、背丈が本州や九州本土のものに比べてコンパクトになることが多いため、草丈の表記に差が生じる要因なのかもしれません。

 

葉は、草丈の下部に付け、2~3回3出羽状複葉、小葉は細裂します。葉は少し厚みがあり、若干の光沢も確認できます。葉柄は鞘状にふくらみが確認できるとのことでしたが・・・この点は次回の観察の際の宿題としたいと思います。

 

■羽状複葉:小葉が葉軸の左右に鳥の羽のように並んだもの
■2~3回三出羽状複葉:羽状複葉が集まって大きな羽状複葉を構成している場合、複葉の回数に合わせて 2回羽状複葉 、3回羽状複葉となる

 

花期は8~9月。複散形花序で小さな白い花を多数密集して咲きます。
花弁は5枚、ハート型のように見えますが、花弁の先端部だけが手前に反り返っているような不思議な形状です(先端だけ摘まんで手前にキュッと引っ張ったような)。また、花弁の中央部が淡いピンク色が帯びている個体も多く確認できました。
果実は楕円形で4~5mmほど。シシウド属は羽根の付いた種子が風で飛散される特徴がありますが、ツクシセリの両翼は少し狭いとされています。

 

■複散形花序:花序軸の頂端に,ほぼ同じ長さの花柄をもつ多数の花が放射状についている花序

 

屋久島では、ツクシゼリの屋久島固有変種であるヤクシマツクシゼリ(屋久島筑紫芹)があり、標準和名をヒナボウフウ(雛防風)といいます。ただ、屋久島の高地に生えるツクシゼリの矮小化したものとして、同一とする考え方もあるようです。
屋久杉や苔類が大きく取り上げられる屋久島ですが、花・高山植物も本当に興味深いものが多い島です。

 

<冬から春 オススメのツアー>
12月コースは催行間近!
桜島の溶岩ウォークと鹿児島の2つの半島を巡る旅
※薩摩半島の指宿では、12月~1月は名の花の咲くシーズン

 

2月21日出発は満席! 2月14日出発は催行間近!
冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界
※流氷の上を歩く流氷ウォーク®と美瑛の丘で絶景スノーシュー体験

 

※間もなく催行!!
冬の八甲田山の樹氷・奥入瀬渓流の氷瀑・男鹿の夕景を撮る
※東北の冬景色の撮影と秘湯の湯を楽しむ旅
※撮影をされない方も、東北の冬風景と名湯を楽しめます

 

静岡の美景めぐり 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ
※伊豆半島ジオパークから奥大井の秘境「寸又峡」を巡る
※干潮時には象島まで砂州が出現する「堂ヶ島トンボロ現象」

 

<春の花の観察ツアー>
花咲く秘島・甑島へ 島の山野草をもとめて 4日間
※甑島の絶景と島を彩る山野草の観察を楽しむ旅

 

※5月1日出発 まもなく催行!
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる 5日間
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間

 

※4月29日出発 まもなく催行!
花咲く北飛騨の森から上高地へ 2つのフラワーハイキング
※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く

 

花咲く屋久島へ 白谷雲水峡と黒味岳フラワートレッキング
※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

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ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅:Tripetaleia paniculata f. paniculata)

先日、春の花の観察ツアーを3つの発表させていただき、さらに1つ追加で発表させていただきました。おかげさまでそれぞれのツアーをご検討いただけている方から問合せ、さらにはお申し込みもいただき、嬉しい限りです。
まだご覧いただいていない方は、このブログの最後に掲載しておりますので、是非ご覧ください。

 

本日は「ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅:Tripetaleia paniculata f. paniculata)」をご紹介します。

 

ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅:Tripetaleia paniculata f. paniculata)

 

被子植物 双子葉類
学名:Tripetaleia paniculata f. paniculata
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:ホツツジ属(Elliottia)

 

ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅)は屋久島と名の付く花ですが、屋久島の固有種ではなく、四国、九州にも分布し、屋久島が南限となります。様々な資料を確認しましたが、ヤクシマと名の付く由来などを記載する資料はありませんでした。
比較的標高が高く、日当たりの良い岩場などに自生し、屋久島では標高1,500mを越えるエリアに自生します。私も黒味岳山頂の岩場でのんびりと景観を楽しんでいた際、足を踏み出すには躊躇するような場所に咲いているのを観察することができました。

 

ヤクシマホツツジ(屋久島穂躑躅)は、高さ1~2mになるツツジ科の落葉低木。根元に近い下部から分枝し、上部で生い茂ります。
葉は赤褐色の枝先に輪生状(互生と記載する資料もあり)に4~5枚に付け、4~5cmほどの大きさの葉には光沢は確認できません。

 

花期は7~8月。花は葉の付いた枝先から赤褐色の枝が伸び、総状花序で5~10個の花を付けます。
3枚の花弁に見える花冠は深く3裂し、1cmほどの裂片が外に向けて反り返っている(丸まっている)のが印象的です。写真では少し判りづらいですが、裂片の先端が淡いピンク色であるのが、より花を可憐に見せる印象です。

 

さらに特徴的なのが中央から突き出す雌しべの花柱です。長さは反り返った裂片と同じく1cmほど、写真では全体が白色の花柱ですが、個体によっては根元の部分が淡いピンク色のものもありました。花柱の根元にはクリーム色の子房も確認できます。雄しべは子房の脇から花糸から数本伸びているのが確認できます。

 

ヤクシマの名を付けないホツツジ(穂躑躅)がありますが裂片の先端は尖っておらず、裂片の先端が若干尖っている印象のヤクシマホツツジと区別する資料も多いですが、2つを区別しない見解、図鑑などもあるようです。

 

今回は屋久島の黒味岳の山頂から一歩踏み出すには恐怖を感じる場所に咲いていたので、細かな部分を観察できませんでしたが、次に観察する機会があれば、反り返った裂片の先端部も確認してみたいと思います。

 

<冬から春 オススメのツアー>
12月コースは催行間近!
桜島の溶岩ウォークと鹿児島の2つの半島を巡る旅
※薩摩半島の指宿では、12月~1月は名の花の咲くシーズン

 

2月21日出発は満席! 2月14日出発は催行間近!
冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界
※流氷の上を歩く流氷ウォーク®と美瑛の丘で絶景スノーシュー体験

 

※間もなく催行!!
冬の八甲田山の樹氷・奥入瀬渓流の氷瀑・男鹿の夕景を撮る
※東北の冬景色の撮影と秘湯の湯を楽しむ旅
※撮影をされない方も、東北の冬風景と名湯を楽しめます

 

静岡の美景めぐり 河津七滝・堂ヶ島・寸又峡へ
※伊豆半島ジオパークから奥大井の秘境「寸又峡」を巡る
※干潮時には象島まで砂州が出現する「堂ヶ島トンボロ現象」

 

<春の花の観察ツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる
※春の花咲く信州へ 花の名所を訪れる4日間

 

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※北飛騨の森・池ヶ原湿原と名勝・上高地を専門ガイドと歩く

 

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※亜熱帯植物から高山植物まで 屋久島の植生の垂直分布を体感

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ヤクシマノギラン(屋久島芒蘭:Metanarthecium luteoviride Maxim. var. nutans Masam)

海外ツアーの再開に向けて準備を進める中、国内ツアーの造成にも励んでいます。
私も春の花の観察を楽しむツアーをいくつか造成し、発表させていただきました。最後にツアーもご紹介しておりますので、是非ご覧ください。

 

本日はヤクシマノギラン(屋久島芒蘭:Metanarthecium luteoviride Maxim. var. nutans Masam)をご紹介します。

 

ヤクシマノギラン(屋久島芒蘭:Metanarthecium luteoviride Maxim. var. nutans Masam)

 

被子植物 単子葉類
学名:Metanarthecium luteoviride Maxim. var. nutans Masam
科名:キンコウカ科(Nartheciaceae)
属名:ノギラン属(Metanarthecium)

 

ヤクシマノギラン(屋久島芒蘭)は、北海道から九州にかけて分布するノギラン(芒蘭)の屋久島固有変種で、鹿児島県絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
標高1,400mから森林限界を越えた登山道の脇や日当たりの良い岩場の割れ目などに自生します。私も黒味岳直下の岩場に張り付くように咲くヤクシマノギランを見つけましたが、手の届かない上の方に咲いていたので、目一杯カメラをズームし撮影しました。

 

以前はユリ科に含められていましたが、近年のAPG植物分類体系ではヤマノイモ目に置かれ、あまり聞き慣れないキンコウカ科(日本にはキンコウカ、ノギラン、ソクシンランなど)に分類されています。

 

草丈は10cmほど。屋久島以外に自生するノギランは草丈30cmほどに成長しますが、屋久島は日照時間が短く、雨風も強い厳しい環境であるため矮小化しています。
根出葉は倒披針形で10cm前後、少し光沢が見られ、手の届かない場所に咲いていたため確認はできませんでしたが、葉にさほど厚みはないように感じます。

 

花期は6~8月。花柄は長く総状花序となり、花茎の先端に淡い黄緑色で長さ6~8mm程度の花を咲かせます。
ある資料にノギランと同一とする考えもある中、花柄が短くて花序が穂状でなく総状になることでヤクシマノギランと分けるとありました。

 

今回は花のピークを過ぎてしまっていましたが、いつの日かキレイに咲くヤクシマノギランを観察してみたいものです。その際は手の届く場所に咲いていることを願います。

 

<冬から春 オススメのツアー>
※12月コースは催行間近!
桜島の溶岩ウォークと鹿児島の2つの半島を巡る旅
※薩摩半島の指宿では、12月~1月は名の花の咲くシーズン
※活火山・桜島の徹底探求と大隅半島・薩摩半島から名峰・開聞岳を望む

 

※2月21日出発は満席! 2月14日出発は催行間近!
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※流氷の上を歩く流氷ウォーク®と美瑛の丘で絶景スノーシュー体験

 

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花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地をめぐる

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ヤクシマシオガマ(屋久島塩竃:Pedicularis ochiaiana)

本日は「ヤクシマシオガマ(屋久島塩竃:Pedicularis ochiaiana)」をご紹介します。

 

ヤクシマシオガマ(屋久島塩竃:Pedicularis ochiaiana)

 

被子植物 双子葉類
学名:Pedicularis ochiaiana
科名:ハマウツボ科 (Orobanchaceae)
属名:シオガマギク属(Pedicularis)

 

以前はゴマノハグサ科に分類され、多くの資料でもゴマノハグサ科で紹介されていますが、新しいAPG植物分類体系ではシオガマギク属やコゴメグサ属、ママナコ属などがハマウツボ科に移行されています(多くは半寄生、一部全寄生、ただし二属Lindenbergia・Rehmanniaは独立栄養)。

 

ヤクシマシオガマ(屋久島塩竃)は、屋久島の固有種の1つで環境省絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定される高山植物です。
屋久島の高所(標高1,200m以上)に分布し、日当たりが良く少し湿り気のある草地、ヤクザサやシャクナゲの茂みなどに自生します。私も黒味岳の山頂直下で観察することができました。

 

草丈は20~30cmで濃紅色の茎が直立、もしくは茎頂に花をたくさんつけた個体は少し斜上しているものもあります。
葉は長さ5~10cmほどで羽状に全裂したものが対生し、表面には毛が散生しているのも確認ができます。茎の上部になるにつれて葉が小さくなります。ある資料に「シダのような葉をつける」とありますが、葉を確認するとそういう印象を受ける形状です。上写真で、少しぼやけていますが、シダのような葉が確認していただけます。

 

花期は8~9月。茎の先端部に3~5cmの花穂をたて、2~3cmほどで淡いピンク色の花を5~10個ほど咲かせます。
花冠はシオガマギク属の花らしく、上唇部と下唇部に分かれます。
上唇部は、兜型で真ん中あたりで急にこちらを向いて曲がっているという印象です。また下側にクリーム色に近い色合いの軟毛が密集しているのが印象的です。
下唇部は、写真を確認すると扇子を広げたような形状の花弁1枚のように見えますが、実際は1枚の花弁が中ほどで3裂しています。裂片部分が外側に反り返って(巻き込んで)いるため、そのように感じたのかもしれません。

 

下の写真は、一輪だけ落ちてしまっていたものを岩場にのせて観察したものですが、上唇部の軟毛や下唇部が3裂している様子が判りやすいかと思います。

 

屋久島の高山植物の花々は矮小化(小型化)したものが多いと紹介しましたが、このヤクシマシオガマ(屋久島塩竃)は本州などで観察できるシオガマギク属の仲間と大きさに大差はなく、そのため屋久島・黒味岳直下でも非常によく目立ち、非常に楽しく観察することができました。

現在、屋久島の植生観察ツアーを絶賛造成中!まもなく発表できますので、お楽しみに!!

 

一輪だけ落ちてしまっていたものを岩場にのせて観察

 

<冬から春 オススメのツアー>
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ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切:Hypericum kiusianum var. yakusimense)

本日も屋久島の高山植物の1つ「ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切:Hypericum kiusianum var. yakusimense)」をご紹介します。

 

ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切:Hypericum kiusianum var. yakusimense)

 

被子植物 双子葉類
学名:Hypericum kiusianum var. yakusimense
科名:オトギリソウ科(Guttiferae)
属名:オトギリソウ属(Hypericum)

 

ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切)は、屋久島の標高1,200m以上の高地、高層湿原などに自生する屋久島の固有変種で、鹿児島県指定の絶滅危惧種に指定されています。私も8月に屋久島の黒味岳を目指す道中にある花之江河(標高1,630m)で観察することができました。
資料によっては九州や四国にも自生するとありましたが、ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切)は、基本種のナガサキオトギリ(長崎弟切:四国と九州の山地に自生)が矮小化した種とされています。

 

詳細をご紹介する前に、葉や花弁に見られる「明点」「黒点」について、先にご紹介します。
◇黒点:黒く見える点。他の植物にも見られます。
◇明点:葉を透かすと光が透けて見える点。色素が抜けている部分。

 

草丈は茎が倒伏していることもあり3~10cmと低く、葉は狭長楕円形で長さは0.5cmほどで光沢などは見られません。
0.5cmと小さな葉には明点と黒点が確認できます。上写真の右上にある葉で明点は確認できます。また、黒点は判りずらいですが、よく見ると縁に黒点が確認できます。

 

花期は6~9月(私も8月末に観察)。茎の先端部に鮮やかな黄色い花を1~3個ほど咲かせます。花弁は倒披針形で5枚で、大きさは直径で1cmほどと小さく非常に可愛らしい印象の花です。花弁にも葉と同様に明線と黒点が確認できます。
ただ、葉の明点と黒点、花弁の明線と黒点・・・花が小さすぎて確認するにはルーペが必要です。
花の中央から花弁とほぼ同じ長さ、同色の雄しべが多数伸びており、先端の葯も花弁や雄しべと同色でした。さらに中央には0.1~0.2cmほどの大きさの子房が確認でき、先端が少し赤みを帯びた柱頭も数本確認できます。

 

オトギリソウ科の花は昔から薬草として使われており、葉や茎葉止血薬として使われ、生薬として知られる小連翹(しょうれんぎょう)は花や実がついたままの茎葉は刈り取って日干し乾燥させたものを言います。

 

和名につく「弟切草」。恐ろしい和名ですが、これには言い伝え(諸説あり)が残されています。
平安時代の頃、オトギリソウを原料とした秘伝の薬(鷹の傷の妙薬という説もあります)があったそうですが、その秘伝の薬の秘密を弟が恋人に漏らしたため、兄が激怒して弟を切り殺したという伝説が和名の由来とされています。因みに、弟を切り殺した際に飛び散った血がオトギリソウに見られる黒点と言われています。
そんなオトギリソウに付けれた花言葉は「怨念」「迷信」です。

 

オトギリソウの和名の由来は恐ろしいものですが、実際に花を観察すると、そのような言い伝えは俄に信じがたい非常に可憐で美しく咲く花です。
上の写真は可能な限り大きくトリミングした写真ですが、下の写真(上と同じ花の写真)をご覧いただくと、周囲にミズゴケ(オオミズゴケ)が自生しているのが判るかと思いますが、大きさはさほど変わらず・・・どれだけ小さな花だったのか想像いただけると思います。
夏に屋久島で登山を楽しまれる際、足元に注意しながらヤクシマコオトギリの花を探してみてください。

 

ヤクシマコオトギリ(屋久島小弟切)と周りのミズゴケ、大きさを比較してみてください

 

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