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ツクシゼリ(筑紫芹:Angelica longeradiata)

ここ1ヶ月、春の花の観察ツアーの造成に励んでいたため、花の写真をたくさん見る機会がありました。そのため、春の花がとても恋しくなってきました。少々気が早いかもしれませんが、早く暖かくなってくれないかと思う日々が続いています。

 

本日は「ツクシゼリ(筑紫芹:Angelica longeradiata)」をご紹介します。

 

ツクシゼリ(筑紫芹:Angelica longeradiata)

 

被子植物 双子葉類
学名:Angelica longeradiata
科名:セリ科(Apiaceae)
属名:シシウド属(Angelica)

 

ツクシゼリ(筑紫芹)は、本州の岡山以南から九州にかけて分布し、屋久島が南限と言われています。山地の岩礫地に自生する多年草です。私も8月に屋久島・黒味岳の山頂の岩場にて観察しました。

 

草丈は5~40cmと記載される資料があり、本州や九州本土では高さが20~40cmと背丈は高くなりますが、屋久島の植生は矮小化しているものが多く、背丈が本州や九州本土のものに比べてコンパクトになることが多いため、草丈の表記に差が生じる要因なのかもしれません。

 

葉は、草丈の下部に付け、2~3回3出羽状複葉、小葉は細裂します。葉は少し厚みがあり、若干の光沢も確認できます。葉柄は鞘状にふくらみが確認できるとのことでしたが・・・この点は次回の観察の際の宿題としたいと思います。

 

■羽状複葉:小葉が葉軸の左右に鳥の羽のように並んだもの
■2~3回三出羽状複葉:羽状複葉が集まって大きな羽状複葉を構成している場合、複葉の回数に合わせて 2回羽状複葉 、3回羽状複葉となる

 

花期は8~9月。複散形花序で小さな白い花を多数密集して咲きます。
花弁は5枚、ハート型のように見えますが、花弁の先端部だけが手前に反り返っているような不思議な形状です(先端だけ摘まんで手前にキュッと引っ張ったような)。また、花弁の中央部が淡いピンク色が帯びている個体も多く確認できました。
果実は楕円形で4~5mmほど。シシウド属は羽根の付いた種子が風で飛散される特徴がありますが、ツクシセリの両翼は少し狭いとされています。

 

■複散形花序:花序軸の頂端に,ほぼ同じ長さの花柄をもつ多数の花が放射状についている花序

 

屋久島では、ツクシゼリの屋久島固有変種であるヤクシマツクシゼリ(屋久島筑紫芹)があり、標準和名をヒナボウフウ(雛防風)といいます。ただ、屋久島の高地に生えるツクシゼリの矮小化したものとして、同一とする考え方もあるようです。
屋久杉や苔類が大きく取り上げられる屋久島ですが、花・高山植物も本当に興味深いものが多い島です。

 

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エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)

先週完成した「西遊通信」がそろそろ皆様のお手元に届いている頃かと思います。春から夏にかけて様々なツアーを発表しております。春の花、夏の花、高山植物を観察するツアーも充実しておりますので、ご興味あるコースがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

本日は大型のセリ科植物の「エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)」をご紹介します。

 

エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)※ベニア原生花園にて

 

被子植物 双子葉類
学名:Papaver fauriei
科名:セリ科(Apiaceae)
属名:シシウド属(Angelica)

 

高山植物を観察していると一際大きな存在感を放つのがセリ科の植物です。
セリ科の植物を見つけた際に「あれはセリ科の花」「ウドの仲間」と認識されている方も多いのではないでしょうか。それだけ見分けが難しい植物でもあり、私も自身がなく前述のように説明してしまうことが多い植物です。
「エゾニュウ(蝦夷ニュウ)」はセリ科シシウド属で、北海道の沿岸部の原生花園などで観察する機会が多いですが、国内では北海道以外にも本州の中部地方以北に、海外では千島列島、サハリン、カムチャッカ半島に分布し、沿岸部の草地から山地と幅広く自生します。

 

草丈は1.5m~2m、大きいので3mにも達するものもあり、太い赤みを帯びた茎が直立します。この赤みを帯びた太い茎は中空で直径10㎝にも及ぶものもあるそうです。

 

葉は比較的大型、二回三出複葉で小葉は長楕円形です。

  • 複葉とは、葉身(葉の平たい部分)が小葉と呼ばれる小さな部分に分かれている葉のことで、別々の小さな葉の集まりのように見えるものも、実は全てを合わせて1枚の葉と考えます。
  • 複葉の中にもいくつか種類があり、中央の1本の軸の左右に小葉が並んでいるものを「羽状複葉」、羽状複葉が集まって全体としてさらに大きな羽状複葉を構成している場合、複葉の回数に合わせて「ニ回羽状複葉」、 「三回羽状複葉」と言います。

 

茎頂に大きな蕾をつけ、蕾を覆う苞は深い皺がはいり、少々薄気味悪い印象を与えます。この苞の部分は開花直後に剝がれ落ちてしまいます。
※エゾニュウの蕾の状態の写真はありませんでしたが、同じセリ科の植物の蕾の写真を見つけました(サハリンで撮影)ので、イメージとして掲載しておきます。

 

セリ科の植物の蕾

 

花期は7~8月。複散形花序(花軸から放射状に柄を伸ばし、その先に散形花序をつける)で、白色(クリーム色)の小さな花を多数つけます。
エゾニュウの大花序は50個近く柄を伸ばし、その先につく小花序は30~40個ほどの柄を放射状に出し球形となります。その姿は、まるで打ち上げ花火が大きく広がったようにも見えます。
それぞれの花はルーペがないと見えないくらいの大きさですが、花弁が4~5枚、その中央に長い雄しべが伸びます。ある資料に「雄しべがにゅーっと伸びる」とあり、可愛らしい表現で、エゾニュウの説明にピッタリな表現でした。

 

エゾニュウは、秋田県では「ニョウサク」「サク」「ニオ」などと呼ばれ、塩蔵して冬に食べる越冬山菜の代表として紹介されています。
また、アイヌ語では「シウキナ(若い草)」と呼ばれ、ある資料にアクが強くアイヌでは若い茎の皮を剥いて生のまま『エゾニュウ甘くなれ』とおまじないをかけながら食べていた地域もあったと紹介されていました。

 

見分けが非常に難しいセリ科の植物ですが、また別の機会にセリ科の植物をご紹介したいと思います。まずは見分け方から勉強しないといけませんが・・・。

 

エゾニュウ(蝦夷ニュウ:Angelica ursina)②※ベニア原生花園にて

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

春をつげる雪割草を求めて 早春の佐渡島
※南北に大佐渡、小佐渡の山地が連なり、中央には国中平野が広がる佐渡島。大佐渡山麓と世阿弥の道にてゆっくりとフラワーハイキングをお楽しみいただきます。

 

佐渡島・花咲く金北山縦走トレッキングと佐渡周遊の旅
※春の花咲くシーズンの佐渡の山旅。絶景ロッジ・ドンデン山荘に宿泊し、佐渡の最高峰金北山を目指し、花咲く楽園・アオネバ渓谷のハイキングも楽しみます。

 

花の利尻・礼文島とサロベツ原生花園
※6月から7月にかけて高山植物の開花の季節となる利尻・礼文島。専門ガイドの案内で、フラワーウォッチングや様々な植物の観察を満喫する5日間。

 

花の利尻・礼文島から世界遺産・知床半島へ
※5月下旬から高山植物の季節が始まる利尻・礼文島から、オホーツク海沿岸を走り世界遺産・知床へ。利尻島・礼文島、知床半島を一度に楽しむ旅。

 

花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※専門ガイドとのんびりと花の観察を楽しみながら、尾瀬ヶ原から尾瀬沼へのフラワートレッキング。花咲く尾瀬を訪れる季節、8名様限定のツアーです。

 

花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く
※高山植物の宝庫として知られる千畳敷カールや乗鞍・畳平でフラワーハイキング。旅の後半は、専門ガイドと共に静寂に包まれた奥上高地の徳沢を目指す。高山植物の観察と合わせて絶景も楽しむ5日間。

 

日本各地で高山植物などの花々を楽しむツアーも続々と発表しております。ご興味のあるコースがありましたら、是非お問い合わせください。
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