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カノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)

先日「甑島列島探訪と噴煙たなびく桜島」へ同行させていただきました。
コロナウイルスの影響により長らくツアーが実施できず、久々のツアー添乗でしたが、お客様とともに感染症対策に十分気を付けながら、各所での観光を楽しませていただき、甑島(上甑島、下甑島)ではカノコユリが満開を迎えており、各所で観察を楽しむことができました。

 

本日は甑島で堪能したカノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)をご紹介します。

 

カノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)

 

被子植物 単子葉類
学名:Lilium speciosum
別名:ドヨウユリ(土用百合)、タナバタユリ(七夕百合)
科名:ユリ科(Liliaceae)
属名:ユリ属(Lilium)

 

カノコユリは四国南部(愛媛県や徳島県の山間部)や九州(薩摩半島から長崎県沿岸)などで見られ、今回訪れた鹿児島県薩摩川内市の甑島が日本唯一の自生地と言われています(もっとも自生密度が高いという表現をした資料もあります)。
また、海外では台湾北部、中国・江西省に自生し、タイワンカノコユリと呼ばれています。タイワンカノコユリは花は白く、赤からオレンジ色の斑点が入るそうです。

 

カノコユリは漢字で「鹿の子百合」と書きます。名の由来は紅色(またはピンク色)の斑点模様が鹿の背の斑(まだら)模様に似ていることから名付けられました。
ある資料では絞り染めの一種である「鹿の子絞り(かのこしぼり)」の模様に似ていることから名付けられたとされていました。

 

草丈は50㎝から大きいもので150㎝ほどまで成長します。
葉は線形で10~20㎝ほどの長さ、葉に触れてみると少し硬さを感じ、光沢も少し見られます。
花期は7月~8月。直立したカノコユリは茎先で枝分かれをし、数個の花をつけ、花の大きさは直径で10㎝ほどで、大半は下向きに咲きます。

 

花弁の縁が白く、中央部に向けて徐々にピンク色となり、個体によってはより濃いピンク色のものもあり、花全体が白花のものもあります。
花弁それぞれにカノコユリの名の由来どおり、花弁より濃紅色の鹿の背のような斑模様がついており、実際に観察するとこの色合いが何とも言えない美しさです。
カノコユリを調べていると、赤みの強い球根ほど色の濃い花を咲かせる傾向があるようです。

 

写真を見ると「花弁が6枚」と思いますが、実は違います。
これはユリの花の構造の共通点ですが、実は3枚の花弁と3枚の萼片に分かれているのです。
外側の萼片はやや幅が狭く外花被と呼ばれ、内側の3枚は幅がやや広く内花被とよばれています。

花弁、萼片とも外側に反り返った形状ですが、このように丸まっている姿が手毬のように見えることから「手毬型」と表記されている資料もありました。

 

花弁(内花被)と萼片(外花被)それぞれから雄しべが伸び、計6本つけており、雌しべが1本。上の写真でも判りますが、雌しべは先端の柱頭(粘液を分泌して花粉を受ける部分)が丸く、雄しべは葯(花粉を入れる袋)が細長いという点で見分けることができます。

 

江戸時代にフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトがカノコユリとテッポウユリの球根を日本から持ち帰り、ヨーロッパでも知られるようになり、カサブランカなどの品種で有名な「オリエンタル・ハイブリッド種」が生まれたそうです。
また、明治6年(1873)のウィーン万国博覧会で日本の自生ユリの数々が持ち込まれて紹介されるや、熱狂的なブームが起こったそうです。

 

先日甑島でカノコユリの群生を観察したので信じられませんが、現在カノコユリは環境省のレッドリストに登録されており、絶滅が危惧されているそうです。
心癒される美しい色合いのカノコユリの学名の「speciosum」は「美しい」という意味を持ちます。「美しいユリ」のカノコユリ、いつまでも美しく可憐に咲き続けてほしいものです。

 

白花のカノコユリも観察できました
カノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)

 

069

ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)

私は7月22日より「甑島列島探訪と噴煙たなびく桜島5日間」のツアーへ同行させていただき、現在上甑島から下甑島へ向かっているところです。

 

本日も日本の花の1つ、白山を冠した18種の植物のうちの1つである「ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata)」をご紹介します。

 

ハクサンチドリ:白山千鳥:ラン科)

被子植物 単子葉類
学名:Dactylorhiza aristata
和名:ハクサンチドリ(白山千鳥) 別名:シラネチドリ
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:ハクサンチドリ属(Dactylorhiza)

 

ハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata:白山千鳥)は、本州の中部以北から北海道にかけて、亜高山帯から高山帯の草地に自生し、本州では高山植物として知られているが、北海道内では山岳地帯から海岸近くまで幅広く分布しています。海外でも北太平洋地域、アラスカまで分布します。
私も白馬岳の登山の際に観察し、北海道・礼文島で群生を観察したのを覚えています。上の写真はサハリンにて観察したものです。

 

草丈は10~40㎝ほどで直立し、葉は細長の楕円形(広線形)から披針形をし、長さ10~15㎝ほどの葉が数枚互生(ごせい:茎の一つの節に1枚ずつ方向をたがえてつくこと)します。

 

花は直立した茎の真ん中から頂部にかけて、2㎝ほどの小さな花を密集して総状につけます。
色合いは鮮やかな紫色や暗赤紫色など変異が多く、中には白い花のものも見られます。
唇弁(しんべん:下側にある花弁が他面のより大きく、花を下から受けるように広がる形になる花弁のこと)はくさび形で先端が3裂し、中裂片の先端は鋭く尖った形状が特徴です。
萼片や花弁も先端が鋭くとがっており、萼片(側萼片)が左右に広がり、まるで鳥が翼を広げているように見えることから「チドリ」の名がついたとも言われています。
花弁と萼片が左右から蕊柱(ずいちゅう:雄蕊と雌蕊が合体したもの)を包み込むような形状をしていますが、蕊柱は小さすぎて目立たないので、虫眼鏡などで観察する必要があります。

 

ハクサンチドリは形状と色には変異が多く、有名なものは下記の2種です。
1.ウズラバハクサンチドリ(鶉葉白山千鳥:Dactylorhiza aristata f. punctata)
・葉に暗紫色の斑点、ウズラの卵に似た模様の葉を持つ。

2.シロバナハクサンチドリ(白花白山千鳥:Dactylorhiza aristata f. albiflora)
・その名の通り、白い花を咲かせる(下写真)。

 

日本ではラン科の高山植物の中で一番よく見かけると言われるハクサンチドリ。特に北海道では驚く量の群生が見られることもあります(資料によっては「雑草のごとく生えている」と)。
色合いや特徴ある形状の観察とともに、周囲を見渡してシロバナハクサンチドリやウズラバハクサンチドリも探してみてはいかがでしょうか。

 

シロバナハクサンチドリ(Dactylorhiza aristata f. albiflora)

 

 

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068

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense)

蕾が大きくなり花開く日も近いとお伝えしていた我が家の「アデニウム・オベスム(Adenium obesum)」。先日直径4~5㎝ほどの花を2つ咲かせました。真っ赤で色鮮やかな色合いが非常に美しく、砂漠のバラと称されていることに納得できる色合いと美しさでした。先端が真っ赤な蕾が現在5つ確認できていることから、この先がさらに楽しみです。

 

本日は「ゴゼンタチバナ(Cornus canadense)」をご紹介します。久々に私自身が撮影したものですが、日本の花として紹介しますが撮影した場所はサハリンです。

 

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense:御前橘)

 

被子植物 双子葉類
学名:Cornus canadense
和名:御前橘
科名:ミズキ科(Cornaceae)
属名:ミズキ属(Cornus)
属名:ゴゼンタチバナ(亜)属(Chamaepericlymenum)

 

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense:御前橘)は、本州(中部地方以北)、四国(石鎚山など)、北海道に自生するミズキ科(Cornaceae)の多年草です。
北海道では大雪山の稜線や道北の海岸近くの林下までと生育範囲が広いのも特徴のようです。
四国の石鎚山系と赤石山系が南限とされ、海外では北東アジアや北米などにも分布します。

 

和名の「御前橘」は、日本三霊山として知られる白山の最高峰「御前峰」に由来します。私も初めて観察したのは白山登山の時でした。白山は日本三霊山という点が有名ですが、花の百名山の1つでもあり、美しい花畑が広がる日本有数の花の山でもあります。
「ハクサン」の名が付く植物は別名(最高峰・御前峰の「ゴゼンタチバナ」など)を含め20種以上が自生しています。調べてみると、白山は日本で高山帯を有する山岳としては最も西に位置しているため、早くから植物の研究が進んでいたことから「ハクサン」と名の付く種が多いそうです。

 

草丈は5~15㎝、地下茎から広がった茎には「花を咲かせる茎」と「花を咲かせない茎」がそれぞれ立ち上がります。
葉は倒卵形(とうらんけい:相撲の行司が持つ軍配のような形)、写真でもわかるように枚数は6枚です。6枚が輪生(茎の一節に3枚以上が車輪状になってつくつき方)しているように見えますが、調べてみると2枚の対生葉(葉が茎の一つの節に2枚向かい合ってつくこと)と液性の短枝に2個ずつ葉が付き、計6枚の輪生に見えるそうです。さらに「花を咲かせない茎」には4枚の葉がつくそうで、葉の枚数にも違いがあるそうです。
私も初めて知った興味深い形状です。いつかゴゼンタチバナに再会した際には葉の付き方にも注目したいものです。

 

花期は6~8月、花は長さが1㎝ほどの苞(ほう:つぼみを包むように葉が変形した部分)が4枚付き、その中央部分に2.5㎜ほどの小さな筒状の花が密集して咲きます。一見すると白い小さな花のように見えますが、中央部の密集したものが本来のゴゼンタチバナの花です。
秋になると同じミズキ科のハナミズキ(花水木)に似て、直径5㎜ほどの赤い果実をつけます。

 

ゴゼンタチバナは環境省により、中部山岳国立公園、南アルプス国立公園、白山国立公園などで自然公園指定植物となっているそうです。環境省としての、レッドリストの指定はないようですが、絶滅の危機に瀕していることから保護管理計画など各地域で実施されているそうです。
可憐な形状のゴゼンタチバナだけではありませんが、私たちも花の観察を楽しむ際には十分気を付けて、大事に花の観察を楽しまなければいけないですね。

 

ゴゼンタチバナ(Cornus canadense:御前橘)

 

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067

コバイケイソウ(Veratrum stamineum)

京都市右京区の「蓮の寺」として有名な法金剛院で蓮の花をめでる観蓮会(かんれんえ)が始まったというニュースがありました。
暦の上、7月12日から七十二候(しちじゅうにこう:二十四節気(にじゅうしせっき)は半月毎の季節の変化を示していますが、これをさらに約5日おきに分けて気象の動きや動植物の変化を知らせるのが七十二候)では「蓮始開(はすはじめてひらく)」の期間となり、7月中旬から8月中旬に蓮の花は見頃を迎えます。
蓮の花の命は4~5日と短いですが、泥の中から美しく成長するその姿に、昔の人々は極楽浄土を見たとされ、仏教では慈悲の象徴とされています。
法金剛院の観蓮会は8月2日まで開かれてようなので、是非訪れてみたいものです。

 

蓮の花のニュースをご紹介しましたが・・・本日は蓮の花のご紹介ではなく、前回に引き続き、本日日本の花である「コバイケイソウ(Veratrum stamineum)」をご紹介します。本日の写真も弊社東京本社に在籍する島田が霧ヶ峰で撮影した写真を拝借させてもらいました。

 

コバイケイソウ(小梅蕙草:Veratrum stamineum)

 

被子植物 単子葉類
学名:Veratrum stamineum
和名:小梅蕙草
科名:シュロソウ科(Melanthiaceae)またはメランチウム科
属名:シュロソウ属(Veratrum)

 

コバイケイソウは、ユリ科(Liliaceae)と記載しているもの、シュロソウ科(Melanthiaceae)と記載されているものと様々です。
現在、コバイケイソウはユリ目シュロソウ科(またはメランチウム科)シュロソウ属に分類される多年草です。以前はユリ目ユリ科(Liliaceae)に含められていましたが、新しい植物分類体系でシュロソウ科と分類されるようになりました。

 

本州の中部地方以北から北海道に分布し、本州では山地から亜高山帯の草地や湿地に生えるが、北海道では低地でも観察することができる日本固有の多年草です。

 

草丈は直立で50㎝から100㎝に及びます。
葉は互生(茎の一つの節に1枚ずつ方向をたがえてつくこと)し、広楕円形で長さが10~20㎝ほどの大型の葉を付けます。大型の葉に直接触れると固さを感じ、葉脈は平行脈ではっきりとしているのが印象的です。基部は大型の葉が茎を包むように生えています。

 

花期は6~8月、茎の上部に白く可憐な花が密集して円錐花序をつくります。
花の直径は1㎝ほどと小さく、花弁や萼などの花被片は6枚あり、中央の花穂には両性花(一つの花に雄しべと雌しべの両方が備わっている花:サクラ・アサガオなど)がつき、脇に枝分かれした花穂には雄花(おしべのみをもつ花)がつくそうです。
コバイケイソウの群生を初めて観察した時は、毎年同じ株が花を咲かせるかと思っていましたが、同じ株が毎年花を咲かせるのではなく、多数の花が揃って咲くのは数年に一度しかないそうです。

 

コバイケイソウは有毒です。全草に毒性をもち、誤って食べてしまうと嘔吐やけいれんを引き起こし、重篤な場合は死に至ることもあります。若芽が山菜のオオバギボウシなどに似ていることから、誤食による食中毒が毎年発生しているそうです。

 

名前の由来は、花が梅に似ている点、さらに葉が蕙蘭(けいらん:ラン科の紫蘭の古名)に似ていることから「梅蕙草(バイケイソウ)」と呼ばれるようになり、バイケイソウより小型な種ということでコバイケイソウと呼ばれるようになりました。

 

コバイケイソウは、私にとっては非常に思い出深い花の1つです。
私がまだ20代の頃(国内添乗員だった頃)、中央アルプスの木曽駒ケ岳へ訪れ、ロープウェイに乗って標高2,612mの千畳敷駅に到着したら、花畑一面に高山植物が咲き揃い、その中でコバイケイソウが群生していました。
現地ガイドさんが「今年はコバイケイソウの当たり年」とおっしゃっており、お客様と共に夢中になって観察したのを今でもはっきりと覚えています。
あの時の千畳敷カールでのコバイケイソウの群生は、今思えば私が高山植物に興味を持つきっかけになった風景の1つかもしれません。
※唯一の後悔は、当時はカメラ撮影に興味がなかったことです。

 

コバイケイソウの群生
066

レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)

先月、我が家の嫁さんが塊根植物の一種である「アデニウム・オベスム(Adenium obesum)」を購入し、その後も大事に育ててくれています。
少しずつですが成長しており、蕾も大きくなり、花が咲く日も近いようです。砂漠のバラと称される美しい花が咲くと聞いているので、非常に楽しみです。

 

本日は北海道・礼文島に咲く「レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)」をご紹介します。今回の写真は、弊社が知床半島・羅臼にて営業している「知床サライ」に在籍する森田が撮影したものを拝借させてもらいました。

 

レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)

 

被子植物 双子葉類
学名:Pedicularis chamissonis var rebunensis
和名:礼文塩竈
科名:ハマウツボ科(Orobanchaceae)
属名:シオガマギク属(Pedicularis)

 

レブンシオガマは北海道北部の礼文島に自生し、ハマウツボ科シオガマギク属の多年草、礼文島の固有種です。今回の写真も森田が6月末に礼文島で観察したもので、私も国内添乗員時代(まだ若かれし頃)に礼文島の桃岩展望台で群生を観察したことを覚えています。

 

資料によってはゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)に分類されていますが、分類の体系によって異なるそうですが、現在ではハマウツボ科に属します(私もゴマノハグサ科という認識でした)。

 

シオガマギク属は北半球に広く分布し、約500種もあります。
有名なヨツバシオガマ(四葉塩竈:Pedicularis japonica)、キタヨツバシオガマ(北四葉塩竈:Pediculasis chamissonis var. hokkaidoensis)、レブンシオガマ(礼文塩竈)などがありますが、実際に分類、見分けが非常に難しく、現場でも「シオガマですよ」と案内してしまうことが大半です。
キタヨツバシオガマ(北四葉塩竈)、レブンシオガマ(礼文塩竈)はヨツバシオガマの変種とされており、資料によってはキタヨツバシオガマとヨツバシオガマは区別をしない、ヨツバシオガマの大型種をハッコウダシオガマ(またはキタヨツバシオガマ)と呼ぶこともあるが、厳密に区別することはできないという資料など様々あり驚きました。

 

レブンシオガマは、草丈が70~100㎝で直立し、ヨツバシオガマに比べると大きく成長します。
葉の形状は羽状全裂で、見た目には鋸のような形状はシオガマギク属の特徴と同じですが、ヨツバシオガマとの大きな違いは、葉の付き方と数です。
ヨツバシオガマはその名のとおり、葉が4枚ずつ輪生(茎の一節に3枚以上が車輪状になってつくつき方)するのに対し、レブンシオガマは葉が5~6枚輪生するのが特徴です。
先程、見分けが難しいと記載しましたが、今回の写真を見た際にヨツバシオガマかレブンシオガマか非常に迷いましたが、写真を大きくアップにしてみると、葉が5枚輪生していることがわかり、レブンシオガマと判別しました(森田にも確認をしてもらいました)。

 

1つ1つの花は小さく、淡紫~紅紫色の色合いで、2㎝ほどの長さで2唇形の花弁を持ちます。
上唇の部分が鋭く尖って下向きになっています。まるでハチドリの嘴のような形状がシオガマギクの特徴で、印象深い姿をしています。

 

花期は6~7月、花は直立した茎に対して20~30段ほど輪生してつけ、花は下から順に咲いていきます。他のシオガマギク属の花に比べると輪生して花をつける段数が多いのも特徴です(背丈が高いのが原因かと)。

 

シオガマギク属の花の見分け方、分類などはまだまだ勉強が必要ですが、レブンシオガマをはじめとするシオガマギク属の花の可憐さ・美しさは必ず足を止めてゆっくりと観察したくなる魅力ある花の1つです。勉強の成果は・・・また後日。

 

レブンシオガマ(Pedicularis chamissonis var rebunensis)

 

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065

イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)

7月に入り、いよいよ弊社でも国内ツアーが本格的にスタートしました。
特に7月は日本各地でも高山植物が花咲く季節のため、私自身も楽しみなシーズンでありますので、本日からしばらく「日本の花」をテーマにご紹介していきたいと思います。

 

以前、イワカガミダマシ(Soldanella alpina)という花を紹介しましたが、本日はダマシではなく「イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)」をご紹介します。今回の写真は、弊社東京本社に在籍(3月まで大阪支社に在籍)の島田が撮影したものを拝借させてもらいました。

 

イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)

 

被子植物 双子葉類
学名:Schizocodon soldanelloides
和名:岩鏡(イワカガミ)
科名:イワウメ科(Diapensiaceae)
属名:イワカガミ属(Schizocodon)

 

イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)は、イワウメ科イワカガミ属の多年草であり、山地の岩場や草原に自生します。
山地といっても高地だけではなく、低山帯にも自生します。
分布としては北海道(一部資料には北海道では限定的とあります)、本州、四国、九州と日本全国に分布しますが、日本固有種です。
私も国内添乗員だった頃、上高地などで観察した記憶があります。

 

草丈は10~20㎝ほどで直立し、茎の色が濃紫色をしているのが特徴です。
根元には3~6㎝程度の大きさの丸のある葉をつけ、葉には光沢が確認できます。
和名の「岩鏡」という名の由来が、岩場に自生し、この艶のある光沢の葉が鏡のように見えることから、名付けられました。改めて、粋な名前をつけたものだと感じます。
光沢がある葉であることだけが注目されていますが、よく観察すると葉の縁には鋸場があるのも特徴です。

 

花期は4~7月、茎頂にピンク色で漏斗状の花を3つほど咲かせます。花は1.5~2㎝ほどの大きさで下向きに咲き、花冠は5裂し、裂片の先端~真ん中あたりまで細かく裂けています。
花の中央にはクリーム色(黄色)の雄しべが5つ環状に並んでおり、漏斗状の花から覗き見ることもでき、ピンク色の花弁と相まって印象的な色合いとなります。
※ここがイワカガミダマシとの違いです。
イワカガミダマシも1~1.5㎝程度の花を下向きに咲かせますが、花弁の部分が基部までしっかりと切れ込みが入っており、花弁の先端部分が若干反り返り、花弁の中央に長い雄しべが突き出しているのが特徴的です。

 

イワカガミの学名の種小名「soldanelloides」は「サクラソウ科の Soldanella属に似た」という意味で、Soldanella はイタリア語の「soldo(小さいコイン)」に葉が似ることに由来します。
また、イワカガミダマシの時も紹介しましたがイワカガミ(Schizocodon soldanelloides)の種小名の soldanelloides は「Soldanella(イワカガミダマシ属)+oides(のような)」で「イワカガミダマシ属に似た」という意味を持つそうです。

 

若干間隔が空いてしまっての紹介でしたが、日本固有種のイワカガミとヨーロッパ原産のイワカガミダマシ。同じポイントで見比べることはできないですが、これまでのブログをご覧いただき、また下記写真を見比べていただき、どちらの花がお好みか見比べてみてください。
個人的には「イワカガミダマシ」が好みかな。

 

イワカガミ(Schizocodon soldanelloides)
イワカガミダマシ(Soldanella alpina)

 

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