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エゾクガイソウ(蝦夷九蓋草:Veronicastrum sibiricum subsp. yezoense)

ここ数日暖かい日が続いたり、そうかと思えば冷たい強風が吹くことがあったり、出勤時の上着に悩んでしまう日々が続いています。
先日、花の観察ツアーの催行が続々と決定しました。残席もありますので、是非ご検討ください。
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く

 

本日は「エゾクガイソウ(蝦夷九蓋草:Veronicastrum sibiricum subsp. yezoense)」をご紹介します。

 

エゾクガイソウ(蝦夷九蓋草:Veronicastrum sibiricum subsp. yezoense)

 

被子植物 双子葉類
学名:Hosta sieboldii var. rectifolia
科名:オオバコ科(Plantaginaceae)
属名:クガイソウ属(Veronicastrum)

 

エゾクガイソウ(蝦夷九蓋草)は、オオバコ科クガイソウ属の多年草です。
以前はゴマノハグサ科に分類されていましたが、APG植物分類体系(第3版)よりオオバコ科に変更され、それに伴いクガイソウ属もオオバコ科の属に加えられました。
エゾクガイソウ(蝦夷九蓋草)の花の写真を見ると、なぜかスペイン・カナリア諸島に咲く「エキウム・ウィルドプレッティ(Echium wildpretii)」を思い浮かべてしまいますが、エキウム・ウィルドプレッティはムラサキ科 (Boraginaceae)のため、全く別ものです。

 

エゾクガイソウ(蝦夷九蓋草)は、日本では北海道に、海外ではサハリンなどに分布します。
低地~山地の明るい草地や林縁に自生しますが、北海道の十勝や道東では道路わきの湿地などにも自生します。

 

草丈は1.5m~2mに達するものもあり、本州の山地~亜高山帯に自生する日本固有のクガイソウ(九蓋草:Veronicastrum japonicum)より大型です。
葉は5~10個を数段に分けて輪生させます。輪生する葉は柄がなく、先の尖った披針形で長さは10㎝ほど、葉の縁には鋸歯が確認できます。
クガイソウ(九蓋草)の名は、輪生する葉の繰り返しが9層になることに由来し、資料によっては「九階草」という和名で紹介されているものもあり、こちらの漢字名の方がイメージしやすいかもしれません。

 

花期は7~8月。非常に鮮やかな紫色の花の総状花序は、長さが7~8㎜で筒状の花を密集して、下から上へと順に花を咲かせます。
1つ1つの花は小さく、確認するにはルーペが必要となりますが、筒状の花の先端部分は浅く4裂しており、2本の雄しべが外に大きく突き出しています。真っ白な花糸にオレンジ色(茶色っぽく見えるものも)の葯が非常に目立つので是非注目してみてください。
ある資料には、1つ1つの花には線状の苞葉を1つもち、萼片は披針形で先が尖っているとあり、次回の観察時にはこの点も是非注目してみたいと思います。

 

草丈が1.5m~2m、花穂が長さ20~40㎝にも及ぶエゾクガイソウですが、群生する様子も鮮やかな紫色が景色に映えて非常に印象的ですが、すっきりと1本だけ真っすぐに伸びるエゾクガイソウも心惹かれる姿をしています。

 

エゾクガイソウ(蝦夷九蓋草:Veronicastrum sibiricum subsp. yezoense)

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
※春の花の代表格ともいえる水芭蕉やカタクリの花の観察を楽しむため、厳選した花の名所を訪れ、春の花を心ゆくまでご堪能いただける4日間です。

 

春をつげる雪割草を求めて 早春の佐渡島
※南北に大佐渡、小佐渡の山地が連なり、中央には国中平野が広がる佐渡島。大佐渡山麓と世阿弥の道にてゆっくりとフラワーハイキングをお楽しみいただきます。

 

佐渡島・花咲く金北山縦走トレッキングと佐渡周遊の旅
※春の花咲くシーズンの佐渡の山旅。絶景ロッジ・ドンデン山荘に宿泊し、佐渡の最高峰金北山を目指し、花咲く楽園・アオネバ渓谷のハイキングも楽しみます。

 

花の利尻・礼文島とサロベツ原生花園
※6月から7月にかけて高山植物の開花の季節となる利尻・礼文島。専門ガイドの案内で、フラワーウォッチングや様々な植物の観察を満喫する5日間。

 

花の利尻・礼文島から世界遺産・知床半島へ
※5月下旬から高山植物の季節が始まる利尻・礼文島から、オホーツク海沿岸を走り世界遺産・知床へ。利尻島・礼文島、知床半島を一度に楽しむ旅。

 

花の尾瀬フラワートレッキングとチャツボミゴケの群生地を歩く
※専門ガイドとのんびりと花の観察を楽しみながら、尾瀬ヶ原から尾瀬沼へのフラワートレッキング。花咲く尾瀬を訪れる季節、8名様限定のツアーです。

 

花咲く千畳敷カール・乗鞍・上高地を歩く
※高山植物の宝庫として知られる千畳敷カールや乗鞍・畳平でフラワーハイキング。旅の後半は、専門ガイドと共に静寂に包まれた奥上高地の徳沢を目指す。高山植物の観察と合わせて絶景も楽しむ5日間。

 

日本各地で高山植物などの花々を楽しむツアーも続々と発表しております。ご興味のあるコースがありましたら、是非お問い合わせください。
「花の季節」に訪れるツアー 一覧へ

108

タチギボウシ(立擬宝珠:Hosta sieboldii var. rectifolia)

先日、大阪支社の同僚が駅の構内に置いてあった「六甲高山植物園」のパンフレットをわざわざ取ってきてくれました。その中にフラワーカレンダーがあり、六甲高山植物園で観察できる花暦が掲載されていました。
2月下旬~4月上旬はフクジュソウが観察できるとあり、久々に嫁さんと共に六甲へ出掛けてみようと検討中です。

 

本日は北海道の礼文島で観察した「タチギボウシ(立擬宝珠:Hosta sieboldii var. rectifolia)」をご紹介します。

 

タチギボウシ(立擬宝珠:Hosta sieboldii var. rectifolia)

 

被子植物 単子葉類
学名:Hosta sieboldii var. rectifolia
科名:キジカクシ科(Asparagaceae)
旧科名:ユリ科(Liliaceae)
属名:ギボウシ属 (Hosta)

 

タチギボウシはリュウゼツラン亜科キジカクシ科に属する多年草です。
APG植物分類体系(第2版)までは、それぞれの亜科(リュウゼツラン亜科、ツルボ亜科、キジカクシ亜科など)は科として分離され、さらに古い体系では、これら全てがユリ科(Liliaceae)に含められてました。現在では目レベルで分離されています。

 

タチギボウシ(立擬宝珠)は、分布範囲は広く、日本では本州の中部から北海道にかけて、海外ではサハリンやシベリアにかけて分布。低地から亜高山帯の湿原などに自生します。
ある資料には「ギボウシ属の進化の中心は日本列島」とあり、日本固有の種と変種が多く、その多くは地域性が強くて狭い範囲に分布するとありました。
また、タチギボウシとコバギボウシ(Hosta sieboldii var. sieboldii)は変種の関係にあり、変異の範囲内であるとして区別しない見解もあるそうです。

 

草丈は40~100㎝ほどで直立し、葉は根生し、長柄をつけた長楕円形をしており、長さが30㎝ほどあり、葉の縁が少し波打ったような形状で葉脈もくっきりしている印象です。

 

花期は7~8月。タチギボウシは先端が5つに分かれているので花弁が5枚のようにも見えますが、ラッパ状の花弁で一つの花を形成する「合弁花(ごうべんか)」です。花茎に長さ5㎝ほどの細長い花をまばらにつけ(総状花序)、それぞれの花は横向き、下向きに花を咲かせます。
タチギボウシの花で最も印象的な部分が花弁に確認できる縞模様です。濃い紫色と淡い紫色(または白色)の縞模様が何とも言えない可憐さを印象付けるものとなっています。

 

雄しべが中央に数本伸びており、上部が反り返り、花糸に楕円形の葯が確認できます。雌しべは上の写真では確認しづらいですが、上写真の上の花(横向きの花)にわずかに柱頭部分(山吹色の部分)が確認できますが、こちらが雌しべです。マルハナバチなど大型のハナバチの訪花によって受粉されます。

 

ギボウシという名称の由来は、「擬宝珠(ぎぼうしゅ)」の転訛と言われています。擬宝珠とは、伝統的な建築物の装飾で橋や神社、寺院の階段、廻縁の高欄(手すり、欄干)の柱の上に設けられている飾り(京都などで伝統的な橋の欄干にたまねぎのようなものが装飾されているのを見たことがあるかと思います)です。
これはギボウシの蕾や苞葉に包まれた若い花序が擬宝珠に似ていることに由来すると言われています。

 

直立した花茎にまばらに花を咲かせるタチギボウシは、鮮やかな紫色が非常に美しく、群生していると思わず足を止めてしまいたくなる美しさです。また、1つ1つの花をじっくり観察すると、花弁の縞模様がより一層その美しさを際立たせていると感じさせる花でもあります。
やはり、花はじっくりと観察しなければいけませんね。

 

タチギボウシ(立擬宝珠:Hosta sieboldii var. rectifolia)

 

<おすすめ!! 花の観察を楽しむツアー>
花咲く信州 水芭蕉やカタクリの群生地を巡る
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花の利尻・礼文島とサロベツ原生花園
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107

ウメバチソウ(梅鉢草:Parnassia palustris)

昨日まで「冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界」のツアーに同行させていただき、冬の美瑛や富良野の風景、オホーツク海の流氷の風景に心癒される日々をお客様と共に過ごさせていただきました。

 

本日はウメバチソウ(梅鉢草:Parnassia palustris)をご紹介します。

 

ウメバチソウ(梅鉢草:Parnassia palustris)

 

被子植物 双子葉類
学名:Parnassia palustris
科名:ニシキギ科(Celastraceae)
属名:ウメバチソウ属(Parnassia)

 

ウメバチソウ(梅鉢草)は、日本では北海道から九州まで全国に、海外ではユーラシア大陸北部やアラスカなどに分布し、低山帯から高山帯の湿った草地などに自生します。北半球の温帯から寒帯にかけて50種ほどが確認されています。

 

以前はユキノシタ科に属していましたが、APG植物分類体系ではニシキギ目にウメバチソウ科( Parnassiaceae)が新設され、APGIIIではニシキギ科に移されたという経緯があります。

 

草丈は10~50㎝で直立し、葉は根生葉がロゼット状に生え、茎葉は無柄で丸みのある(ハート型と表現する資料もあり)葉が1枚、茎を包むように付いています。
花期は7~9月。茎頂に直径2㎝ほどの白い花を上向きに1つ付けます。花弁が5枚で鮮やかな白い花弁には緑色の脈が放射状に延びており、この脈が非常に目立ちます。

 

ウメバチソウは花弁の中央に細裂している雄しべの黄色(山吹色)が可憐さを強調している印象です。
今回のブログを作成するにあたり、花の形状を調べていると、雄しべと雌しべに関する形状が非常に興味深いものでした。

 

ウメバチソウの雄しべには「仮雄しべ」というものもあります。
上の写真をご覧いただくと、花弁と重なり合うように先端が糸状になっている部分が確認できますが、これが「仮雄しべ」です。
細かく14~17裂する仮雄しべの先端には腺体(被子植物で蜜を分泌する器官あるいは組織)が付いていますが、仮雄しべは花粉を出しません。
本雄しべは5本あり、仮雄しべと交互配置しています。5本の雄しべは順に成熟します。
上の写真をご覧いただくと、左上に先端にややクリーム色の葯がついた1本の雄しべが伸びているのが確認できます。残りの4本は中央の雌しべの柱頭に触れている状態(先端の葯が柱頭を覆っているような状態)です。
本雄しべからすべての花粉が出た後に雌しべが成熟し、雌しべの柱頭が露出し、子房が緑色になっていくそうです。
この点は、次回ウメバチソウを観察する機会があれば、是非じっくりと観察してみてください。直径2㎝ほどの小さな花なので、ルーペが必要かも。

 

和名のウメバチソウ(梅鉢草)は、花の様子を家紋に見立てたことが由来とされています。
ある資料には、属名「Parnassia」はギリシャに聳える神聖な山の「パルナッソス山(Parnassus)」が由来、種小名「palustris」は「沼地に生える」という意味であるという記載がありました。

 

真っ白で小さな花、過去に幾度か観察したことがあるからと、どうしても観察に時間を要さない花になりがちですが、雄しべと仮雄しべの違いなど、次回は是非じっくり観察を楽しんでみてください。

 

ウメバチソウ(梅鉢草:Parnassia palustris)②

 

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日本各地で高山植物などの花々を楽しむツアーも続々と発表しております。ご興味のあるコースがありましたら、是非お問い合わせください。
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エゾカワラナデシコ(蝦夷河原撫子:Dianthus superbus var. superbus)

弊社でも春~夏へ向けての国内ツアー造成に励んでおり、私自身も高山植物観察ツアーに励む中、同時に花のブログ更新も進めていると、日に日に高山植物の観察、撮影したいという想いが日に日に強くなってきます。

 

本日は「エゾカワラナデシコ(蝦夷河原撫子:Dianthus superbus var. superbus)」をご紹介します。

 

エゾカワラナデシコ(蝦夷河原撫子:Dianthus superbus var. superbus)

 

被子植物 双子葉類
学名:Dianthus superbus var. superbus
科名:ナデシコ科(Caryophyllaceae)
属名:ナデシコ属(Dianthus)

 

エゾカワラナデシコ(蝦夷河原撫子)は、中部以北から北海道にかけて、海外でもユーラシア大陸の北部~中部にかけて分布し、高山帯から海岸線まで幅広いエリアで自生します。

 

草丈は30~50㎝ほどで直立し、叢生(そうせい:草木などが群がって生えること)します。茎は上部で枝分かれし、葉は長さ5㎝ほどで少し白みを帯びており、細長い広線形をしています。ある資料に「葉の基部は茎を抱く」とあり、次回観察の際には注目してみたいと思います。

 

花期は6~9月。茎の上部で枝分かれした茎頂にそれぞれ1つずつ上向きに花を咲かせます。淡いピンク色が印象的な花は直径5㎝ほどで花弁は5枚。
花弁は扇のような形状をしており、先端部が細裂しており、風でなびくエゾカワラナデシコを観察していると、イソギンチャクが浮遊しているように見えることもあります。花弁の先端が細裂している点がエゾカワラナデシコの花を最も印象的なものにしている部分です。
花の付け根の萼筒は長さ2㎝ほど、苞は2対で十字に対生し、細長く先端が尖っている印象です。

 

エゾカワラナデシコ(蝦夷河原撫子)とカワラナデシコ(河原撫子)は非常に似ており、カワラナデシコはエゾカワラナデシコの変種の1つです。見分けることが難しく、私自身も「カワラナデシコ(の仲間)ですよ」と案内してしまうことが多いのも事実です。見分け方を色々と調べていると、本当に大差はないようで、大半の資料でも見分けが難しいと記載されています。

 

エゾカワラナデシコとカワラナデシコの違いは以下の部分になります。

①分布
・エゾカワラナデシコは中部地方以北に分布
・カワラナデシコは本州、四国、九州に分布
②草丈
・エゾカワラナデシコは30~50㎝ほどで直立
・カワラナデシコは30~80㎝ほどで直立
③花の大きさ
・エゾカワラナデシコは直径5㎝ほど
・カワラナデシコは3㎝ほど
④花弁の先端部の幅の広さ
・エゾカワラナデシコは扇状で先端(爪部)が細裂
・カワラナデシコはエゾカワラナデシコより先端(爪部)が細い
⑤花弁の隙間
・エゾカワラナデシコに比べると、カワラナデシコは花弁の間に隙間がある。
⑥苞の違い
・エゾカワラナデシコは苞が2対で十字に対生し、細長く先端が尖っているのに
・カワラナデシコは苞が3~4対で丸みを帯びて先端が尖る(栗みたい)形状。
※上記④⑤(花弁)と⑥(苞)が見分けるポイントとして重要のようです。

 

次回、エゾカワラナデシコやカワラナデシコを観察する際に上記6点を確認し、見比べてみてください。

 

エゾカワラナデシコ(蝦夷河原撫子:Dianthus superbus var. superbus)②

 

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エゾスカシユリ(蝦夷透百合:Lilium pensylvanicum)

早いもので2021年も1ヶ月が過ぎました。
今年は1897年(明治30年)以来、124年ぶりに節分の日が2月2日でした。毎年恒例の恵方巻も、例年より1日早く嫁さんと共に「無言」でいただきました。

 

本日は「エゾスカシユリ (蝦夷透百合:Lilium pensylvanicum)」をご紹介します。

 

エゾスカシユリ (蝦夷透百合:Lilium pensylvanicum)

 

被子植物 単子葉類
学名:Lilium pensylvanicum
科名:ユリ科(Liliaceae)
属名:ユリ属(Lilium)

 

エゾスカシユリと言えば、エゾキスゲ(蝦夷黄菅)の際にもお伝えしましたが、個人的に思い出されるのが北海道・小清水原生花園です。レモンイエローのエゾキスゲとオレンジ色のエゾスカシユリの両方を観察できたのが、良い思い出です。因みに北海道の小清水町がエゾスカシユリを町の花に指定しています。
また、北海道北部のサロベツ原生花園でも群生したエゾスカシユリを観察したのを覚えています。

 

エゾスカシユリ(蝦夷透百合)は、北海道の低地の原生花園に咲く代表的な花の1つです。海外では、シベリアやサハリンなどに広く分布します。海岸線の砂地・砂丘や産地の草地、岩場に自生し、北海道の道東や道北では原生花園以外の場所でも観察することができます。

 

草丈は30~100㎝と比較的大型で直立し、葉は先の尖った披針形で互生します。
花期は6~7月。茎頂に鮮やかなオレンジ色(橙赤色)で直径10cmほどの花を1~5個ほど、上向きに花を咲かせます。
花被片は6枚で、上部が外側に反り返っており、花被片の内側には濃紅色の斑点があるのが特徴的です。
※ユリの花は6枚の花被片のうち、外側の3枚が萼、内側の3枚が花弁です。
花被片内側の基部付近、花柄、蕾などには白い細かな毛が密集しています。

 

上の写真でも確認できますが、他のユリ科の花よりも花被片の根元が細くなっており隙間ができています。
この隙間(透かし)がある構造が和名の「スカシユリ」の由来となっています。

 

西遊旅行に入社する前、カナディアンロッキーのフラワーハイキングツアーに同行した際(確かボウバレー州立公園だったように記憶しています)、現地では「ウエスタン・ウッド・リリー」と呼ばれているエゾスカシユリに似た「Lilium philadelphicum」を観察しました。エゾスカシユリより赤みが強く、数は少なかったのですが、非常に印象深く、現地で「エゾスカシユリにそっくり」と大いに盛り上がりました。
その時のガイドさんが「日本のエゾスカシユリとウエスタン・ウッド・リリーは近縁種」と説明がありました。また、ウエスタン・ウッド・リリーの学名「Lilium philadelphicum」には、アメリカのフィラデルフィアの地名が、エゾスカシユリの学名「Lilium pensylvanicum」にはアメリカの州の1つであるペンシルベニア州の名が含まれているが、その理由は不明とのことでした。
エゾスカシユリは北米に分布しないはずなのに・・・。その時は解決できず、ブログを作成の際にも調べてみましたが、理由は判りませんでした。
ある資料には「エゾスカシユリにペンシルベニアの名が入っているのは腑に落ちない」とあり、原記載した研究者の勘違いかもとありました。

 

学名の不思議はありますが、色鮮やかで可憐な花であるのは間違いありません。
エゾスカシユリをはじめとするユリ科の花に出会った際は、是非細部までゆっくりと観察してみてください。

 

<これまでご紹介したユリ科の花々>
030.マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)
031.ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)
054.クロユリ(Fritillaria camschatcensis)
070.カノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)
071.ニシノハマカンゾウ(西の浜萱草:Hemerocallis fulva var. aurantiaca)
080.エゾキスゲ(蝦夷黄菅:H. lilioasphodelus var. yezoensis)

 

エゾスカシユリ (蝦夷透百合:Lilium pensylvanicum)②

 

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