タグ別アーカイブ: Wildlife

マウンテンゴリラ Mountain gorilla(ブウィンディ原生国立公園・ウガンダ)


ウガンダ共和国の南西部に位置するブウィンディ国立公園で出会ったマウンテンゴリラです。

ゴリラは2種4亜種に分類されます。ヒガシゴリラの亜種(ヒガシローランドゴリラ、マウンテンゴリラ)とニシゴリラの亜種(ニシローランドゴリラ、クロスリバーゴリラ)。

今回出会ったマウンテンゴリラはアフリカ中部のウガンダ、ルワンダ、コンゴ民主共和国の3ヶ国の国境に広がるアルバータイン地溝帯のみに棲息し、近年の保護活動の成果から現在1000頭を超える数にまで増えてきています。日本の動物園のゴリラは全てニシローランドゴリラなので、マウンテンゴリラに会うためには現地に行くしかありません。

葉っぱや樹皮などを食べるマウンテンゴリラは「餌付け」が難しいので、観光客が観察できるゴリラのグループは人に慣れさせる「人付け(habituation)」という人への馴化作業が必要になります。研究者やトラッカーが初めは200mくらい離れたところから観察を始めて、だんだん距離を縮めていきます。もし近づきすぎてゴリラが威嚇してきたりした場合はもう少し距離を置いて様子を見るというのを繰り返し、完全に人に馴化するのには2~3年かかるとのことです。


マウンテンゴリラのトラッキングは片道1時間~3時間ほどかかります。
今回は1時間半ほどで出会えましたが、特に最後のゴリラに接近するあたりでは、ジャングルの中の急な斜面を草や枝をマチェットで折りながら下っていきます。


急な斜面を滑って転びそうになりながら下っていくと、ついにゴリラを追うトラッカーたちと合流。そのすぐそばでふさふさとした黒い固まりがあると思ったら、子供のゴリラでした。


そのすぐそばの2匹のメスたちは器用に指を使って毛づくろいをしていて、その姿はまるで人間のようでした。

今回出会ったマウンテンゴリラのグループは「ムクングジ(Mucunguzi Group)」というグループで、ムクングジとは雄のリーダーであるシルバーバックの名前でもあり、「救世主 Savior」を意味します。

ムクングジが別のグループのリーダーである「ビギンギ」からメス数頭を奪って(救い出し)、自分のグループを作り、現在は15頭のメンバーで1頭のシルバーバックに、7頭の大人の雌、2頭の若い雌、5頭の子供や幼児がいます。


その後、しばらくすると近くにいた雄のシルバーバックの「ムクングジ」(↑の写真左上)を発見。メスや子供たちと横になって休んでいます。


生後1年ほどの赤ちゃんゴリラが、お昼寝をするお父さんやお母さんに遊んでほしそうにちょっかいを出しています。

横になったメスの足がシルバーバックの体に乗っかっています。


観察しているとゴリラが2mほどの距離まで近づいてきました。
さらに最後にはシルバーバックも起き上がり、のそのそとこちらに向かって歩いてきました。


オスは通常8歳くらいで大人になりブラックバックと呼ばれますが、13歳を超えると背中から腰にかけて毛が灰色(シルバー)になりシルバーバックと呼ばれ、さらに18歳頃になると後頭部が盛り上がってきます。


寝起きでまだ眠いのか、大あくび。


あっという間に観察の制限時間である1時間が終わってしまいました。
野生のゴリラの寿命は野生下で35年~40年ほど、この子供が大きくなる前にはもう一度会いに来たいと強く思わされました。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : Feb 2024, Bwindi Impenetrable National Park, Uganda

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スカーレットアイビス / ショウジョウトキ Scarlet ibis (トリニダード・トバゴ)

トリニダード島の西岸にあるカロニ湿原にて観察したスカーレットアイビス(和名:ショウジョウトキ)の群れです。

カロニ湿原のスカーレットアイビスはベネズエラとの間を行き来していると考えられています。毎朝、餌をも求めてカロニ湿地を飛び立ったスカーレットアイビスはあちこちの湿地で採餌し、夕方になると群れをなしてカロニ湿原に戻ってきます。


夕方の帰巣の様子は圧巻の光景です。


巣のある木に順番に帰ってくると、赤い実がなる木のように見えます。

カロニ湿原はおよそ103.6平方キロメートルの湿地帯です(大きさは資料により異なっています)。
マングローブ林、沼地、干潟を含むこの湿地は海水と淡水の両方の生物多様性に富んだ湿地です。ラムサール条約にも登録されています。

観察に適した時期は11~3月いっぱい。年中観察はできますが、4月の半ばごろから9月半ばは繁殖のため見える個体数が少なくなります。

マングローブ林の中にはカニもいました!
スカーレットアイビスの赤色は、餌となるこういった甲殻類に由来します。

雛は黒~灰色でまったく赤くありません。上の写真は若鳥で灰色、茶色、白色が混ざりますが、摂取する赤色のもととなる甲殻類により、成長に伴い赤色をまします。通常、巣立ちの頃に赤色が現れ、2年でほぼ真っ赤になります。

1962年トリニダード&トバゴが独立したとき、スカーレットアイビスは「国鳥」に選ばれました。

スカーレットアイビスの生息するエリアまで、マングローブ林の間をボートで進んでいくのも楽しみの一つです。
道中に様々な動物が見られます。特に鳥類は100種以上も生息します。

小さく丸まったヒメアリクイPygmy anteater。世界最小のアリクイです。
木の一部のように同化しているので見つけるのが難しいです。

水辺には、スカーレットアイビスと共にベニイロフラミンゴ American Flamingoも見られます。

夜行性のために目が大きいヒロハシサギ Boat-billed Heron。求愛行動の際はクチバシを鳴らすこともあります。

オニクイナ、こちらもスカーレットアイビスと同じく甲殻類、魚、昆虫などを採食します。

この美しい帰巣風景がいつまでも続くことを願っています。

 

Photo & text : Mariko Sawada & Wataru Yamoto

Observation : Apr 2018 & Mar 2019 , Caroni Swamp , Trinidad and Tobago

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ボルネオオランウータン Bornean orangutan(ボルネオ島・マレーシア)

ボルネオ島のマレーシア側にて、ボルネオオランウータンに出会いました。
霊長類ではゴリラに次いで2番目に大きいオランウータン。

オランウータンは現在3種に分かれています。今回出会ったボルネオ島の「ボルネオオランウータン」、そのほかの2種はスマトラ島で「スマトラオランウータン」「タパヌリオランウータン」です。

母親と1歳に満たない小さな女の子に出会えました。

まだ毛が薄いため地肌が透けて見えます。

子供オランウータンが母親と生活するのは通常7~8年と言われています。

2頭で生活するのは母親とその子供くらいで、オランウータンは基本的に1頭で生活しています。霊長類の中で最も単独性が強いとも言われ、同時に複数匹見られることが珍しいです。

単独で暮らす理由としては、ボルネオ島やスマトラ島の森の果実の少なさに原因があるようです。アフリカの森に暮らすチンパンジーやゴリラは群れで生活しても、果実が十分あるため生活できます。
一方ボルネオ島やスマトラ島では餌が足りないため集団では暮らせず、ある程度離れて暮らす必要があるために単独生活をしていると言われています。

この時期は餌が少なかったのか、樹皮を食べていました。

葉っぱの根本の太い茎部分も。

ジャングルウォークをした際、オランウータンの好きな「イチジクの実」を見つけたので、少し手で皮を剥いてから食べてみました。甘酸っぱくとてもおいしかったのですが、果肉部分は非常に少ないのでオランウータンのお腹を満たすためには、一日中食べ続ける必要がありそうです。

上の写真はオランウータンのベッドです。オランウータンは世界最大の樹上生活者と言われますが、毎晩眠る前にベッドを作り替えます。”ネスティング”と言われる行動で、木の幹の股などの太めの枝の上に何重にも枝を折って土台を作り、その上にやわらかい葉っぱでクッションを作ります。

ベッドは毎日作り変えるため、オランウータンの棲息地付近にはたくさんのベッドの跡があります。オランウータン探しの目印にもなります。

オスのオランウータンにも一度出会えましたが、アンフランジ雄(劣位雄)でした。
次にボルネオに行った際には、「フランジ」と呼ばれる顔のヒダをもち、体重は90キロを超えるというフランジ雄(優位雄)ともぜひ遭遇してみたいものです。

母親に捕まる赤ちゃんの手と足!本当に可愛いらしかったです!

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : June 2023, Kinabatangan Wildlife Sanctuary & Kabili-Sepilok Forest Reserve, Sabah, Borneo, Malaysia

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オオミミギツネ Bat-eared fox(ボツワナ)


ボツワナ東端のマシャトゥ動物保護区で、オオミミギツネ Bat-eared foxとの素敵な出会いがありました。

アフリカのサファリでは「ビッグファイブ Big 5」が有名ですが、なかなか出会うのが難しい動物「シャイファイブ Shy 5」もいます。オオミミギツネとミーアキャット、ツチブタ、ヤマアラシ、アードウルフの5種で、出会えたらとてもラッキーな動物たちです。


最初はトラッカーが見つけたくれたのですが、「あそこにいるよ」と平坦な草原を指さしてくれましたが、周りの岩と同化して中々見つけることができませんでした。


オオミミギツネは草原やサバンナ、特に草丈の低い地域に生息しています。黒い靴下を履いているような足が素敵です。


大きな耳が特徴で、英語ではBat-eared Fox「コウモリの耳のキツネ」を意味します。大きな耳でシロアリなどの地中にいる虫の動きを探知して捕まえます。

イヌ科の中では珍しく昆虫を主食とし、シュウカクシロアリ(シロアリの一種)が食事の80~90%を占めることもあると言われています。虫を食べるため臼歯が多く、小さな歯が46~50本も生えていてます。イヌ科の中では歯の本数が最多で、原始的なイヌ科の証拠とされています。


気温が低い時間帯しか活動しないので、ケニア・タンザニアなどの東アフリカでは夜か明け方でしか観察が難しいといわれます。しかし、アフリカ南部の冬は気温が低いので日中も活動している姿を見ることができます。


こちらにも慣れてきたのか、リラックスして2匹で毛づくろいをし合う愛らしい姿も見られました。

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Mar 2023, Mashatu Game Reserve, Botswana

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アカアシドゥクラングール Red-shanked Douc Langur(ベトナム)

「霊長類の女王」「世界一美しいサル」と呼ばれるアカアシドゥクラングール Red-shanked Douc Langurです。

ベトナム中部の都市ダナン、その北東のソンチャ半島に位置するソンチャ自然保護区の狭いエリアに、ベトナム全体の40~50%のアカアシドゥクラングールが生息しています。

英名 Red-shanked Douc Langur(赤いスネをしたドゥクラングール)で、ドゥクは古代のベトナム語で猿を意味します。

またベトナム語でVoọc ngũ sắc「5色のラングール」と呼ばれ、顔のオレンジ、髪の黒、ヒゲの白、エリや脛の赤茶色、体の灰色の5色です。


尾の付け根にある白い三角形がとても印象的です。


リーフイーター(葉喰猿)の仲間で、木の葉、特に新芽を好んで採食していました。
牛などの反芻動物と同じように胃が四つに分かれていて、消化酵素をもつ微生物を前胃に共生させて、その力を借りてセルロースを分解しています。
水分も葉から吸収するので、水を飲むために地上に降りることはないと言われます。

 

このアカアシを含め、ドゥクラングール属は3種のみで、クロアシドゥクラングール Black-shanked Douc Langur 、ハイアシドゥクラングール Gray-shanked Douc Langur がいます。いずれも脛(スネ)の色で種を識別できます。
3種全てベトナム中部から南部に生息し、一部が隣接するカンボジア、ラオスにも生息しています。


ベトナム南部のカッティエン国立公園ではクロアシドゥクラングール Black-shanked Douc Langur も見ることができました。


同じくカッティエン国立公園ではピグミースローロリス Pygmy slow lorisも。

他にもキホオテナガザル、ハティンラングール、キタブタオザル、アカゲザル、カニクイザルと霊長類尽くしのベトナムの旅になりました。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : March 2023, Son Tra Nature Reserve & Cat Tien National Park, Vietnam

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スリランカコサイチョウの子育て Sri Lanka Grey Hornbill

スリランの固有種、スリランカコサイチョウ Sri Lanka Grey Hornbill。「サイチョウ(サイのような角を持っている鳥)」なのに、その一番の特徴となる上嘴のふくらみ(CASQUEカスク)がない、45cmくらいの小型のサイチョウです。スリランカのサイチョウは、この固有種のスリランカコサイチョウとカササギサイチョウ  Malabar pied-hornbillの2種のみです。

見た目はオスもメスも同じですが、オスは薄い黄色のくちばし、メスは薄い黄色に黒いパッチのあるくちばしをしています。

スリランカコサイチョウも、他のサイチョウと同様の独特な子育てをします。

繁殖期になると巣となる木の空洞を探し、メスが中に入ると糞や泥などで穴の入り口ふさいで小さくし、オスのくちばしが入る程度の大きさにします。メスはこの隔絶された穴の中で2~3個の卵を産み、抱卵し、雛の世話をし、巣立ちの1週間くらい前までの期間を過ごすのです。この間に羽、尾羽の換羽もおこります。

オスは頻繁に巣の中にいるメスに餌を運びます。その様子を撮影した動画です。オスが赤い木の実1つを銜えてやってきてメスに与え、そのあと7つの木の実を吐き戻してメスに与えています。

Sri Lanka Grey Hornbill スリランカコサイチョウ

この巣穴では2月下旬にオスが巣穴に通っているのを観察し、4月半ばもオスが通っていました。資料によると、一般的にスリランカコサイチョウの繁殖期は2~6月で、5~6月に巣立ちが観察されるそうです。スリランカコサイチョウは国のドライゾーンにもウェットゾーンにも広く分布し、雨の量や実のなる季節・場所により繁殖期は少し異なるそうです。

雛の巣立ちの一週間ほど前にメスは穴を壊して出てきます。その時には換羽後のきれいな姿で出てくると言います。そしてオスとメスの両方で雛に餌を運び、雛の巣立ちの時を迎えます。研究者の観察記録によると、メスが巣に入ってから雛の巣立ちまで104日。メスは95日以上を暗く小さな木の穴で過ごしたのです!

この写真は2月下旬に撮影。オスが緑色のトカゲ、Green Garden Lizard (Calotes calotes) を運んできました。

メスがじたばたするトカゲを呑み込んでいきました。↑↑ トカゲの尻尾が穴に吸い込まれていく様子です。オスは木の実やトカゲ、ヤモリ、虫などをメスに運びます。

観察場所の様子。この巣のあった木は他にも3か所の樹洞があり、固有種のクリセスズメフクロウ Chestnut-backed Owletも同時期に巣をつくっていました。距離を置いて、静かに見守りましょう。

午前はとくに忙しく、巣穴にせっせと餌を運ぶオス。繁殖期以外ではペアか、家族の小集団で見かけることが多いスリランカコサイチョウ。メスと雛がでてくるのが、待ち遠しいことでしょう。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Feb-Apr 2023. Sinharaja Forest, Sri Lanka

「バードウォッチング in Sri Lanka」 特集ページはこちら。

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ミナミセミクジラの親子と水面行動(バルデス半島)

ミナミセミクジラは生まれた海へ戻る性質があります。オスは決まった回遊パターンを持ち、メスはおよそ3年に一度、生まれた海へ戻り出産・子育てをします。バルデス半島へは6月~12月の間にミナミセミクジラがやってきて、9月下旬になるとオスは南極海へと旅立ち、メスと子供も12月半ばには旅立っていきます。

9月のヌエボ湾で観察した母子クジラの海面行動。赤ちゃんを遊ばせる母クジラの姿、あまりにも愛おしいものです。

クジラの子供が甘えてる!ミナミセミクジラの親子の時間

こちらは、母クジラが深い場所へ採餌に行っている間、海面で遊んでいるところです。ブリーチしたり、ヒレをバタバタさせたり・・・。母クジラの浮上に合わせて泳いでいきます。

ミナミセミクジラの子供の水面行動

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2022, Valdes Peninsla, Argentina

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ミナミセミクジラへのカモメの攻撃(バルデス半島)

バルデス半島のミナミセミクジラを観察している時、とても気になることがあります。それは「カモメによる赤ちゃんへの攻撃」。赤ちゃんクジラは呼吸のために頻繁に海面にいるのでそのターゲットとなり、赤ちゃんが浮上するとすぐに背中に降りて、まさに背中の肉を食いちぎっていくのです。母クジラが一生懸命それを阻止しようと頭を持ち上げています。

ミナミセミクジラへのカモメの攻撃

資料によると、最初にこういった行動が観察されたのは1970年代。カモメがミナミセミクジラの背中をついばんでいる様子が観察されました。当時、背中にカモメに襲われたキズを持っている母子クジラは2%だったのが、2011年の調査では99%、ほぼすべての母子クジラがキズを負っていたのです。

赤ちゃんクジラの背中をつうばむカモメ。

傷だらけの赤ちゃんの背中。

頭をあげてカモメを追い払おうとする母クジラ。

クジラの親子は呼吸だけでなく、赤ちゃんの遊びや育児で海面で過ごす時間が長く、それがターゲットになっています。野生動物間のこととはいえ、とても胸が痛い事象です。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2022, Valdes Peninsla, Argentina

資料はdailymail.co.ukの “Seagulls are eating baby whales ALIVE: Birds attack calves when they come to the surface to breathe”を参考にしています。

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ミナミセミクジラの採餌、スキムフィーディング

2022年9月のバルデス半島・ヌエボ湾には、1,480頭のミナミセミクジラが繁殖・子育てのために集まりました。6~10月にバルデス半島にやってくるミナミセミクジラは繁殖や哺育中心の生活をしていますが、もちろん摂餌もします。南半球の夏に高緯度海域で索餌中心の生活を送るような規模ではありませんが、ここではカイアシ類をこしとる、スキムフィーディング Skim Feedingが見られます。

Skim feeding Southern Right Whale

この日の水中の撮影はボートからGo Pro入れただけなので、撮影している間はどんなのが映っているか見れません。水から上げてチェックしたとき、口を開けたミナミセミクジラが映っていて、肉眼では見れてないけど、それはそれはうれしいものでした。

岸の近くの浅い場所で表層のカイアシ類 ( Copepod ) を摂餌しているミナミセミクジラ。このフィーディング・グラウンドには20頭近くが集まっていました。

ヒゲがしっかり見えます。

Photography by Chizuko Murata

めっちゃ真正面。もうクジラか何か、わからないですね。

水深100m以上の採餌海域ではお母さまクジラが尻尾をあげて深く戻り、子クジラがそのあいだブリーチングしたり、尻尾バタバタさせて待っています。

尻尾を大きくあげて潜航するミナミセミクジラのお母さま。

母クジラの海中採餌中に、何十回もブリーチを見せてくれた子クジラ。母クジラが戻ってくると水面行動をやめ、母クジラに寄り添うように泳ぎます。

気が付くともう港に戻らないと行けない時間に。宿に戻ってからの写真整理も大変です。

 

Image : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2022, Valdez Peninsula, Patagonia, Argentina

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マゼランペンギン(バルデス半島、アルゼンチン)

コロナでしばらく行けなかったところのひとつ、南米パタゴニアの国立公園。2022年の9月は久しぶりにパタゴニア地方のバルデス半島を訪れることができました。

このツアーの目的はミナミセミクジラとの出会いが主なのですが、半島北部のサンロレンソのコロニーには繁殖のために上陸してきたマゼランペンギンたちがいました。彼らは9月上旬に冬の採餌海域から戻ってきて、産卵、育雛を経て来年3月下旬、再び海へと旅立ちます。

magellanic penguin Peninaula Valdes

繁殖地では、求愛モードのペア、抱卵しているペンギン、つがいの相手が見つからず鳴いて呼んでいるペンギンとさまざまです。

つがいの相手が見つからないのか、呼び続けるマゼランペンギン。

すでに抱卵中。

繁殖地のコロニーはこんな感じ。

漁から帰ってきたマゼランペンギン。この日は強風で海が大荒れ。荒波から上陸し来るペンギンは本当にたくましく、野生動物の強さを感じます。

今回の滞在中、まる2日間強風で海が荒れました。その翌日は、波が落ち着いたヌエボ湾で漁をするマゼランペンギンの姿をたくさん見ることがでいました。

このマゼランペンギンのコロニーはサン・ロレンソ というエスタンシア(牧場)の敷地内にあり、ここではパタゴニア羊が放牧されています。場所によってはもふもふの羊とマゼランペンギンが一緒にいるところが見れます。

この羊は観光客のために丸焼きになり、ペンギンツアーから帰ってきたアルゼンチンの観光客はパタゴニア羊のグリルと赤ワインと楽しむ、というなんとも豪華なツアーになっているのです。

ワインセラーも。

これまでは観察に大忙しで焼肉とワインのことは考えていませんでしたが、次回は・・・と思った次第です。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2022, San Lorenzo, Peninsula Valdez, Patagonia, Argentina

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