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Herring Run ニシンの大産卵! 春のシトカ・サウンド

3月下旬,ニシンの群れが産卵のためにシトカ・サウンドにやってきます - 北海道で1955年ごろに姿を消し、アラスカでも1993年から獲れなくなったニシン。アラスカでは保護と漁業管理の結果、シトカ、トギアク、コディアックの海にニシンが戻ってくるようになりました。2024年は近年では最大の規模の産卵が起こったといわれています。これらの地域でニシンが戻ってきたものの、日本からの「数の子」の需要が減り、捕獲しても買い取り手がつかないなど、ニシン漁業が再び活気を取り戻したわけではありません。トギアクではニシン加工業が廃業されたため漁業自体が行われませんでした。そのほかの地域も許容された数を下回る漁でした。

シトカに戻ってきたニシンの恵みを享受したのは野生動物たちのようです。そしてその姿を追う、フォトグラファーたち。2024年3~4月、大産卵が起こった日のシトカ・サウンドで見た生き物の様子をご紹介します。

停泊地から見る早朝のシトカ富士ことエッジカム山

シトカはアラスカ、バラノフ島西岸の町で、その名前は先住民族のトリンギット族の言葉で「海のほとり」という意味の Shee At’ikaに由来します。シトカは1867年にロシアがアメリカにアラスカを売却するまでロシア領でした。そのため町の中にはロシア正教会がありますし地名にはロシア語のものがたくさんあります。

シトカ・サウンドのニシン漁

シトカではニシン漁や先住民による子持ちコンブの収穫は昔から行われていましたが、近代漁業が始まるとニシンは肥料として収穫されていました。1955年ごろ日本でニシンが獲れなくなったことからアラスカで「日本市場」向けのニシン、「数の子」の需要が高まりました。これまでの「魚を獲る漁業」から「魚卵のための漁業」に変わりました。「数の子」となる良質の魚卵を採るためには産卵直前のニシンを捕獲する必要があります。1959年にアラスカの一部地域でニシンの天然魚卵の商業捕獲が始まり、1962年に日本への最初の輸出が始まりました。シトカでは1964年に始まり、魚卵を採取する「数の子」とコンブに産卵させた魚卵「子持ちコンブ」が収穫されました。そそして乱獲の結果1993年にはニシンが獲れなくなり、ニシン漁は規制と管理下に置かれるようになりました。乱獲だけでなく、ニシンにとって重要な産卵場所である海藻類の損失も大きな原因ではないかと推測されています。

2024年は3月28日ごろからシトカ・サウンド内で大きな産卵が起こりました。湾の中でも場所により29日だったり、さらに遅れて4月2日だったりしました。

ニシンの産卵・放精で白濁した海岸付近

アラスカの海は透明度が悪く、また規模が大きいため日本で見られる「群来」ほどくっきりと白濁した海水の違いはわかりませんでした。が、明らかに海面は白濁しています。

ニシンの産卵・放精が起こったあとの海面

シトカ・サウンドにはニシンとニシンの卵を目当てに野生動物が集まっていました。

ランジ・フィーデイングしているザトウクジラ

ザトウクジラです。南東アラスカを夏の採餌海域としている個体群は冬はハワイで子育て・繁殖しています。ハワイからアラスカへの移動は片道4800キロ以上、ノンストップでも6~8週間(最短で28日で移動した個体の記録があるそうです)かかると言われています。それを考えると3月下旬にシトカにやってくる個体群は2月にはハワイを出発していることになります。

シトカに現れるザトウクジラの動向記録を見ていると、ニシンの産卵前にシトカ・サウンドの太平洋に開いた沿岸部に現れ、産卵が始まるとばらばらになって南東アラスカの各地へと散らばったようでした。ソールズベリー・サウンドやチャタム海峡でも複数頭を観察できました。

ニシンの産卵前にはバブルネットフィーディングの集団行動が見られるほか、活発にランジフィーディングする様子が観察されました。

ランジ・フィーデイングしているザトウクジラ

ニシンを狙って集まるトドの群れ。

トド

大産卵の日のクルーゾフ島の海岸です。干潮の時間には産卵にやってきたニシンが海岸に残され、それを狙ったハクトウワシ、その数1000羽はいたでしょうか!

シトカ富士そびえるクルーゾフ島の海岸に集まるハクトウワシ

ハクトウワシはもうお腹いっぱいなのか、あまり活発に動いておらず、はねているニシンを見ていました。

この海岸の沖にはザトウクジラとトドの姿が。みんなニシンの恩恵に預かっています!

ザトウクジラとトド

水面行動が激しいクジラがいたので近づいてみました。交尾をしているようです!これは、コククジラです。コククジラの繁殖海域はもっと南のバハカリフォルニアです。どうしてここで交尾(または疑似交尾)?

コククジラの水面行動 ハート形のブロー

コククジラのペニス

コククジラの背中

コククジラの背中。背びれがなく、後部にはこぶ状のものがあるのが特徴です。コククジラは海底の泥や砂をヒゲで濾しとることによってカニなどの底生動物を捕食します。そのため、海岸近くでコククジラのブローを見ると、「お食事中」だと想像されます。

海岸で採餌するコククジラ

アラスカでは厳しくニシンの産卵がコントロールされており、魚卵の状態の確認した後に漁が「OPEN」となり一斉にニシン漁が始まります。網から直接吸い上げて船内にはいっていくため、「おこぼれ」のニシンがなく、鳥やトド、そして私たちもがっかりです。北海道の漁船の周りに鳥が集まるようにハクトウワシのニシンを狙った飛翔に期待したので残念でした。

漁船からはニシンのおこぼれはないので自力でニシンを獲ったハクトウワシ

ニシンを運べないカモメは腸(白子?)だけとっていました

ニシン釣りを楽しむ観光客

漁が許可された短時間での操業

4月に入ってすぐ、シトカ・サウンドの沖合にたくさんのブローが見えました。こんなにまとまった数のブローはザトウクジラではないか、と期待を胸に船を走らせました。かなりの数のクジラがいると思われました。

近づいて確認すると、それはコククジラのものでした。岩礁付近では数頭のグループが交尾または疑似交尾行動をしているようで、海岸付近ではたくさんのブローがあがり、採餌行動が行われているようでした。少なく見積もって50頭以上、いや100頭近くがこの海域にいるようでした。すでにシトカ・サウンドにはコククジラが入っていますが、この集団はちょうど太平洋からシトカ・サウンドに入ってきたばかりのようでした。

コククジラの水面行動

コククジラの口が水面に出ています♪

海岸にあがるブロー

この件が気になって調べたところ2023年に書かれたシトカのコククジラに関する記事がありました。以前からシトカ・サウンドではコククジラが目撃されていましたが、この2~3年の集まり方は顕著だと言います。しかも私たちが見たように、交尾と思われるような社会行動も目撃されています。この記事の著者は、コククジラたちはバハカリフォルニアからアリューシャン列島へと北上する途中でこのニシンの大きな群れと産卵を見ることになり、海岸に産み付けられた卵を求めて集まってきていると考察しています。コククジラの目撃場所はニシンの産卵場所と一致しているのは確実で、ククジラが潜水していた場所で切れたコンブが回収されたりしているそうです。

今後、シトカ・サウンドに集まるコククジラたちの動向と調査がまたれます。

美しい夕景の停泊地

さて、私たちの停泊していたシトカ・サウンドの奥で大産卵が起こりました。ハクトウワシがたくさん集まっておりスキッフに乗り換えて海岸で撮影をしていました。

ニシンを狙うハクトウワシ

「これ、全部ニシンの卵じゃないの?」よく見ると、潮が引いた海岸一面にニシンの卵が表れていました。

ハクトウワシの足元の薄卵色のものがニシンの卵

潮が引いた海岸はニシンの卵が一面に現れていました

大きな粒のニシンの卵

海に浮いていた海藻に付着していたニシンの卵

天然の子持ち昆布

夕食にも当然、採取した「子持ち昆布」をいただきました。すでに塩味が十分で大きな粒の卵を感謝していただきました。

アラスカから帰国して間もなく、天売島から「70年ぶりのニシンの産卵」が起こったというニュースが。ニシンがもたらす恵みが広がっていきますように・・・。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation  :Spring 2024, Sitka Sound and around, Alaska, USA

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春の天売島のワイルドライフと70年ぶりの群来(くき)

2024年4月15日、北海道の天売島では70年ぶりとなる「群来(くき)」が観察されました。島の人は大喜びで撮影し、そしてニシンを収穫しました。島の宿ではニシンの煮つけと数の子がふるまわれました。今、島にいる人の中にニシンが大漁に獲れた時代を知る人はいません。

春の天売島で観察したワイルドライフをご紹介します。羽幌港から天売島への航路ではオオハム(意外と多い)、ウミスズメ、そしてウトウ、ケイマフリを見ることができました。

天売島では、ウミガラス、ケイマフリ、ウトウ、ウミスズメ、ウミネコ、オオセグロカモメ、ウミウ、ヒメウの8種の海鳥が繁殖しています。4月、もうその営みは始まっています。黒崎海岸ではウミネコが繁殖し、そのエリアを拡大中。4月20日ごろは交尾(または疑似交尾)があちこちで行われていました。

交尾(または疑似交尾)するウミネコ

ウミネコの繁殖地が拡大傾向にある黒崎海岸

海鳥観察舎からウミウの繁殖地を見ると、もう雛に給餌していました。ウミウは繁殖が早い時期に始まる海鳥ですが、早くなってきている傾向にあるようです。断崖の上の斜面ではオオセグロカモメが繁殖し、交尾している様子も見られました。それにしてもこの付近もたくさんのウトウの営巣地があります。

断崖に営巣するウミウ。ほとんどの巣に雛がいました。

前浜漁港付近ではウミアイサの姿が。ウミアイサは冬鳥として天売島へ渡ってきます。彼らももうすぐ北へと渡って行きます。

ウミアイサのペア

そしてシノリガモ。天売島で一番目にするカモの仲間です。前浜漁港付近やロンババ浜でよく見かけました。シノリガモは年中天売島で見られるそうですが、断然冬の時期が観察しやすく、そして美しいです。

シノリガモ ロンババの浜にて

風が少し穏やかになった日の朝、島の写真家・ 寺沢孝毅さんの操船する小型ボート「ケイマフリ号」で海へ出ました。小型ボートから見たのは、まさに春の天売島の景色。

港を出てすぐに出会ったトド。北海道へは冬場に千島列島方面から回遊してきます。若いオスが1匹でいました。ニシンが訪れるようになった天売島、人だけでなく野生動物も集まります。豊かな海の象徴です。

トドもまもなく北上していきます

ボートから黒崎海岸のウミネコ繁殖地を海から眺め、赤岩方面へ。ウミガラス繁殖地ではウミガラスの姿は見られませんでしたが、付近の海上を4羽のウミガラスが飛んでいるのを見ました。

岩礁にはたくさんのゴマフアザラシたちがいました。乾燥してふわふわしています。

船に注目するゴマフアザラシ

鳴き交わす美しい声が洋上に響きます、ケイマフリの声です。海岸の岩場では求愛のしぐさが愛らしいペアの姿が。

求愛するケイマフリ

営巣する断崖近くの洋上のケイマフリの群れ

愛らしいケイマフリの赤い脚

最後に、西遊旅行の天売営業所(天売島ネイチャーライブ)のスタッフが4月15日に撮影した「群来(くき)」の様子です。

「群来」で白濁したロンババの浜

産卵は春に起こり、水深 1m 以下の浅い海でメスが卵を海藻に産み付け、オスが放精して受精させます。この放精によって海水が白濁する現象を群来(くき)と呼びます。

海藻に卵を産み付けるニシン

お世話になった萬谷旅館さんで出たニシン料理。新鮮なニシンは大変美味しいものでした。

ニシンの煮つけ

ニシンの卵、「数の子」

私自身、アラスカのシトカまでニシンの大産卵に集まるワイルドライフを求めて行き、帰ってきたばかりでした。アラスカでは“Herring Run”の名のもと、シトカの海に集まるザトウクジラ、コククジラ、ハクトウワシ、トドなど生き物と遭遇するワイルドライフツアーが大人気です。

日本の「群来」もいつかHokkaido’s Herring Runとして注目を集める日が来るのでしょうか。いやいや、その前に、まず毎年ニシンが産卵に来てくれる豊かな海を取り戻すことが大切です。来年もニシンが戻ってきてくれることを願います。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Photography of Herring spawning : Midori KUDO

Observation : April 2024, Teuri Island , Hokkaido

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グアテマラ・ワイルドライフスペシャル Guatemala Wildlife Special

グアテマラ・ワイルドライフスペシャルのコースで観察した野鳥を中心とする生き物たちのご紹介です。

14日間かけて中部の高原地域、西部の乾燥地域、北東部の熱帯地域、東部のユカタン半島を訪れ計248種の鳥を含む様々な生き物を観察しました。グアテマラのワイルドライフ観察の特徴は、どこもフィーダーや餌場があるわけではなく歩いて探して観察したことでした。自然の中での観察は容易ではありませんが、生き物の生息密度が非常に高いグアテマラだからこその観察方法だと思いした。

観察のハイライトとなったのは、グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti です。グアテマラを中心にメキシコ、ホンジュラスなどで生息が確認されている鳥で、グアテマラで一番小さな鳥です。

グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti )

我々が訪れた繁殖期直前の2月は、森の中にある少し開けた10m四方ほどのエリアで5羽ほどのオスが、それぞれの縄張りでメスや他のオスたちにしきりにディスプレイをします。声は、周りから聞こえてくるのですが、動きが素早く観察&撮影は簡単ではありません。身を潜めてじっと待機しやっとの思いで目の前でディスプレイをしてくれた時の喜びと感動は鮮明に覚えています。

グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti )

グアテマラの通貨がケツアールということからも分かる通り世界一美しい鳥とも名高いケツアール(Resplendent Quetzal、Pharomachrus mocinnoはグアテマラの国鳥です。

ケツアール(Resplendent Quetzal、Pharomachrus mocinno)

グアテマラのケツアールは、日本で有名なコスタリカのケツアールとは生息域が分断されており、尾の長さや体つき、鳴き声なども違うため、近い将来別種になるのではないかと言われているそうです。今回は、運よく1本の木に3羽のオスが同時に現れるという大興奮の観察となりました。また、どこへ行っても観光客が少なく我々のグループのみでゆっくり観察できたのも幸運でした。

他にも、中米らしい美しい生き物たちを数多く観察できました。大人気のキモモマイコドリ(Red-capped Manakin, Pipra mentalis です。宿泊したロッジの庭で観察できました。

キモモマイコドリ(Red-capped Manakin, Pipra mentalis )

青い帽子をかぶったようなエリアカフウキンチョウ(Golden rumped euphonia, Chlorophonia cyanocephala)。ケツアールを観察した木で営巣をしていました。

エリアカフウキンチョウ (Golden rumped euphonia, Chlorophonia cyanocephala)

大きな声で縄張りをアピールするシマアリモズ(Barred Antshrike, Thamnophilus doliatus

シマアリモズ(Barred Antshrike, Thamnophilus doliatus)

ホオジロカマドドリ(Plain xenops,Xenops minutus。見ずらいですが、嘴が上向きに反り上がっています。

ホオジロカマドドリ(Plain xenops,Xenops minutus)

頭の赤い模様がチャーミングポイントのベニイタダキアメリカムシクイ(Slate-throated whitestart, Myioborus miniatus

ベニイタダキアメリカムシクイ(Slate-throated whitestart, Myioborus miniatus )

体の中身はツル、外見や生態はクイナに似ていると言われる不思議なツルモドキ(Limpkin, Aramus guarauna も水辺で観察できました。

ツルモドキ(Limpkin, Aramus guarauna )

頭の模様が美しいレッソンハチクイモドキ(Lesson’s motmot,Momotus lessonii。個人的には最も美しいハチクイモドキの仲間と思っています。

レッソンハチクイモドキ(Lesson’s motmot,Momotus lessonii)

葉っぱの奥でしたが珍しいメキシコアリツグミ(Mayan Antthrush,Formicarius moniligerも地元のガイドさんが見つけてくださり大興奮でした。

メキシコアリツグミ(Mayan Antthrush,Formicarius moniliger)

草原をひらひらと非常に美しく飛ぶズグロエンビタイランチョウ(Fork-tailed Flycatcher, Tyrannus savana

ズグロエンビタイランチョウ(Fork-tailed Flycatcher, Tyrannus savana)

森の中で2mほどの距離まで近づいても全く逃げなかったハイバラエメラルドハチドリ(Rufous-tailed Hummingbird, Amazilia tzacatl)

ハイバラエメラルドハチドリ(Rufous-tailed Hummingbird, Amazilia tzacatl)

有名なユカタン半島の固有種ヒョウモンシチメンチョウ(Ocellated turkey, Meleagris ocellata)はティカル遺跡周辺の見晴らしのいい草原で観察できました。

ヒョウモンシチメンチョウ(Ocellated turkey, Meleagris ocellata)

仲のいいメキシコインコ(Yucatan Amazon, Amazona xantholora)のペア。訪れたこの時期は、多くの生き物が繁殖期を迎え仲むつましい姿を観察できました。

メキシコインコ(Yucatan Amazon, Amazona xantholora)

お酒を飲んだように顔が赤いことから酒面と呼ばれ、和名はサカツラハグロドリ(Masked Tityra, Tityra semifasciataです。

サカツラハグロドリ(Masked Tityra, Tityra semifasciata)

世界一美しいサギともいわれるアカハラサギ(Agami heron, Agamia agami)は、常に木陰にいるためボートで観察しました。

アカハラサギ(Agami heron, Agamia agami)

野鳥以外のワイルドライフもご紹介! 凛々しいハイイロギツネ(Grey fox, Urocyon cinereoargenteusは何処となく突如と現れるため、ジャングルの中にあるロッジでの食事の際なども常にカメラが手放せませんでした。

ハイイロギツネ(Grey fox, Urocyon cinereoargenteus)

チュウベイクモザル(Central American Spider Monkey, Ateles geoffroyi)も我々人間を気にすることなく自然な姿を観察することができました。はっきりした顔立ちが印象的なクモザルの仲間です。

チュウベイクモザル(Central American Spider Monkey, Ateles geoffroyi)

グリーンイグアナ(Green iguana, Iguana iguanaは中米諸国では、オレンジ色の個体の割合が多いことで有名です。個体ごとに色合いが違うため非常に美しく、早朝はみんなで木に登り日光浴をしていました。

グリーンイグアナ(Green iguana, Iguana iguana)

世界に2種類しか生息しないドクトカゲの一種、メキシコドクトカゲ (Beaded lizard,Heloderma horridum)です。英名通りビーズのような肌と、決して走らず常にゆっくりと歩く姿が印象的でした。

メキシコドクトカゲ (Beaded lizard,Heloderma horridum)

グアテマラには、コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)の繁殖地の最北端となっているラスグヤカマスという場所があります。今回訪れたこの時期は、営巣の準備に励む夫婦の姿を観察できました。コンゴウインコの寿命は70年ほどともいわれます。一度つがいになったペアは、50年ほど連れ添うそうです。

コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)のペア

コンゴウインコが繁殖する木の洞

コンゴウインコのような大きな体を支える繁殖場所は、大きな木の洞が必要になります。繁殖地の北限が南下してしまわないように、大きな木が存在できる大自然がいつまでも続いていくことを願います。

コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Feb 2024 Guatemala

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生物多様性の宝庫・マダガスカル Vol.02<ナイト・サファリ>

前回に引き続き、マダガスカルで観察した生き物たちのご紹介です。

マダガスカルは、ライオンやトラなどの夜行性の大型肉食獣が生息していないため、ナイトサファリも歩いて森の中を体験する”ウォーキングサファリ”が活発に行われています。日本から遠く離れたマダガスカルの地で夜な夜な森の中を歩くと、全身の神経が研ぎ澄まされ、土の匂い・木の上を動く動物の足音などを感じながら生き物たちを探す、忘れられない体験になりました。

今回はそんな夜のツアーで観察してきた生き物たちのご紹介です。

 

ネズミキツネザル (Mouse lemur)

ネズミ・キツネ・サルと3種類の生き物の名前を持つ非常に不思議な名前の生き物です。世界一小さなサルの仲間で、大きさは手の平に収まるほどしかありません。真ん丸な目と、しっかりとしたサルらしい手足が非常にキュートです。地域により、様々な種が生息しており現在は24種ほどに分類されるそうです。

チャイロネズミキツネザル(common brown lemur , Eulemur fulvus )

グッドマンネズミキツネザル (Goodman’s mouse lemur, Microcebus lehilahytsara )

 

アイアイ (Aye-aye  Daubentonia madagascariensis

童謡などで有名な「アイアイ」ですが、世界でもマダガスカルにしか生息しないキツネザルの仲間です。お猿さんと言っても原猿類というサル中でも原始的な仲間で我々の想像するニホンザルなどとはかけ離れた見た目でした。

アイアイ(Aye-aye、Daubentonia madagascariensis)

夜間の活動に有利な大きな目に加え、キツツキのように木に穴をあけて中にいる虫などを取り出すために非常に長く発達した中指など、独特な見た目をしており現地では以前より「悪魔」として恐れられていたため、保護活動が始まるまでは駆除されてしまうことも多かったそうです。

 

イタチキツネザル (Sportive lemur)

こちらも、イタチ・キツネ・サルと様々な生き物の名前が組み合わされていますが、英語ではSportive lemurです。木の止まる姿が、ボクサーの動きを連想されることからSportive(スポーツ)と呼ばれるようになったそうです。夜行性ですが、他のキツネザル同様に体温調節が得意ではない為、日中も寝床である木のうろから出ていることも多いです。こちらも27種ほどが確認されていて地域によって様々な姿を見せてくれます。

シロアシイタチキツネザル(White-footed sportive lemur, Lepilemur leucopus )

シロアシイタチキツネザル(White-footed sportive lemur, Lepilemur leucopus )

 

ヘラオヤモリ (Leaf-tailed gecko, Uplatus Sp.)

世界一の擬態力を持つ生き物と言えば、マダガスカルに生息するヘラオヤモリの仲間だと言っても過言でないほど擬態の名人です。そしてマダガスカルに生息する生き物で最も不思議な生き物の一つだと思います。今回は、エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)、ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)の2種類の観察に成功しました。

エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)

エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)

ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)

ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)

 

マダガスカルコノハズク (Madagascar scops owl, Otus rutilus)

マダガスカル固有のフクロウで、我々が発見した際には足に大きなトビバッタを捕まえていました。人をあまり気にしないのか、我々の目線の高さでじっと止まり木に止まっておりゆっくり観察できたのも印象的です。

マダガスカルコノハズク (Madagascar scops owl, Otus rutilus)

 

マダガスカルオオゴキブリ(Madagascan hissing cockroach)

マダガスカルオオゴキブリ、略して「マダゴキ」の愛想で親しまれる大型のゴキブリ。森林性で住宅地の近くなどでは観察することができない為、お部屋に出てくるなんてラッキーなことはめったにありません。動きは遅いですが、8cmを超える大型の個体は迫力満点でした。

昼も夜も、本当に奥深いマダガスカルの生き物たちとの出会い。続編をご期待ください!

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Oct 2023, Madagascar

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生物多様性の宝庫・マダガスカル Vol.01

生物多様性の宝庫、マダガスカル。見られる全動植物種の約90%が世界でマダガスカルにしか生息しない固有種であるため、観察場所を変えるたびにライファーと出合います。日中の観察で出会った生き物の一部をご紹介します。

 

ワオキツネザル:Ring-tailed lemur、Lemur catta

メスがグループのリーダーで、今回訪れた10月の繁殖期には子供を背中に乗せたメスが群れの先頭を歩く姿が見られました。ワオキツネザルを含む、キツネザルの仲間は体温調節が得意ではなく、早朝などは日が出ると日光浴する姿も観察できるそうです。

子供を背中に乗せたメスのワオキツネザル (Ring-tailed lemur、Lemur catta)

ベローシファカ:Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi

地面を歩くときなどは、横向きにジャンプしながら移動します。サボテンの多く存在する場所にも生息する為、人間ではとても触れないトゲの枝にもしっかりとつかまって生活する姿が印象的でした。

横向きにジャンプしながら移動するベローシファカ (Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi)

ベローシファカ (Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi)

カメレオンの仲間

世界に生息する60%のカメレオンは、マダガスカルに生息しています。世界で一番重たいカメレオンである、パーソンカメレオン(Parson’s chamaeleon, Calumma parsonii)や、ゾウのように大きな耳が特徴なゾウカメレオン(Elephant Ear Chameleon, Calumma brevicorne)、地域によってさまざまな色合いを持つパンサーカメレオン(など多種多様なカメレオンたちを観察することができました。

パンサーカメレオン(Panther chameleon, Furcifer pardalis )

ゾウカメレオン(Elephant Ear Chameleon, Calumma brevicorne)

マダガスカルアデガエル :Madagascan mantella, Mantella madagascariensis 

中南米などに生息するヤドクガエルなどと同様に体に毒があることを警告する為に、非常にきれいな体色をしています。

マダガスカルアデガエル (Madagascan mantella, Mantella madagascariensis )

マダガスカルヤツガシラ :Madagascar hoopoe, Upupa marginata 

ヤツガシラの多くは、渡り鳥として有名ですが本種は渡りをしないマダガスカル固有種です。日本などで観察できるものに比べて、オレンジ色が非常に濃く色合いがとても綺麗です。

マダガスカルヤツガシラ (Madagascar hoopoe, Upupa marginata )

ルリガシラハシリジブッポウソウ:Pitta-like Ground Roller, Atelornis pittoides

英名が、Pitta-like Ground Roller(ヤイロチョウのようなジブッポウソウの意味)で、その名の通り地面の上をピョンピョンと跳ねる姿はまるでヤイロチョウのようです。きらきらと輝く青色が非常に美しく多くのマダガスカルの野鳥図鑑の表紙を飾っている鳥です。

ルリガシラハシリジブッポウソウ (Pitta-like Ground Roller, Atelornis pittoides )

ヒルヤモリの仲間

ヤモリは、夜行性の種類が多い中で昼に活動する種はヒルヤモリと呼ばれます。昼の生活でも擬態をする為、緑色をしている種類が非常に多いのが特徴的です。ヨツメヒルヤモリ (Four Spot Day Gecko, Phelsuma quadriocellata )、グランディスヒルヤモリ (Madagascar Giant Day Gecko, Phelsuma madagascariensis  )など多くの種類を観察することができました。

ヨツメヒルヤモリ (Four Spot Day Gecko, Phelsuma quadriocellata )

キリンクビナガオトシブミ :Giraffe Weevil, Trachelophorus giraffa 

キリンのように長い首を持つオトシブミの仲間です。卵を産んだ後、幼虫のえさとなる葉で卵を包み込み、木から切り離して地面に落としてしまう姿の観察にも成功しました!

キリンクビナガオトシブミ (Giraffe Weevil, Trachelophorus giraffa )

マダガスカルの動物というとキツネザルの仲間が有名ですが、日中に見られるさまざまな生き物を紹介させていただきました。次回は、夜のマダガスカルの生き物です!

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Oct 2023, Madagascar

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海鳥の聖域天売島が海鳥たちに選ばれたわけ

天売島は、周囲12㎞ほどの小さな島で2024年の人口は250人ほど。天売島は「海鳥の楽園」と言われるほどたくさんの海鳥たちが繁殖し、その数はおよそ100万羽とも言われます。日本国内にはこのような場所は存在せず、東に3kmほどの場所には、ほぼ同じ大きさの焼尻島がありますが、こちらには海鳥はほとんど繁殖していません。いったいなぜなのでしょうか。

天売島周辺の海域では、特に冬の間は大陸側からのシベリア高気圧の影響を受け、島の北西方面からの風を受け続けます。その風が何千万年もの年月をかけて北西方面ばかり風食した結果、島の一面に崖が出来上がったと言われています。

Google Mapより

赤線部が元の島のあった場所

Google Mapより

矢印は風の向き。風が直接当たる島の北西部に崖が出来ました。

崖というのは、人間を含む哺乳類などが最も苦手とする地形の一つですが、空を飛ぶことのできる鳥たちにとってはアクセスしやすい場所です。普段は海で生活する海鳥たちは、陸上での生活は得意でないものが多く、天敵がアクセスしずらい崖での繁殖を選ぶようになりました。

崖で繁殖するオオセグロカモメ

崖で繁殖するヒメウとウミネコ

また、天売島で一番数が多いウトウの繁殖場所は、崖の上にある土のある陸上です。ウトウたちは、天敵の多い陸上に巣を作るので天敵が見えづらくなる夕方の日没と同時に一斉に帰巣しますが、高い木が生えていると暗くなった際にはぶつかる可能性が高くなります。そのため、高い木の生えていないエリアに営巣します。天売島はその強い風のおかげで、高い木が生えておらずウトウにとっても非常に良い条件が整い、世界No1の80万羽もの繁殖が確認されています。

木の無い草原に飛び込むようにして帰巣するウトウ

このように海鳥にとって最高の条件が奇跡的に重なり、沢山の海鳥が繁殖する天売島が出来上がったと言われています。海鳥の繁殖シーズンには、崖の下から海鳥や地層なども観察できるボートツアーも開催しています。

 

Text & Photography : Wataru Himeno

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天売島の人気者、ケイマフリの魅力

2023年の夏を天売島で過ごした姫野からのレポートです ♪

天売島で不動の人気を誇る海鳥と言えば、ケイマフリです。もともと、アイヌの言葉で足の赤いを意味するケマフレという単語から、和名もケイマフリとなりました。その名の通り、足が赤いだけでなく、口の中も同じ赤色であるため、岩場で足を見せながら口を開けて求愛する姿を観察した方はその美しさに必ずというほど魅了されます!

天売島に生息する他のウミスズメ科の鳥に比べ飛び立ちも上手なため、水面から飛び立つ時は、水面を走るようにしながら助走をつけます。(そのほかの2種ウトウ、ウミガラスは、水面で羽ばたきながら半分泳ぐようにして助走をします)

その際に見られる、天売ブルーと呼ばれる海の色とケイマフリの赤い足の輝きは非常に美しく、これを見るためだけに天売島へいらっしゃる方も。

繁殖期後期の6月後半ごろからは餌をヒナに咥えて持ち帰る姿も観察できます。

イカナゴやギンポの仲間など、多様な餌を運ぶ姿も大変魅力的です。

ケイマフリの魅力に魅せられた天売島在住の写真家・寺沢孝毅さんはケイマフリという名前の日本酒を作られたり、ご自身の船にもケイマフリを描くほどです。

皆さんもぜひ、ケイマフリに会いに天売島にお越しください。

 

Image & text: Wataru HIMENO

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天売島(北海道)の夜の生き物 

2023年の夏を天売島で過ごした姫野のレポートです ♪

天売島は北緯44度に位置するため、春から夏にかけての日照時間が長く空が完全に暗くなるのは21時ごろです。朝も3時ごろには明るくなり始めるため、夜行性の生き物たちは短い夜を世話しなく生きています。

夜行性の生き物と言えばフクロウの仲間。2023年度は、トラフズク (Long-eared Owl) の繁殖が確認できました。

トラフズク (Long-eared Owl)

春先には、3羽のヒナを確認しましたが、7月の前半からは2羽しか確認できなくなってしまいました。自然の厳しさを実感です。

日本のキーウイ(Kiwi) こと ヤマシギ (Eurasian Woodcock) も天売島には生息しています。ニュージーランドに生息するキーウイ同様、夜行性で地表近くに生息するミミズなどを捕食しますが、ヤマシギは空を飛べますので生息範囲が広いのが特徴です。また、嘴に多数の穴が開いていて、神経が通っているため、地面に差し込んだ嘴で獲物の動きなども感知できるそうです。

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

また、暖かい日の夜は天売島に生息する唯一のヘビ、マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper) も活発になります。

マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper)

夜行性のヘビとして紹介されることも多いですが、天売島では春先などの肌寒い季節にはお昼の時間帯により活発に活動している印象を受けました。爬虫類でありながら、卵ではなく子供を直接産む卵胎生であるため、春先の一日の温度差の激しい天売島で効率的に繁殖し、この島で生息する唯一のヘビになったのではないかと思います。

マムシは、日本では最も有名な毒蛇で、「マムシ=危険」というイメージが根強く車などでも轢かないように運転する意識も、他の生き物に比べて低いためか、シーズン中には幾度となく車にひかれて亡くなったであろう個体を見かけました。

マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper)

天売島に生息する唯一の両生類、ニホンアマガエル (Japanese tree frog) も夜になると活動を始めます。

ニホンアマガエル (Japanese tree frog)

周囲12kmほどの小さな島であるため、安定した淡水の水場が少なく、常に水が必要な両生類の生息できる環境は非常に限られていますが、廃船にたまった雨水やわずかな湧き水の水たまりなど、海岸からほど近い場所にも関わらず数多くの個体が繁殖しています。

また夜の観察後には、きれいな星空が広がっていることも。晴れさえすれば、ほぼ確実に流れ星も確認できます。

夜の前浜港

天売にいらっしゃった際は、最後に夜空も見上げてみてください。

Image & Text: Wataru HIMENO
Observations at Teuri Island in Summer 2023

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アカミノフウチョウ Wilson’s bird-of-paradise(ワイゲオ島、インドネシア)

ゴクラクチョウ(極楽鳥)とも呼ばれるフウチョウの仲間はインドネシア東部、パプアニューギニア、オーストラリア東部に45種が生息しています。その中でも最も色鮮やかとされるのが、このアカミノフウチョウ Wilson’s bird-of-paradise のオスです。

アカミノフウチョウ Wilson’s bird-of-paradise はインドネシアの固有種で、南西パプア州のワイゲオ島とバタンタ島の丘陵地と低地の熱帯雨林にのみ生息しています。このうち、ワイゲオ島でアカミノフウチョウを観察する機会がありました。ワイゲオ島は世界でもトップクラスのダイビング・デスティネーション、”ラジャアンパット諸島”の島です。

ハイドから撮影したアカミノフウチョウの動画です。鳴き声が美しく、口の中は薄黄緑色!

自分の「ディスプレイ・コート」の葉っぱをお掃除する様子は愛らしい限りです。

訪れた保護林では付近に4か所のアカミノフウチョウが現れるディスプレイ・コートがあるとのことでした。が、熱帯雨林の道を歩くのは大変なので一番近いハイドを訪問しました。夜明け~朝9時くらいがコアタイムです。ハイドの座席に座り、出現を待ちます。木陰でオスが鳴きはじめました。

アカミノフウチョウは体長が16cmほどで、飾り尾羽を含めて21cmほどの大きさです。オスは赤と黒の羽色で、首は黄色の羽毛、青紫の足と銀紫の尾羽。頭は鮮やかな水色の皮膚に黒い羽毛が模様を作っています。胸はビロードのような光沢をもつ緑色です。

アカミノフウチョウと近縁種のキンミノフウチョウのオスは縄張りを持ち、熱帯林の一画に「ディスプレイ・コート」を作ります(このコートは別のオスが使うこともあり、長期間メンテナンスされるそうです)。コートの中央に垂直の枝があり、この枝にとまってディスプレイを行い、メスにアピールします。研究者のレポートによると、このディスプレイをメスの視点から見ると、オスは鮮やかな緑の円盤に見え、口の中の薄黄緑と相まって驚異的な色表現が行われているのだそうです。

こちらがアカミノフウチョウのメスです。他のフウチョウの仲間と同様にオスと比べると断然地味。頭は同じように青い皮膚がむき出しになっています。

アカミノフウチョウは1羽のオスが複数のメスと交尾をし、メスは一羽で子育てをします。なので、DNAをもらうだけの相手選びは慎重に行われるようです。こう見えて、オスはひたすら選ばれるためにがんばらばくてはなりません。

ハイドでの観察は、ディスプレイ・コートのまわりでオスが鳴きはじめ、そして次にコートのお掃除。落ちている葉っぱをくちばしで取り除きます。そしてメスが現れます・・・。

オスの華麗なディスプレイを「メスの視点」で見るのは至難の業ですが、森にアカミノフウチョウのオスが姿を現し、声を聞いただけでもここまでやってきた苦労が報われる出会いでした。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Nov 2023, Waigeo Island, Raja Ampat, Southwest Papua, Indonesia

※ワイゲオ島を含むラジャアンパット諸島とドベイラ半島は2022年12月に「西パプア州」から分立して「南西パプア州」となりました。

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ザトウクジラのバブルネットフィーディング in アラスカ

久しぶりにアラスカのバブルネットフィーディングのツアーへ。温暖化で海の様子がすっかり変わってしまい、クジラの採餌海域を追いかけるのが本当に難しくなってきた今日この頃。アラスカも同じで、以前バブルネットフィーディングがさかんに行われていた海域はひっそりとし釣り人もおらず、別の場所へ移動していました。

ジュノーを出航して3日目、ようやく小さなニシンを銜えて巣へと向かう海鳥を見つけ、その海域が近いことを感じました。そして4日目・5日目は「クジラ祭り」、場所をあててくれ、こちらからは接近しすぎない良い距離感でバブルネットフィーディングを観察させてくれた船長に感謝です。

アラスカの山並みを背景に複数のブローがあがりました。この数のブローを見ると、バブルネットフィーディングの期待があがります。朝9時30分ごろ、クジラが集まっているように見えました。

そしてバブルネットフィーディング!船上でシャッター音が響き渡ります。

バブルネット・フィーディング Bubble net feeding
数頭から数十頭の群れで、魚の群れを円を描くようにまわりながら泡を吐き出して一ヶ所に追い込みます。鰭を使いながら魚を取り囲み、魚群の下からは一匹のザトウクジラが大きな声を発し、パニックになった魚を上へと追い込みます。追いこみをする群れの上では別のザトウクジラが泡を出して旋回し、バブルネットを作り、魚の群れをこの中に閉じ込め、最後には全てのザトウクジラが大きな口をあけて海面へと飛び出し、一気に捕食します。

船の上から泡が上がってくるのが見えました、船の下でザトウクジラが泡をだしてバブルネットを作ってます!!この時は、本当に至近距離に上がってくるのではないかと興奮して待ちましたが、意外と遠い場所でバブルネットフィーディングがありました。魚の動きだけでなく潮の流れもあるので距離はわからないものですね。

Photography by Seiji TACHI

魚が上がってきました!

Photography by Kiyoshi AOKI

バブルネットフィーディングは本当に突然上がってきます。周りの鳥の動きも見ながらどのあたりから起こりそうかあたりをキョロキョロして待ちます。この写真は本当に上がってきたばかりの写真で海面に小さなニシンと思われる魚がいます。

Photography by Seiji TACHI

魚もザトウクジラも必死。

Photography by Seiji TACHI

Photography by Morihiko HAYAKAWA

この日の午前中、午後ともにクジラのリーダーが良いのか、なかなかうまく統制がとれてバブルネットフィーディングが行われていました。毎回うまくいくのではなく、「え、いまの失敗?」みたいなことも何度もあります。そして、それが続くと参加クジラは嫌になるのか、群れを離れて行ったりしました。この時は同じ海域に2つのバブルネットフィーディングのを行うグループがあり、このグループ間を行き来しているクジラもいました。

▽▽船長がドローンで撮影をしてくれた動画から切り出した写真です。

Drone footage by Jonathan

船のそばでバブルネットフィーディング!左下の水面の動きは子供クジラです。母クジラがバブルネットフィーディングに参加中は、子クジラは近くでテイルスラップ(尾鰭びれバンバン)したりペックスラップ(胸鰭バンバン)して遊んでいます。この子クジラの場所も、バブルネットフィーディングの場所を探すバロメーターです。

Drone footage by Jonathan

これはとても至近距離でおこったバブルネットフィーディング。ドローンでとった動画から切り出した写真です。

クジラも近いと透けて見えますが、アラスカ・インサイドパッセージの海の透明度は良くありません。

Drone footage by Jonathan

バブルネットフィーディングが終わるとしばらくわちゃわちゃしていますが、ゆっくりとみんなで泳ぎ始めます。

Drone footage by Jonathan

魚をもとめて移動してきます。ブローに虹が🌈

Drone footage by Jonathan

そして合図があるのでしょう、一斉に潜り始めます。水中でのバブルネットフィーディングの始まりです。

Drone footage by Jonathan

空撮で見る、バブルネットフィーディング、バブル(泡)と魚とザトウクジラがが浮上してきます。

Drone footage by Jonathan

半分上がってきて、右上に円を描いているバブルネットが見えます。ザトウクジラが口を開けています。

Drone footage by Jonathan

口が閉まっていく状態のザトウクジラたち。

Drone footage by Jonathan

そして再び、魚を求めて移動です。何回も何回も繰り返し、時々新しいクジラが参加に来て、時々離団していって・・・。それにしてもかなりの重労働です。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Photography by Seiji TACHI, Kiyoshi AOKI, Morihiko HAYAKAWA

Drone footage by Jonathan

Observation: July 2023, Inside Passage – Alaska

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