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生物多様性の宝庫・マダガスカル Vol.01

生物多様性の宝庫、マダガスカル。見られる全動植物種の約90%が世界でマダガスカルにしか生息しない固有種であるため、観察場所を変えるたびにライファーと出合います。日中の観察で出会った生き物の一部をご紹介します。

 

ワオキツネザル:Ring-tailed lemur、Lemur catta

メスがグループのリーダーで、今回訪れた10月の繁殖期には子供を背中に乗せたメスが群れの先頭を歩く姿が見られました。ワオキツネザルを含む、キツネザルの仲間は体温調節が得意ではなく、早朝などは日が出ると日光浴する姿も観察できるそうです。

子供を背中に乗せたメスのワオキツネザル (Ring-tailed lemur、Lemur catta)

ベローシファカ:Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi

地面を歩くときなどは、横向きにジャンプしながら移動します。サボテンの多く存在する場所にも生息する為、人間ではとても触れないトゲの枝にもしっかりとつかまって生活する姿が印象的でした。

横向きにジャンプしながら移動するベローシファカ (Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi)

ベローシファカ (Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi)

カメレオンの仲間

世界に生息する60%のカメレオンは、マダガスカルに生息しています。世界で一番重たいカメレオンである、パーソンカメレオン(Parson’s chamaeleon, Calumma parsonii)や、ゾウのように大きな耳が特徴なゾウカメレオン(Elephant Ear Chameleon, Calumma brevicorne)、地域によってさまざまな色合いを持つパンサーカメレオン(など多種多様なカメレオンたちを観察することができました。

パンサーカメレオン(Panther chameleon, Furcifer pardalis )

ゾウカメレオン(Elephant Ear Chameleon, Calumma brevicorne)

マダガスカルアデガエル :Madagascan mantella, Mantella madagascariensis 

中南米などに生息するヤドクガエルなどと同様に体に毒があることを警告する為に、非常にきれいな体色をしています。

マダガスカルアデガエル (Madagascan mantella, Mantella madagascariensis )

マダガスカルヤツガシラ :Madagascar hoopoe, Upupa marginata 

ヤツガシラの多くは、渡り鳥として有名ですが本種は渡りをしないマダガスカル固有種です。日本などで観察できるものに比べて、オレンジ色が非常に濃く色合いがとても綺麗です。

マダガスカルヤツガシラ (Madagascar hoopoe, Upupa marginata )

ルリガシラハシリジブッポウソウ:Pitta-like Ground Roller, Atelornis pittoides

英名が、Pitta-like Ground Roller(ヤイロチョウのようなジブッポウソウの意味)で、その名の通り地面の上をピョンピョンと跳ねる姿はまるでヤイロチョウのようです。きらきらと輝く青色が非常に美しく多くのマダガスカルの野鳥図鑑の表紙を飾っている鳥です。

ルリガシラハシリジブッポウソウ (Pitta-like Ground Roller, Atelornis pittoides )

ヒルヤモリの仲間

ヤモリは、夜行性の種類が多い中で昼に活動する種はヒルヤモリと呼ばれます。昼の生活でも擬態をする為、緑色をしている種類が非常に多いのが特徴的です。ヨツメヒルヤモリ (Four Spot Day Gecko, Phelsuma quadriocellata )、グランディスヒルヤモリ (Madagascar Giant Day Gecko, Phelsuma madagascariensis  )など多くの種類を観察することができました。

ヨツメヒルヤモリ (Four Spot Day Gecko, Phelsuma quadriocellata )

キリンクビナガオトシブミ :Giraffe Weevil, Trachelophorus giraffa 

キリンのように長い首を持つオトシブミの仲間です。卵を産んだ後、幼虫のえさとなる葉で卵を包み込み、木から切り離して地面に落としてしまう姿の観察にも成功しました!

キリンクビナガオトシブミ (Giraffe Weevil, Trachelophorus giraffa )

マダガスカルの動物というとキツネザルの仲間が有名ですが、日中に見られるさまざまな生き物を紹介させていただきました。次回は、夜のマダガスカルの生き物です!

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Oct 2023, Madagascar

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海鳥の聖域天売島が海鳥たちに選ばれたわけ

天売島は、周囲12㎞ほどの小さな島で2024年の人口は250人ほど。天売島は「海鳥の楽園」と言われるほどたくさんの海鳥たちが繁殖し、その数はおよそ100万羽とも言われます。日本国内にはこのような場所は存在せず、東に3kmほどの場所には、ほぼ同じ大きさの焼尻島がありますが、こちらには海鳥はほとんど繁殖していません。いったいなぜなのでしょうか。

天売島周辺の海域では、特に冬の間は大陸側からのシベリア高気圧の影響を受け、島の北西方面からの風を受け続けます。その風が何千万年もの年月をかけて北西方面ばかり風食した結果、島の一面に崖が出来上がったと言われています。

Google Mapより

赤線部が元の島のあった場所

Google Mapより

矢印は風の向き。風が直接当たる島の北西部に崖が出来ました。

崖というのは、人間を含む哺乳類などが最も苦手とする地形の一つですが、空を飛ぶことのできる鳥たちにとってはアクセスしやすい場所です。普段は海で生活する海鳥たちは、陸上での生活は得意でないものが多く、天敵がアクセスしずらい崖での繁殖を選ぶようになりました。

崖で繁殖するオオセグロカモメ

崖で繁殖するヒメウとウミネコ

また、天売島で一番数が多いウトウの繁殖場所は、崖の上にある土のある陸上です。ウトウたちは、天敵の多い陸上に巣を作るので天敵が見えづらくなる夕方の日没と同時に一斉に帰巣しますが、高い木が生えていると暗くなった際にはぶつかる可能性が高くなります。そのため、高い木の生えていないエリアに営巣します。天売島はその強い風のおかげで、高い木が生えておらずウトウにとっても非常に良い条件が整い、世界No1の80万羽もの繁殖が確認されています。

木の無い草原に飛び込むようにして帰巣するウトウ

このように海鳥にとって最高の条件が奇跡的に重なり、沢山の海鳥が繁殖する天売島が出来上がったと言われています。海鳥の繁殖シーズンには、崖の下から海鳥や地層なども観察できるボートツアーも開催しています。

 

Text & Photography : Wataru Himeno

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★Wildlife videos are also available on Youtube – we have the playlist as well.

天売島の人気者、ケイマフリの魅力

2023年の夏を天売島で過ごした姫野からのレポートです ♪

天売島で不動の人気を誇る海鳥と言えば、ケイマフリです。もともと、アイヌの言葉で足の赤いを意味するケマフレという単語から、和名もケイマフリとなりました。その名の通り、足が赤いだけでなく、口の中も同じ赤色であるため、岩場で足を見せながら口を開けて求愛する姿を観察した方はその美しさに必ずというほど魅了されます!

天売島に生息する他のウミスズメ科の鳥に比べ飛び立ちも上手なため、水面から飛び立つ時は、水面を走るようにしながら助走をつけます。(そのほかの2種ウトウ、ウミガラスは、水面で羽ばたきながら半分泳ぐようにして助走をします)

その際に見られる、天売ブルーと呼ばれる海の色とケイマフリの赤い足の輝きは非常に美しく、これを見るためだけに天売島へいらっしゃる方も。

繁殖期後期の6月後半ごろからは餌をヒナに咥えて持ち帰る姿も観察できます。

イカナゴやギンポの仲間など、多様な餌を運ぶ姿も大変魅力的です。

ケイマフリの魅力に魅せられた天売島在住の写真家・寺沢孝毅さんはケイマフリという名前の日本酒を作られたり、ご自身の船にもケイマフリを描くほどです。

皆さんもぜひ、ケイマフリに会いに天売島にお越しください。

 

Image & text: Wataru HIMENO

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天売島(北海道)の夜の生き物 

2023年の夏を天売島で過ごした姫野のレポートです ♪

天売島は北緯44度に位置するため、春から夏にかけての日照時間が長く空が完全に暗くなるのは21時ごろです。朝も3時ごろには明るくなり始めるため、夜行性の生き物たちは短い夜を世話しなく生きています。

夜行性の生き物と言えばフクロウの仲間。2023年度は、トラフズク (Long-eared Owl) の繁殖が確認できました。

トラフズク (Long-eared Owl)

春先には、3羽のヒナを確認しましたが、7月の前半からは2羽しか確認できなくなってしまいました。自然の厳しさを実感です。

日本のキーウイ(Kiwi) こと ヤマシギ (Eurasian Woodcock) も天売島には生息しています。ニュージーランドに生息するキーウイ同様、夜行性で地表近くに生息するミミズなどを捕食しますが、ヤマシギは空を飛べますので生息範囲が広いのが特徴です。また、嘴に多数の穴が開いていて、神経が通っているため、地面に差し込んだ嘴で獲物の動きなども感知できるそうです。

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

また、暖かい日の夜は天売島に生息する唯一のヘビ、マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper) も活発になります。

マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper)

夜行性のヘビとして紹介されることも多いですが、天売島では春先などの肌寒い季節にはお昼の時間帯により活発に活動している印象を受けました。爬虫類でありながら、卵ではなく子供を直接産む卵胎生であるため、春先の一日の温度差の激しい天売島で効率的に繁殖し、この島で生息する唯一のヘビになったのではないかと思います。

マムシは、日本では最も有名な毒蛇で、「マムシ=危険」というイメージが根強く車などでも轢かないように運転する意識も、他の生き物に比べて低いためか、シーズン中には幾度となく車にひかれて亡くなったであろう個体を見かけました。

マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper)

天売島に生息する唯一の両生類、ニホンアマガエル (Japanese tree frog) も夜になると活動を始めます。

ニホンアマガエル (Japanese tree frog)

周囲12kmほどの小さな島であるため、安定した淡水の水場が少なく、常に水が必要な両生類の生息できる環境は非常に限られていますが、廃船にたまった雨水やわずかな湧き水の水たまりなど、海岸からほど近い場所にも関わらず数多くの個体が繁殖しています。

また夜の観察後には、きれいな星空が広がっていることも。晴れさえすれば、ほぼ確実に流れ星も確認できます。

夜の前浜港

天売にいらっしゃった際は、最後に夜空も見上げてみてください。

Image & Text: Wataru HIMENO
Observations at Teuri Island in Summer 2023

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アカミノフウチョウ Wilson’s bird-of-paradise(ワイゲオ島、インドネシア)

ゴクラクチョウ(極楽鳥)とも呼ばれるフウチョウの仲間はインドネシア東部、パプアニューギニア、オーストラリア東部に45種が生息しています。その中でも最も色鮮やかとされるのが、このアカミノフウチョウ Wilson’s bird-of-paradise のオスです。

アカミノフウチョウ Wilson’s bird-of-paradise はインドネシアの固有種で、南西パプア州のワイゲオ島とバタンタ島の丘陵地と低地の熱帯雨林にのみ生息しています。このうち、ワイゲオ島でアカミノフウチョウを観察する機会がありました。ワイゲオ島は世界でもトップクラスのダイビング・デスティネーション、”ラジャアンパット諸島”の島です。

ハイドから撮影したアカミノフウチョウの動画です。鳴き声が美しく、口の中は薄黄緑色!

自分の「ディスプレイ・コート」の葉っぱをお掃除する様子は愛らしい限りです。

訪れた保護林では付近に4か所のアカミノフウチョウが現れるディスプレイ・コートがあるとのことでした。が、熱帯雨林の道を歩くのは大変なので一番近いハイドを訪問しました。夜明け~朝9時くらいがコアタイムです。ハイドの座席に座り、出現を待ちます。木陰でオスが鳴きはじめました。

アカミノフウチョウは体長が16cmほどで、飾り尾羽を含めて21cmほどの大きさです。オスは赤と黒の羽色で、首は黄色の羽毛、青紫の足と銀紫の尾羽。頭は鮮やかな水色の皮膚に黒い羽毛が模様を作っています。胸はビロードのような光沢をもつ緑色です。

アカミノフウチョウと近縁種のキンミノフウチョウのオスは縄張りを持ち、熱帯林の一画に「ディスプレイ・コート」を作ります(このコートは別のオスが使うこともあり、長期間メンテナンスされるそうです)。コートの中央に垂直の枝があり、この枝にとまってディスプレイを行い、メスにアピールします。研究者のレポートによると、このディスプレイをメスの視点から見ると、オスは鮮やかな緑の円盤に見え、口の中の薄黄緑と相まって驚異的な色表現が行われているのだそうです。

こちらがアカミノフウチョウのメスです。他のフウチョウの仲間と同様にオスと比べると断然地味。頭は同じように青い皮膚がむき出しになっています。

アカミノフウチョウは1羽のオスが複数のメスと交尾をし、メスは一羽で子育てをします。なので、DNAをもらうだけの相手選びは慎重に行われるようです。こう見えて、オスはひたすら選ばれるためにがんばらばくてはなりません。

ハイドでの観察は、ディスプレイ・コートのまわりでオスが鳴きはじめ、そして次にコートのお掃除。落ちている葉っぱをくちばしで取り除きます。そしてメスが現れます・・・。

オスの華麗なディスプレイを「メスの視点」で見るのは至難の業ですが、森にアカミノフウチョウのオスが姿を現し、声を聞いただけでもここまでやってきた苦労が報われる出会いでした。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Nov 2023, Waigeo Island, Raja Ampat, Southwest Papua, Indonesia

※ワイゲオ島を含むラジャアンパット諸島とドベイラ半島は2022年12月に「西パプア州」から分立して「南西パプア州」となりました。

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ザトウクジラのバブルネットフィーディング in アラスカ

久しぶりにアラスカのバブルネットフィーディングのツアーへ。温暖化で海の様子がすっかり変わってしまい、クジラの採餌海域を追いかけるのが本当に難しくなってきた今日この頃。アラスカも同じで、以前バブルネットフィーディングがさかんに行われていた海域はひっそりとし釣り人もおらず、別の場所へ移動していました。

ジュノーを出航して3日目、ようやく小さなニシンを銜えて巣へと向かう海鳥を見つけ、その海域が近いことを感じました。そして4日目・5日目は「クジラ祭り」、場所をあててくれ、こちらからは接近しすぎない良い距離感でバブルネットフィーディングを観察させてくれた船長に感謝です。

アラスカの山並みを背景に複数のブローがあがりました。この数のブローを見ると、バブルネットフィーディングの期待があがります。朝9時30分ごろ、クジラが集まっているように見えました。

そしてバブルネットフィーディング!船上でシャッター音が響き渡ります。

バブルネット・フィーディング Bubble net feeding
数頭から数十頭の群れで、魚の群れを円を描くようにまわりながら泡を吐き出して一ヶ所に追い込みます。鰭を使いながら魚を取り囲み、魚群の下からは一匹のザトウクジラが大きな声を発し、パニックになった魚を上へと追い込みます。追いこみをする群れの上では別のザトウクジラが泡を出して旋回し、バブルネットを作り、魚の群れをこの中に閉じ込め、最後には全てのザトウクジラが大きな口をあけて海面へと飛び出し、一気に捕食します。

船の上から泡が上がってくるのが見えました、船の下でザトウクジラが泡をだしてバブルネットを作ってます!!この時は、本当に至近距離に上がってくるのではないかと興奮して待ちましたが、意外と遠い場所でバブルネットフィーディングがありました。魚の動きだけでなく潮の流れもあるので距離はわからないものですね。

Photography by Seiji TACHI

魚が上がってきました!

Photography by Kiyoshi AOKI

バブルネットフィーディングは本当に突然上がってきます。周りの鳥の動きも見ながらどのあたりから起こりそうかあたりをキョロキョロして待ちます。この写真は本当に上がってきたばかりの写真で海面に小さなニシンと思われる魚がいます。

Photography by Seiji TACHI

魚もザトウクジラも必死。

Photography by Seiji TACHI

Photography by Morihiko HAYAKAWA

この日の午前中、午後ともにクジラのリーダーが良いのか、なかなかうまく統制がとれてバブルネットフィーディングが行われていました。毎回うまくいくのではなく、「え、いまの失敗?」みたいなことも何度もあります。そして、それが続くと参加クジラは嫌になるのか、群れを離れて行ったりしました。この時は同じ海域に2つのバブルネットフィーディングのを行うグループがあり、このグループ間を行き来しているクジラもいました。

▽▽船長がドローンで撮影をしてくれた動画から切り出した写真です。

Drone footage by Jonathan

船のそばでバブルネットフィーディング!左下の水面の動きは子供クジラです。母クジラがバブルネットフィーディングに参加中は、子クジラは近くでテイルスラップ(尾鰭びれバンバン)したりペックスラップ(胸鰭バンバン)して遊んでいます。この子クジラの場所も、バブルネットフィーディングの場所を探すバロメーターです。

Drone footage by Jonathan

これはとても至近距離でおこったバブルネットフィーディング。ドローンでとった動画から切り出した写真です。

クジラも近いと透けて見えますが、アラスカ・インサイドパッセージの海の透明度は良くありません。

Drone footage by Jonathan

バブルネットフィーディングが終わるとしばらくわちゃわちゃしていますが、ゆっくりとみんなで泳ぎ始めます。

Drone footage by Jonathan

魚をもとめて移動してきます。ブローに虹が🌈

Drone footage by Jonathan

そして合図があるのでしょう、一斉に潜り始めます。水中でのバブルネットフィーディングの始まりです。

Drone footage by Jonathan

空撮で見る、バブルネットフィーディング、バブル(泡)と魚とザトウクジラがが浮上してきます。

Drone footage by Jonathan

半分上がってきて、右上に円を描いているバブルネットが見えます。ザトウクジラが口を開けています。

Drone footage by Jonathan

口が閉まっていく状態のザトウクジラたち。

Drone footage by Jonathan

そして再び、魚を求めて移動です。何回も何回も繰り返し、時々新しいクジラが参加に来て、時々離団していって・・・。それにしてもかなりの重労働です。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Photography by Seiji TACHI, Kiyoshi AOKI, Morihiko HAYAKAWA

Drone footage by Jonathan

Observation: July 2023, Inside Passage – Alaska

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夏のアラスカ、インサイドパッセージで出会った生き物

7月の東南アラスカ・インサイドパッセージの船旅で出会った海に暮らすいきものをご紹介します。ザトウクジラの「バブルネットフィーディング」狙いのツアーで、日中はクジラを求めて航行し、夕食前に近くの島の湾に停泊するのですが、その停泊地のマダラウミスズメやラッコの数に驚きました。夏は日が長いので停泊地についてからもたっぷりと船のそばにやってくる生き物を観察することができました。

>>ザトウクジラのバブルネットフィーディング in アラスカの記事はこちら

マダラウミスズメ Marbled Murrelet :Photography by Morihiko HAYAKAWA

繁殖羽のマダラウミスズメ Marbled Murreletです。日中は距離があり撮影が難しいのですが、停泊地では船の比較的近くを浮いていたりしていました。千島列島やカムチャッカ半島のクルーズでは観察できたことがなく、この出会いはとてもうれしいものでした。

マダラウミスズメ Marbled Murrelet はオホーツク海~アリューシャン列島~アラスカで繁殖する小さなウミスズメ科の海鳥。繁殖羽は褐色がかりまさにまだら色にみえることから英名も和名も「まだら」です。

マダラウミスズメ Marbled Murrelet :Photography by Morihiko HAYAKAWA

非繁殖羽の マダラウミスズメ Marbled Murrelet。小さなニシンを銜えて飛んでいる姿は大変ステキでした。

マダラウミスズメ Marbled Murrelet 御一行様。多い時は何十羽も一緒に浮かんでいました。船が近づくとペアごとにどんどん飛んで行ってしまう感じです。

コバシウミスズメ Kittlitz’s Murrelet : Photography by Morihiko HAYAKAWA

コバシウミスズメ Kittlitz’s Murrelet の中間羽ではないかと思ってる個体です。コバシウミスズメはアリューシャン列島~アラスカで繁殖する小さなくちばしのウミスズメで、レアです。

ウミガラス Common Guillemot、日本では「オロロン鳥」と呼ばれ、天売島にのみ繁殖しその数およそ100羽ですが、北太平洋・北大西洋・北極海には広く分布し、今回はペアでいる姿をよく見ました。

そしてマダラウミスズメと同じような場所にいたのが、ラッコ Sea Otter。ラッコは3つのグループに分かれ、この地域で見られるのはアラスカ・アリューシャン列島の亜種ラッコです。日本では霧多布岬に数頭いるだけですが(日本のラッコは亜種チシマラッコ)各地の「湾」にたくさんいました。

シャチ Killer Whale : Photography by Seiji TACHI

今回の7泊8日の船旅ではシャチ Killer Whale は単独のオスを一度見ただけでした。イシイルカ Dall’s Porpoise Dolphinは何度もみましたが、とても活発ですばやく泳ぐので写真がちゃんと撮れませんでした。

ザトウクジラ Humpback Whaleは、あちこちで数個体が一緒にいるのを見ましたが、バブルネットフィーディングを行う群れはどこにでもいるわけではありません。バブルネットフィーディングの観察については別のブログにて。

海岸にはハクトウワシ Bold Eagleの姿が。成鳥より若鳥の割合の方が多いようです。

2羽のハクトウワシ。魚をうばいあっていました。

アカエリヒレアシシギ Red-necked Phalarope 、小さくて美しい海鳥です。海上を集団で移動したり、波の合間に浮いていました。北アメリカ大陸北部やユーラシア大陸北部で繁殖し、冬季になるとアフリカ大陸や南アメリカ大陸等で越冬する、移動距離のとても大きな海鳥です。

集団で飛ぶ姿がとても美しい、アカエリヒレアシシギ Red-necked Phalarope。

ステファンズ・パッセージ (Stephens Passage) のブラザー島 (The Brothers) のトドのホールアウト。ホールアウト”Haulout “は年中、いつでもトドが集まって休憩したりしている場所のことです。繁殖を行う場所は “Rookeries” と言い区別されています。

ホールアウトのトドたち。大きなオスはおらず、若い個体が集まっていました。濡れているからだと乾いている体で色がだいぶ異なりますね!

ホルカム湾 (Holkham Bay) では氷塊の浮かぶ海にアラナミキンクロ Surf Scoter がたくさんいました。

アラナミキンクロ Surf Scoter : Photography by Morihiko HAYAKAWA

アラナミキンクロ Surf Scoterのオス。

近い海域の岩場です。ウミバト Pigeon Guillemot のペアが何組も!

クロミヤコドリ Black Oystercatcher、北米大陸の太平洋岸、アリューシャン列島だけで見られるミヤコドリの仲間です。

チシマシギ Rock Sandpiper、非繁殖羽の個体です。チュコトカ半島、アラスカ西部、アリューシャン列島で繁殖し、冬は北アメリカ西海岸、千島列島に渡り越冬します。

チシマシギのいた同じ岩相にいた、ゼニガタアザラシ Harbor Seal。体の色には暗色型と明色型があり、「銭形」の模様はカモフラージュになり天敵に狙われにくくなる効果があるようです。

同じ岩礁の大きめの島にはハクトウワシが巣をつくっていました。ハクトウワシは、鳥類の中で最大級の巣をつくることで知られています。

ツアーの最終日に見た生き物は、ヒグマ Brown Bear。まだサケの遡上には少し早く、小川ではなく草地をうろうろしていました。

ヒグマ以外に海岸に現れたのはミュールジカ。アラスカからカナダのブリティッシュコロンビアにかけての海岸の森に暮らすものは Sitka Deerと呼ばれる亜種ミュールジカです。今回は湾の航行中に何回か見かけました。

その他、ワタリガラス Common Raven、ヒメコバシガラス Northwestern Crow、ミミヒメウ Double-crested cormorant、ゴマフスズメ Fox Sparrowを見ました。

ザトウクジラのバブルネットフィーディングがメインのツアーだったため、最初は海鳥の観察に時間が取れませんでしたが、アラスカの海に生きる哺乳類・野鳥を満喫した小型チャーター船による素敵な船旅でした。

船のダイニングにも海鳥、Alaskan BeerのIsland Ale。でもパフィンはこの海域にはいません!

 

Image & Text : Mariko SAWADA

Photo courtesy of Morihiko HAYAKAWA

Observation: July 2023, Inside Passage, Alaska, USA

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天売島2023・ウミガラス観察近況

オロロン鳥ことウミガラス Common guillemot の日本で唯一の繁殖地となっている天売島では、今年もウミガラスが餌を巣に持ち帰る姿が確認されました。餌を持ち帰るということは、ヒナが順調に生まれているということです、非常にうれしいですね!初めて確認をしたのは7月8日になりますので、ウミガラスの繁殖時期は例年通りのようです。

また、今年は繁殖地になっている洞窟では、デコイと本物のウミガラスを合わせて非常に窮屈になっており、まるで東京の満員電車のようです。

その為か、今年は7月に入ってから繁殖地の洞窟とは別に赤岩本体にも止まっている個体が頻繁に確認されています。

赤岩では、ヒメウ Pelagic cormorant も繁殖しており、隣の窪みに沢山集まっていました。この場所は陸上からは確認できない場所にあるため観察ができるのは、海鳥観察用の船の上からだけになります。

ウミガラスが集団で飛んでいる姿や、50羽ほどで海に浮いている姿も確認できていますのでウミガラスの観察は良好です。

群れで飛ぶウミガラス

群れで浮かぶウミガラス

一時は13羽まで減ってしまったウミガラスですが、個体数は順調に増えています。ただ、今年も繁殖場所は1か所のみと、繁殖場所の増加は確認されておりません。1か所だけだと天敵が現れるなど何かあった際に個体数が激減してしまうことも懸念されますので、次は繁殖場所が増えていってくれることを祈ります。

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : May-Jul 2023, Teuri Island, Hokkaido

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天売島で人気のウミスズメ科の鳥3種類(ケイマフリ、ウミガラス、ウトウ)共通の特徴

天売島を訪れるバーダーの間で人気があるウミスズメ科の鳥たち3種類、ケイマフリ(Spectacled guillemot)、ウミガラス(Common guillemot)、ウトウ(Rhinoceros Auklet)の共通の特徴をご紹介します!

 

①魚は咥えたまま運びます

天売島では、80万羽生息するウトウが一斉に夕方帰巣する様子を観察するナイトツアーがシーズン中(4月ごろ~7月いっぱいくらいまで)が毎夕行われています。観察のメインとなるのはヒナに与えるために大きな魚を咥えてくる様子です。これは、ウミスズメ科に共通する特徴で、水の中で泳ぎながら獲物を飲み込むことのできる彼らは一度飲み込んだ獲物を吐き出してヒナに与えることが出来ません。そのため、大きな餌を咥えたまま飛び、巣まで持って帰ってきます。

魚を銜えて飛ぶウミガラス。

中でもウトウはヒナに餌を与えるタイミングが夕方の一斉に帰巣をする1日1回のみのため、銜えてくる魚の数がとても多いのです!

 

②羽が短く、飛び立つには助走が必要です

ウミスズメ科の鳥たちは海での潜水の際、水中でも羽ばたくようにして泳ぎます。その為、水中で抵抗にならないよう同じ大きさの他の鳥たちに比べて羽が短く、小さくなっています。

ケイマフリの羽。

ウトウの羽の大きさと、天敵・ウミネコの羽の大きさを比べると一目瞭然です。

このため翔能力も高くなく、空中では羽ばたく回数が同じ大きさの鳥に比べて非常に多いのが特徴です。また、海に浮いている状態から大空へ飛び立つ為には勢いをつけるため助走が必要です。

中でも助走の際に赤い足の輝くケイマフリの姿は、非常に美しいです。目の前で、ケイマフリの飛び立ちを観察できるのは海鳥観察用の小型ボート「ケイマフリ号」の早朝クルーズだけです。天売島にいらっしゃった際はぜひこの美しさを体感してください!

「ケイマフリ号」から海鳥を至近距離で撮影。「ケイマフリ号」は海鳥撮影に最適のボートです。

”天売ブルー”の海に浮かぶケイマフリ号。

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : May-Jul 2023, Teuri Islaand, Hokkaido

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海鳥の聖域・天売島で繁殖する海鳥たち(北海道)

2023年の初夏を天売島で過ごした姫野より、まさに「海鳥の聖域」と呼ぶにふさわしい天売島で繁殖する海鳥たちを紹介いたします。

ウミガラス(オロロン鳥)英名:Common murre, Common guillemot

足が体の後方にあるためペンギンのような見た目が特徴的です。日本国内では天売島の赤岩近くにある崖の洞窟1か所のみで繁殖します。繁殖場所の洞窟を観察できるのは海上からのみになりますが、赤岩展望台などから海上に浮かぶ姿も確認できることもあります。2002年には13羽まで数を減らしましたが、今では100羽を超え、数は増加傾向です♪♪

ウミガラス

ウミガラス

 

ケイマフリ 英名:Spectacled guillemot

赤い足と赤い口の中がとってもキュートなケイマフリは、天売島南西~北側にかけて広がる崖の隙間で繁殖します。水面を走るように助走をつけて飛び立つ瞬間は、天売ブルーと呼ばれる海の色とケイマフリの真っ赤な足が最も美しく輝く瞬間の一つです。早朝の海鳥観察用小型ボートのケイマフリ号では、すぐ目の前で観察できます。

赤い足で海面を蹴って助走するケイマフリ

赤岩展望台より

 

ウトウ 英名:Rhinoceros auklet

英名のrhinocerosは、サイを意味しその名の通り天売島にやってくる4月~7月の繁殖期の時期にのみサイの角のような突起物が現れます。天売島では、現在80万~100万羽ほど繁殖をしているといわれており、夕方日暮れと共に一斉に帰巣する姿は圧巻です。鳥の仲間では珍しく、陸上に穴を掘って巣を作るため、帰巣の際には比較的近くで観察できるのも魅力の一つです。

夕日の中、帰巣するウトウ

雛に魚を運ぶウトウ

 

ウミスズメ 英名:Ancient murrelet

天売島では、毎年5月下旬から6月上旬にかけて海鳥観察用小型ボートのケイマフリ号から姿が確認されています。多いときは10羽ほどの群れを形成し、動物プランクトンなどを捕食しています。潜水頻度も高く体も小さいため、波のうねりが高い日の観察は非常に難しいです。日本国内での繁殖は天売島のみと言われています。

ウミスズメ

ウミスズメ

 

ヒメウ 英名:Pelagic Cormorant

普段は外洋に生活するウの仲間で、天売島にやってくる繁殖期は全身の羽が非常にきれいな光沢を纏い、嘴の根元は赤く染まります。非常に細かい巣材を唾液や泥を使って固めながら、崖のちょっとしたでっぱりや窪みに巣を作ることが出来るため、哺乳類などの天敵は巣に近づくことが出来ません。

ヒメウの巣 モフモフの雛の姿も

巣材を運ぶヒメウ

 

ウミウ 英名:Japanese cormorant

日本全土に広く分布するウの仲間。繁殖期には、頭の周りが白くなります。ウの仲間は視界の悪くなる水中深くに潜って狩りを行うため、暗視時に見やすい青色の瞳をしています。水中で泳ぎやすいように体表の油分が少なく、泳いだ後は体を乾かすために岩場で羽を広げる姿が観察できます。

ウミウ

ウミウ

 

ウミネコ 英名:Black-tailed gull

黄色い足と黒い帯の入った尻尾が特徴のカモメの仲間。天売島では近年、急激に数を増やしており推定巣数は2年前(2021年)の約2倍にあたる5000個(2023年)ほどと推定されています。ウミネコの一大繁殖地になっている黒崎海岸は、フンで黒い岩が真っ白になったため「白崎海岸」と呼ばれるほどです。

ウミネコ

ウミネコ

 

オオセグロカモメ 英名:Slaty-backed gull

ピンク色の足と真っ白な尻尾が特徴の大型のカモメ。天売島では生物ピラミットの頂点に君臨する生き物で、体長38cmほどのウトウの成鳥をも丸飲みします。その他、ウミネコの雛、マムシ、ウニなども大好物で町中にウニの殻が落ちていたらこのオオセグロカモメが食べた残骸であることが多いです。

ウニを食べるオオセグロカモメ

このオオセグロカモメ、ウトウを丸飲みした直後で、口から翼があふれ、胸がウトウで膨れています!!

 

Photo & report  : Wataru HIMENO

Observation : May-Jul 2023, Teuri Island, Hokkaido, Japan

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