タグ別アーカイブ: 野鳥撮影

海鳥の聖域天売島が海鳥たちに選ばれたわけ

天売島は、周囲12㎞ほどの小さな島で2024年の人口は250人ほど。天売島は「海鳥の楽園」と言われるほどたくさんの海鳥たちが繁殖し、その数はおよそ100万羽とも言われます。日本国内にはこのような場所は存在せず、東に3kmほどの場所には、ほぼ同じ大きさの焼尻島がありますが、こちらには海鳥はほとんど繁殖していません。いったいなぜなのでしょうか。

天売島周辺の海域では、特に冬の間は大陸側からのシベリア高気圧の影響を受け、島の北西方面からの風を受け続けます。その風が何千万年もの年月をかけて北西方面ばかり風食した結果、島の一面に崖が出来上がったと言われています。

Google Mapより

赤線部が元の島のあった場所

Google Mapより

矢印は風の向き。風が直接当たる島の北西部に崖が出来ました。

崖というのは、人間を含む哺乳類などが最も苦手とする地形の一つですが、空を飛ぶことのできる鳥たちにとってはアクセスしやすい場所です。普段は海で生活する海鳥たちは、陸上での生活は得意でないものが多く、天敵がアクセスしずらい崖での繁殖を選ぶようになりました。

崖で繁殖するオオセグロカモメ

崖で繁殖するヒメウとウミネコ

また、天売島で一番数が多いウトウの繁殖場所は、崖の上にある土のある陸上です。ウトウたちは、天敵の多い陸上に巣を作るので天敵が見えづらくなる夕方の日没と同時に一斉に帰巣しますが、高い木が生えていると暗くなった際にはぶつかる可能性が高くなります。そのため、高い木の生えていないエリアに営巣します。天売島はその強い風のおかげで、高い木が生えておらずウトウにとっても非常に良い条件が整い、世界No1の80万羽もの繁殖が確認されています。

木の無い草原に飛び込むようにして帰巣するウトウ

このように海鳥にとって最高の条件が奇跡的に重なり、沢山の海鳥が繁殖する天売島が出来上がったと言われています。海鳥の繁殖シーズンには、崖の下から海鳥や地層なども観察できるボートツアーも開催しています。

 

Text & Photography : Wataru Himeno

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天売島の人気者、ケイマフリの魅力

2023年の夏を天売島で過ごした姫野からのレポートです ♪

天売島で不動の人気を誇る海鳥と言えば、ケイマフリです。もともと、アイヌの言葉で足の赤いを意味するケマフレという単語から、和名もケイマフリとなりました。その名の通り、足が赤いだけでなく、口の中も同じ赤色であるため、岩場で足を見せながら口を開けて求愛する姿を観察した方はその美しさに必ずというほど魅了されます!

天売島に生息する他のウミスズメ科の鳥に比べ飛び立ちも上手なため、水面から飛び立つ時は、水面を走るようにしながら助走をつけます。(そのほかの2種ウトウ、ウミガラスは、水面で羽ばたきながら半分泳ぐようにして助走をします)

その際に見られる、天売ブルーと呼ばれる海の色とケイマフリの赤い足の輝きは非常に美しく、これを見るためだけに天売島へいらっしゃる方も。

繁殖期後期の6月後半ごろからは餌をヒナに咥えて持ち帰る姿も観察できます。

イカナゴやギンポの仲間など、多様な餌を運ぶ姿も大変魅力的です。

ケイマフリの魅力に魅せられた天売島在住の写真家・寺沢孝毅さんはケイマフリという名前の日本酒を作られたり、ご自身の船にもケイマフリを描くほどです。

皆さんもぜひ、ケイマフリに会いに天売島にお越しください。

 

Image & text: Wataru HIMENO

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スカーレットアイビス / ショウジョウトキ Scarlet ibis (トリニダード・トバゴ)

トリニダード島の西岸にあるカロニ湿原にて観察したスカーレットアイビス(和名:ショウジョウトキ)の群れです。

カロニ湿原のスカーレットアイビスはベネズエラとの間を行き来していると考えられています。毎朝、餌をも求めてカロニ湿地を飛び立ったスカーレットアイビスはあちこちの湿地で採餌し、夕方になると群れをなしてカロニ湿原に戻ってきます。


夕方の帰巣の様子は圧巻の光景です。


巣のある木に順番に帰ってくると、赤い実がなる木のように見えます。

カロニ湿原はおよそ103.6平方キロメートルの湿地帯です(大きさは資料により異なっています)。
マングローブ林、沼地、干潟を含むこの湿地は海水と淡水の両方の生物多様性に富んだ湿地です。ラムサール条約にも登録されています。

観察に適した時期は11~3月いっぱい。年中観察はできますが、4月の半ばごろから9月半ばは繁殖のため見える個体数が少なくなります。

マングローブ林の中にはカニもいました!
スカーレットアイビスの赤色は、餌となるこういった甲殻類に由来します。

雛は黒~灰色でまったく赤くありません。上の写真は若鳥で灰色、茶色、白色が混ざりますが、摂取する赤色のもととなる甲殻類により、成長に伴い赤色をまします。通常、巣立ちの頃に赤色が現れ、2年でほぼ真っ赤になります。

1962年トリニダード&トバゴが独立したとき、スカーレットアイビスは「国鳥」に選ばれました。

スカーレットアイビスの生息するエリアまで、マングローブ林の間をボートで進んでいくのも楽しみの一つです。
道中に様々な動物が見られます。特に鳥類は100種以上も生息します。

小さく丸まったヒメアリクイPygmy anteater。世界最小のアリクイです。
木の一部のように同化しているので見つけるのが難しいです。

水辺には、スカーレットアイビスと共にベニイロフラミンゴ American Flamingoも見られます。

夜行性のために目が大きいヒロハシサギ Boat-billed Heron。求愛行動の際はクチバシを鳴らすこともあります。

オニクイナ、こちらもスカーレットアイビスと同じく甲殻類、魚、昆虫などを採食します。

この美しい帰巣風景がいつまでも続くことを願っています。

 

Photo & text : Mariko Sawada & Wataru Yamoto

Observation : Apr 2018 & Mar 2019 , Caroni Swamp , Trinidad and Tobago

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天売島2023・ウミガラス観察近況

オロロン鳥ことウミガラス Common guillemot の日本で唯一の繁殖地となっている天売島では、今年もウミガラスが餌を巣に持ち帰る姿が確認されました。餌を持ち帰るということは、ヒナが順調に生まれているということです、非常にうれしいですね!初めて確認をしたのは7月8日になりますので、ウミガラスの繁殖時期は例年通りのようです。

また、今年は繁殖地になっている洞窟では、デコイと本物のウミガラスを合わせて非常に窮屈になっており、まるで東京の満員電車のようです。

その為か、今年は7月に入ってから繁殖地の洞窟とは別に赤岩本体にも止まっている個体が頻繁に確認されています。

赤岩では、ヒメウ Pelagic cormorant も繁殖しており、隣の窪みに沢山集まっていました。この場所は陸上からは確認できない場所にあるため観察ができるのは、海鳥観察用の船の上からだけになります。

ウミガラスが集団で飛んでいる姿や、50羽ほどで海に浮いている姿も確認できていますのでウミガラスの観察は良好です。

群れで飛ぶウミガラス

群れで浮かぶウミガラス

一時は13羽まで減ってしまったウミガラスですが、個体数は順調に増えています。ただ、今年も繁殖場所は1か所のみと、繁殖場所の増加は確認されておりません。1か所だけだと天敵が現れるなど何かあった際に個体数が激減してしまうことも懸念されますので、次は繁殖場所が増えていってくれることを祈ります。

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : May-Jul 2023, Teuri Island, Hokkaido

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天売島で人気のウミスズメ科の鳥3種類(ケイマフリ、ウミガラス、ウトウ)共通の特徴

天売島を訪れるバーダーの間で人気があるウミスズメ科の鳥たち3種類、ケイマフリ(Spectacled guillemot)、ウミガラス(Common guillemot)、ウトウ(Rhinoceros Auklet)の共通の特徴をご紹介します!

 

①魚は咥えたまま運びます

天売島では、80万羽生息するウトウが一斉に夕方帰巣する様子を観察するナイトツアーがシーズン中(4月ごろ~7月いっぱいくらいまで)が毎夕行われています。観察のメインとなるのはヒナに与えるために大きな魚を咥えてくる様子です。これは、ウミスズメ科に共通する特徴で、水の中で泳ぎながら獲物を飲み込むことのできる彼らは一度飲み込んだ獲物を吐き出してヒナに与えることが出来ません。そのため、大きな餌を咥えたまま飛び、巣まで持って帰ってきます。

魚を銜えて飛ぶウミガラス。

中でもウトウはヒナに餌を与えるタイミングが夕方の一斉に帰巣をする1日1回のみのため、銜えてくる魚の数がとても多いのです!

 

②羽が短く、飛び立つには助走が必要です

ウミスズメ科の鳥たちは海での潜水の際、水中でも羽ばたくようにして泳ぎます。その為、水中で抵抗にならないよう同じ大きさの他の鳥たちに比べて羽が短く、小さくなっています。

ケイマフリの羽。

ウトウの羽の大きさと、天敵・ウミネコの羽の大きさを比べると一目瞭然です。

このため翔能力も高くなく、空中では羽ばたく回数が同じ大きさの鳥に比べて非常に多いのが特徴です。また、海に浮いている状態から大空へ飛び立つ為には勢いをつけるため助走が必要です。

中でも助走の際に赤い足の輝くケイマフリの姿は、非常に美しいです。目の前で、ケイマフリの飛び立ちを観察できるのは海鳥観察用の小型ボート「ケイマフリ号」の早朝クルーズだけです。天売島にいらっしゃった際はぜひこの美しさを体感してください!

「ケイマフリ号」から海鳥を至近距離で撮影。「ケイマフリ号」は海鳥撮影に最適のボートです。

”天売ブルー”の海に浮かぶケイマフリ号。

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : May-Jul 2023, Teuri Islaand, Hokkaido

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スリランカコサイチョウの子育て Sri Lanka Grey Hornbill

スリランの固有種、スリランカコサイチョウ Sri Lanka Grey Hornbill。「サイチョウ(サイのような角を持っている鳥)」なのに、その一番の特徴となる上嘴のふくらみ(CASQUEカスク)がない、45cmくらいの小型のサイチョウです。スリランカのサイチョウは、この固有種のスリランカコサイチョウとカササギサイチョウ  Malabar pied-hornbillの2種のみです。

見た目はオスもメスも同じですが、オスは薄い黄色のくちばし、メスは薄い黄色に黒いパッチのあるくちばしをしています。

スリランカコサイチョウも、他のサイチョウと同様の独特な子育てをします。

繁殖期になると巣となる木の空洞を探し、メスが中に入ると糞や泥などで穴の入り口ふさいで小さくし、オスのくちばしが入る程度の大きさにします。メスはこの隔絶された穴の中で2~3個の卵を産み、抱卵し、雛の世話をし、巣立ちの1週間くらい前までの期間を過ごすのです。この間に羽、尾羽の換羽もおこります。

オスは頻繁に巣の中にいるメスに餌を運びます。その様子を撮影した動画です。オスが赤い木の実1つを銜えてやってきてメスに与え、そのあと7つの木の実を吐き戻してメスに与えています。

Sri Lanka Grey Hornbill スリランカコサイチョウ

この巣穴では2月下旬にオスが巣穴に通っているのを観察し、4月半ばもオスが通っていました。資料によると、一般的にスリランカコサイチョウの繁殖期は2~6月で、5~6月に巣立ちが観察されるそうです。スリランカコサイチョウは国のドライゾーンにもウェットゾーンにも広く分布し、雨の量や実のなる季節・場所により繁殖期は少し異なるそうです。

雛の巣立ちの一週間ほど前にメスは穴を壊して出てきます。その時には換羽後のきれいな姿で出てくると言います。そしてオスとメスの両方で雛に餌を運び、雛の巣立ちの時を迎えます。研究者の観察記録によると、メスが巣に入ってから雛の巣立ちまで104日。メスは95日以上を暗く小さな木の穴で過ごしたのです!

この写真は2月下旬に撮影。オスが緑色のトカゲ、Green Garden Lizard (Calotes calotes) を運んできました。

メスがじたばたするトカゲを呑み込んでいきました。↑↑ トカゲの尻尾が穴に吸い込まれていく様子です。オスは木の実やトカゲ、ヤモリ、虫などをメスに運びます。

観察場所の様子。この巣のあった木は他にも3か所の樹洞があり、固有種のクリセスズメフクロウ Chestnut-backed Owletも同時期に巣をつくっていました。距離を置いて、静かに見守りましょう。

午前はとくに忙しく、巣穴にせっせと餌を運ぶオス。繁殖期以外ではペアか、家族の小集団で見かけることが多いスリランカコサイチョウ。メスと雛がでてくるのが、待ち遠しいことでしょう。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Feb-Apr 2023. Sinharaja Forest, Sri Lanka

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繁殖羽のヘラサギ・夏のインドで探鳥!バラトプール編

繁殖羽のヘラサギを見たかったので、バラトプールに行ってきました。とても素敵なヘラサギのディスプレイの写真を見たことがあり、いつかそんな姿が見れたらいいなと思っていました。

バラトプールは世界遺産でもあるケオラデオ国立公園 Keoladeo National Parkがあり、この国立公園は他の国立公園と違い、閉鎖期間がほぼなく夏でも入場可能です。が、ヘラサギの繁殖地は公園内ではなく、村の周りの池にありました。

訪れた7月下旬はちょうど求愛の季節でした。ペアの仲良い姿。

ヘラサギ Eurasian Sponnbill はユーラシア大陸とインドで繁殖し、アフリカやアジアへの渡りを行う鳥ですが、インドではインド西~南部では留鳥として観察されます。このバラトプルも、ケオラデオ国立公園や周辺の水場でヘラサギを一年を通じて観察することができます。

冠羽をはでに開いた繁殖羽のヘラサギ。

冠羽が・・・。

この池ではヘラサギ以外の水鳥も繁殖していました。クロトキ Black-headed Ibis は、ヘラサギと同様にインド西~南部で留鳥として観察されます。この時期、すでに雛が誕生していました。

アオサギ Grey Heron も繁殖していました。この季節のアオサギの美しいこと!

雛の姿が見えました!

チュウサギ Internediate Egret のペア、繁殖期の美しい色。

ゴイサギ Black-crowned Night Heron のペア。足が赤くキレイ。

アジアレンカク Bronze-winged jacana の幼鳥。

アジアレンカク Bronze-winged jacana の雛の姿も。

人との距離がとても近い、村の池で繁殖する水鳥たち。この距離の近さは「インドならでは」です。

<観察できた鳥(07:00-09:00am)> ヘラサギ (Eurasian Spoonbill)、クロトキ (Black-headed Ibis)、ヨシゴイ (YellowBittern)、ゴイサギ (Black-crowned Night Heron)、アオサギ (Grey Heron)、ムラサキサギ (Purple Heron)、チュウサギ (Intermediate Egret)、ダイサギ (Great Egret)、コブガモ (Knob-billed Duck)、アジアコビトウ (Little Cormorant)、セイケイ (Purple Swamphen)、アジアレンカク (Bronze-winged Jacana)、シリアカヒヨドリ (Red-vented Bulbul)

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : End July 2022, Bharatpur, Rajasthan, India

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