カテゴリー別アーカイブ: – 北海道:天売島

海鳥の春 – 4月の天売島ワイルドライフ 2025

昨年に引き続き、春の天売島ワイルドライフのレポートです。観光客の姿がほとんどない静かな4月の天売島ですが、冬が終わり芽吹く緑、そして繁殖期を迎えた海鳥は大変活発な動きを見せ、生き物好きにはなかなか良い季節なのです。

西遊旅行の北海道2件目の宿となる「天売マフレ」開業準備のため4月12日~18日まで滞在し、その間に観察したワイルドライフの記録です。赤岩展望台からハクチョウの北帰行を見つけてくれたガイドの今堀魁人さん、天気の合間を見てケイマフリ号を朝と夕に操船してくださった寺沢孝毅さんに感謝です。小型ボートから見る海鳥の躍動はまさにスペクタクルでした。

①ウミネコ営巣地・黒崎海岸

今年さらに営巣地が拡大の様相です。4月の半ばはウミネコたちがそれぞれの営巣場所を主張しとてもにぎやか。疑似交尾?交尾?の姿も見られました。ウミネコは日本では普通種ですが、生息地が極東アジアに限られるため海外のバーダーにとっては珍しい海鳥だそうです。特に黄色い目のまわりにある赤いアイリングが際立ち、鋭い目に見えます。

繁殖地のウミネコ

冬を越したクジャクチョウ、春を感じさせる光景です

②夕方~日没後の赤岩展望台

晴れた日にはサンセット~ウトウの帰巣と2時間以上たっぷり楽しめる場所が赤岩展望台。海に沈む太陽、夕日の利尻富士を望み、そしてウトウの帰巣を待ちます。その時、聞きなれない鳥の声が。ガイドの今堀さんが「コハクチョウ」と。なんと北帰行で飛んでいるコハクチョウの声だったのです。天売島でハクチョウの北帰行を見られるとは思ってもいませんでした。
暗くなり、ウトウが戻ってきました。この時期は抱卵中で雛がかえった後のような勢いのある帰巣風景ではないですが、イタドリに覆われていない巣穴が見えるウトウ繁殖地では、戻ってきたウトウがまる見え。また雛に魚も運んでいないのですぐに巣穴に戻る必要もなく、ウトウの写真を撮りやすいのがこの季節です。
*夜8時30分をすぎると道路がウトウだらけになります、ウトウの交通事故を防ぐためにこの時間までには繁殖地を出ましょう。

今堀魁人さん撮影、夕日の赤岩展望台から見たハクチョウの北帰行

着陸してもすぐに巣穴に入らないウトウ

動かないな、と思っていたら一気に巣に入っていきました。

満月に照らされた海面を背景に、次々に戻ってくるウトウ

③朝の赤岩展望台

眼下の「天売ブルー」の海にはウミガラス、ケイマフリの姿が。ガイドの今堀さんの話ではもう間もなく、岩場で求愛するケイマフリの姿が見られるようになるそうです。

利尻富士-天売島から見る利尻富士は格別

海上のウミガラスとケイマフリ

ゴマフアザラシの姿も

④夕方のケイマフリ号

晴れて波風が穏やかな夕方にのみ実現するこのクルーズ。4月17日の夕方のクルーズで見た光景は「ここは千島列島か」と思うほどの豊かな海、海鳥の躍動。プランクトンが豊かで、そこで潜水するウトウ、上空に舞うウミネコ。列をなして飛ぶウトウの数を見て天売島の豊かな自然に感謝。

洋上を群れで飛ぶウトウ

日が落ちてもまだ海へ飛んでいきます

ウミネコも洋上に待機。ウトウ、ウミネコが舞う天売島の夕方の海

⑤朝のケイマフリ号

赤岩付近の岩場ではケイマフリの声が響きます。そしてこの日のスペシャルは利尻富士背景のケイマフリたち。一緒に撮れるチャンスを待ちましたがそんなに簡単には行かないですね。
ちょうど港に戻るとき、寺沢さんが「あの鳥はなんだ」と・・・ハクチョウの北帰行でした。利尻富士を越えサハリン方面へと飛んでいくハクチョウを見送りました。

ウミガラス  繁殖地に設置されたデコイの中から飛び出してきました

赤岩周辺の岩礁のゴマフアザラシ

シノリガモ 4月はまだ天売島にたくさんいます

愛らしいケイマフリの姿

洋上に集まるケイマフリ

利尻富士とケイマフリ

今堀魁人さん撮影、天売の海から見る利尻富士とハクチョウの北帰行、夢のような写真です!

今堀魁人さん撮影、ハクチョウの北帰行

昨年は4月15日に「群来(くき)」が天売島で起こり、今回も滞在中に「群来(くき)ったらいいね」と話していましたが、それはかないませんでした。が、4月12日と18日の2回、ハクチョウの北帰行を見れたことは、とても嬉しいものでした。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA, Photo of “Swans returning north” taken by Kaito Imahori

Observation : April 2025, Teuri Island 天売島

★ TEURI ISLAND. ☜天売島のHPを公開しています!

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

春の天売島のウトウ – Rhinoceros Auklet on Teuri Island in spring

「ウトウの帰巣」を見に6月に天売島に来られる方が多いのですが、繁殖は3月には始まっています。その頃はまだ雪があり訪問するのはむつかしいのですが、4月に訪問した「ウトウ繁殖地」の様子をご紹介します。

>>春の天売島・ワイルドライフと70年ぶりの郡来(くき)

4月下旬のウトウの繁殖地はイタドリが芽吹いたばかりでウトウの巣が見える状態でした。そのため、ウトウの帰巣が始まると着地して巣穴に入るまでの様子を観察することができます。この時期のウトウは抱卵中のため夜の帰巣は親鳥の「交代」のためです。海に出ていた片方の親鳥が暗闇に帰ってきて、それまで1日中卵を抱いていたもう片方の親鳥は海へと出かけます。そのため育雛時期に比べると見られるウトウの数自体は少ないのですが、巣穴に出入りする様子をゆっくり見られるのはイタドリが巣穴を覆い隠す前のこの時期だけなのです。しかもイタドリは芽吹き始めると日に日に成長してあっという間に巣を覆い隠します。

赤岩展望台にて夕景を見ながら帰巣を待ちます。

ウトウの営巣地です。イタドリが一定の高さで切られたように見えますが、この高さはその冬の積雪の高さを示します。雪に埋まっていた部分だけが残り、雪から出た部分は厳しい風でなくなってしまいました。おかげでウトウの巣穴もよく見える状態です。

満月の夜でした。空気が澄んだ天売島で見る満月は大変美しいものです。

月明りで海に「光の道」ができました。

ウトウたちの帰巣が始まりました ♪♪

着地してしばらくこちらの様子を見ているのか、すぐに巣穴に向かわないウトウ。雛が生まれると、餌を銜えて戻ってきた親鳥は一目散に巣穴に入っていくのでゆっくり観察する余裕はありません。雛もお腹を空かしてまっているし、他の餌を採れなかったウトウに横取りされたりするからです。雛の誕生していないこの時期はゆっくり観察するチャンスです。

巣穴が道路の観察場所に近い個体はこちらの様子をみながら近づいてきます。私たちの足元の道路の下に巣があるようで途中から猛スピードで巣穴に走りこんでいきました。

巣穴にすぐには入らず、ゆっくりとしているウトウも。

二度目の天売島訪問の方には、この季節もお勧めです。さらに運が良ければ「群来(ニシンの産卵)」や渡り鳥たちとの遭遇もある季節です。4月の天売島の様子はこちらのブログをご覧ください>>>春の天売島・ワイルドライフと70年ぶりの郡来(くき)

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : April 2024, Teuri Island, Hokkaido

★ TEURI ISLAND. ☜天売島のHPを公開しています!

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

春の天売島のワイルドライフと70年ぶりの群来(くき)

2024年4月15日、北海道の天売島では70年ぶりとなる「群来(くき)」が観察されました。島の人は大喜びで撮影し、そしてニシンを収穫しました。島の宿ではニシンの煮つけと数の子がふるまわれました。今、島にいる人の中にニシンが大漁に獲れた時代を知る人はいません。

春の天売島で観察したワイルドライフをご紹介します。羽幌港から天売島への航路ではオオハム(意外と多い)、ウミスズメ、そしてウトウ、ケイマフリを見ることができました。

天売島では、ウミガラス、ケイマフリ、ウトウ、ウミスズメ、ウミネコ、オオセグロカモメ、ウミウ、ヒメウの8種の海鳥が繁殖しています。4月、もうその営みは始まっています。黒崎海岸ではウミネコが繁殖し、そのエリアを拡大中。4月20日ごろは交尾(または疑似交尾)があちこちで行われていました。

交尾(または疑似交尾)するウミネコ

ウミネコの繁殖地が拡大傾向にある黒崎海岸

海鳥観察舎からウミウの繁殖地を見ると、もう雛に給餌していました。ウミウは繁殖が早い時期に始まる海鳥ですが、早くなってきている傾向にあるようです。断崖の上の斜面ではオオセグロカモメが繁殖し、交尾している様子も見られました。それにしてもこの付近もたくさんのウトウの営巣地があります。

断崖に営巣するウミウ。ほとんどの巣に雛がいました。

前浜漁港付近ではウミアイサの姿が。ウミアイサは冬鳥として天売島へ渡ってきます。彼らももうすぐ北へと渡って行きます。

ウミアイサのペア

そしてシノリガモ。天売島で一番目にするカモの仲間です。前浜漁港付近やロンババ浜でよく見かけました。シノリガモは年中天売島で見られるそうですが、断然冬の時期が観察しやすく、そして美しいです。

シノリガモ ロンババの浜にて

風が少し穏やかになった日の朝、島の写真家・ 寺沢孝毅さんの操船する小型ボート「ケイマフリ号」で海へ出ました。小型ボートから見たのは、まさに春の天売島の景色。

港を出てすぐに出会ったトド。北海道へは冬場に千島列島方面から回遊してきます。若いオスが1匹でいました。ニシンが訪れるようになった天売島、人だけでなく野生動物も集まります。豊かな海の象徴です。

トドもまもなく北上していきます

ボートから黒崎海岸のウミネコ繁殖地を海から眺め、赤岩方面へ。ウミガラス繁殖地ではウミガラスの姿は見られませんでしたが、付近の海上を4羽のウミガラスが飛んでいるのを見ました。

岩礁にはたくさんのゴマフアザラシたちがいました。乾燥してふわふわしています。

船に注目するゴマフアザラシ

鳴き交わす美しい声が洋上に響きます、ケイマフリの声です。海岸の岩場では求愛のしぐさが愛らしいペアの姿が。

求愛するケイマフリ

営巣する断崖近くの洋上のケイマフリの群れ

愛らしいケイマフリの赤い脚

最後に、西遊旅行の天売営業所(天売島ネイチャーライブ)のスタッフが4月15日に撮影した「群来(くき)」の様子です。

「群来」で白濁したロンババの浜

産卵は春に起こり、水深 1m 以下の浅い海でメスが卵を海藻に産み付け、オスが放精して受精させます。この放精によって海水が白濁する現象を群来(くき)と呼びます。

海藻に卵を産み付けるニシン

お世話になった萬谷旅館さんで出たニシン料理。新鮮なニシンは大変美味しいものでした。

ニシンの煮つけ

ニシンの卵、「数の子」

私自身、アラスカのシトカまでニシンの大産卵に集まるワイルドライフを求めて行き、帰ってきたばかりでした。アラスカでは“Herring Run”の名のもと、シトカの海に集まるザトウクジラ、コククジラ、ハクトウワシ、トドなど生き物と遭遇するワイルドライフツアーが大人気です。

日本の「群来」もいつかHokkaido’s Herring Runとして注目を集める日が来るのでしょうか。いやいや、その前に、まず毎年ニシンが産卵に来てくれる豊かな海を取り戻すことが大切です。来年もニシンが戻ってきてくれることを願います。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Photography of Herring spawning : Midori KUDO

Observation : April 2024, Teuri Island , Hokkaido

TEURI ISLAND. ☜天売島のHPを公開しています!

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

海鳥の聖域天売島が海鳥たちに選ばれたわけ

天売島は、周囲12㎞ほどの小さな島で2024年の人口は250人ほど。天売島は「海鳥の楽園」と言われるほどたくさんの海鳥たちが繁殖し、その数はおよそ100万羽とも言われます。日本国内にはこのような場所は存在せず、東に3kmほどの場所には、ほぼ同じ大きさの焼尻島がありますが、こちらには海鳥はほとんど繁殖していません。いったいなぜなのでしょうか。

天売島周辺の海域では、特に冬の間は大陸側からのシベリア高気圧の影響を受け、島の北西方面からの風を受け続けます。その風が何千万年もの年月をかけて北西方面ばかり風食した結果、島の一面に崖が出来上がったと言われています。

Google Mapより

赤線部が元の島のあった場所

Google Mapより

矢印は風の向き。風が直接当たる島の北西部に崖が出来ました。

崖というのは、人間を含む哺乳類などが最も苦手とする地形の一つですが、空を飛ぶことのできる鳥たちにとってはアクセスしやすい場所です。普段は海で生活する海鳥たちは、陸上での生活は得意でないものが多く、天敵がアクセスしずらい崖での繁殖を選ぶようになりました。

崖で繁殖するオオセグロカモメ

崖で繁殖するヒメウとウミネコ

また、天売島で一番数が多いウトウの繁殖場所は、崖の上にある土のある陸上です。ウトウたちは、天敵の多い陸上に巣を作るので天敵が見えづらくなる夕方の日没と同時に一斉に帰巣しますが、高い木が生えていると暗くなった際にはぶつかる可能性が高くなります。そのため、高い木の生えていないエリアに営巣します。天売島はその強い風のおかげで、高い木が生えておらずウトウにとっても非常に良い条件が整い、世界No1の80万羽もの繁殖が確認されています。

木の無い草原に飛び込むようにして帰巣するウトウ

このように海鳥にとって最高の条件が奇跡的に重なり、沢山の海鳥が繁殖する天売島が出来上がったと言われています。海鳥の繁殖シーズンには、崖の下から海鳥や地層なども観察できるボートツアーも開催しています。

 

Text & Photography : Wataru Himeno

★ Visit our web site of  TEURI ISLAND. ☜天売島のHPを公開しています!

Contact us to make arrangements for photographing seabirds on Teuri Island and Wildlife of Japan.

★Wildlife videos are also available on Youtube – we have the playlist as well.

天売島の人気者、ケイマフリの魅力

2023年の夏を天売島で過ごした姫野からのレポートです ♪

天売島で不動の人気を誇る海鳥と言えば、ケイマフリです。もともと、アイヌの言葉で足の赤いを意味するケマフレという単語から、和名もケイマフリとなりました。その名の通り、足が赤いだけでなく、口の中も同じ赤色であるため、岩場で足を見せながら口を開けて求愛する姿を観察した方はその美しさに必ずというほど魅了されます!

天売島に生息する他のウミスズメ科の鳥に比べ飛び立ちも上手なため、水面から飛び立つ時は、水面を走るようにしながら助走をつけます。(そのほかの2種ウトウ、ウミガラスは、水面で羽ばたきながら半分泳ぐようにして助走をします)

その際に見られる、天売ブルーと呼ばれる海の色とケイマフリの赤い足の輝きは非常に美しく、これを見るためだけに天売島へいらっしゃる方も。

繁殖期後期の6月後半ごろからは餌をヒナに咥えて持ち帰る姿も観察できます。

イカナゴやギンポの仲間など、多様な餌を運ぶ姿も大変魅力的です。

ケイマフリの魅力に魅せられた天売島在住の写真家・寺沢孝毅さんはケイマフリという名前の日本酒を作られたり、ご自身の船にもケイマフリを描くほどです。

皆さんもぜひ、ケイマフリに会いに天売島にお越しください。

 

Image & text: Wataru HIMENO

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

 

天売島(北海道)の夜の生き物 

2023年の夏を天売島で過ごした姫野のレポートです ♪

天売島は北緯44度に位置するため、春から夏にかけての日照時間が長く空が完全に暗くなるのは21時ごろです。朝も3時ごろには明るくなり始めるため、夜行性の生き物たちは短い夜を世話しなく生きています。

夜行性の生き物と言えばフクロウの仲間。2023年度は、トラフズク (Long-eared Owl) の繁殖が確認できました。

トラフズク (Long-eared Owl)

春先には、3羽のヒナを確認しましたが、7月の前半からは2羽しか確認できなくなってしまいました。自然の厳しさを実感です。

日本のキーウイ(Kiwi) こと ヤマシギ (Eurasian Woodcock) も天売島には生息しています。ニュージーランドに生息するキーウイ同様、夜行性で地表近くに生息するミミズなどを捕食しますが、ヤマシギは空を飛べますので生息範囲が広いのが特徴です。また、嘴に多数の穴が開いていて、神経が通っているため、地面に差し込んだ嘴で獲物の動きなども感知できるそうです。

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

また、暖かい日の夜は天売島に生息する唯一のヘビ、マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper) も活発になります。

マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper)

夜行性のヘビとして紹介されることも多いですが、天売島では春先などの肌寒い季節にはお昼の時間帯により活発に活動している印象を受けました。爬虫類でありながら、卵ではなく子供を直接産む卵胎生であるため、春先の一日の温度差の激しい天売島で効率的に繁殖し、この島で生息する唯一のヘビになったのではないかと思います。

マムシは、日本では最も有名な毒蛇で、「マムシ=危険」というイメージが根強く車などでも轢かないように運転する意識も、他の生き物に比べて低いためか、シーズン中には幾度となく車にひかれて亡くなったであろう個体を見かけました。

マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper)

天売島に生息する唯一の両生類、ニホンアマガエル (Japanese tree frog) も夜になると活動を始めます。

ニホンアマガエル (Japanese tree frog)

周囲12kmほどの小さな島であるため、安定した淡水の水場が少なく、常に水が必要な両生類の生息できる環境は非常に限られていますが、廃船にたまった雨水やわずかな湧き水の水たまりなど、海岸からほど近い場所にも関わらず数多くの個体が繁殖しています。

また夜の観察後には、きれいな星空が広がっていることも。晴れさえすれば、ほぼ確実に流れ星も確認できます。

夜の前浜港

天売にいらっしゃった際は、最後に夜空も見上げてみてください。

Image & Text: Wataru HIMENO
Observations at Teuri Island in Summer 2023

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

 

天売島2023・ウミガラス観察近況

オロロン鳥ことウミガラス Common guillemot の日本で唯一の繁殖地となっている天売島では、今年もウミガラスが餌を巣に持ち帰る姿が確認されました。餌を持ち帰るということは、ヒナが順調に生まれているということです、非常にうれしいですね!初めて確認をしたのは7月8日になりますので、ウミガラスの繁殖時期は例年通りのようです。

また、今年は繁殖地になっている洞窟では、デコイと本物のウミガラスを合わせて非常に窮屈になっており、まるで東京の満員電車のようです。

その為か、今年は7月に入ってから繁殖地の洞窟とは別に赤岩本体にも止まっている個体が頻繁に確認されています。

赤岩では、ヒメウ Pelagic cormorant も繁殖しており、隣の窪みに沢山集まっていました。この場所は陸上からは確認できない場所にあるため観察ができるのは、海鳥観察用の船の上からだけになります。

ウミガラスが集団で飛んでいる姿や、50羽ほどで海に浮いている姿も確認できていますのでウミガラスの観察は良好です。

群れで飛ぶウミガラス

群れで浮かぶウミガラス

一時は13羽まで減ってしまったウミガラスですが、個体数は順調に増えています。ただ、今年も繁殖場所は1か所のみと、繁殖場所の増加は確認されておりません。1か所だけだと天敵が現れるなど何かあった際に個体数が激減してしまうことも懸念されますので、次は繁殖場所が増えていってくれることを祈ります。

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : May-Jul 2023, Teuri Island, Hokkaido

★西遊旅行のバードウォッチングツアーはこちら!

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

天売島で人気のウミスズメ科の鳥3種類(ケイマフリ、ウミガラス、ウトウ)共通の特徴

天売島を訪れるバーダーの間で人気があるウミスズメ科の鳥たち3種類、ケイマフリ(Spectacled guillemot)、ウミガラス(Common guillemot)、ウトウ(Rhinoceros Auklet)の共通の特徴をご紹介します!

 

①魚は咥えたまま運びます

天売島では、80万羽生息するウトウが一斉に夕方帰巣する様子を観察するナイトツアーがシーズン中(4月ごろ~7月いっぱいくらいまで)が毎夕行われています。観察のメインとなるのはヒナに与えるために大きな魚を咥えてくる様子です。これは、ウミスズメ科に共通する特徴で、水の中で泳ぎながら獲物を飲み込むことのできる彼らは一度飲み込んだ獲物を吐き出してヒナに与えることが出来ません。そのため、大きな餌を咥えたまま飛び、巣まで持って帰ってきます。

魚を銜えて飛ぶウミガラス。

中でもウトウはヒナに餌を与えるタイミングが夕方の一斉に帰巣をする1日1回のみのため、銜えてくる魚の数がとても多いのです!

 

②羽が短く、飛び立つには助走が必要です

ウミスズメ科の鳥たちは海での潜水の際、水中でも羽ばたくようにして泳ぎます。その為、水中で抵抗にならないよう同じ大きさの他の鳥たちに比べて羽が短く、小さくなっています。

ケイマフリの羽。

ウトウの羽の大きさと、天敵・ウミネコの羽の大きさを比べると一目瞭然です。

このため翔能力も高くなく、空中では羽ばたく回数が同じ大きさの鳥に比べて非常に多いのが特徴です。また、海に浮いている状態から大空へ飛び立つ為には勢いをつけるため助走が必要です。

中でも助走の際に赤い足の輝くケイマフリの姿は、非常に美しいです。目の前で、ケイマフリの飛び立ちを観察できるのは海鳥観察用の小型ボート「ケイマフリ号」の早朝クルーズだけです。天売島にいらっしゃった際はぜひこの美しさを体感してください!

「ケイマフリ号」から海鳥を至近距離で撮影。「ケイマフリ号」は海鳥撮影に最適のボートです。

”天売ブルー”の海に浮かぶケイマフリ号。

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : May-Jul 2023, Teuri Islaand, Hokkaido

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

海鳥の聖域・天売島で繁殖する海鳥たち(北海道)

2023年の初夏を天売島で過ごした姫野より、まさに「海鳥の聖域」と呼ぶにふさわしい天売島で繁殖する海鳥たちを紹介いたします。

ウミガラス(オロロン鳥)英名:Common murre, Common guillemot

足が体の後方にあるためペンギンのような見た目が特徴的です。日本国内では天売島の赤岩近くにある崖の洞窟1か所のみで繁殖します。繁殖場所の洞窟を観察できるのは海上からのみになりますが、赤岩展望台などから海上に浮かぶ姿も確認できることもあります。2002年には13羽まで数を減らしましたが、今では100羽を超え、数は増加傾向です♪♪

ウミガラス

ウミガラス

 

ケイマフリ 英名:Spectacled guillemot

赤い足と赤い口の中がとってもキュートなケイマフリは、天売島南西~北側にかけて広がる崖の隙間で繁殖します。水面を走るように助走をつけて飛び立つ瞬間は、天売ブルーと呼ばれる海の色とケイマフリの真っ赤な足が最も美しく輝く瞬間の一つです。早朝の海鳥観察用小型ボートのケイマフリ号では、すぐ目の前で観察できます。

赤い足で海面を蹴って助走するケイマフリ

赤岩展望台より

 

ウトウ 英名:Rhinoceros auklet

英名のrhinocerosは、サイを意味しその名の通り天売島にやってくる4月~7月の繁殖期の時期にのみサイの角のような突起物が現れます。天売島では、現在80万~100万羽ほど繁殖をしているといわれており、夕方日暮れと共に一斉に帰巣する姿は圧巻です。鳥の仲間では珍しく、陸上に穴を掘って巣を作るため、帰巣の際には比較的近くで観察できるのも魅力の一つです。

夕日の中、帰巣するウトウ

雛に魚を運ぶウトウ

 

ウミスズメ 英名:Ancient murrelet

天売島では、毎年5月下旬から6月上旬にかけて海鳥観察用小型ボートのケイマフリ号から姿が確認されています。多いときは10羽ほどの群れを形成し、動物プランクトンなどを捕食しています。潜水頻度も高く体も小さいため、波のうねりが高い日の観察は非常に難しいです。日本国内での繁殖は天売島のみと言われています。

ウミスズメ

ウミスズメ

 

ヒメウ 英名:Pelagic Cormorant

普段は外洋に生活するウの仲間で、天売島にやってくる繁殖期は全身の羽が非常にきれいな光沢を纏い、嘴の根元は赤く染まります。非常に細かい巣材を唾液や泥を使って固めながら、崖のちょっとしたでっぱりや窪みに巣を作ることが出来るため、哺乳類などの天敵は巣に近づくことが出来ません。

ヒメウの巣 モフモフの雛の姿も

巣材を運ぶヒメウ

 

ウミウ 英名:Japanese cormorant

日本全土に広く分布するウの仲間。繁殖期には、頭の周りが白くなります。ウの仲間は視界の悪くなる水中深くに潜って狩りを行うため、暗視時に見やすい青色の瞳をしています。水中で泳ぎやすいように体表の油分が少なく、泳いだ後は体を乾かすために岩場で羽を広げる姿が観察できます。

ウミウ

ウミウ

 

ウミネコ 英名:Black-tailed gull

黄色い足と黒い帯の入った尻尾が特徴のカモメの仲間。天売島では近年、急激に数を増やしており推定巣数は2年前(2021年)の約2倍にあたる5000個(2023年)ほどと推定されています。ウミネコの一大繁殖地になっている黒崎海岸は、フンで黒い岩が真っ白になったため「白崎海岸」と呼ばれるほどです。

ウミネコ

ウミネコ

 

オオセグロカモメ 英名:Slaty-backed gull

ピンク色の足と真っ白な尻尾が特徴の大型のカモメ。天売島では生物ピラミットの頂点に君臨する生き物で、体長38cmほどのウトウの成鳥をも丸飲みします。その他、ウミネコの雛、マムシ、ウニなども大好物で町中にウニの殻が落ちていたらこのオオセグロカモメが食べた残骸であることが多いです。

ウニを食べるオオセグロカモメ

このオオセグロカモメ、ウトウを丸飲みした直後で、口から翼があふれ、胸がウトウで膨れています!!

 

Photo & report  : Wataru HIMENO

Observation : May-Jul 2023, Teuri Island, Hokkaido, Japan

★西遊旅行のバードウォッチングツア一覧はこちら!

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

★ Please visit our English Blog site “Wildlife of Japan”  (。・ω・。)ノ♡

天売島「海鳥塾」 海鳥のこと、環境のこと

天売島 海鳥塾  (2)

2021年の7月上旬、天売島の自然写真家・寺沢孝毅さんの案内で4日間の「天売島・海鳥塾」を実施しました。これまでも西遊旅行では天売島を目的とするツアーを行ってきましたが、4日間天売島のみに滞在し、海鳥のこと、環境・海洋ごみ問題、島の暮らしに触れる旅は初めての企画です。

4日間どうなるか心配なところもありましたが、お天気にも味方され、朝・夕のケイマフリ号からの海鳥観察、ウトウの帰巣の様子、フットパス・ウォーク、海岸清掃、漁船での釣り、島の海の幸炭火焼、寺沢さんの海鳥レクチャーと盛りだくさんでした。

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (7)

ケイマフリもたっぷり観察。 >ケイマフリの観察レポートはこちら

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (11)

オロロン鳥ことウミガラスも観察。今年は80羽を越えてるそうです。 >ウミガラス観察レポートはこちら

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (15)

ウトウもしっかり観察。今年の繁殖は、栄養価の高い魚が獲れず雛が育たなかったため危機的な状況となってしまいました。一羽でも多く巣立つことを祈るばかりです。

>ウトウの帰巣のレポートはこちら  >岩に乗るウトウのレポートはこちら

ウニ漁とウトウ 天売島 海鳥塾 (1)

この季節はムラサキウニ漁が行われています。風のない、ベタ凪の日はウニ漁船が朝6時30分に一斉に出漁します。ウトウ、ケイマフリとウニ漁船、天売島らしい風景です。

天売島 海鳥塾  (7)

これはウミネコの幼鳥を食べるオオセグロカモメです。ウミネコ繁殖地で観察していたとき、ウミネコがハシブトガラスに警戒して騒ぎ出したすきを狙ってオオセグロカモメが幼鳥を襲いました。つつかれて、やがて動かなる幼鳥。ここまで育ったのに・・・残念ですが、こうやってオオセグロカモメの命が繋がれていいます。小型の海鳥の繁殖地ではハシブトガラスやオオセグロカモメの捕食圧が気になりました。

天売島 海鳥塾  (1)

地元の漁師さんにお世話になり、水深15mほどの砂地でヒラメを狙いました。40分ほどで大きいヒラメ一匹とカレイを3匹を釣りましたが、このヒラメは5キロあり30人分のお刺身が取れます。

天売島 海鳥塾  (3)

すぐにうろこを取り、鰓を処理して締めます。取ります。スーパーの「ヒラメの刺身」しか知らない我々には、生息域から釣り上げて、締めて、解体して切り身になるまでの行程を学ぶことになりました。

天売島 海鳥塾  (4)

「天売島おらが島活性化会議」の協力も得て海岸清掃をしました。ネットや縄は岩の間に入り込んで取り出すのが大変です。次回はもっと準備して取り組もうと思いました。

天売島 海鳥塾

さえずるケイマフリ、ケイマフリが大好きな岩場にもゴミが。まずは、海鳥が繁殖する岩場のロープやネットを取り除きたいです。海に出たときに浮いているゴミも取りましたが、やはり細かくなったプラスチック<マイクロプラスチック>が浮遊していました。

天売島 海鳥塾  (2)

そして最後の夜は、「天売島おらが島活性化会議」による天売島の海の幸の炭火焼きを、「宇宙館」の庭でセッティングしてくださいました。採れたばかりの天売島のムラサキウニです。

天売島 海鳥塾  (1)

天売島の甘えびです。天売島の沖に日本海で有数の甘えびの漁場があります。お刺身と炭火、エビ汁でいただきました。

天売島 海鳥塾  (3)

いよいよ炭火焼です。天売島のホタテ貝、天売島の水だこの頭、ムラサキウニ。さらに焼尻島の「幻のめん羊サフォーク」の塩焼きとジンギスカンも加わり、天売島の食体験、すごすぎました。

天売島 海鳥塾  (4)

夕食後、島の宿・大一からの夕景を堪能。利尻富士が美しく見えました。

天売島 海鳥塾  (5)

そして天売港からの星天。

天売島 海鳥塾  (8)

たくさんの思い出と経験をいただき、天売島をあとにしました。

「宇宙館」と寺沢孝毅さん、「島の宿・大一」のみなさん、「天売島おらが島活性化会議」と島のみなさまに心より感謝です!!

 

Text : Mariko SAWADA

Photo : Mariko SAWADA, Wataru HIMENO

Observation : July 2021, Teuri Island, Hokkaido

Special Thanks : 自然写真家・寺沢孝毅さん