カテゴリー別アーカイブ: ■動物を観察した地域・国

ケツァール [カザリキヌバネドリ] Resplendent quetzal(コスタリカ)

コスタリカのサン・ヘラルド・デ・ドタにて幻の鳥「ケツァール」(カザリキヌバネドリ Resplendent Quetzal)の観察をしてきました。英名のResplendentは「まばゆく輝く」を意味し、世界一美しい鳥ケツァールにふさわしい名前です。

ケツァールは幻の鳥と呼ばれ、手塚治虫の漫画「火の鳥」のモデルともいわれます。

ケツァールはアステカ神話の「ケツァルコアトル」、マヤ神話の「ククルカン」として崇拝された羽毛の生えた蛇の神様としても知られます。マヤ文明では王族の羽飾りとしてケツァールの尾羽が使われていました。

現在でも中米のグアテマラでは、ケツァールは国鳥に指定されていて、通貨の単位も「ケツァル」となっています。

グアテマラの全ての紙幣にも描かれるケツァール(上は200ケツァレス)

キヌバネドリ科のケツァール属には、ケツァール(カザリキヌバネドリ)の他に、南米にいる以下の4種が含まれます。南米アンデス山中の「カンムリカザリキヌバネドリ」「キンガシラカザリキヌバネドリ」、ベネズエラ・コロンビアの海岸地帯に生息する「オジロカザリキヌバネドリ」、アマゾン側を中心に生息する「アカハシカザリキヌバネドリ」。

ケツァール(カザリキヌバネドリ)は中央アメリカ一帯、メキシコ南部からパナマの標高1,000m~3,000m程の熱帯雨林や雲霧林に生息しています。
今回観察したのはコスタリカのサン・ヘラルド・デ・ドタの雲霧林でした。
同じくコスタリカの中ではセロ・デ・ラ・ムエルテやモンテベルデ自然保護区などでも観察のチャンスがあります。

朝早くに宿を出発し、ケツァールがよく現れるというポイントへ。
しばらく待っていると早速ケツァールのメスがやってきました。

オスとメスで見た目が違うケツァール。
一般的にイメージするのは長い尾羽と、緑・赤・白が混じる派手な色のオスです。
メスは全体的に地味なカラーリングで、尾羽も短く、胸元の灰色が目立ちます。

その後、念願のオスのケツァールも姿を現してくれました。

しばらく観察した後、また別の場所に移動しました。ケツァールが大好きなリトルアボカドの木をたくさん植えているお宅へ。ケツァールが落としていった尾羽を見せてくれました。

リトルアボカドLittle Avocado は、アボカドの仲間(クスノキ科)でケツァールの大好物です。現地の言葉であるスペイン語ではアボカドを意味するアグアカテAguacateに、「小ささ」や「可愛さ」を表すイージョ illoをつけ、小さなアボカドを意味するアグアカティージョ Aguacatillo と呼ばれます。

大きさ3cmほどしかありませんが、ケツァールにとっては大きな実です。それを丸ごと飲み込みます。

私たちの食べるアボカドとは違い実の部分は非常に少ないので、ケツァール達はたくさんのリトルアボカドを食べる必要があります。

種ごと飲み込んだ後はこの澄ました表情。ただ実際には消化するのに時間がかかるので、しばらく動かなくなり、じっくりと観察&撮影するチャンスになります。
しばらくすると種だけを吐き出します。ケツァールに一度食べられた種は発芽しやすくなるので、種子散布も含めて相利共生の関係と言われています。

尾羽がひらひらと揺れる

それぞれ別方向に尾羽が動くことも

光の当たり具合で冠羽が金色に輝きます

体長は約36~40cm程ですがオスの長い飾り羽を含めると全長70cm~140cmとになり、キヌバネドリ科の最大種です。

またメスのケツァールにも出会えました。キヌバネドリの仲間であることがよくわかります。

ケツァールは檻で飼うと死んでしまうため、長年、飼育できない鳥だと考えられてきました。自由を奪われると死んでしまうので、自由を象徴する「自由の鳥」としても知られています。
ただ近年、この鳥が鉄分に弱いという発見があり、捕獲されて檻に入れられると水に含まれるわずかな鉄分を吸収するだけで死んでしまうことがわかってきたそうです。
今ではメキシコ・チアパス州のミゲル・アルバレス・デル・トロ動物園でケツァールの孵化と繁殖に成功したとのことです。

美しいケツァールたちが動物園ではなく自然の中で生きている姿を見られるのはとても幸せな時間でした。

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Jan 2023, San Gerardo de Dota, Costa Rica

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ハシビロコウ Shoebill(ウガンダ)

ビクトリア湖北岸のマバンバ湿地 Mabamba swamp にてハシビロコウの観察です。
ハシビロコウは、アフリカ大陸東部から中部の淡水の池や沼に生息していますが、湿地ならどこでも見られるというわけではなく、カミガヤツリ(パピルスpapyrus)と他の植生が混在した湿地を好みます。

今回観察したのは、ウガンダのエンテベ郊外にあるビクトリア湖北岸のマバンバ湿地で、世界的にもハシビロコウの生息地として有名な場所、ラムサール条約にも登録されている湿地帯です。

湿地帯の中では小回りの利く3人乗りの小さな船に分かれて、ハシビロコウを探しに行きます。

紫の花が咲くスイレンやカミガヤツリ(パピルス)の中をかき分けながら進んでいきます。

道中に見られたカミガヤツリとヒメヤマセミ Pied Kingfisher

水蓮の上を歩くアフリカレンカク African jacana

ハダダトキ Hadada Ibis

カミガヤツリにとまるカンムリカワセミ Malachite Kingfisher

事前にボートの船長さんがハシビロコウを見つけて目途をつけてくれていたようで、思ったより簡単に見つかりました。

「動かない鳥」として有名なだけあり、場所さえ分かっていれば見つけるのは難しくありません。飛び立ってしまっては困るのでエンジンを止めて手漕ぎで静かに近寄ります。

足から頭までの高さが1.2m。翼開長(翼を広げたときの幅)が2m以上もあります。
ハシビロコウの特徴は、英名でShoebillと呼ばれるような靴のような嘴。
クチバシにある模様が1羽1羽違うため、人間の指紋と同じようにハシビロコウの個体識別に役立ちます。
上のクチバシ先端の尖ったかぎ状の部分で魚やカエルなどを突き刺して捕らえます。

ハシビロコウの目(虹彩)は成長と共に色が変わります。
幼鳥の時は茶色で、成鳥になると黄色、年を取ってくると薄い水色。
今回出会ったハシビロコウは黄色なので若い個体であることが分かります。

このエリアにはハシビロコウの好物であるハイギョ(肺魚)が棲息しているエリア。
ハイギョは魚でエラもありますが、大人のハイギョは名前の通り「肺」を持っていて空気呼吸をします。
「動かない鳥」として有名なハシビロコウですが、動かない理由はこのハイギョが呼吸するために水面に上がってくるのをじっくりと待っているからとのこと。

今回観察できたのは10分ちょっとでしたが、その間だけでも4回も魚を捕まえようと水面に頭を突っ込む動きを見せてくれました。

魚を捕まえられたかは確認できませんでしたが、一度は激しく泥水が飛び散っていました。
水に顔を突っ込む瞬間にはいつも瞬膜を閉じています。
狩りの成功率は1日かけても1~3匹ほどで、失敗するとすぐに数百メートル離れた別の場所に移動することがあります。

この場所では捕まえられないと思ったのか、最後には飛び立っていってしまいました。動かない鳥として有名なハシビロコウのハンティングの光景まで見れて満足なサイティングとなりました。

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Feb 2024, Mabamba swamp, Uganda

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Herring Run ニシンの大産卵! 春のシトカ・サウンド

3月下旬,ニシンの群れが産卵のためにシトカ・サウンドにやってきます - 北海道で1955年ごろに姿を消し、アラスカでも1993年から獲れなくなったニシン。アラスカでは保護と漁業管理の結果、シトカ、トギアク、コディアックの海にニシンが戻ってくるようになりました。2024年は近年では最大の規模の産卵が起こったといわれています。これらの地域でニシンが戻ってきたものの、日本からの「数の子」の需要が減り、捕獲しても買い取り手がつかないなど、ニシン漁業が再び活気を取り戻したわけではありません。トギアクではニシン加工業が廃業されたため漁業自体が行われませんでした。そのほかの地域も許容された数を下回る漁でした。

シトカに戻ってきたニシンの恵みを享受したのは野生動物たちのようです。そしてその姿を追う、フォトグラファーたち。2024年3~4月、大産卵が起こった日のシトカ・サウンドで見た生き物の様子をご紹介します。

停泊地から見る早朝のシトカ富士ことエッジカム山

シトカはアラスカ、バラノフ島西岸の町で、その名前は先住民族のトリンギット族の言葉で「海のほとり」という意味の Shee At’ikaに由来します。シトカは1867年にロシアがアメリカにアラスカを売却するまでロシア領でした。そのため町の中にはロシア正教会がありますし地名にはロシア語のものがたくさんあります。

シトカ・サウンドのニシン漁

シトカではニシン漁や先住民による子持ちコンブの収穫は昔から行われていましたが、近代漁業が始まるとニシンは肥料として収穫されていました。1955年ごろ日本でニシンが獲れなくなったことからアラスカで「日本市場」向けのニシン、「数の子」の需要が高まりました。これまでの「魚を獲る漁業」から「魚卵のための漁業」に変わりました。「数の子」となる良質の魚卵を採るためには産卵直前のニシンを捕獲する必要があります。1959年にアラスカの一部地域でニシンの天然魚卵の商業捕獲が始まり、1962年に日本への最初の輸出が始まりました。シトカでは1964年に始まり、魚卵を採取する「数の子」とコンブに産卵させた魚卵「子持ちコンブ」が収穫されました。そそして乱獲の結果1993年にはニシンが獲れなくなり、ニシン漁は規制と管理下に置かれるようになりました。乱獲だけでなく、ニシンにとって重要な産卵場所である海藻類の損失も大きな原因ではないかと推測されています。

2024年は3月28日ごろからシトカ・サウンド内で大きな産卵が起こりました。湾の中でも場所により29日だったり、さらに遅れて4月2日だったりしました。

ニシンの産卵・放精で白濁した海岸付近

アラスカの海は透明度が悪く、また規模が大きいため日本で見られる「群来」ほどくっきりと白濁した海水の違いはわかりませんでした。が、明らかに海面は白濁しています。

ニシンの産卵・放精が起こったあとの海面

シトカ・サウンドにはニシンとニシンの卵を目当てに野生動物が集まっていました。

ランジ・フィーデイングしているザトウクジラ

ザトウクジラです。南東アラスカを夏の採餌海域としている個体群は冬はハワイで子育て・繁殖しています。ハワイからアラスカへの移動は片道4800キロ以上、ノンストップでも6~8週間(最短で28日で移動した個体の記録があるそうです)かかると言われています。それを考えると3月下旬にシトカにやってくる個体群は2月にはハワイを出発していることになります。

シトカに現れるザトウクジラの動向記録を見ていると、ニシンの産卵前にシトカ・サウンドの太平洋に開いた沿岸部に現れ、産卵が始まるとばらばらになって南東アラスカの各地へと散らばったようでした。ソールズベリー・サウンドやチャタム海峡でも複数頭を観察できました。

ニシンの産卵前にはバブルネットフィーディングの集団行動が見られるほか、活発にランジフィーディングする様子が観察されました。

ランジ・フィーデイングしているザトウクジラ

ニシンを狙って集まるトドの群れ。

トド

大産卵の日のクルーゾフ島の海岸です。干潮の時間には産卵にやってきたニシンが海岸に残され、それを狙ったハクトウワシ、その数1000羽はいたでしょうか!

シトカ富士そびえるクルーゾフ島の海岸に集まるハクトウワシ

ハクトウワシはもうお腹いっぱいなのか、あまり活発に動いておらず、はねているニシンを見ていました。

この海岸の沖にはザトウクジラとトドの姿が。みんなニシンの恩恵に預かっています!

ザトウクジラとトド

水面行動が激しいクジラがいたので近づいてみました。交尾をしているようです!これは、コククジラです。コククジラの繁殖海域はもっと南のバハカリフォルニアです。どうしてここで交尾(または疑似交尾)?

コククジラの水面行動 ハート形のブロー

コククジラのペニス

コククジラの背中

コククジラの背中。背びれがなく、後部にはこぶ状のものがあるのが特徴です。コククジラは海底の泥や砂をヒゲで濾しとることによってカニなどの底生動物を捕食します。そのため、海岸近くでコククジラのブローを見ると、「お食事中」だと想像されます。

海岸で採餌するコククジラ

アラスカでは厳しくニシンの産卵がコントロールされており、魚卵の状態の確認した後に漁が「OPEN」となり一斉にニシン漁が始まります。網から直接吸い上げて船内にはいっていくため、「おこぼれ」のニシンがなく、鳥やトド、そして私たちもがっかりです。北海道の漁船の周りに鳥が集まるようにハクトウワシのニシンを狙った飛翔に期待したので残念でした。

漁船からはニシンのおこぼれはないので自力でニシンを獲ったハクトウワシ

ニシンを運べないカモメは腸(白子?)だけとっていました

ニシン釣りを楽しむ観光客

漁が許可された短時間での操業

4月に入ってすぐ、シトカ・サウンドの沖合にたくさんのブローが見えました。こんなにまとまった数のブローはザトウクジラではないか、と期待を胸に船を走らせました。かなりの数のクジラがいると思われました。

近づいて確認すると、それはコククジラのものでした。岩礁付近では数頭のグループが交尾または疑似交尾行動をしているようで、海岸付近ではたくさんのブローがあがり、採餌行動が行われているようでした。少なく見積もって50頭以上、いや100頭近くがこの海域にいるようでした。すでにシトカ・サウンドにはコククジラが入っていますが、この集団はちょうど太平洋からシトカ・サウンドに入ってきたばかりのようでした。

コククジラの水面行動

コククジラの口が水面に出ています♪

海岸にあがるブロー

この件が気になって調べたところ2023年に書かれたシトカのコククジラに関する記事がありました。以前からシトカ・サウンドではコククジラが目撃されていましたが、この2~3年の集まり方は顕著だと言います。しかも私たちが見たように、交尾と思われるような社会行動も目撃されています。この記事の著者は、コククジラたちはバハカリフォルニアからアリューシャン列島へと北上する途中でこのニシンの大きな群れと産卵を見ることになり、海岸に産み付けられた卵を求めて集まってきていると考察しています。コククジラの目撃場所はニシンの産卵場所と一致しているのは確実で、ククジラが潜水していた場所で切れたコンブが回収されたりしているそうです。

今後、シトカ・サウンドに集まるコククジラたちの動向と調査がまたれます。

美しい夕景の停泊地

さて、私たちの停泊していたシトカ・サウンドの奥で大産卵が起こりました。ハクトウワシがたくさん集まっておりスキッフに乗り換えて海岸で撮影をしていました。

ニシンを狙うハクトウワシ

「これ、全部ニシンの卵じゃないの?」よく見ると、潮が引いた海岸一面にニシンの卵が表れていました。

ハクトウワシの足元の薄卵色のものがニシンの卵

潮が引いた海岸はニシンの卵が一面に現れていました

大きな粒のニシンの卵

海に浮いていた海藻に付着していたニシンの卵

天然の子持ち昆布

夕食にも当然、採取した「子持ち昆布」をいただきました。すでに塩味が十分で大きな粒の卵を感謝していただきました。

アラスカから帰国して間もなく、天売島から「70年ぶりのニシンの産卵」が起こったというニュースが。ニシンがもたらす恵みが広がっていきますように・・・。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation  :Spring 2024, Sitka Sound and around, Alaska, USA

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春の天売島のワイルドライフと70年ぶりの群来(くき)

2024年4月15日、北海道の天売島では70年ぶりとなる「群来(くき)」が観察されました。島の人は大喜びで撮影し、そしてニシンを収穫しました。島の宿ではニシンの煮つけと数の子がふるまわれました。今、島にいる人の中にニシンが大漁に獲れた時代を知る人はいません。

春の天売島で観察したワイルドライフをご紹介します。羽幌港から天売島への航路ではオオハム(意外と多い)、ウミスズメ、そしてウトウ、ケイマフリを見ることができました。

天売島では、ウミガラス、ケイマフリ、ウトウ、ウミスズメ、ウミネコ、オオセグロカモメ、ウミウ、ヒメウの8種の海鳥が繁殖しています。4月、もうその営みは始まっています。黒崎海岸ではウミネコが繁殖し、そのエリアを拡大中。4月20日ごろは交尾(または疑似交尾)があちこちで行われていました。

交尾(または疑似交尾)するウミネコ

ウミネコの繁殖地が拡大傾向にある黒崎海岸

海鳥観察舎からウミウの繁殖地を見ると、もう雛に給餌していました。ウミウは繁殖が早い時期に始まる海鳥ですが、早くなってきている傾向にあるようです。断崖の上の斜面ではオオセグロカモメが繁殖し、交尾している様子も見られました。それにしてもこの付近もたくさんのウトウの営巣地があります。

断崖に営巣するウミウ。ほとんどの巣に雛がいました。

前浜漁港付近ではウミアイサの姿が。ウミアイサは冬鳥として天売島へ渡ってきます。彼らももうすぐ北へと渡って行きます。

ウミアイサのペア

そしてシノリガモ。天売島で一番目にするカモの仲間です。前浜漁港付近やロンババ浜でよく見かけました。シノリガモは年中天売島で見られるそうですが、断然冬の時期が観察しやすく、そして美しいです。

シノリガモ ロンババの浜にて

風が少し穏やかになった日の朝、島の写真家・ 寺沢孝毅さんの操船する小型ボート「ケイマフリ号」で海へ出ました。小型ボートから見たのは、まさに春の天売島の景色。

港を出てすぐに出会ったトド。北海道へは冬場に千島列島方面から回遊してきます。若いオスが1匹でいました。ニシンが訪れるようになった天売島、人だけでなく野生動物も集まります。豊かな海の象徴です。

トドもまもなく北上していきます

ボートから黒崎海岸のウミネコ繁殖地を海から眺め、赤岩方面へ。ウミガラス繁殖地ではウミガラスの姿は見られませんでしたが、付近の海上を4羽のウミガラスが飛んでいるのを見ました。

岩礁にはたくさんのゴマフアザラシたちがいました。乾燥してふわふわしています。

船に注目するゴマフアザラシ

鳴き交わす美しい声が洋上に響きます、ケイマフリの声です。海岸の岩場では求愛のしぐさが愛らしいペアの姿が。

求愛するケイマフリ

営巣する断崖近くの洋上のケイマフリの群れ

愛らしいケイマフリの赤い脚

最後に、西遊旅行の天売営業所(天売島ネイチャーライブ)のスタッフが4月15日に撮影した「群来(くき)」の様子です。

「群来」で白濁したロンババの浜

産卵は春に起こり、水深 1m 以下の浅い海でメスが卵を海藻に産み付け、オスが放精して受精させます。この放精によって海水が白濁する現象を群来(くき)と呼びます。

海藻に卵を産み付けるニシン

お世話になった萬谷旅館さんで出たニシン料理。新鮮なニシンは大変美味しいものでした。

ニシンの煮つけ

ニシンの卵、「数の子」

私自身、アラスカのシトカまでニシンの大産卵に集まるワイルドライフを求めて行き、帰ってきたばかりでした。アラスカでは“Herring Run”の名のもと、シトカの海に集まるザトウクジラ、コククジラ、ハクトウワシ、トドなど生き物と遭遇するワイルドライフツアーが大人気です。

日本の「群来」もいつかHokkaido’s Herring Runとして注目を集める日が来るのでしょうか。いやいや、その前に、まず毎年ニシンが産卵に来てくれる豊かな海を取り戻すことが大切です。来年もニシンが戻ってきてくれることを願います。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Photography of Herring spawning : Midori KUDO

Observation : April 2024, Teuri Island , Hokkaido

TEURI ISLAND. ☜天売島のHPを公開しています!

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グアテマラ・ワイルドライフスペシャル Guatemala Wildlife Special

グアテマラ・ワイルドライフスペシャルのコースで観察した野鳥を中心とする生き物たちのご紹介です。

14日間かけて中部の高原地域、西部の乾燥地域、北東部の熱帯地域、東部のユカタン半島を訪れ計248種の鳥を含む様々な生き物を観察しました。グアテマラのワイルドライフ観察の特徴は、どこもフィーダーや餌場があるわけではなく歩いて探して観察したことでした。自然の中での観察は容易ではありませんが、生き物の生息密度が非常に高いグアテマラだからこその観察方法だと思いした。

観察のハイライトとなったのは、グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti です。グアテマラを中心にメキシコ、ホンジュラスなどで生息が確認されている鳥で、グアテマラで一番小さな鳥です。

グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti )

我々が訪れた繁殖期直前の2月は、森の中にある少し開けた10m四方ほどのエリアで5羽ほどのオスが、それぞれの縄張りでメスや他のオスたちにしきりにディスプレイをします。声は、周りから聞こえてくるのですが、動きが素早く観察&撮影は簡単ではありません。身を潜めてじっと待機しやっとの思いで目の前でディスプレイをしてくれた時の喜びと感動は鮮明に覚えています。

グアテマラコアカヒゲハチドリ(Wine throated hummingbird, Selasphorus ellioti )

グアテマラの通貨がケツアールということからも分かる通り世界一美しい鳥とも名高いケツアール(Resplendent Quetzal、Pharomachrus mocinnoはグアテマラの国鳥です。

ケツアール(Resplendent Quetzal、Pharomachrus mocinno)

グアテマラのケツアールは、日本で有名なコスタリカのケツアールとは生息域が分断されており、尾の長さや体つき、鳴き声なども違うため、近い将来別種になるのではないかと言われているそうです。今回は、運よく1本の木に3羽のオスが同時に現れるという大興奮の観察となりました。また、どこへ行っても観光客が少なく我々のグループのみでゆっくり観察できたのも幸運でした。

他にも、中米らしい美しい生き物たちを数多く観察できました。大人気のキモモマイコドリ(Red-capped Manakin, Pipra mentalis です。宿泊したロッジの庭で観察できました。

キモモマイコドリ(Red-capped Manakin, Pipra mentalis )

青い帽子をかぶったようなエリアカフウキンチョウ(Golden rumped euphonia, Chlorophonia cyanocephala)。ケツアールを観察した木で営巣をしていました。

エリアカフウキンチョウ (Golden rumped euphonia, Chlorophonia cyanocephala)

大きな声で縄張りをアピールするシマアリモズ(Barred Antshrike, Thamnophilus doliatus

シマアリモズ(Barred Antshrike, Thamnophilus doliatus)

ホオジロカマドドリ(Plain xenops,Xenops minutus。見ずらいですが、嘴が上向きに反り上がっています。

ホオジロカマドドリ(Plain xenops,Xenops minutus)

頭の赤い模様がチャーミングポイントのベニイタダキアメリカムシクイ(Slate-throated whitestart, Myioborus miniatus

ベニイタダキアメリカムシクイ(Slate-throated whitestart, Myioborus miniatus )

体の中身はツル、外見や生態はクイナに似ていると言われる不思議なツルモドキ(Limpkin, Aramus guarauna も水辺で観察できました。

ツルモドキ(Limpkin, Aramus guarauna )

頭の模様が美しいレッソンハチクイモドキ(Lesson’s motmot,Momotus lessonii。個人的には最も美しいハチクイモドキの仲間と思っています。

レッソンハチクイモドキ(Lesson’s motmot,Momotus lessonii)

葉っぱの奥でしたが珍しいメキシコアリツグミ(Mayan Antthrush,Formicarius moniligerも地元のガイドさんが見つけてくださり大興奮でした。

メキシコアリツグミ(Mayan Antthrush,Formicarius moniliger)

草原をひらひらと非常に美しく飛ぶズグロエンビタイランチョウ(Fork-tailed Flycatcher, Tyrannus savana

ズグロエンビタイランチョウ(Fork-tailed Flycatcher, Tyrannus savana)

森の中で2mほどの距離まで近づいても全く逃げなかったハイバラエメラルドハチドリ(Rufous-tailed Hummingbird, Amazilia tzacatl)

ハイバラエメラルドハチドリ(Rufous-tailed Hummingbird, Amazilia tzacatl)

有名なユカタン半島の固有種ヒョウモンシチメンチョウ(Ocellated turkey, Meleagris ocellata)はティカル遺跡周辺の見晴らしのいい草原で観察できました。

ヒョウモンシチメンチョウ(Ocellated turkey, Meleagris ocellata)

仲のいいメキシコインコ(Yucatan Amazon, Amazona xantholora)のペア。訪れたこの時期は、多くの生き物が繁殖期を迎え仲むつましい姿を観察できました。

メキシコインコ(Yucatan Amazon, Amazona xantholora)

お酒を飲んだように顔が赤いことから酒面と呼ばれ、和名はサカツラハグロドリ(Masked Tityra, Tityra semifasciataです。

サカツラハグロドリ(Masked Tityra, Tityra semifasciata)

世界一美しいサギともいわれるアカハラサギ(Agami heron, Agamia agami)は、常に木陰にいるためボートで観察しました。

アカハラサギ(Agami heron, Agamia agami)

野鳥以外のワイルドライフもご紹介! 凛々しいハイイロギツネ(Grey fox, Urocyon cinereoargenteusは何処となく突如と現れるため、ジャングルの中にあるロッジでの食事の際なども常にカメラが手放せませんでした。

ハイイロギツネ(Grey fox, Urocyon cinereoargenteus)

チュウベイクモザル(Central American Spider Monkey, Ateles geoffroyi)も我々人間を気にすることなく自然な姿を観察することができました。はっきりした顔立ちが印象的なクモザルの仲間です。

チュウベイクモザル(Central American Spider Monkey, Ateles geoffroyi)

グリーンイグアナ(Green iguana, Iguana iguanaは中米諸国では、オレンジ色の個体の割合が多いことで有名です。個体ごとに色合いが違うため非常に美しく、早朝はみんなで木に登り日光浴をしていました。

グリーンイグアナ(Green iguana, Iguana iguana)

世界に2種類しか生息しないドクトカゲの一種、メキシコドクトカゲ (Beaded lizard,Heloderma horridum)です。英名通りビーズのような肌と、決して走らず常にゆっくりと歩く姿が印象的でした。

メキシコドクトカゲ (Beaded lizard,Heloderma horridum)

グアテマラには、コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)の繁殖地の最北端となっているラスグヤカマスという場所があります。今回訪れたこの時期は、営巣の準備に励む夫婦の姿を観察できました。コンゴウインコの寿命は70年ほどともいわれます。一度つがいになったペアは、50年ほど連れ添うそうです。

コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)のペア

コンゴウインコが繁殖する木の洞

コンゴウインコのような大きな体を支える繁殖場所は、大きな木の洞が必要になります。繁殖地の北限が南下してしまわないように、大きな木が存在できる大自然がいつまでも続いていくことを願います。

コンゴウインコ(Scarlet Macaw, Ara macao)

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Feb 2024 Guatemala

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生物多様性の宝庫・マダガスカル Vol.02<ナイト・サファリ>

前回に引き続き、マダガスカルで観察した生き物たちのご紹介です。

マダガスカルは、ライオンやトラなどの夜行性の大型肉食獣が生息していないため、ナイトサファリも歩いて森の中を体験する”ウォーキングサファリ”が活発に行われています。日本から遠く離れたマダガスカルの地で夜な夜な森の中を歩くと、全身の神経が研ぎ澄まされ、土の匂い・木の上を動く動物の足音などを感じながら生き物たちを探す、忘れられない体験になりました。

今回はそんな夜のツアーで観察してきた生き物たちのご紹介です。

 

ネズミキツネザル (Mouse lemur)

ネズミ・キツネ・サルと3種類の生き物の名前を持つ非常に不思議な名前の生き物です。世界一小さなサルの仲間で、大きさは手の平に収まるほどしかありません。真ん丸な目と、しっかりとしたサルらしい手足が非常にキュートです。地域により、様々な種が生息しており現在は24種ほどに分類されるそうです。

チャイロネズミキツネザル(common brown lemur , Eulemur fulvus )

グッドマンネズミキツネザル (Goodman’s mouse lemur, Microcebus lehilahytsara )

 

アイアイ (Aye-aye  Daubentonia madagascariensis

童謡などで有名な「アイアイ」ですが、世界でもマダガスカルにしか生息しないキツネザルの仲間です。お猿さんと言っても原猿類というサル中でも原始的な仲間で我々の想像するニホンザルなどとはかけ離れた見た目でした。

アイアイ(Aye-aye、Daubentonia madagascariensis)

夜間の活動に有利な大きな目に加え、キツツキのように木に穴をあけて中にいる虫などを取り出すために非常に長く発達した中指など、独特な見た目をしており現地では以前より「悪魔」として恐れられていたため、保護活動が始まるまでは駆除されてしまうことも多かったそうです。

 

イタチキツネザル (Sportive lemur)

こちらも、イタチ・キツネ・サルと様々な生き物の名前が組み合わされていますが、英語ではSportive lemurです。木の止まる姿が、ボクサーの動きを連想されることからSportive(スポーツ)と呼ばれるようになったそうです。夜行性ですが、他のキツネザル同様に体温調節が得意ではない為、日中も寝床である木のうろから出ていることも多いです。こちらも27種ほどが確認されていて地域によって様々な姿を見せてくれます。

シロアシイタチキツネザル(White-footed sportive lemur, Lepilemur leucopus )

シロアシイタチキツネザル(White-footed sportive lemur, Lepilemur leucopus )

 

ヘラオヤモリ (Leaf-tailed gecko, Uplatus Sp.)

世界一の擬態力を持つ生き物と言えば、マダガスカルに生息するヘラオヤモリの仲間だと言っても過言でないほど擬態の名人です。そしてマダガスカルに生息する生き物で最も不思議な生き物の一つだと思います。今回は、エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)、ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)の2種類の観察に成功しました。

エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)

エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)

ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)

ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)

 

マダガスカルコノハズク (Madagascar scops owl, Otus rutilus)

マダガスカル固有のフクロウで、我々が発見した際には足に大きなトビバッタを捕まえていました。人をあまり気にしないのか、我々の目線の高さでじっと止まり木に止まっておりゆっくり観察できたのも印象的です。

マダガスカルコノハズク (Madagascar scops owl, Otus rutilus)

 

マダガスカルオオゴキブリ(Madagascan hissing cockroach)

マダガスカルオオゴキブリ、略して「マダゴキ」の愛想で親しまれる大型のゴキブリ。森林性で住宅地の近くなどでは観察することができない為、お部屋に出てくるなんてラッキーなことはめったにありません。動きは遅いですが、8cmを超える大型の個体は迫力満点でした。

昼も夜も、本当に奥深いマダガスカルの生き物たちとの出会い。続編をご期待ください!

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Oct 2023, Madagascar

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生物多様性の宝庫・マダガスカル Vol.01

生物多様性の宝庫、マダガスカル。見られる全動植物種の約90%が世界でマダガスカルにしか生息しない固有種であるため、観察場所を変えるたびにライファーと出合います。日中の観察で出会った生き物の一部をご紹介します。

 

ワオキツネザル:Ring-tailed lemur、Lemur catta

メスがグループのリーダーで、今回訪れた10月の繁殖期には子供を背中に乗せたメスが群れの先頭を歩く姿が見られました。ワオキツネザルを含む、キツネザルの仲間は体温調節が得意ではなく、早朝などは日が出ると日光浴する姿も観察できるそうです。

子供を背中に乗せたメスのワオキツネザル (Ring-tailed lemur、Lemur catta)

ベローシファカ:Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi

地面を歩くときなどは、横向きにジャンプしながら移動します。サボテンの多く存在する場所にも生息する為、人間ではとても触れないトゲの枝にもしっかりとつかまって生活する姿が印象的でした。

横向きにジャンプしながら移動するベローシファカ (Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi)

ベローシファカ (Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi)

カメレオンの仲間

世界に生息する60%のカメレオンは、マダガスカルに生息しています。世界で一番重たいカメレオンである、パーソンカメレオン(Parson’s chamaeleon, Calumma parsonii)や、ゾウのように大きな耳が特徴なゾウカメレオン(Elephant Ear Chameleon, Calumma brevicorne)、地域によってさまざまな色合いを持つパンサーカメレオン(など多種多様なカメレオンたちを観察することができました。

パンサーカメレオン(Panther chameleon, Furcifer pardalis )

ゾウカメレオン(Elephant Ear Chameleon, Calumma brevicorne)

マダガスカルアデガエル :Madagascan mantella, Mantella madagascariensis 

中南米などに生息するヤドクガエルなどと同様に体に毒があることを警告する為に、非常にきれいな体色をしています。

マダガスカルアデガエル (Madagascan mantella, Mantella madagascariensis )

マダガスカルヤツガシラ :Madagascar hoopoe, Upupa marginata 

ヤツガシラの多くは、渡り鳥として有名ですが本種は渡りをしないマダガスカル固有種です。日本などで観察できるものに比べて、オレンジ色が非常に濃く色合いがとても綺麗です。

マダガスカルヤツガシラ (Madagascar hoopoe, Upupa marginata )

ルリガシラハシリジブッポウソウ:Pitta-like Ground Roller, Atelornis pittoides

英名が、Pitta-like Ground Roller(ヤイロチョウのようなジブッポウソウの意味)で、その名の通り地面の上をピョンピョンと跳ねる姿はまるでヤイロチョウのようです。きらきらと輝く青色が非常に美しく多くのマダガスカルの野鳥図鑑の表紙を飾っている鳥です。

ルリガシラハシリジブッポウソウ (Pitta-like Ground Roller, Atelornis pittoides )

ヒルヤモリの仲間

ヤモリは、夜行性の種類が多い中で昼に活動する種はヒルヤモリと呼ばれます。昼の生活でも擬態をする為、緑色をしている種類が非常に多いのが特徴的です。ヨツメヒルヤモリ (Four Spot Day Gecko, Phelsuma quadriocellata )、グランディスヒルヤモリ (Madagascar Giant Day Gecko, Phelsuma madagascariensis  )など多くの種類を観察することができました。

ヨツメヒルヤモリ (Four Spot Day Gecko, Phelsuma quadriocellata )

キリンクビナガオトシブミ :Giraffe Weevil, Trachelophorus giraffa 

キリンのように長い首を持つオトシブミの仲間です。卵を産んだ後、幼虫のえさとなる葉で卵を包み込み、木から切り離して地面に落としてしまう姿の観察にも成功しました!

キリンクビナガオトシブミ (Giraffe Weevil, Trachelophorus giraffa )

マダガスカルの動物というとキツネザルの仲間が有名ですが、日中に見られるさまざまな生き物を紹介させていただきました。次回は、夜のマダガスカルの生き物です!

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Oct 2023, Madagascar

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海鳥の聖域天売島が海鳥たちに選ばれたわけ

天売島は、周囲12㎞ほどの小さな島で2024年の人口は250人ほど。天売島は「海鳥の楽園」と言われるほどたくさんの海鳥たちが繁殖し、その数はおよそ100万羽とも言われます。日本国内にはこのような場所は存在せず、東に3kmほどの場所には、ほぼ同じ大きさの焼尻島がありますが、こちらには海鳥はほとんど繁殖していません。いったいなぜなのでしょうか。

天売島周辺の海域では、特に冬の間は大陸側からのシベリア高気圧の影響を受け、島の北西方面からの風を受け続けます。その風が何千万年もの年月をかけて北西方面ばかり風食した結果、島の一面に崖が出来上がったと言われています。

Google Mapより

赤線部が元の島のあった場所

Google Mapより

矢印は風の向き。風が直接当たる島の北西部に崖が出来ました。

崖というのは、人間を含む哺乳類などが最も苦手とする地形の一つですが、空を飛ぶことのできる鳥たちにとってはアクセスしやすい場所です。普段は海で生活する海鳥たちは、陸上での生活は得意でないものが多く、天敵がアクセスしずらい崖での繁殖を選ぶようになりました。

崖で繁殖するオオセグロカモメ

崖で繁殖するヒメウとウミネコ

また、天売島で一番数が多いウトウの繁殖場所は、崖の上にある土のある陸上です。ウトウたちは、天敵の多い陸上に巣を作るので天敵が見えづらくなる夕方の日没と同時に一斉に帰巣しますが、高い木が生えていると暗くなった際にはぶつかる可能性が高くなります。そのため、高い木の生えていないエリアに営巣します。天売島はその強い風のおかげで、高い木が生えておらずウトウにとっても非常に良い条件が整い、世界No1の80万羽もの繁殖が確認されています。

木の無い草原に飛び込むようにして帰巣するウトウ

このように海鳥にとって最高の条件が奇跡的に重なり、沢山の海鳥が繁殖する天売島が出来上がったと言われています。海鳥の繁殖シーズンには、崖の下から海鳥や地層なども観察できるボートツアーも開催しています。

 

Text & Photography : Wataru Himeno

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マウンテンゴリラ Mountain gorilla(ブウィンディ原生国立公園・ウガンダ)


ウガンダ共和国の南西部に位置するブウィンディ国立公園で出会ったマウンテンゴリラです。

ゴリラは2種4亜種に分類されます。ヒガシゴリラの亜種(ヒガシローランドゴリラ、マウンテンゴリラ)とニシゴリラの亜種(ニシローランドゴリラ、クロスリバーゴリラ)。

今回出会ったマウンテンゴリラはアフリカ中部のウガンダ、ルワンダ、コンゴ民主共和国の3ヶ国の国境に広がるアルバータイン地溝帯のみに棲息し、近年の保護活動の成果から現在1000頭を超える数にまで増えてきています。日本の動物園のゴリラは全てニシローランドゴリラなので、マウンテンゴリラに会うためには現地に行くしかありません。

葉っぱや樹皮などを食べるマウンテンゴリラは「餌付け」が難しいので、観光客が観察できるゴリラのグループは人に慣れさせる「人付け(habituation)」という人への馴化作業が必要になります。研究者やトラッカーが初めは200mくらい離れたところから観察を始めて、だんだん距離を縮めていきます。もし近づきすぎてゴリラが威嚇してきたりした場合はもう少し距離を置いて様子を見るというのを繰り返し、完全に人に馴化するのには2~3年かかるとのことです。


マウンテンゴリラのトラッキングは片道1時間~3時間ほどかかります。
今回は1時間半ほどで出会えましたが、特に最後のゴリラに接近するあたりでは、ジャングルの中の急な斜面を草や枝をマチェットで折りながら下っていきます。


急な斜面を滑って転びそうになりながら下っていくと、ついにゴリラを追うトラッカーたちと合流。そのすぐそばでふさふさとした黒い固まりがあると思ったら、子供のゴリラでした。


そのすぐそばの2匹のメスたちは器用に指を使って毛づくろいをしていて、その姿はまるで人間のようでした。

今回出会ったマウンテンゴリラのグループは「ムクングジ(Mucunguzi Group)」というグループで、ムクングジとは雄のリーダーであるシルバーバックの名前でもあり、「救世主 Savior」を意味します。

ムクングジが別のグループのリーダーである「ビギンギ」からメス数頭を奪って(救い出し)、自分のグループを作り、現在は15頭のメンバーで1頭のシルバーバックに、7頭の大人の雌、2頭の若い雌、5頭の子供や幼児がいます。


その後、しばらくすると近くにいた雄のシルバーバックの「ムクングジ」(↑の写真左上)を発見。メスや子供たちと横になって休んでいます。


生後1年ほどの赤ちゃんゴリラが、お昼寝をするお父さんやお母さんに遊んでほしそうにちょっかいを出しています。

横になったメスの足がシルバーバックの体に乗っかっています。


観察しているとゴリラが2mほどの距離まで近づいてきました。
さらに最後にはシルバーバックも起き上がり、のそのそとこちらに向かって歩いてきました。


オスは通常8歳くらいで大人になりブラックバックと呼ばれますが、13歳を超えると背中から腰にかけて毛が灰色(シルバー)になりシルバーバックと呼ばれ、さらに18歳頃になると後頭部が盛り上がってきます。


寝起きでまだ眠いのか、大あくび。


あっという間に観察の制限時間である1時間が終わってしまいました。
野生のゴリラの寿命は野生下で35年~40年ほど、この子供が大きくなる前にはもう一度会いに来たいと強く思わされました。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : Feb 2024, Bwindi Impenetrable National Park, Uganda

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ウガンダ・ルワンダ マウンテンゴリラ&ゴールデンモンキートレッキング

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天売島の人気者、ケイマフリの魅力

2023年の夏を天売島で過ごした姫野からのレポートです ♪

天売島で不動の人気を誇る海鳥と言えば、ケイマフリです。もともと、アイヌの言葉で足の赤いを意味するケマフレという単語から、和名もケイマフリとなりました。その名の通り、足が赤いだけでなく、口の中も同じ赤色であるため、岩場で足を見せながら口を開けて求愛する姿を観察した方はその美しさに必ずというほど魅了されます!

天売島に生息する他のウミスズメ科の鳥に比べ飛び立ちも上手なため、水面から飛び立つ時は、水面を走るようにしながら助走をつけます。(そのほかの2種ウトウ、ウミガラスは、水面で羽ばたきながら半分泳ぐようにして助走をします)

その際に見られる、天売ブルーと呼ばれる海の色とケイマフリの赤い足の輝きは非常に美しく、これを見るためだけに天売島へいらっしゃる方も。

繁殖期後期の6月後半ごろからは餌をヒナに咥えて持ち帰る姿も観察できます。

イカナゴやギンポの仲間など、多様な餌を運ぶ姿も大変魅力的です。

ケイマフリの魅力に魅せられた天売島在住の写真家・寺沢孝毅さんはケイマフリという名前の日本酒を作られたり、ご自身の船にもケイマフリを描くほどです。

皆さんもぜひ、ケイマフリに会いに天売島にお越しください。

 

Image & text: Wataru HIMENO

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