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スヴァールバルトナカイ Svalbard Reindeer(スピッツベルゲン島)

スピッツベルゲン島で出会った「スヴァールバルトナカイ」。

トナカイは北極圏周辺のみに分布しますが、スヴァールバルトナカイは名前の通りスヴァールバル諸島の固有亜種です。トナカイの中で最も小さな亜種で、遺伝的な隔たりが大きいので別種とする研究もあるようです。

トナカイはシカ科で唯一、古くから家畜化された動物ですが、スヴァールバルトナカイは野生個体群で、人間による放牧は行われていません。

丸みを帯びた体形で、ずんぐりとした体形と短い足が、スヴァールバルトナカイの特徴です。

通常、動物は高緯度になるほど体が大きくなる傾向(ベルクマンの法則)があるので、スヴァールバル諸島の場合は体の大きなトナカイとなりそうですが、スヴァールバルトナカイは例外で、島の限られた餌資源に適応し小型化(島嶼化)したようです。

7月は毛の生え代わり中で冬毛と夏毛が混じっています。冬には分厚い毛皮をまとい、夏は短くすっきりとした姿に変わります。


頭には立派な角がありますが、トナカイはシカ科で唯一オスもメスも角を持っています。メスが冬に子育てする際、雪を掘り起こして子供に餌を与える必要があるのようです。訪れた7月はまだ角袋です。角の表面は皮膚と産毛で覆われていています。


驚くべきは、トナカイは哺乳類で唯一「季節によって目の色が変わる」こと。夏は濃い茶色の瞳ですが、冬の極夜になると深い青色に変わります。これは光量が極端に少ない環境で、少しでも光を取り込みやすくするための適応だと考えられています。

地面に顔を近づけて苔や地衣類を食べていました。冬は雪をかき分け、凍った地面の下から掘り出します。

上の写真は今年の春に生まれたばかりの子どものスヴァールバルトナカイです。

トナカイのメスとその子ども。冬毛から夏毛に変わる換毛期のため、メスのトナカイはそこら中に毛をばらまいています。

雪解けの進んだ初夏のスピッツベルゲン島で、苔や地衣類を一心に食べる姿を見かけました。短い足でゆっくりと斜面を移動し、こちらをちらりと見ると、また草を食べ続けます。厳しい北極の冬を越えたとは思えないほど、穏やかな表情でした。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Jul 2025, Nylondon & Ankerfjella, Spitsbergen, Svalbard, Norway

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