作成者別アーカイブ: saiyu

ウガンダの国鳥・ホオジロカンムリヅル Grey crowned crane(ウガンダ)

ウガンダの街道を車で走っていると、ホオジロカンムリヅル Grey crowned craneを道端でよく見かけます。

民家などもすぐそばにあるような畑や、河原などの水のある場所で20匹~30匹が固まって、虫や小さな魚を食べています。全長140cmのタンチョウよりも小型で、全長100cm程のツル科の仲間です。

カンムリの冠羽は1本1本は単純に1本の羽毛ではなく、3~4本を束ねて縒り(ヨリ)が入った三つ編み状になっているそうです。

通常は群れで行動することが多いですが、繁殖期にはつがいで行動します。また繁殖期には求愛のダンス(ディスプレイ)をする時があります。巣は湿地帯などに草を積み上げた塚状の巣をつくるそうです。

ウガンダの国鳥であるホオジロカンムリヅルは国旗の中央にもイラストが描かれていて、ホオジロカンムリヅルの色(赤、黒、黄、白)が国旗の色にも使われています。
歴史的にウガンダに存在した王国ではライオンやアンコーレ牛などを国旗にあしらったものが多かったため、ウガンダで一般的な生き物であり今までに一度も他の王国で使われていないホオジロカンムリヅルが選ばれました。

隣国のルワンダでは古くから富と長寿をもたらす鳥として大切にされてきましたが、近年は湿地の減少や違法な売買で生息数が減少しているそうです。

近縁種のカンムリヅルという鳥は亜種とされることも以前はありましたが、遺伝子的な違い、鳴き声、羽毛、頬の色などから識別可能であり、現在では別種とされています。

足の指が前向きに3本、後ろ向きに1本ついてるため、ツル類では珍しく木の枝にとまることができます。タンンチョウなどと比べても第1趾が長いです。このホオジロカンムリヅルとカンムリヅルだけが木の上にとまることができるため、夜間は樹上で休むこともあります。

ウガンダの動物観察というと「ゴリラトレッキング」や「サファリ」が有名でもちろん素晴らしいのですが、このホオジロカンムリヅルとの出会いも印象深いものでした。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Feb 2024 & Aug 2024, by the roadside, Uganda

★西遊旅行のウガンダ・ルワンダのワイルドライフの旅を発表しました!
ウガンダ・ルワンダ マウンテンゴリラ&ゴールデンモンキートレッキング

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

ニシツノメドリ Atlantic Puffin(スピッツベルゲン島)

スピッツベルゲンの夏を象徴する愛らしい存在、ニシツノメドリ。英語ではパフィン、子供はパフリング(Puffling)と呼ばれ、ふわふわの羽毛に包まれています。見た目はもちろん、名前まで可愛いらしいです。

ツノメドリ属には他に2種(エトピリカ、ツノメドリ)がいますが、どちらもに北太平洋に生息するため、大西洋で見られるのはニシツノメドリのみです。

ツノメ=角目と言われ、目の上の角のような模様を指しています。
特徴あるクチバシを和名に使わなかったのに違和感がありましたが、角のような模様がないエトピリカとの区別をつけるためだったのかもしれません。
英語ではその色鮮やかなクチバシから「海のオウム(Sea Parrot)」とも呼ばれます。

外見はオスとメスで大きな違いがなく、繁殖期に特有の派手な特徴もオスだけではなく雌雄で共通です。

パフィンは5月から8月初旬にかけて繁殖のためにスヴァールバル諸島へ渡ります。スピッツベルゲン島北部や周辺の小島には営巣地があり、岩の割れ目や土の斜面に掘られた巣穴で子育てが行われます。
北極の環境変化で数を減らす海鳥が多い中、パフィンはスヴァールバル諸島で個体数を増やしている数少ない鳥のひとつとされています。

スピッツベルゲン島でのつがいの数はすくなくとも1万ペアとされます。

パフィンは一夫一婦制で、生涯ペアを組む鳥です。毎年1つだけ卵を産み、親鳥は交代で温めます。雛は成長するまで頻繁に餌が必要で、親鳥は小魚をくわえて何度も巣穴と海を往復します。

鮮やかなオレンジや赤、黄色で彩られたパフィンのクチバシは、繁殖期の象徴的な姿。陸に上がると、つがい同士がくちばしをこすり合わせたり、叩いたりする「ビリング(billing)」と呼ばれる行動をして絆を深めます。

しかし冬になると、このカラフルな装飾部分は外れ、クチバシは灰色がかったくすんだ色へと変わり、顔も地味な灰色に。次の繁殖期を迎える頃、再び鮮やかな色に戻ります。

海では潜水するのに翼を使い、水中を飛ぶように泳いで魚を捕らえます。

陸上では飛び立つことが難しく、飛び立つには水上での助走が必要です。


後ろ姿もたまらないです。

鮮やかなクチバシと愛らしい姿で断崖を彩るニシツノメドリ。
夏の間だけ見られる季節限定の風景を堪能しました。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Jul 2025, Ytre Norskøya, Spitsbergen, Svalbard, Norway

北極海に浮かぶ野生動物の聖域 スピッツベルゲン北極圏の野生動物・野鳥の観察・撮影をチャーター船で楽しむ10泊11日の究極のワイルドライフクルーズ

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

オオカワウソ Giatn Otter (パンタナール)


“川のオオカミ”とも呼ばれるオオカワウソに出会いました。
北パンタナールのポルトジョフレからクイアバ川をボートで進んでいると、水音とともに現れたのは4頭のオオカワウソの家族でした。

オオカワウソは体長が1.5~1.8メートルにも達し、現生のカワウソ13種の中で最大の種です。
「川のジャガー」や「川のオオカミ」とも呼ばれ、群れで連携しながら魚を追い込み、俊敏に捕らえる姿はまさに水中のハンターです。

食物連鎖の頂点に君臨する捕食者で、集団だとジャガーすら追い払うほどです。


今回、観察した家族も見事な連携を見せ、ナマズを捕まえて水面に浮かび上がりました。

獲物としてピラニアやナマズだけでなく、大きなウナギの仲間(Marbled Swamp Eal)を捕らえることもあります。(2018年9月撮影)


水かきのある手でしっかりと押さえて食べます。

オオカワウソは非常に社会性が高く、群れの中では常に鳴き声でコミュニケーションを取ります。10種類以上の音声を使い分けるとも言われ、観察中も親と子が短い鳴き声でやり取りする様子が見られました。

白い喉の模様は個体ごとに異なり、個体識別の手がかりとなります。

パンタナールでは比較的安定した個体群が維持されていますが、生息地の開発や水質汚染が脅威となっています。この地域でオオカワウソが見られること自体、環境の健全性を示す指標とされています。

今回観察した4頭の家族は人への警戒心はとても薄い印象でした。


水中とは違い、陸上で見るオオカワウソの顔はとても可愛らしいかったです。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Sep 2025, Cuiaba River, Porto Jofre, Pantanal, Mato Grosso, Brazil

パンタナール ジャガーサファリ10日間
ブラジル・パンタナールにジャガーを求めて

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

ハシブトウミガラス Brünnich’s Guillemot (スピッツベルゲン島アルケフィエッレ)

スピッツベルゲン島とノールアウストランネ(北東島)の間に広がるヒンローペン海峡。その西岸にそびえる断崖アルケフィエッレ(Alkefjellet)は、スヴァールバル諸島を代表する海鳥の一大コロニーです。Alke=ハシブトウミガラス、Fiellet=山で「ハシブトウミガラスの山」を意味します。

ゾディアックに乗りこみ、断崖で営巣するハシブトウミガラスを観察します。

ハシブトウミガラスの糞で断崖が白とピンクに染まります。ピンク色は甲殻類を食べている影響でしょうか。

高さ100mもの垂直な崖には、およそ6万のハシブトウミガラスのつがいが、短い夏に命をつなぐ営みが繰り広げられます。シロカモメやミツユビカモメも少数ながらこの断崖を利用しています。

崖の周囲では、ハシブトウミガラスが絶え間なく飛び交います。この光景が見られるのは、氷が解ける夏の営巣期だけ。わずかな期間に求愛・産卵・抱卵・雛の巣立ちまでを終えなければなりません。夏の繁殖シーズンが終わるとこの断崖には一羽もいなくなり、また翌年同じ個体が同じ場所に戻ってきます。

断崖は玄武岩の一種であるドレライト(粗粒玄武岩)でできており、自然に形成された柱上の台の上が産卵場所になります。


上の写真はハシブトウミガラスの卵です。抱卵していないので放棄された卵に見えます。ハシブトウミガラスは巣を作りません。巣材は使わず、岩の上に直接卵を産みます。その卵は先端が細くなった楕円形で、転がっても海へ落ちず、くるくると回って元の位置に戻る仕組みで、崖から落下しにくくなっています。

ハシブトウミガラスは優れた潜水能力を持ち、翼を使って水中を飛ぶように泳ぎ、小魚や甲殻類を捕らえます。獲物をくちばしにくわえて断崖の巣まで運び、雛に与えます。

7月のこの時期はまだ抱卵中でしたが、雛が巣立つ時は、まだ飛ぶ力が弱いので真っ逆さまに海へ飛び降ります。そのため海から近い断崖に卵を産みます。海から遠い断崖の場合は、ヒナは歩いて海までたどり着かないといけません。海まで辿り付けないとその間にシロカモメやホッキョクグツネなどに食べられてしまうこともあります。その後、沖合で親から餌をもらいながら成長します。


ハシブトウミガラスを捕食するシロカモメ

営巣地の背後には氷河が広がり、雪解け水が無数の小さな滝となって断崖を流れ落ちています。澄んだ水と黒い玄武岩、そして空を舞う海鳥たち――この時期だけの北極の絶景です。

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Jul 2025, Alkefjellet, Spitsbergen, Svalbard, Norway

北極海に浮かぶ野生動物の聖域 スピッツベルゲン北極圏の野生動物・野鳥の観察・撮影をチャーター船で楽しむ10泊11日の究極のワイルドライフクルーズ

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

スヴァールバルトナカイ Svalbard Reindeer(スピッツベルゲン島)

スピッツベルゲン島で出会った「スヴァールバルトナカイ」。

トナカイは北極圏周辺のみに分布しますが、スヴァールバルトナカイは名前の通りスヴァールバル諸島の固有亜種です。トナカイの中で最も小さな亜種で、遺伝的な隔たりが大きいので別種とする研究もあるようです。

トナカイはシカ科で唯一、古くから家畜化された動物ですが、スヴァールバルトナカイは野生個体群で、人間による放牧は行われていません。

丸みを帯びた体形で、ずんぐりとした体形と短い足が、スヴァールバルトナカイの特徴です。

通常、動物は高緯度になるほど体が大きくなる傾向(ベルクマンの法則)があるので、スヴァールバル諸島の場合は体の大きなトナカイとなりそうですが、スヴァールバルトナカイは例外で、島の限られた餌資源に適応し小型化(島嶼化)したようです。

7月は毛の生え代わり中で冬毛と夏毛が混じっています。冬には分厚い毛皮をまとい、夏は短くすっきりとした姿に変わります。


頭には立派な角がありますが、トナカイはシカ科で唯一オスもメスも角を持っています。メスが冬に子育てする際、雪を掘り起こして子供に餌を与える必要があるのようです。訪れた7月はまだ角袋です。角の表面は皮膚と産毛で覆われていています。


驚くべきは、トナカイは哺乳類で唯一「季節によって目の色が変わる」こと。夏は濃い茶色の瞳ですが、冬の極夜になると深い青色に変わります。これは光量が極端に少ない環境で、少しでも光を取り込みやすくするための適応だと考えられています。

地面に顔を近づけて苔や地衣類を食べていました。冬は雪をかき分け、凍った地面の下から掘り出します。

上の写真は今年の春に生まれたばかりの子どものスヴァールバルトナカイです。

トナカイのメスとその子ども。冬毛から夏毛に変わる換毛期のため、メスのトナカイはそこら中に毛をばらまいています。

雪解けの進んだ初夏のスピッツベルゲン島で、苔や地衣類を一心に食べる姿を見かけました。短い足でゆっくりと斜面を移動し、こちらをちらりと見ると、また草を食べ続けます。厳しい北極の冬を越えたとは思えないほど、穏やかな表情でした。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Jul 2025, Nylondon & Ankerfjella, Spitsbergen, Svalbard, Norway

北極海に浮かぶ野生動物の聖域 スピッツベルゲン北極圏の野生動物・野鳥の観察・撮影をチャーター船で楽しむ10泊11日の究極のワイルドライフクルーズ

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

トビウサギ South African spring hare (オカバンゴデルタ・ボツワナ)

アフリカのカンガルーとも呼ばれる「トビウサギ(South African spring hare)」に、ボツワナのオカバンゴデルタで出会うことができました。
和名・英名ともに「ウサギ」「hare」とついていますが、実際にはウサギ目ではなく、ネズミの仲間である齧歯目に分類される動物です。

ウサギのように大きな耳や、後脚だけを使って跳ねる姿を見ると、「ウサギ」と呼びたくなるのも納得です。
ジャンプの際には大きな後ろ脚と長い尾でバランスをとりながら、まるでカンガルーのようにぴょんぴょんと跳ねて移動します。

前足には鋭い爪があり、これを使って穴を掘ります。サバンナの地下にトンネル状の巣穴を作り、群れで生活しています。完全な夜行性のため昼間はこの巣穴で休み、真っ暗になると外に出てきて活動を始めます。

そのため昼間のサファリでは一切姿を見かけませんが、ナイトサファリになると、一気にトビウサギたちが地上に現れ、活発に動いている様子が観察できます。

なお、ケニアやタンザニアで見られるのは別種の「ヒガシトビウサギ」です。
現生のトビウサギ科は、この南部アフリカに生息する種と、ヒガシトビウサギの2種だけで、他の種はすでに絶滅しています。


彼らは植物の根や新芽を食べる草食性で、四つん這いでエサを探しますが、食べるときには後ろ脚と尾を地面につけて体を支え、前足で器用にエサをつかんで口に運びます。

オカバンゴデルタでは、トビウサギのほかにもナイトサファリならではの出会いがありました。

赤茶色の毛が首の後ろにあるのが特徴の「アカクビノウサギ」、こちらは本当にウサギの仲間です。
個人的に大好きなガラゴ(ブッシュベイビー)も木の中で見つけましたが、すぐに幹の陰に隠れてしまい、写真には収められませんでした。

ほかにも、アフリカ最大のフクロウである「クロワシミミズク」、骨をかじる「ブチハイエナ」や、吠えあう「ライオンの兄弟」など、昼間とは違う野生動物たちの姿を観察することができました。

昼とはまるで別世界のオカバンゴデルタ。暗闇に潜む動物たちの姿は観察するほどに奥深く、夜ならではの発見に満ちていました。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Mar 2025, Okavango delta, Botswana

★西遊旅行のアフリカ南部のワイルドライフの旅はこちら!

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

アンデスイワドリ Andean Cock-of-the-rock(エクアドル)


アンデスの雲霧林で、アンデスイワドリ(Andean Cock-of-the-rock)に出会えました。鮮やかなオレンジ色の羽に、大きな扇形の冠羽が特徴です。

ペルーの国鳥にも指定されているこの鳥は、アンデスを象徴する存在。特にオスの派手な見た目と独特な求愛行動で、鳥好きの間では“憧れの種”とされています。

嘴が見えないのでどちらを向いているのかわからず、一瞬戸惑います。

少しだけかわいい嘴が見えることも。

一方でメスは、茶色とオレンジがかった地味な羽色。巣作りや抱卵に集中するため、目立たない姿で過ごします。実際、今回も橋の下のコンクリート壁に巣を作り、ひとりで抱卵するメスを見かけました。オスは一切営巣にかかわらないため、メスの孤独な子育てが印象的でした。

アンデスイワドリの観察といえば、やはり「レック(lek)」です。レックはオスが集団で求愛ディスプレイを繰り広げる場所で、集団求愛場とも言います。川近くの岩場や洞窟などメスが巣作りできる場所の近くにある森林です。決まった場所で毎年同じように行われます。

観察に適した時間帯は早朝と日暮れ前の1日2回。光の加減がディスプレイの行われる時間と関係していると言われています。

ガイドさんによると、ミンド周辺だけでも観察できるレック用のハイド(観察小屋)が5ヶ所ほど設置されており、その年の活動状況や季節に応じて案内してもらえます。

レックでは、複数のオスたちが激しいパフォーマンスを繰り広げます。
大きく羽ばたいたり、跳ねたり、独特な鳴き声を響かせながら、メスの関心を引こうと必死です。

今回の観察中、運よくメスが近づいた瞬間がありました。そのとたん、オスたちの動きは一気に激しさを増し、鳴き声もいっそう大きくなりました。私からはメスの姿は見えませんでしたが、オスたちの反応からメスの存在をはっきりと感じ取ることができました。

なお、オスは繁殖においてディスプレイと交尾のみを担当し、巣作りや抱卵など子育てには一切関与しません。彼らは一年中レックに現れ、求愛とその“練習”を続けているのです。

英名の「Andean Cock-of-the-rock」は、“アンデスの岩場の雄のニワトリ”という意味です。写真だけ見るとなんでニワトリと思いますが、レックでのメスへアピールする鳴き声を実際に聞けば、その名前にも納得です。

なお、近縁種としてギアナ高地に生息する「ギアナイワドリ」もいますが、アンデスイワドリとは生息域が重なっていません。

↑↑↑ は2019年にガイアナで出会ったイワドリ(ギアナイワドリ)です。

今回出会えたアンデスイワドリは、見た目も動きも、想像以上にインパクトのある鳥でした。鮮やかな羽の色や変わった頭の形はもちろん、あの全力のアピールや鳴き声まで含めて、「本当にこんな鳥がいるんだな」と思わせてくれる、忘れられない出会いになりました。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : May 2025, Mindo Valley, Ecuador

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

オオミミギツネの家族(クワンド・ボツワナ)

ボツワナ北部、ナミビアのカプリビ回廊との国境沿いに広がるクワンド川流域にて「オオミミギツネの家族」と出会いました。
クワンド川流域は湿地や草原に富んだ野生動物の宝庫で、今回の観察地もその川近くのサバンナ地帯でした。

それは帰国当日の早朝のこと。
それまでの観察でも何度かオオミミギツネの姿は確認できたものの、いつもすぐに茂みに逃げ込んでしまい、なかなかじっくりと観察することができませんでした。
ところがこの日は様子が違い、開けた場所でのんびりと過ごすオオミミギツネの群れに出会えたのです。

しかも、その数は6頭。
通常、サファリで目にするのは2頭のオオミミギツネが多いのですが、今回は群れで、互いにリラックスした様子を見せていました。

オオミミギツネは東アフリカと南部アフリカで亜種が分かれており、今回見たのは南アフリカの亜種(Otocyon megalotis megalotis)です。この南部の亜種は、一夫一婦制でつがいとその子どもたちが家族単位で生活する習性があります。

オオミミギツネは一度の出産で4〜6匹の子を産みますが、母親には乳首が4つしかないため、4匹までしか育たないとされています。

今回の群れも、親2頭とその子ども4頭からなる家族だったのかと思います。

観察した子どもたちはすでにかなり成長しており、大人とほぼ同じサイズか若干小さい程度に見えました。

ボツワナでは、オオミミギツネの出産は10月~12月とされており、今回の3月の観察時には子どもたちは生後4~5ヶ月ほど。生後5~6ヶ月で家族集団を離れるといわれているため、もしかするとこれは子どもたちが親元で過ごす最後の数日だったのかもしれません。

朝の挨拶なのか、すれ違いざまにお互いを舐めあう子供たち。

家族のきずなを感じさせる穏やかな時間の中、のんびりとした時間を過ごす親子の姿がとても印象的でした。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Mar 2025, Kwando concession, Botswana

★西遊旅行のアフリカ南部のワイルドライフの旅はこちら!

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

ヒメホタルの乱舞

和良川のオオサンショウウオとホタル(2)

ヒメボタルの乱舞

ヒメボタルの乱舞

和良川の支流や山間部にかけて観賞できるホタルはゲンジボタル(源氏蛍)とヒメボタル(姫蛍)の2種類です。みなさん、ホタルは皆、川辺に生息していると思っていませんか?日本に生息するホタルは約50種類いますが川辺に住む蛍は3種(ゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマボタル)。この3種のみが幼虫時を川で過ごし、カワニナなどを餌にし、成虫になると川辺で光って繁殖行動をします。そのほかの種は山蛍と呼ばれ、山の中でカタツムリなどを捕食して成虫になります。日本に住むホタルのほとんどが山蛍なのです。

ゲンジボタルは午後7時30分以後に光りだしますので、その前に良いポイントに行き待ちます。だんだんと光り初め、やがて山全体と光りがシンクロしたような光景が広がります。この幻想的な光景は是非ご覧いただきたいです。午後8時過ぎにピークを迎え、徐々に光りが収まっていきます。ですが、完全に光が消えるわけではなく、深夜まで光り続けます。

ゲンジボタルの乱舞

ゲンジボタルの乱舞

ゲンジボタルの乱舞

ゲンジボタルの乱舞

午後9時頃にゲンジボタルの観賞を終え、ヒメボタルの観賞に向かいます。このように、一度に2種類の蛍を見れる場所は日本中でもここだけではないのでしょうか。

1時間程でヒメボタルの観察ポイントに着きます。ヒメボタルのポイントは山の中で杉林、雑木林、竹林などですが、これらの場所にはヒルなども生息しているので対策もしなければなりません。

発光のピークをむかえるヒメボタル

発光のピークをむかえるヒメボタル

ゲンジボタルの発光は線のように2秒光って2秒休む(東日本は4秒光って4秒休む)のに対して、ヒメボタルは1秒に2回、フラッシュのように光ります。光跡はロット状になり30秒で60回も光を放ちますのでゲンジボタルとヒメボタルの光跡を見ると線と点になります。

ヒメボタルが多く生息する場所ではシンクロして山が黄色く染まる感じになりますが、岐阜のヒメボタルは深夜型といって夜22時~2時にかけて光りますので、この地域では両方の蛍が観賞できるのです。

2種類の蛍を観賞して宿に戻ると時刻はもう次の日になっていますが、貴重な体験を味わう事ができます。

ハコネサンショウウオ

ハコネサンショウウオ

アカハライモリ

アカハライモリ

日程によっては川の源流域に行って小型サンショウウオ(ハコネサンショウウオ、ヒダサンショウウオ)の幼生を探したり、渓流の魚で西日本にしか生息してないアマゴ、渓流の大食い岩魚や水生昆虫、爬虫類など、目についた生き物を紹介しています。

日本各地、世界各地から多くの方が来てくださり、再訪されるゲストも多くなってきました。今後共皆様に喜んで頂けるよう、和良川のツアー運営に携わっていきます。このフィールドで皆様にお会い出来る日を楽しみにしております。

和良川でお待ちしています!

和良川でお待ちしています!

Text & Photo : Yoshihiro ITO

★関連ツアー:水中写真家・伊藤義弘さん同行 和良川のオオサンショウウオとホタルの乱舞

プロフィール:伊藤 義弘 (いとう よしひろ)
水中写真家、ダイビングインストラクター。西表島での体験ダイビングで海に目覚め、インストラクターの資格を取得。世界各地の海と川を潜る中で、豊かな生態系を有するふるさと岐阜県の川に魅了される。誰もやっていない分野のガイドになる決意をし「伊藤潜水企画」を設立。川に住む生きものをテーマに、川の生きもの案内人として観察会等を企画運営。

和良川のオオサンショウウオとホタル(1)

世界最大の両生類・オオサンショウウオ

世界最大の両生類・オオサンショウウオ

岐阜県飛騨と美濃の中間にある山里を流れる和良川には、日本固有種で、国の特別天然記念物でもあるオオサンショウウオが多く生息しています。また、6月中旬になると、和良川の支流ではたくさんのホタルを鑑賞することができます。

観察時の注意事項として、オオサンショウウオに触れることは一切出来ません。何故ならオオサンショウウオは、日本の特別天然記念物であり絶滅危惧種Ⅱ類(VU)(環境省レッドリスト)に指定された天然記念動物として手厚く保護されている生き物だからです。そのため、皆さんは観察しか出来ませんが、水中マスク越しに写真や動画撮影をしていただけます。

石の中に隠れるオオサンショウウオ

石の中に隠れるオオサンショウウオ

オオサンショウウオは夏場は数分おきに水面に顔を出して呼吸をします。生息場所から水面まで上がり、鼻を水面に出して呼吸し、元の位置に戻るので、泳ぎが苦手のオオサンショウウオが必死に元の位置に戻る姿は、母性本能をくすぐられるような可愛さがあります。

オオサンショウウオの正面顔

オオサンショウウオの正面顔

河原をのそのそと歩く

河原をのそのそと歩く

観察をする日中、夜行性のオオサンショウウオは頭を石の中に入れて隠れています。明るい場所が嫌いなのですが、呼吸をする時は顔を水面に出しやすい場所に移動しますので、後ろ向きのオオサンショウウオでもじっと待っていれば正面顔をしっかり撮影できます。粘りと根性があれば、スーパーショツトを撮影していただけるでしょう。また、観察できると一番嬉しいのがおおあくびです。オオサンショウウオが口を全開させるこのシーンはなかなかタイミングが難しいですが、捉えることが出来れば最高です。このほかにも魚を捕食したり、脱皮をする様子など、オオサンショウウオの様々な仕草を楽しむことができます。

オオサンショウウオは時には川から上がり、堰堤の上などに上陸してくれることも年に数回あります。こんな場面に遭遇した方は超ラッキーです。この和良川の地区では広い範囲に数多くオオサンショウウオの生息が確認されていますが、2025年1月現在でも中国オオサンショウウオとの交雑個体は発見されておらず、日本固有の純血のオオサンショウウオのみが生息しています。

カワヨシノボリ

カワヨシノボリ

日本固有種のニホンイシガメ

日本固有種のニホンイシガメ

オオサンショウウオのほかにも、川辺に生息する生き物たちも紹介しています。和良川に生息する鮎は、今では「和良鮎」と呼ばれるブランド鮎に変貌しました。和良鮎の最大の魅力は、なんといっても香りです。涼しげなスイカのような香りで、その香気で夏の河原一帯を満たしてしまうほどです。良質な藻類をいっぱいに詰め込んだ腹ワタは、食べた瞬間にその香りが口の中いっぱいに広がり、ほろ苦さの中に甘さと旨味もある絶妙な風味があります。

古民家 「七福山」

古民家 「七福山」

宿泊は築170年の古民家。囲炉裏を囲みゆっくりおしゃべりしたり、お酒を酌み交わしたりと、日本の伝統を感じることができます。

食事は和食を中心に、川魚、山菜など季節の素材を活かした料理が提供されます。山家ならではの静かな空間は、行きかう旅人の癒しの場。ここを切り盛りする女将さんも話好きなので、ツアーに参加した際にはぜひ女将さんとお話を楽しんでいただきたいです。

Text & Photo : Yoshihiro ITO

★関連ツアー:水中写真家・伊藤義弘さん同行 和良川のオオサンショウウオとホタルの乱舞

プロフィール:伊藤 義弘 (いとう よしひろ)
水中写真家、ダイビングインストラクター。西表島での体験ダイビングで海に目覚め、インストラクターの資格を取得。世界各地の海と川を潜る中で、豊かな生態系を有するふるさと岐阜県の川に魅了される。誰もやっていない分野のガイドになる決意をし「伊藤潜水企画」を設立。川に住む生きものをテーマに、川の生きもの案内人として観察会等を企画運営。