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オキ・マカ(Oqi-maqa / Gentianella tristicha)

先日、利尻島・礼文島のツアーに同行させていただき、お客様と共に高山植物の観察を楽しみ、ツアー終了後に長年訪れてみたかった北海道大学の植物園をプライベートで訪れ、園内に咲く花々を堪能し、日本の高山植物を大いに堪能できた一週間でした。

 

前回に引き続いてペルーのブランカ山群に咲くペルー固有種「オキ・マカ」をご紹介します。

 

オキ・マカ(Oqi-maqa / Gentianella tristicha)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gentianella tristicha
現地名:オキ・マカ(Oqi-maqa – Oqemacashaqa)
科名:リンドウ科(Gentianaceae)
属名:リンドウ属(Gentiana)

 

オキ・マカ(Oqi-maqa – Gentianella tristicha)は、リンドウ科リンドウ属に属するペルー固有種で、5,000~6,000m級の氷雪峰が聳えるブランカ山群の標高4,300m~4,900mの高所に自生し、ワスカラン国立公園などでいくつか自生地が確認されています。
ペルーの先住民族ケチュア族の言葉で 「Oqi」は、花の色合いの「ラベンダー色とピンク色の中間の繊細な色調」を意味します。

 

草丈は10~25cmほどで直立し、紫褐色の細い茎を伸ばし、上部で2~3つに枝分かれし、それぞれに直径2~3cmほどの小さな花を咲かせます。

 

葉は枝分かれした節の部分に細い針形の葉を左右対称に伸ばし、それぞれの葉は1.5~2cm程度の長さです。

 

花期はペルー・アンデスの雨季の終わりの2〜5月。
花全体は淡い紫色で、トランペット状の合弁花の先端で5つの花弁のように分かれてる形状をしています。
花の中央にはほんのりクリーム色の雌しべをしっかりと伸ばし、その脇には数本の雄しべが伸びています。その雄しべの先端の葯の部分に花粉が残っているものは雌しべと同様にほんのりクリームをしているのですが、花粉が無くなって紫色の細い糸が残っているだけのものも観察できました。

 

根は比較的丈夫で、栄養分が乏しい場所(高地の過酷な気候条件)でも生息することができる花ですが、ペルーの高山生態系の保全において重要な花の1つとして数えられ、ワスカラン国立公園などでは保護対象種とされています。

 

オキ・マカの花は現在のところ一般的な薬草としての利用は報告されていませんが、伝統的には「強さ」や「浄化」を象徴するとされ、儀式に用いられることもあるという資料もありました。

 

オキ・マカは、花の形状も美しく、淡い色合いも何とも言えない魅力を感じる花で、是非とも皆さんにも観察して欲しい花の1つです。

 

オキ・マカ(Oqi-maqa / Gentianella tristicha)

 

そういえば、現地にて前回紹介した「プカ・マカ」と今回ご紹介した「オキ・マカ」の中間種と解説を受けた花も観察しました。
見た目にはほぼ「オキ・マカ」のような形状ですが、良く観察すると5つに分かれた花弁の部分に若干の丸みがあったり、中央に伸びる雌しべの色合いに違いがあったり、学名は不明ですが、不思議な花でした。
※「オキ・マカ」と「プカ・マカ」の写真、見比べてみて下さい。

 

オキ・マカとプカ・マカの中間種
ペルー固有種の花「プカ・マカ」(リンドウ科)
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プカ・マカ(Puka maqa – Puka maqashka/Gentianella weberbaueri)

6月に入り、近所のアジサイも見頃を迎え、雨の降る嫌な季節でもアジサイの花を観ると少し心が癒されます。

 

先月、ペルーのブランカ山群へ添乗させていただき、ペルー固有種の花をいくつも観察してきました。
本日はその中から3年越しの念願だった紅色のリンドウ「プカ・マカ」をご紹介します。

 

ペルー固有種「プカ・マカ」(リンドウ科)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gentianella weberbaueri
現地名:プカ・マカ(Puka maqa – Puka maqashka)
科名:リンドウ科(Gentianaceae)
属名:リンドウ属(Gentiana)

 

上の写真を見て「この色がリンドウ??」と思われた方、「クリンソウでは?」と思われた方もいるのではないでしょうか。実のところ、私がその1人でした。

 

今から約3年前、南米の花を色々と調べている時、この花の写真を見つけました。
その際、私も「クリンソウの一種かな?」と思い、調べていくうちにアンデス山脈の一部をなすのペルー・ブランカ山群に自生するペルー固有種、現地で「プカ・マカ」と呼ばれる花であることが判り、一気に心を奪われました。

 

プカ・マカ(Puka maqa – Puka maqashka)は、リンドウ科リンドウ属に属するペルー固有種で、5,000~6,000m級の氷雪峰が聳えるブランカ山群の標高4,300m~4,900mの高所の礫地に自生し、ペルーの先住民族ケチュア族の言葉で 「puca 」は 「赤 」を意味します。

 

草丈は小さな株で30cmほど、高いもので50cm近い株も確認できました。
今回観察できたエリアでは見つかりませんでしたが、資料によっては3フィート(約90cm)のい高さになると記載されています。

 

葉は地面にイソギンチャクのように長さ10cmほどの細長く、ほんの少し厚みのある葉を広げ、その中央に赤褐色のどっしりとした印象、まるで大黒柱のような花茎を真っすぐに伸ばします。
花茎に付ける葉は地面に広がる葉に比べて短く、柄を付けず数段に分かれて放射状に葉を広げます。

 

花期は5月初旬。
花茎から2~3cmほどの花柄を伸ばし、長さ2~3cmほどの紅色の花を付けます。
1つの株が満開に花をつけた状態の個体は観察できませんでしたが、満開になると花の数は10や20ではおさまらず、30近くの花を付けそうな印象でした。
花弁は5枚のように見えましたが、高所で息も絶え絶えの中でじっくりと観察しているとトランペット状の合弁花であり、先端で5つの花弁のように分かれているのが判りました。下の写真をご覧いただくとその形状が判るかと思います。

 

紅色の花弁の中央からどっしりとした黄色の花柱と小豆のような色の柱頭の雌しべが伸び、その脇からゴマのように真っ黒な葯をつけた雌しべが4~5本伸びており、細かく観察すると様々な色合いが組み合わさった花であることが判り、その色合いが何とも言えない魅力を感じさせる花でした。

 

現地ではプカ・マカの花を宗教的な彫像の装飾に使われるそうです。
また、農村部では虫歯予防のためにこれを噛むこともあったり、茹でたエキスを赤い着色料として使用しているという資料などもありました。そういえば、現地のガイドさんがたちが「ブランカ山群は薬草の宝庫」と解説してくれていました。

 

今回は小雨が降る中、標高4,730m地点でプカ・マカを観察しました。
お客様それぞれが観察を楽しむ中、「ここにも咲いているよ~」「こっちの株は見事な咲き具合だよ~」など、雨にも負けず、高山病にも負けず、それぞれが情報を共有しながら、ペルーの固有種「プカ・マカ」の観察を楽しみました。

 

その他、オキ・マカ(リンドウ科)やアウリンシャ(ユリズイセン科)、プルシュ(トケイソウ科)などのペルー固有種や私が大好きなスリッパ型のゴマノハグサ科の花など、様々な花の観察を楽しむことができました。
それらの花々の紹介は・・・次回に続く。

ペルー固有種の花「プカ・マカ」(リンドウ科)
花茎を伸ばす前のプカ・マカ(リンドウ科)