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ピレネー・リリー(Lilium pyrenaicum)

アルゼンチンの最北の高原砂漠「ワイルド・プーナエクスプローラー」のツアーに添乗させていただいており、ブログ更新の間隔が空いてしまいました。

 

本日は前回に引き続きユリ科の一種「ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)」紹介させていただきます。その名の通り、ピレネー山脈の固有種のユリ科の花です。

Lilium pyrenaicum(ピレネー・ユリ)

被子植物 単子葉類
学名:ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)
英名:Yellow Turk’s Cap Lily/Yellow Martagon Lily
科名:ユリ科(Liliaceae) 属名:ユリ属(Lilium )

 

黄色の色合いがとても印象的な「ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)」はピレネー山脈の固有種ですが、スペインおよび東方の山岳地帯からコーカサスまで分布範囲は広がります。

標高1,200~2,000mの草地や林間に自生していることが多く、花の開花時期は6~8月となります。
私も初めてピレネー・ユリを観察したのは、陽光が気持ちの良い6月、ピレネーのプランス側のカバルニー大圏谷(1650m)でした。

 

前回ご紹介させていただいた「マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)」と同じく草丈は40~120㎝と高く、茎は直立して、10~15㎝ほどの細長い葉が互生しています。
日本でも同じユリ科の「エゾスカシユリ」も印象的な鮮やかなオレンジ色をしていますが、このピレネー・ユリも鮮やかな黄色の花弁が非常に印象的で、ユリ科の花の特徴である暗色の斑点も確認できます。
外側に反り返った花弁の中心から数本の雄しべが放射状に突き出しています。

 

上記の英名をご覧いただき、気付かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、「マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)」と英名が同じくトルコ人の被るターバンに似ているということから「Turk’s Cap Lily」という英名の頭に「Yellow (黄色)」がついたものとなります。

ハイキング中、ピレネー・ユリを最初に観察したときは正直驚き、「グロテスクな色合い」という印象でしたが、観察を続けていると徐々にその魅力的な花に心を奪われる結果となりました。

 

ブログ作成のため、ピレネーの花々を撮影した写真を眺めていると、私も久々にピレネー山脈に訪れ、固有種を探し求めてハイキングを楽しみたいと感じています。

Lilium pyrenaicum(ピレネー・ユリ)
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マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)

8月に入り、猛暑日が続いておりますが、体調など崩されていないでしょうか。そんな猛暑日に路上に咲く花など観ると、ほんの少し癒される気分になります。

 

本日はユリ科の一種である「マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)」をご紹介します。

マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)

被子植物 単子葉類
学名:リリウム・マルタゴン(Lilium martagon) 英名:Turk’s Cap Lily
科名:ユリ科(Liliaceae) 属名:ユリ属(Lilium )

 

日本にも咲くクルマユリやオニユリに似たマルタゴン・ユリ(Lilium martagon)は、フランス東部からモンゴルまで、ユーラシア大陸の寒冷な温帯域に分布し、標高2,000m以上の草地や日差しの射し込みやすい林間などで観察することができます。
※写真は、イタリア・アルプスのコーニュ村の周辺で観察しました。

 

草丈は30~120㎝と高く、茎は直立して、最大15㎝ほどの葉が互生し、若干の光沢を確認できます。葉には斑点(よく観察すると紫や赤色の斑点)もあり、裏には毛も生えています。
茎頂にはたくさんの花を下向きに付け(資料によって50近くの花をつけるとも)、花の直径は3~6㎝、6枚の花弁が外向きに反り返っているのが特徴です。
花はピンクより少し濃い、紅紫色という色合いで、暗色の斑点が確認でき、外側に反り返った花弁の中心から6本の雄しべが放射状に突き出しています。

 

英名「Turk’s Cap Lily」は、この花がトルコ人の被るターバンに似ているところから名付けられ、マルタゴンという名もムハンマドⅠ世愛用のターバンという説もあると聞いたことがあります。

 

色合いが特徴的なユリ科のマルタゴン・ユリ。ヨーロッパには色合いの違ったユリ科がたくさん観察できます。また次回、別の色合いのユリ科の花を紹介させていただきます。

マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)

 

 

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ムシトリスミレ(Pinguicula longifolia)

前回に引き続き、ピレネー山脈の花の1つ、石灰岩質の岩場や少し湿った場所などに生育する食虫植物の1つ「ムシトリスミレ(Pinguicula longifolia)」をご紹介します。

ムシトリスミレ(Pinguicula longifolia)

被子植物 双子葉類
学名:Pinguicula longifolia 和名:ムシトリスミレ
科名:タヌキモ科(Lentibulariaceae) 属名:ムシトリスミレ属(Pinguicula)

 

食虫植物と言えば、皆様はどのような花をイメージされるでしょうか?
日本などでも観察ができるモウセンゴケ(モウセンゴケ科)、マレーシアのキナバル山やボルネオ島などでも観察できるウツボカズラ(ウツボカズラ科)、ベネズエラのギアナ高地で観察できるヘリアンフォラ(サラセニア科)など、世界各地に食虫植物は生育しています。

 

今回ご紹介する「ムシトリスミレ(Pinguicula longifolia)」は、一見すると淡い紫色の花弁が印象的な可憐な花ですが、食虫植物の一種です。
「スミレ」という名が付く花ですが、タヌキモ科(世界の熱帯から温帯に3属300種以上が分布し、日本にもいくつかの自生種があります)の一種となります。
私もこの花を見つけたときは「スミレの花」と思い近づいて観察を始めたくらいです。

 

ムシトリスミレ(Pinguicula longifolia)は、春に芽が開き、最初の葉が現れます。その後、6~15㎝と比較的不規則な長さまで徐々に成長を続け、淡い紫の不均等な花弁が印象的な花は、初夏に咲き始めます。

 

食虫植物であるムシトリスミレは、花の部分で捕虫するのではなく、葉の部分で捕虫するのが特徴です。
ムシトリスミレの葉の両側には、粘液を分泌する腺を持ち、その粘液で昆虫などを捕えます。ピレネー山脈は、アルカリ土壌(土質)で、窒素分が少ないため、昆虫などから栄養分(窒素分)を得ているのです。
私も初めてピレネー山脈でムシトリスミレの花を観察した際、葉の粘液を指先で触れてみて、想像以上の粘性に驚いたことを今でも覚えています。

 

以前、ピレネー山脈で花の観察をしていた際、現地ガイドよりムシトリスミレの葉は、家畜(主に牛)の傷口に塗る薬に利用されていたという話を伺ったことあります(記憶違いでしたら、申し訳ありません)。
また、この花ブログを作成している際に見つけた情報として、スウェーデンではヤギのミルクで作る発酵乳製品を固めるために、このムシトリスミレの葉を使っているとのことでした。

 

一見すると食虫植物とは思えない可憐な花「ムシトリスミレ」を求めて、是非ピレネー山脈を訪れてみてください。

虫が絡みつくムシトリスミレの葉
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ラモンダ・ミコニ(Ramonda myconi)

本日はスペインのピレネー山脈のフランス側・ガヴァルニー圏谷で観察した「ラモンダ・ミコニ(Ramonda myconi)」をご紹介します。

ラモンダ・ミコニ/オニイワタバコ
(Ramonda myconi)

被子植物 双子葉類
学名:ラモンダ・ミコニ(Ramonda myconi)
和名:オニイワタバコ  現地名:ピレネー・イワタバコ
科名:イワタバコ科(Geseneriaceae) 属名:ラモンダ属(Ramonda)

 

ラモンダ・ミコニ(Ramonda myconi)はイワタバコ科の可憐な花で、原産地はスペインとフランスの国境に聳えるピレネー山脈です。
石灰質の岩場、礫岩の割れ目など、若干湿気の多い場所に自生し、時折思いがけない岩場の斜面などにも咲いているのが観察できます。

 

花弁は紫色(青紫色)は5枚で深く避けており、中央部の黄色い雄しべの部分との色合いが何とも印象的な花です。

草丈は10~15㎝、葉は卵型でロゼット状(地表に葉を平らに並べたように広がる状態)に広がり、葉の縁がギザギザした鋸歯で、表面にうっすらと毛が生えているのが観察できます。

 

イワタバコという名は、葉の形がタバコの葉に似ていることから名付けられました。
イワタバコの葉は昔から胃腸薬などの薬に利用されていました。ピレネー山脈のスペイン側のガイドからは、呼吸器疾患の薬としても重宝されていたという話を聞いた記憶があります。
また、このブログのために調べものをしていると、春のイワタバコの若葉はお浸しや和え物、天ぷらなどの山菜として好まれているという情報もあり、個人的に興味の沸く情報でした。

 

イワタバコ科の花は日本の山やハイキングルートでも観察できますが、ピレネー山脈が原産のラモンダ・ミコニ(Ramonda myconi)も是非ピレネー山脈で観察していただきた花です。
清水が滴り落ちる岩場に咲くラモンダ・ミコニ(Ramonda myconi)の姿は、花好きの方々の心を奪う、思わず足を止めてゆっくりと観察したくなる可憐な花です。

ラモンダ・ミコニ/オニイワタバコ
(Ramonda myconi)
025

サキシフラガ・ロンギフォリア(Saxifraga longifolia)

夏も近づき、いよいよ高山植物のシーズンがやってきました。
北半球では、高山植物と言えば7月というイメージですが、ヨーロッパのピレネー山脈は、アルプス山脈より1ヶ月ほど早い6月に花の見頃を迎えます。

 

本日は、固有種の多いピレネー山脈で観察した花の中で最も衝撃を受けた花であるユキノシタ科の一種の「サキシフラガ・ロンギフォリア(Saxifraga longifolia)」をご紹介します。

サキシフラガ・ロンギフォリア(Saxifraga longifolia)

被子植物 双子葉類
学名:サキシフラガ・ロンギフォリア(Saxifraga longifolia)
英名:King’s crown(王冠)
科名:ユキノシタ科(Saxifragaceae)  属名:ユキノシタ属(Saxifraga)

 

ユキノシタ科の仲間は、非常に大きなグループで400種以上もあると言われています。その多くがアジア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、アフリカに分布し、とくに高山地帯の岩場に生育します。

 

今回ご紹介する「サキシフラガ・ロンギフォリア(Saxifraga longifolia)」は、スペインでは王冠を意味する「コロナ・デ・レイ(Corona de rey)」と呼ばれているそうです。

 

スペインとフランスの国境に跨るピレネー山脈やスペイン東部の山々に生育し、ピレネー山脈では標高700~2,400mあたりの石灰岩の渓谷や、険しい断崖で観察することができるピレネーの固有種です(資料によって北アフリカのアトラス山脈でも自生するというものもありますが・・・)。

 

葉の長さは3~8㎝、幅は3~8㎜でロゼット状(地表に葉を平らに並べたように広がる状態)に広がります。
花茎の長さは30~50㎝もあり、大きな円錐花序(花序の軸が数回分枝し、最終の枝が総状花序となり、全体が円錐形をしている状態)に直径1cmほどの小さな白色の花を多数つけます。大きいものでは何と500以上の花を付けるものもあります。

サキシフラガ・ロンギフォリアの花

 

ハイキングやドライブをしながら、岩場の斜面などでサキシフラガ・ロンギフォリアを見つけた時は「岩場にイソギンチャクが貼りついている」と思ってしまう形状です。

 

このサキシフラガ・ロンギフォリアの形状以外に驚くべき点がもう1つあります。
何と開花までに5~7年(稀に2~3年)を要し、一度花を咲かせ種子が形成されてしまうと枯死してしまうのです。開花後。枯死する前に匍匐枝(ほふくけい:地上近くを這って伸びる茎のこと)が伸びて新苗を生じるようです。

 

そのため、ピレネー山脈に訪れても、場合によってはこのサキシフラガ・ロンギフォリアを観察できないかもしれません。
私が訪れた時は、現地ガイドさん曰く「当たり年」だったようで、道中の岩場の斜面の至るところに咲いていたため、5~7年に一度しか咲かないという案内が信じられませんでした。

ピレネー山脈は、ヨーロッパアルプスにはない固有種の宝庫。フラワーハイキングをしているだけで楽しい場所で、興味の尽きることのない楽園です。ユキノシタ科の花も今回紹介したサキシフラガ・ロンギフォリアだけではなく、たくさんの種類を観察することができます。
ピレネーの固有種やユキノシタ科の花は・・・また後日紹介させていただきます。

サキシフラガ・ロンギフォリア(Saxifraga longifolia)②
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モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)

私の暮らすマンションの入口では管理人さんが様々な花を大切に育てており、季節ごとの花を楽しませてくれます。ここ1、2週間はあじさいの花が見事に咲きそろっており、出勤前の楽しみの1つでした。

本日は「モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)」をご紹介します。

モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)

被子植物 双子葉類   時期:6~8月
学名:Sempervivum montanum
英名:Mountain Housleek 和名:クモノスバンダイソウ
科名:ベンケイソウ科(Crassulaceae) 属名:クモノスバンダイソウ属(Sempervivum)

 

ヨーロッパ南部の山岳地帯に自生し、西はピレネー山脈から東はカルパチア山脈(中央ヨーロッパ・東ヨーロッパの山脈)に分布する多年草です。
標高1,500~3,000m前後の、岩場やガレ場(酸性岩地帯に多いと言われています)に生息し、草丈は5~20㎝ほどです。
根生葉(地上茎の基部についた葉のこと)は、1㎝前後の先の尖った形をし、先の尖った葉が集まり球形となり、次第に外に開きます。
全体的に緑色ですが、その先端部が若干赤みを帯びていることもあります。
これらの球形の根生葉が密集しマット状になり、そこからのびる茎は、先の尖った長さ2㎝ほどの葉が互生して茎全体を覆っています。

 

茎頂には、長さ1㎝ほどの赤紫色した先の尖った花びらを10~15枚付け、1つの茎に3~8個ほどの花を咲かせます。

 

属名にある「クモノス(蜘蛛の巣)」という名は、根生葉の表面に生える腺毛(せんもう:植物の表皮に生じる毛のような突起物で、特殊な液体を分泌する)があることから名付けられたそうですが、このモンタヌム・バンダイソウは腺毛はほとんど付きません。
また属名「Sempervivum(センペルビブム)」は「常に生きる」という意味から、不死のシンボルとされています。※実際は、開花後に身を付けてから枯れてしまいます。

 

このバンダイソウの仲間は、ヨーロッパ・アルプスでは昔から雷避けとして屋根や壁、バルコニーに植えられていたそうです。
※かの有名なカール大帝(西ローマ皇帝を号した、 後の神聖ローマ皇帝の祖)は、自分の所有する建物にこのバンダイソウを屋根に植えるように命令書を出していたとも言われています。

 

この「モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)」は、その葉なの大きさだけではく、その色合いや異形ぶりから非常に目立った花の1つです。ただ、その1つ1つをじっくり観察すると、非常に魅力ある姿をしています。

「モンタヌム・バンダイソウ(Sempervivum montanum)」
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プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)

海外出張のため、しばらくお休みさせていただいておりました「世界の花だより」を本日より再開させていただきます。

皆様は「リンドウの花」と言えば、何色の花を想像されるでしょうか。

通常は、世界の花だよりのブログでもご紹介した「チャボリンドウ(Gentiana acaulis)」のような濃い青色~青紫の色合いをイメージされる方が大半かと思います。
日本では、北海道や尾瀬(以前、私がこの2ヶ所で観察した思い出があります)で見られるようなトウヤクリンドウは他のリンドウ科の花とは違った黄白色の色合いの花を楽しめるリンドウですが、その色合いに負けない驚きを見せてくれるのが、本日ご紹介する「プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)」です。

プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)

被子植物 双子葉類   時期:7~8月
学名:Gentiana Purrurea  英名:Purple Gentian
和名:英名からムラサキリンドウと紹介されていることも
科名:リンドウ科(Gentianaceae) 属名:リンドウ属(Gentiana)

 

プルプレア・リンドウ(Gentiana Purrurea)は、ヨーロッパ・アルプスの草原や牧草地に生息し、草丈は20~60cm、茎頂には2~5つほどの花をつけ、花の長さは3~4cmとなります。
このプルプレア・リンドウを現場で紹介すると、最初はリンドウと信じてもらえない時もあります。それは葉の形状が明らかに他のリンドウと異なるからかもしれません。5~6cmほどの長さの葉が四方に伸びる形状は、確かに他のリンドウとは大きく異なります。

 

この花は、マルハナバチ(丸花蜂)が好むバラのような香りを放ち、マルハナバチ(丸花蜂)は花から花へ飛び回り、受粉を引き受けてくれます。

 

ヨーロッパのレストランなどにあるお酒の1つに「シュナップス(蒸留酒)」というものがあります。本来は、アプリコットや洋ナシなどのフルーツで作られるのですが、リンドウの根を使用して作られるものもあり、最高級のリンドウ・シュナップスは、このプルプレア・リンドウの根を使用して作られています。
リンドウ・シュナップスはお酒として美味しいだけでなく、地方によっては病気(特に胃の病気)に効くと言われています。
虫もこの花を好み、雅の毛虫が堅い根を好んで食べると言われています。

 

「花はほとんど開かない」「雪解けの時期に咲くリンドウのため、自身の保護のため花は開かない」と紹介されることもありますが、もちろん花は開きます。
チャボリンドウや、日本のトウヤクリンドウのように黒い斑点が特徴的で、花の内部がほのかに黄色く、とても印象的な色合いです。
なかなか開花したプルプレア・リンドウに出会うのは難しいかもしれませんが、是非観察できたときには全体の姿と合わせて、ほのかに黄色い内部にも注目をしてみてください。

開花したプルプレア・リンドウ

 

<プルプレア・リンドウに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)

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ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

本日は、ラン科の「ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)」をご紹介します。

ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

被子植物 単子葉類   時期:7~8月
学名:Nigritella nigra ニグリテラ・ニグラ
和名:バニララン 英名:BLACK Vanilla Orchid
科名:ラン科(Orchidaceae) 属名:ニグテリア属(Nigritella)

 

一見すると地味ですが、ラン科の花の中では私がもっとも好きな花が今回の「ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)」です。
初めてこのニグラ・バニラランに出会ったのは、イタリア・アオスタ山麓でした。その時のイタリアのガイドさんから「このランは香りが特徴的なんだ」と紹介され、ガイドさんの奥様もこのニグラ・バニラランが大好きだったそうです。
その時の出会い以来、私もヨーロッパ・アルプスにフラワーハイキングへ出かける際、お客様へ紹介したい花の1つとなりました。

 

ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)は、ヨーロッパの中部から南部にかけて、ヨーロッパ・アルプスでは標高1,000~2,000mの草地に生息するラン科の花で、草丈は5~20cm程度で、葉は非常に細く茎頂に向けて垂直についています。
茎頂に花弁が深紅色の小さな花がたくさんつき、見た目にはたまご型に花が密集しております。

 

注目すべきは「花の向き」です。
普通のラン科は、花の唇弁が下向きであるのに対し、このニグラ・バニラランは唇弁が最上位にあり、上向きになっているのが特徴です。

 

もう1つの注目すべき点は、冒頭でもお伝えした「花の香り」です。
たまご型に密集している花からは、バニラの香りが漂っており、少し離れた位置からもその強い芳香を感じることができます。
ただ、誰もがこのバニラの香りを好むわけではありません。
ヨーロッパ・アルプスに放牧された牛は、このニグラ・バニラランを避けて食べません。間違って牛がこのニグラ・バニラランを食べてしまうと・・・何と、ミルクがブルー色に染まってしまい、この牛乳でつくるチーズやバターなどもバニラの匂いがしてしまうそうです。
また、スイスでは乾燥させたニグラ・バニラランを虫よけとしてタンスの中に置いていたそうで、「衣蛾草(Schabenkrant)」とも呼んでいる地方もあるそうです。

 

一見すると日本ではワレモコウ(バラ科:ワレモコウ属)にも似ていますが、日本にはニグラ・バニラランの近縁種はないそうです。

ニグラ・バニラランは草地一面に群生するといったことはないようですが、花の色合いからヨーロッパ・アルプスを歩いているとすぐに見つかります。
花の観察の際、花の前で腹ばいになり、是非花の香りを感じてみてください。
あまりの香りの良さから、間違えて食べないようにご注意ください。

雨露のついたニグラ・バニララン(Nigritella nigra)

 

<ニグラ・バニラランに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)
スペイン・フランス国境越え 花のピレネー山脈トレッキング

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タマシャジン(Phyteuma orbiculare)

先日、キキョウ科の「バルバタ・ホタルブクロ(Campanula barbata)」をご紹介しましたが、本日は同じキキョウ科でも日本には自生していないタマシャジン属の「タマシャジン(Phyteuma orbiculare)」をご紹介します。

タマシャジン(Phyteuma orbiculare)

被子植物 双子葉類   時期:68
学名:Phyteuma orbiculare
和名:タマシャジン 英名:Round-Headed Rampion

科名:キキョウ科(Campanulacees) 属名:タマシャジン属(Phyteuma)

 

タマシャジンはヨーロッパ・アルプスでは名花として紹介されていることが多く、花の美しさ、花の形状のユニークさもあり、一度観察したら思わず夢中になってしまう花の1つです。私もこのタマシャジンを初めて観察したときは、驚きとともに撮影に夢中になってしまいました。

 

ヨーロッパ・アルプスをはじめ、ピレネー山脈、アペニン山脈(イタリア半島を縦貫する山脈)、バルカン半島など、広く分布する多年草で、標高2,0002,500mの主に石灰岩質の草地や岩場などに生息します。
草丈は2050㎝で、根元の葉も、茎から出る葉も幅広い剣状をしており、茎頂にいくつもの小花が集まり球状となって咲き、中には長く伸びるものもあります。

 

このタマシャジンと出会えた際、注目すべきはその小花の部分です。

小花は、暗紫色のカーブした管状花が1520個集まっており、開花しても完全に開くことはなく、管状花が先端で裂開し、そこから雄しべ、雌しべの順で飛び出しています。そして管の根元だけが開き、雌しべの基部だけが外から観察できるという、非常に変わった咲き方をしています。
日本では、近縁種のシデシャジン(キキョウ科シデシャジン属)がありますが(北アルプスで観察した記憶があります)、花びらの先端は合着しないそうです。

 

花全体が、細かい糸状の花びらが複雑なカーブを描き、繊細で美しい花のように見えるため、とても印象に残る花となります。ヨーロッパ・アルプスでタマシャジンに出会った際には、花の全体像だけでなく、その繊細な形状にも是非注目してみてください。

 

■オバトゥム・タマシャジン(Phyteuma ovatum)
同じタマシャジン属の花の中では、草丈40~100㎝と比較的大型の種です。
集まった小花が偏平に広がるタマシャジン(Phyteuma orbiculare)とは異なり、高く伸びた茎頂に咲く黒くて大きな花の形状は少し衝撃的な印象です。
掲載した写真は下から徐々に管状花が広がり始めている状態のものです。
オバトゥム・タマシャジンと似たような形状をしたもので、スピカトゥム・タマシャジン(Phyteuma spicatum)という種もあり、これはオバトゥム・タマシャジンと似たような形状ですが、黄白色~緑白色をしており、他のタマシャジン属とは違った魅力がある花です。
※写真がなく、また観察できたときに掲載します。

オバトゥム・タマシャジン(Phyteuma ovatum)

 

<タマシャジン属の花々に出会えるツアー>
※ヨーロッパ・アルプス

アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)

※ピレネー山脈
スペイン・フランス国境越え 花のピレネー山脈トレッキング

 

004

タマキンバイ(Trollius europaeus)

本日は「タマキンバイ(Trollius europaeus)」をご紹介します。

タマキンバイ(Trollius europaeus)

被子植物 双子葉類
学名:タマキンバイ(Trollius europaeus) 和名:タマキンバイ
科名:キンポウゲ科(Ranunculaceae) 属名:キンバイソウ属(Ranunculus)

 

ヨーロッパ・アルプスでハイキングを楽しんでいると、色鮮やかな黄色い色合いが印象的なキンポウゲやリュウキンカなど様々なキンポウゲ科の花々に出会うことができます。その中で、容姿がとても印象深いのが「タマキンバイ(Trollius europaeus)」です。

 

タマキンバイは、ヨーロッパの広い範囲と西アジアに分布し、初夏の草原や牧草地で多く観察できますますが、盛夏にはあまり見られません。

 

タマキンバイは、その名の通り、直径約3cmの「玉のような丸み」を帯びており、まるで蕾のような形状をしています。
蕾のような形状をしていますが、花はほとんど開かず、上写真が満開の状態なのです。
色鮮やかな黄色い花びらが10~15枚が重なっており、頭頂部は少し開いていますが、花の内部はほとんど見えません。
以前、山小屋の方に了承を得て、一輪だけ花びらを一枚ずつ取り除いてみると、内部には多数の雄しべが隠れていて、小型の昆虫(ハエ?)がたくさん入っていました。山小屋の曰く、頭頂部の少し開いている部分から小さな虫が出入りしているそうです。
草丈は45~60cmで、直立する茎は上部で分岐し、枝先に通常1個の花を上向きにつけます(稀に2、3個の花をつけるものもあります)。

 

日本国内ではシナノキンバイや、チシマノキンバイソウ、ヨーロッパを含めた海外でも観察できるキンバイソウの近縁種です。

 

群生するとかなりの広がりを見せるため、に鮮黄色のタマキンバイの群生地に出会うと足を止めずにはいられません。ゆっくり足をとめ、その形状にも注目していただきたい花の1つです。

 

<タマキンバイに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
ツール・ド・モンブラン Tour du Mont Blanc(フランス、イタリア、スイス)