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ホテイアツモリソウ(Cypripedium macranthum var. hotei-atsumorianum)

先日、大阪城公園にて花見へ行ってきました。見頃の時期、さらには週末だったこともあり、人の多さに圧倒されてしまいましたが、キレイな桜とともに桃園では数種類の桃の観察も楽しむことができました。

 

本日ご紹介するのは、花の姿、形状が非常に見栄えが良く、地域変異のバリエーションが多いアツモリソウの一種である「ホテイアツモリソウ(Cypripedium macranthum var. hotei-atsumorianum)」です。
日本では「レブンアツモリソウ(礼文敦盛草 C. marcanthos var. rebunense)」が圧倒的な知名度ですが、ホテイアツモリソウは、花全体の色合いがとても美しく、観察を続けて行く中で、どんどん心が奪われていくアツモリソウです。

ホテイアツモリソウ:布袋敦盛草

被子植物 単子葉類
学名:Cypripedium macranthos var. hotei-atsumorianum
和名:ホテイアツモリソウ(布袋敦盛草)
科名:ラン科(Orchidaceae) 属名:アツモリソウ属(Cypripedium)

 

アツモリソウは、漢字では「敦盛草」と書きます。この漢字名の由来は、袋状の唇弁(しんべん)の部分が、平敦盛が背負った母衣に見立てて名付けられました。

 

アツモリソウの中でも日本が世界に誇れるホテイアツモリソウは、本州中部(長野:釜無、大鹿、経ヶ岳、霧ヶ峰、戸隠、安房、山梨:櫛形、八ヶ岳、新潟、岩手)や北海道に分布しており、海外では中国やロシアに分布しています。
※上の写真は、ロシアのサハリン南部で観察したものです。
盗掘・乱獲のために、既に絶滅してしまっている地域も多く、日本では1997年にレブンアツモリソウに相次いで特定国内希少野生動植物指定を受けました。

 

草丈は20~50cm、花は袋状で、茎の頂上に通常1つ、まれに2つの花つけこともあるそうです。径は6~10cm、幅の広い楕円形(時に円形に近いものがある)の葉を4~5枚互生(1つの節には1枚の葉しかつかない)し、アツモリソウに比べて全体に大きい印象を受けます。
色合いも、アツモリソウより濃く、桃色から紅色、黒ずんだ暗濃紅色の花と非常に多くの地域・個体バリエーションがあります。

 

サハリン南部で見つけたホテイアツモリソウの群生地。お客様とともに夢中になって観察したことを今でも覚えています。
日本でも観察できるアツモリソウですが、サハリンの地で観察するホテイアツモリソウも、また格別の美しさでした。
是非、ホテイアツモリソウを求めてサハリンの地へ。

ホテイアツモリソウ:布袋敦盛草

<ホテイアツモリソウが観察できるツアー>
花のサハリン紀行

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エーデルワイス(Leontopodium alpinum)

本日は、アルプス三大名花の1つである「エーデルワイス(Edelweiss)」をご紹介します。
被子植物 双子葉類
学名:Leontopodium alpinum
和名:セイヨウウスユキソウ
科名 : キク科(Asteraceae) 属名 : ウスユキソウ属(Leontopodium)

 

エーデルワイスの名はドイツ語の「edel」(高貴な、気高い)と 「weiß」(白)に由来し、ドイツ語圏以外でも花の白い外観は「純潔、純愛の象徴」とされ、ルーマニアでは「floarea reginei」(女王の花)とも呼ばれています。

 

ヨーロッパ・アルプスが生息地として有名ですが、初めからヨーロッパ・アルプスに分布していた訳ではなく、氷河時代(今から2万年前)も前にシベリアから渡ってきた花と言われています。実際、Leontopodium alpinumとは別種のエーデルワイスが、西はピレネー山脈から東はトルコの山岳地帯までに生育しており、中央アジアの高山帯、シベリア、パミール高原、西ヒマラヤに産するものまで確認されております。
日本でもミヤマウスユキソウ(Leontopodium fauriei)やエゾウスユキソウ(またはレブンウスユキソウLeontopodium discolor)はご存知かと思いますが、こちらも今回ご紹介したエーデルワイスの別種となります。

 

エーデルワイスは、先端に白い綿毛に包まれた星形の花を咲かせます。観察していると星型の全体が花のように感じてしまいますが、花びらに見えるのは葉っぱが変化したもので苞葉(ほうよう)といい、花本体は苞葉の中心にあるポツポツとした丸い粒(径5-6mm)のような部分なのです。
間近で観察すると、苞葉や茎にも白い綿毛が生え、乾燥や強い日射しから植物を守っています。
ヨーロッパ・アルプスでは、昔から純愛の象徴として摘み草にされてしまい、一時はほとんど観察できなくなってしまいました。現在では保護意識が進み、少しずつ増えてきているそうです。

 

<エーデルワイスの探し方>
エーデルワイスは高山帯の石灰岩地や砂礫地を好みます。
実はエーデルワイスを探す際には、アルペンアスター(Aster alpinus ミヤマノギク)を手掛かりにします。アルペンアスターが咲かない場所にエーデルワイスが咲くことは滅多にありません。アルペンアスターが咲いているポイントに遭遇した際、辺りをゆっくり観察してみてください。

 

<エーデルワイスに出会えるツアー>
アルプス三大名峰展望 花のアオスタ山麓ハイキング(イタリア)
花のドロミテハイキング(イタリア)
ドロミテ周遊トレッキング(イタリア)
花のモンブラン山麓ハイキング(フランス、イタリア)
究極のマッターホルン展望トレッキング(スイス)