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キタノコギリソウ(北鋸草:Achillea alpina subsp. japonica)

本日は「キタノコギリソウ(北鋸草:Achillea alpina subsp. japonica)」をご紹介します。

 

キタノコギリソウ(北鋸草:Achillea alpina subsp. japonica)

 

被子植物 双子葉類
学名:Achillea alpina subsp. japonica
科名:キク科(Asteraceae)
属名:ノコギリソウ属(Achillea)

 

キタノコギリソウ(北鋸草)は、本州の中部地方以北から北海道にかけて分布し、海外では南千島、サハリンに分布します。海岸から低山の草地などに生育します。

 

草丈は50㎝~100㎝にも及ぶものもあり、私が9月に北海道・サロマ湖周辺で観察した際も腰の位置くらいで観察できました。茎の部分にほんの少しだけ産毛が確認することもできました。

 

葉は非常に細長く、長さは5~10㎝弱の先端部が少し尖った葉が互生します。
葉の縁が細かく羽状に浅裂しているのが特徴で、この葉の形状が「鋸草」と呼ばれる所以です。
ノコギリソウは種類が多く、そんな中でノコギリソウ、エゾノコギリソウ、キタノコギリソウは非常に似ていて、判別が難しいところです。
ある資料には、キタノコギリソウの葉の切れ込みは、ノコギリソウより浅く、エゾノコギリソウより深いとありました。また、葉の付け根に葉片(葉身:葉の主要部分)が1~2対あるのが特徴という資料もありましたが、その点は確認できず、次回の宿題です。

 

花期は7~9月。花は茎頂に花柄を伸ばし、直径1㎝ほどの小さな花を多数咲かせて密集する、見た目には小さな花が密集してドーム型に広がっています(散房花序)。
花の中心部(上写真で黄色い部分)は、筒状花(とうじょうか:花弁が筒状になっている花)を6~8枚の白や淡いピンク色の舌状花(ぜつじょうか:花弁の先端が広がり舌のような形になっているもの)が取り囲んでいます。

 

花の形状に関しては、このブログを作成している際に改めて勉強になりました。
キク科の花は、多数の花びらが円形に並んでいるように見え、普通はこれを以て一つの花だと考えがちですが、実際には個々の花びらと見えるのは、それぞれが一つの花なのです。花に見えるものは、多数の花が集まったものであって、つまり花序であると考えなければいけません。
分解してよく観察すれば、それぞれに雄しべや雌しべがあり、小さいながらも花の構造を持っているのが分かるという資料もありましたが、一度ゆっくり構造を観察したいものです。
「何度も観察して知っている花」と思っていても、まだまだ勉強が必要だと、今回のブログを作成して感じました。

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エゾオヤマリンドウ (蝦夷御山竜胆:Gentiana triflora var. japonica f. montana)

先日、西遊通信を発行させていただき、弊社ホームページでも12月から冬にかけてのツアーを次々と発表しております。
私も春の訪れを感じる花々を観察を楽しむことができるツアーを現在造成中です。

 

本日は、9月末に訪れた北海道の大雪山・層雲峡で観察した「エゾオヤマリンドウ (蝦夷御山竜胆)」をご紹介します。

 

エゾオヤマリンドウ (蝦夷御山竜胆)

 

被子植物 双子葉類
学名:Gentiana triflora var. japonica f. montan
科名:リンドウ科(Gentianaceae)
属名:リンドウ属(Gentiana)

 

エゾオヤマリンドウ(蝦夷御山竜胆)は、日本原産のリンドウであり、北海道と本州では山形県より以北に分布します。主に亜高山~高山帯、湿った草地などに生育します。
同じリンドウ科の花で似た名称のエゾリンドウ(蝦夷竜胆:Gentiana triflora var. japonica)がありますが、エゾオヤマリンドウはエゾリンドウの高山種となります。また、同じくオヤマリンドウ(御山竜胆:Gentiana makinoi)もありますが、これら3つの区別は非常に難しいです。

 

エゾオヤマリンドウの草丈は20~40㎝で直立し、低地に生育するエゾリンドウに比べて少し草丈が低くなります。
葉は長さが5~8cmほどで披針形、長楕円形、先端が尖った形状をしており、茎に対生し、葉の裏面は表面に比べて若干白色を帯びています。鮮やかな緑色の葉ですが、秋になると葉は少し紅葉を思わせる色合いへ変化していきます。

 

花期は8~9月、茎頂や茎上部に少数の花を束状に咲かせます。秋の訪れを知らせる花ですが、7月中旬頃から咲きだす個体もあるそうです。
花はリンドウらしい濃青紫色の色合いで長さ3~5㎝弱の釣鐘型の形状で、先端が浅く5裂していますが、私が観察したときは先端が閉じてしまっていたので5裂している部分は確認することができませんでした。他のリンドウ科の花のように目一杯花が開くわけではなく、開花時は先端部がほんの少しだけ開く程度です。黒岳ロープウェイの係員さんに伺ったところ「花が咲くのは晴れた日の日中だけで、雨や曇りのときは日中でも花は閉じてしまっています」とのことでした。
花を支える萼片が濃紫色で長さはバラバラでした。

 

今回エゾオヤマリントウを観察していると周囲に白色のリンドウが咲いており、別のリンドウ科の種類かと思っていましたが、前述の黒岳ロープウェイの係員さんに伺ったところ「エゾオヤマリントウは時折白花種も咲かせる」とのことでした。

 

高山に咲く「リンドウ」は漢名で「竜胆」と書きますが、リンドウの根が非常に苦く、熊の胆よりももっと苦いことから、熊よりランクの高い竜(架空の動物)の胆の苦さにあて、竜胆という漢字名がついたと言われています。

 

今回、北海道の層雲峡で黒岳ロープウェイへ乗車し、その後リフトへ乗り換えて黒岳7合目を目指しながら、秋の紅葉を楽しむツアーでした。今年は色付きが非常に遅く、想像していたような紅葉ではありませんでしたが、それでも所々の紅葉・黄葉は素晴らしいものでした。
また、リフト乗車時や黒岳7合目周辺には秋の訪れを告げるエゾオヤマリントウがたくさん咲いており、北海道の秋を楽しむことができました。

 

エゾオヤマリンドウ (蝦夷御山竜胆)の白花種
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チングルマの穂(Sieversia pentapetala)

本日、日本外務省より新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて全世界が対象になっていた渡航自粛を求める危険情報を引き下げる方向で検討を進めているというニュースが流れました。海外ツアー再開に向けて半歩前進した、嬉しいいニュースでした。

 

本日は、以前「075.チングルマ(Sieversia pentapetala)」の花をご紹介しましたが、先日「大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草」に同行させていただいた際に「チングルマの穂」を観察することができましたので、ご紹介します。

 

チングルマの穂(Sieversia pentapetala)

 

被子植物 双子葉類
学名:Sieversia pentapetalaまたはGeum pentapetalum
科名:バラ科(Rosaceae)
属名:チングルマ属(Sieversia)またはダイコンソウ属(Geum)

 

前回もご紹介しましたが、チングルマ(Sieversia pentapetala)は北海道や本州の中部地方以北に分布し、海外ではサハリンやカムチャッカ半島、アリューシャン列島に分布する落葉小低木の高山植物です。

 

北海道・大雪山を彩る紅葉・黄葉は、木はナナカマドが紅葉の、ダケカンバが黄葉の主役となります。ただ、森林限界を超えるエリアとなると、紅葉の主役は「草紅葉」となり、その主役はチングルマとなります。
草紅葉に関しては、大雪山・銀泉台では、アラスカなどで「アルパイン・ベアーベリー」と紹介される「ウラシマツツジ(裏縞ツツジ︓ツツジ科の落葉⼩低⽊)」も真っ赤に染まります。

 

チングルマは、花が終わるとおしべが長く伸びはじめ羽毛状になって残り、果実を付けます。果期になると花柄は7~10㎝ほどになり、タンポポの種のように風によって散布され、チングルマの果実になります。果期になると花柄は7~10㎝ほどになり、タンポポの種のように風によって散布されます。
上の写真をご覧いただくとイメージが付きやすいかと思いますが、羽毛上の果実の形が子供の風車(かざぐるま)に見えたことから稚児車(ちごくるま)から転じて付けられたと言われています。

 

すべての花がそうではありませんが、花期が終わっても、色合いなどの印象が変化していく姿を観察すると、その花の良さを改めて感じることがあります。
9月末に北海道・大雪山国立公園へ訪れ、旭岳の麓の散策を楽しみました。決して天候に恵まれたとは言えませんでしたが、チングルマの草紅葉は十分に楽しませていただきました。

 

大雪山・旭岳の麓がチングルマの草紅葉で赤く染まる
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アッケシソウ(厚岸草:Salicornia europea)

先日「日本で最も早い紅葉を観る!大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草」に同行させていただき、私自身も数十年ぶりに訪れた大雪山国立公園の大自然をお客様と共に満喫してきました。

 

本日は、能取湖やサロマ湖で観察した「アッケシソウ(サンゴソウ)」をご紹介します。

 

アッケシソウ(厚岸草:Salicornia europea)

 

被子植物 双子葉類
学名:Salicornia europea
科名:ヒユ科(Amaranthaceae)/アカザ科(Chenopodiaceae)
属名:アッケシソウ属(Salicornia)
別名:サンゴソウ
海外名:シーアスパラガス(Sea Asparagus)、シービーンズ(Sea beans)、
シーピクルス(Sea pickles)、サムファイアー(Samphire)、
パスピエール(仏:Passe Pierre)

 

アッケシソウ(Salicornia europea)は、1891年(明治24年)、厚岸湖の牡蠣島で初めて発見・採取され、その後、発見・採取された厚岸湖の名をとり「アッケシソウ」と名付けられました。
北海道を代表する塩生植物の1つ。北海道東部に分布し、本州では瀬戸内海沿岸や東京の埋め立て地、岩手県や宮城県での発見例もあります。

 

アッケシソウ(Salicornia europea)は、ヒユ科の一年草。資料によってはアガサ科と表記されているものもあります。アガサ科は独立の科として扱っている資料も多いようですが、APG植物分類体系ではヒユ科の中に含まれ、ヒユ科のアカザ亜科が設けられているものもあるようです。

 

皆さんは「塩性植物」というもの、言葉をご存知でしょうか?
塩性植物とは、一言で言えば「高塩濃度に耐えうる種子植物」です。
海潮の満ち引きによって定期的に冠水する湿地帯や干潟、河口や湖口の汽水帯など、水の影響がある地域で生育します。海外では、塩湖、砂漠の湿地などでも生育し、塩害で放棄された耕作地にも生育するという資料もありました。
通常、植物は台風の影響などで海水が吹き込んでしまうと植物が枯れるという印象、塩害と考えてしまいますが、塩性植物という高濃度の海水にも負けず生育する植物もあるという点は非常に興味深いものです。ちなみに、マングローブも塩生植物に分類されます。
アッケシソウの学名「Salicornia europea」は、ラテン語の「Sal(塩)」と「cornu(角笛)」の組み合わせのようです。

 

草丈は10~30㎝で多肉質、茎は円柱型で直立します。
真っ赤に群生するアッケシソウの群落地の写真だけでは想像は付かないかもしれませんが、しっかり観察すると円柱状の茎には節があり、その節から茎と同じような円柱形の枝が対生します。

 

アッケシソウと言えば、真っ赤な色合いのイメージが強いですが、アッケシソウの茎は濃緑色。
5月頃から緑色の芽を発芽し、夏~秋の間に20~30㎝までに成長し、秋になると茎全体が徐々に赤く色付いてきます。アッケシソウの色素は、同じヒユ科に属するテンサイ(サトウダイコン、ビートのこと)の根で合成される色素と同種のベタシアニンとのことです。
茎と枝が多肉質で節があり、秋になると赤く色付く、その姿が宝石サンゴを思わせることが「サンゴソウ」と呼ばれる所以です。

 

アッケシソウは花も咲かせます・
花期は真っ赤に色付く前、8~9月。節の境目に3個ずつ、非常に小さな白い花を咲かせます。私も写真でしか見たことがありませんが、言われなければ判らないくらい小さく、咲いているというより「数㎜の粒が飛び出している」ような見た目でしたが、一度、虫メガネを持参して観察してみたいものです。

 

ヨーロッパなどでは野菜として販売されており、私もフランス・パリのマーケットで見たことがあります。さっと塩ゆでしてサラダとして食することが多いようで、最近では日本でも販売されているそうです。海外では、シーアスパラガス(Sea Asparagus)、シービーンズ(Sea beans)、シーピクルス(Sea pickles)、サムファイアー(Samphire)、パスピエール(仏:Passe Pierre)など、呼び名は様々です。

 

アッケシソウは、環境庁のレッドデータブックでは絶滅危惧IB類に分類されています。
環境庁のレッドデータブックのHPによると、かつて本州の宮城県、四国の愛媛県や徳島県にも生育が確認されていたが、海岸開発が主原因で減少、絶滅してしまったとのことです。
初めて発見・採取された厚岸湖・牡蠣島でも地形が変化し、干潮時でも水没している状況になり、回復が見込めないことから平成6年に天然記念物指定が解除されたそうです。
そのようなアッケシソウを後世に残そうと厚岸町教育委員会文化財係が中心となり試験栽培地の造成を実施したり保護・増殖に取り組んできたそうです。
2016年からは、厚岸町海事記念館の前庭のプランターで土質や肥料などの条件を変えて試験栽培を行っているそうです。
厚岸町海事記念館のHPに保護育成活動が随時更新されており、観察日記のようで非常に面白いので、是非ご覧ください。

 

色付き始めのアッケシソウ(厚岸草:Salicornia europea)
アッケシソウ群生地である能取湖
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エゾイソツツジ(蝦夷磯躑躅:Ledum palustre ssp.diversipilosum)

先日、北海道・大雪山麓に引き続き「秋の乗鞍・上高地を撮る」に同行させていただき、お客様と乗鞍の紅葉や上高地の自然の撮影を満喫させていただきました。

 

本日はエゾイソツツジ(蝦夷磯躑躅:Ledum palustre ssp.diversipilosum)をご紹介します。

 

エゾイソツツジ(蝦夷磯躑躅:Ledum palustre ssp.diversipilosum)

 

被子植物 双子葉類
学名:Leontopodium discolor
和名:蝦夷磯躑躅
別名:イソツツジ、変種カラフトイソツツジ(変種樺太磯躑躅)
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:イソツツジ属(Ledum)

 

エゾイソツツジ(蝦夷磯躑躅)は、北海道、東北の高山帯に自生し、主に岩礫地や湿地などに自生します。資料によっては北海道固有というものあります。
私は現場で観察したことはありませんが、北海道では川湯温泉・硫黄山麓の群落が有名です。私は大雪山・旭岳の山麓でフワラーハイキングを楽しんだ際に観察したのを覚えています。

 

エゾイソツツジ(蝦夷磯躑躅)は、ツツジ科の常緑小低木で、樹高は30~100㎝ほどで自然環境(風の強弱など)によって樹高に差が生じるようです。
葉は長さが3~5㎝ほどで細長い披針形、少し厚みがあり、葉裏や若い枝の部分に茶褐色の毛が密集しているのも確認できます。

 

花期は6~7月。花の直径は1㎝ほどと小さく、花弁は5枚。10本の雄しべが5枚の花弁の中央から真っすぐに伸びているのが印象的ですが、雄しべの真ん中にのびる雌しべも印象的です。真っ白な雄しべの花糸に比べ、緑色の雌しべは子房(将来種子になる部分)がぷっくりと膨らみ、花柱と柱頭(花粉がつく部分)もハッキリと判る姿をしており、まるで花のつくりを紹介する図鑑のような花の構造をしています。
枝の先端に花を密集して咲かせ、直径5~7㎝ほどの球体(ぼんぼりのような姿)となります。

 

エゾイソツツジ(蝦夷磯躑躅)は、別名を変種カラフトイソツツジ(変種樺太磯躑躅)や、単に、イソツツジとも言います。 様々な資料で名前につく「イソ」は、エゾが誤って(転訛して)「イソ」となったと紹介されています。海岸で咲くからではありません。

 

以前、サハリンへ添乗させていただいた際、東北地方からシベリアまでに自生する常緑小低木「カラフトイソツツジ」とガイドさんが案内していたものを観察しました。
カラフトイソツツジを調べていると、エゾイソツツジと同じと説明している資料や、葉裏に白毛の多いものを変種エゾイソツツジと呼んでいたという資料もあり、そのあたりの違いが難しいところでした。今後、北海道へ行った際にその違いを伺い、結果報告をさせていただきます。

サハリンで観察した「カラフトイソツツジ(樺太磯躑躅)」

 

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キバナシャクナゲ(黄花石楠花:Rhododendron aureum)

北海道・旭岳で、その後に富士山でも初冠雪が観測されました。
先日北海道・旭岳に初冠雪直後に訪れ、チングルマの葉紅葉と共にうっすらと積もる雪や葉先が凍るハイマツ帯の風景を楽しむことができました。

 

本日はキバナシャクナゲ(黄花石楠花:Rhododendron aureum)をご紹介します。

 

キバナシャクナゲ(黄花石楠花:Rhododendron aureum)

 

被子植物 双子葉類
学名:Rhododendron aureum
和名:黄花石楠花
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:ツツジ属(Rhododendron)

 

キバナシャクナゲ(黄花石楠花:Rhododendron aureum)は、高山帯の自生する常緑低木。
日本では北海道から中部地方にかけて分布し、北海道では標高1,000~2,000m、本州では2,500~3,000mに自生します。北海道は高緯度に位置していることから本州の3,000m級の山岳に匹敵する自然環境があるため、自生標高に差が生じます。
海外ではシベリアの東部、朝鮮半島北部、カラフト、千島列島、カムチャツカなどの寒冷地に広く分布します。
私は、木曽駒ケ岳の千畳敷カールから険しい岩山である宝剣岳を登頂後、別ルートを周遊するかたちで極楽平へ向かった際に大群落とはいきませんでしたが、たくさんのキバナシャクナゲを観察したのを覚えています。

 

樹高は20~100㎝、風の強い稜線などに自生するものは枝が地面をはう様に広がるため樹高が低くなり、風の弱い山腹に自生するものは枝が斜上するため樹高が少し高くなります。エリア、自然環境によって樹高に差が生じます。今回掲載した写真は弊社森田が北海道の大雪山系・銀泉台で観察したもののため、樹高が低くなっています。

 

葉は長さが5㎝ほどで厚みがあり、細長い楕円形をし、少し光沢が確認できます。葉は無毛で、葉の縁が葉裏に向かって少し巻き込んでいるのが特徴的です。

 

花期は6~7月。「キバナシャクナゲ」という名前ですが、白色に近い淡黄白色をしており、花は直径3~4㎝ほどで漏斗型で5中裂し、枝先に2~5個ほど密集して花をつけます。
上写真でも判る通り、花冠の基部付近に茶色い斑点が多数確認できます(私も気に掛けたことがなかったので、次回観察の際には確認してみたいと思います)。
10本の雄しべが花弁から突き出ており、雌しべの子房に少し毛が生えているのが確認できます。
キバナシャクナゲという名の通り、黄色となるのは開花前のつぼみの状態のときだけです。
花の終わりには赤みがさし、花後には長さ1.5㎝ほどの蒴果を付けます。

 

「しゃくなげ」という名の由来は、枝が曲がっていて真っ直ぐな部分が1尺(約30.3cm)にもならないことから「シャクナシ」、これがなまった言葉が「しゃくなげ」となったという説が有力と言われています。

シャクナゲと言えば、真っ先にネパールやブータンを思い出しますが、今回キバナシャクナゲのブログを作成しているうちに、日本でゆっくりシャクナゲを観察してみたいと感じました。

キバナシャクナゲ(黄花石楠花)の群落
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キバナシオガマ(黄花塩竃:Pedicularis oederi)

現在、「大雪山山麓一周と能取湖のサンゴ草」のツアーに同行させていただいており、秋の紅葉と共にわずかに残る秋の花も楽しんでいます。

また後日、このブログで紹介させていただきます。

 

本日は「キバナシオガマ(黄花塩竃:Pedicularis oederi)」をご紹介します。

 

キバナシオガマ(黄花塩竃:Pedicularis oederi)

 

被子植物 双子葉類
学名:Pedicularis oederi
科名:ハマウツボ科(Orobanchaceae)
属名:シオガマギク属(Pedicularis)

 

キバナシオガマ(黄花塩竃)を含むシオガマギク属は、ハマウツボ科に分類されます。資料によってはゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)と記載のあるものもあり、私自身もゴマノハグサ科という認識を持っていました。これはいくつかある分類体系によるもののようです。

 

キバナシオガマは北半球の高山帯や寒冷地の礫地や草地に分布し、日本国内では北海道の大雪山の一部にのみ生育します。私も以前、大雪山縦走登山ツアーの添乗の際、昼食タイムの際に観察したのを覚えています。今回使用した写真も弊社森田が大雪山・銀泉台で観察・撮影したものです。

 

先日ご紹介したレブンシオガマなど、シオガマの花の種類は多く、日本国内にも15種ほど分布し、その多くが日本固有の種です。そんな中でも黄色の花を咲かせる種はキバナシオガマのみです。数も少ないことから、絶滅危惧ⅠB類(EN)に指定されています。
海外では黄色のシオガマギク属の花は比較的観察され、以前に紹介したペディクラリス・ロンギフロラ・トゥビフォルミス(Pedicularis longiflora tubiformis)もその1つです。

 

草丈は10~20㎝で直立し、茎は根の部分で分枝します。
葉は長さ1~1.5㎝で全体的に根元に集中し、羽状に切れ込みが入っています。ただ、茎の上部に向かって付く葉もあり互生しています。
また、根元にある葉は皺の寄ったように見える形状をしているのも特徴的です。いつの日か観察した際にお客様が「かわいい毛虫みたい」って表現されたことを今でも覚えています。

 

花期7~8月、花は長さ2㎝ほどで淡いレモン色の花で小鳥の嘴を思わせる上唇の先端が赤褐色(茶色に感じることも)という色合いで、シオガマの花特有の形状が見られます。茎の上部から茎頂に総状花序を作り、10個ほどの花を密集して付けます。

 

ある資料にシオガマ(塩竃)という和名の由来は、シオガマは花だけでなく葉まで(浜で)美しいことから、海辺で趣のある塩竃(海水を汲み入れて塩を精製するかまど)の名がついたと言われているそうです。私も初めて知った由来でした。

 

キバナシオガマ(黄花塩竃:Pedicularis oederi)②

 

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エゾキスゲ(蝦夷黄菅:H. lilioasphodelus var. yezoensis)

ついに、10月1日以降出発のツアーから「東京都除外が解除」されることが決定しました。西遊旅行では、本日9月18日より対象ツアーのキャンペーン価格での販売を開始いたします。これを機会に是非とも国内ツアーもご検討ください。
私のおすすめツアー:錦江湾に浮かぶ桜島と鹿児島の2つの半島を巡る旅
※菜の花の咲く指宿より開聞岳を、椿の咲く仙巌園より桜島を展望!

 

本日は「エゾキスゲ(蝦夷黄菅:H. lilioasphodelus var. yezoensis)」をご紹介します。

 

エゾキスゲ(蝦夷黄菅:H. lilioasphodelus var. yezoensis)

 

被子植物 単子葉類
学名:H. lilioasphodelus var. yezoensis
科名:ススキノキ科(Xanthorrhoeaceae)
属名:ワスレグサ属(Hemerocallis)
※旧科名のユリ科の時の学名は「Hemerocallis flava var. yezoensis」

 

エゾキスゲ(蝦夷黄菅)と言えば、思い出されるのが北海道・小清水原生花園です。
十数年前の7月、バスガイドさんが小清水原生花園へ向かう道中でエゾスカシユリとエゾカンゾウの花の説明をしてくれていたため、私を含め、車内のお客様は胸が高鳴る想いで小清水原生花園に到着しました。オレンジ色のエゾスカシユリやエゾカンゾウの花も確認できたのですが、それ以上に目をひいたのが鮮やかなレモン色のエゾキスゲでした。緑鮮やかな原生花園に一際鮮やかな色合いで群生するエゾキスゲに皆が心を奪われたことを今でも鮮明に覚えています。
今回使用する写真は弊社森田が7月に撮影したものですが、やはり小清水原生花園で撮影したものだったようです。

 

エゾキスゲは北海道や南千島に分布し、変種はユーラシア北部などにも広く分布します。
エゾキスゲは、ユリ科(Liliaceae)という認識でしたが、現在APG分類ではススキノキ科(Xanthorrhoeaceae)に分類されています。エゾキスゲのことを調べなおしている際に「ユリ科」と記載されているものがほとんどでしたが、ここ数年で「ススキノ科」とされ、学名も「H. lilioasphodelus var. yezoensis」となったそうです。

 

草丈は50~80cm(直立)にもなり、葉は長さが幅は5~15mm、長さは30~50cmと長くて線形、葉が先端へ向かうにつれて垂れ下がったように下を向いているのが「ユリ科」らしい特徴です(ススキノ科です)。葉には腺毛などはなく、光沢も観られません。

 

花期は6~8月。花は茎頂に短い花柄をつけた先に5~10個ほど咲かせ、花被片が6枚。これまで幾度かご紹介しましたが、ユリの花は6枚の花被片のうち、外側の3枚が萼、内側の3枚が花弁です(ただ、今はエゾキスゲはススキノ科です)。
花被片の長さは10cm弱と大きく、何より印象的なのがその色合いです。鮮やかな黄色は「レモンイエロー」と表現されることが多いです。

 

以前、原生花園の係員さんに「エゾキスゲの花は夕方に開花し、翌日の昼頃にはしぼむ一日花」と教えてもらいました。ちなみにゼンテイカ(和名:ニッコウキスゲ)は朝に開花し、夕方にしぼむ一日花です。
また、色々と調べていると、旧学名(Hemerocallis flava var. yezoensis)の「Hemerocallis(ワスレグサ属)」はヘメロカリスと読み、ギリシャ語の「hemera(一日)&callos(美)」が語源ということです。

 

エゾキスゲやゼンテイカ(ニッコウキスゲ)、以前ご紹介したユリ科の花々は、群生している風景と出会うと、思わず歓喜の声を挙げ、夢中になって観察してしまう魅力のある花でもあります。群生する風景も魅力的ですが、機会があれば是非1輪ずつゆっくりと観察してみてください。
それにしても、エゾキスゲの花はなぜススキノ科となったのでしょうか…。

 

エゾキスゲ(蝦夷黄菅)の群落

 

<これまでご紹介したユリ科の花々>
030.マルタゴン・ユリ(Lilium martagon)
031.ピレネー・ユリ(Lilium pyrenaicum)
054.クロユリ(Fritillaria camschatcensis)
070.カノコユリ(鹿の子百合:Lilium speciosum)
071.ニシノハマカンゾウ(西の浜萱草:Hemerocallis fulva var. aurantiaca

 

 

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アオノツガザクラ(青の栂桜:Phyllodoce aleutica)

少しずつ涼しくなり、夜には秋の虫の音色も聞こえてくるようになりました。皆様体調など崩されず、お過ごしでしょうか。Go Toトラベルがようやく東京都への旅行と都内に住んでいる皆様の旅行を10月1日から対象に加える方針を明らかにされました。10月以降、日本各地で紅葉を楽しむことができるツアーも発表しておりますので、是非ご検討ください。
私のおすすめツアー:原生林・芦生の森と京都の奥座敷・鞍馬と貴船

 

本日は「アオノツガザクラ(青の栂桜:Phyllodoce aleutica)」をご紹介します。

 

079.アオノツガザクラ(青の栂桜:Phyllodoce aleutica)

 

被子植物 双子葉類
学名:Phyllodoce aleutica
科名:ツツジ科(Ericaceae)
属名:ツガザクラ属(Phyllodoce)

 

本日の写真は弊社森田が北海道の大雪山・銀泉台で観察したものを掲載させていただきます。私も以前に山形の月山でのフラワーハイキングや大雪山でのフラワーハイキングの際に観察しました。

 

アオノツガザクラは、ツツジ科ツガザクラ属の高山に自生する常緑小低木です。
日本では、北海道から本州中部地方以北に分布し、高山帯の適度に湿り気のある岩場や草地に生育します。北海道ではツガザクラ属が3種が自生していますが、エゾノツガザクラとナガバノツガザクラは南限が東北地方とされておりますが、アオノツガザクラは白山など日本アルプスでも観察できます。海外では、千島列島やサハリン、カムチャッカ半島、アラスカにも分布します。

 

草丈は10~30㎝、葉は長さが1㎝前後で線形の葉が密集しており、葉には少し光沢も確認でき、縁にはわずかに鋸歯も確認できます。

 

花期は7~8月、2㎝ほどの花柄にはわずかな腺毛が生え、長さ1㎝弱の壺型の白く(または淡い黄緑色)可愛らしい花が枝先に10個前後、下向きに花を咲かせます。
萼片が緑色で長さ5㎜ほどで花冠の中央部分までを包むようについており、こちらにも腺毛が確認できます。エゾノツガザクラと同様、花の先端(キュっとしぼんだ部分)が浅く5裂して反り返っているのが可愛らしさを演出しているように感じます。
花は下向きに花を咲かせるのですが、花が終わり実となると花柄が起き、実は上向きになり、群生して並んでいると非常委印象的な風景となります(私も写真などでしか見たことがありません)。

 

アオノツガザクラの名前は、大半の資料では栂の木に似た葉と黄緑色の花から「青の栂桜」と名付けれらたとありますが、ある資料に「花の色が黄緑色なのになぜ青?」と興味深い由来の話が掲載されていたので、ご紹介します。
その資料によると青森、新潟、岐阜、福岡、沖縄などでは「あを」は黄色をも意味し、おそらく古代においては白や赤でない色は幅広く「あを」と言っていたのではないかということでした。緑色に対しての青という表現は現在でもしばしば使われているそうで、その影響でこの花も「青の」と付けられたのかもしれないということでした。

 

先日ご紹介したエゾノツガザクラとコエゾツガザクラ、今回のアオノツガザクラは小さいながら壺型の可愛らしい花であり、群生した花を見つけると心躍る風景です。3つのツガザクラ属の花が群生している場所を訪れ、色合いの違いや花の形状の違いをゆっくり観察してみたいものです。

 

アオノツガザクラ(青の栂桜:Phyllodoce aleutica)②
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エゾウスユキソウ(レブンウスユキソウ:Leontopodium discolor)

ようやく過ごしやすい気温となり始めましたが、若干不安定な天気が続く日々です。
そんな天候に負けず、弊社も一丸となって年末年始や冬の国内ツアーなど、日々ツアー造成に励んでおります。弊社ホームページやメールマガジンなどで随時発表させていただきます。現状で発表しておりますツアーも含め、是非ご検討ください。
西遊旅行 日本(国内旅行)ツアー一覧
私のおすすめツアー:冬の奇跡 美瑛の雪原とオホーツクの流氷世界 

 

本日は「エゾウスユキソウ(蝦夷薄雪草)」別名「レブンウスユキソウ(礼文薄雪草)」をご紹介します。

 

エゾウスユキソウ(レブンウスユキソウ:Leontopodium discolor)①

 

被子植物 双子葉類
学名:Leontopodium discolor
和名:蝦夷薄雪草または礼文薄雪草
科名 : キク科(Asteraceae)
属名 : ウスユキソウ属(Leontopodium)

 

本日ご紹介する花は「エゾウスユキソウ」と記載しましたが、別名を「レブンウスユキソウ」と言います。私も含めて「レブンウスユキソウ(礼文薄雪草)」と呼ぶ方がしっくりする方もいらっしゃるかもしれません。ただ、あらゆる資料を調べてみると「エゾウスユキソウ」と紹介されているが多いのも事実です。花図鑑などで索引していても見つからない方は「エゾウスユキソウ」で再度索引してみてください。

 

エゾウスユキソウは、キク科・ウスユキソウ属の花でヨーロッパ・アルプスの三大名花の1つであるエーデルワイスの仲間です。

 

エゾウスユキソウは、北海道(礼文島、藻琴山、釧路・昆布森など)に分布し、主に比較的乾いた礫地や草地などに自生し、海外ではサハリンにも分布します。
この花を撮影した弊社米谷も北海道・礼文島(桃岩展望台)で観察したそうです。
私も十数年前、花撮影ツアーにて礼文島南部に位置する礼文林道へ夜明け直後に林道内の群生地へ向かい、まだ朝露の残るレブンウスユキソウの撮影を楽しんだのを覚えています。その時はフィルム撮影でしたが、その写真が見つからず・・・。
礼文島・礼文町では、エゾウスユキソウ(レブンウスユキソウ)は町花に指定されています。

 

草丈は15~30㎝ほど、ヨーロッパのエーデスワイスより少し草丈は高い印象です。
葉は根元に長さ5㎝ほどの根生葉をロゼット状につけ、茎には互生する長さ5㎝、幅1㎝弱の葉を10~15枚ほどつけます。
ご存知の方も多いかもしれませんが、真っ白な花弁のように見える部分は「苞葉(ほうよう)」と呼ばれ、花弁ではなく「花芽を包む葉」なのです。苞葉は1~5㎝と長さの異なるものをつけます。
苞葉や茎には白い繊毛が確認でき、これらは乾燥や強い日射しから植物を守っています。現地ガイドさんは「その繊毛で朝露などの水分を余すことなく受け取る」と説明していました。この繊毛に朝露が掛かるとウスユキソウの美しさは倍増します。

 

エゾウスユキソウ(エーデスワイスの仲間全体)は、苞葉の中央に直径5㎜ほどの頭花を5~20個ほど密集してつけ、花期は7~8月。中央部にある雌花のまわりを雄花が取り囲んでいます。実は、属名のLeontopodiumはギリシャ語で「ライオンの足」を意味し、花を観察していると肉球を思わせる姿に思わず納得してしまいます。

 

ウスユキソウ(エーデスワイス)は苞葉が日焼けしてしまうと、少し茶色くなってしまいます。
見頃は開花直後の数日間とも言われていますが、ウスユキソウの姿は気品があり、多少日焼けをしていても咲いている姿を観るとやはり夢中になって観察してしまいます。
私も礼文島に訪れ、夜明けと共に礼文林道へ向かい、群生地で再び夢中になってエゾウスユキソウの撮影を楽しんでみたいです。

 

エゾウスユキソウ(レブンウスユキソウ:Leontopodium discolor)②