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ネオティネア・ウストゥラタ(Neotinea ustulata)

本日もピレネー山脈で観察した、形状が非常に特徴的なラン科の「ネオティネア・ウストゥラタ」(Orchis ustulata)をご紹介します。

 

ネオティネア・ウストゥラタ(ラン科ネオティネア属)

 

被子植物 単子葉類
学名:ネオティネア・ウストゥラタ(Neotinea ustulata)/オルキス・ウストゥラタ(Orchis ustulata)
英名:Burnt Orchid / Burnt-tip Orchid
科名:ラン科(Orchidaceae)
属名:ネオティネア属(Neotinea)

 

ネオティネア・ウストゥラタ(Neotinea ustulata)は、中央~南部ヨーロッパの山岳地域に生息する地生ラン(地下に球状の塊茎をもつラン)の1つです。
この花を観察したのは15年以上前、ピレネー山脈のスペイン側のオルデサ渓谷だったように記憶しておりますが、その際は「オルキス・ウストゥラタ」(Orchis ustulata)と認識しており、当時の観察資料にもそのように記載しています。
今回のブログ作成にあたり、「Orchis ustulata」で検索しても同じ花は出てきますが、聞き慣れない「Neotinea属」(ネオティネア)という表記の資料も出てきます。
色々と調べてみると、Neotinea属(ネオティネア)は、ヨーロッパを中心に分布する地生ランのグループで分類学的研究によって位置づけが大きく変わってそうで、かつては「Orchis属」に含められていたようです。

 

ネオティネア・ウストゥラタは、山岳地帯の標高1,000m前後の草地や林道から標高2,000m以上の主に石灰岩地帯の高山帯まで幅広く自生します。
草丈は10cm~35cmほど(資料によっては50cmほどにもなるとあります)、根元の部分に5~10枚ほどの広披針形の根生葉が確認でき、茎の上部には鱗片形の葉を付けます。

 

花期は5~7月上旬。直立した花茎より0.5cm程度の花茎を伸ばし、非常に小さく特徴的な花を咲かせます。この花を見つけると花の小ささに驚き、じっくり観察するとその特徴的な形状に心惹かれます。

 

唇弁(下に伸びた部分)は0.3~0.5cmほどで3深裂し、全体的に白色ですが赤紫色の斑点が特徴です。さらにじっくり観察すると、唇弁の中央裂片は先端が2裂しているのが確認できます。
萼と側花弁が集まっている上部分(兜のようと表現された資料もあります)は暗赤色で長さは0.3cmほどで唇弁とほぼ同じくらいです。唇弁とは対照的にも見えますが、斑点部分と同色にも見え、何とも言えない魅力を感じる色合いです。
ある資料に「人形のような形状」とあり、確かに帽子をかぶった人形のようにも見えます。形状をイメージするにぴったりの表現です。

 

開花した直後は密に固まって花を咲かせますが、徐々に開花が進んでくると、最終的には円筒状になり、何と最大で60~70個の花を咲かせるそうです。私も15年以上前に下から上に向けてたくさんの花を咲かせる個体を観察しましたが、さすがに花の個数までは数えませんでした。
花は強い芳香を持ち、「蜂蜜に似た香り」と資料もありましたが、蜜は生成しないそうです。

 

また、ネオティネア・ウストゥラタは別名「バーント・オーキッド」(Burnt Orchid / Burnt-tip Orchid)と呼ばれ、花序の先端(蕾の状態の部分)が焼け焦げたような外観をしていることに由来するするそうです。
この花が焼け焦げたような名前なら、ニグラ・バニララン(Nigritella nigra)はどう表現するのでしょう、と思ってしまいます。

 

実は、ピレネー山脈には今回紹介したNeotinea属(ネオティネア)の花は数種咲き、その他ハクサンチドリ属(Dactylorhiza)も数種咲いています。
この手のラン科の花が好きな方にも魅力的なフラワーハイキングが楽しめるエリアです。
是非、この夏にピレネー山脈を訪れ、Neotinea属の「ネオティネア・ウストゥラタ」 の花の個数を数えてみませんか。

 

◆ピレネー山脈に咲くネオティネア・ウストゥラタが観察できるツアー
 花咲くピレネー山脈ハイキング 高貴なピレネー・リリーをもとめて

ネオティネア・ウストゥラタ(ラン科ネオティネア属)