カテゴリー別アーカイブ: ■動物を観察した地域・国

生物多様性の宝庫・マダガスカル Vol.02<ナイト・サファリ>

前回に引き続き、マダガスカルで観察した生き物たちのご紹介です。

マダガスカルは、ライオンやトラなどの夜行性の大型肉食獣が生息していないため、ナイトサファリも歩いて森の中を体験する”ウォーキングサファリ”が活発に行われています。日本から遠く離れたマダガスカルの地で夜な夜な森の中を歩くと、全身の神経が研ぎ澄まされ、土の匂い・木の上を動く動物の足音などを感じながら生き物たちを探す、忘れられない体験になりました。

今回はそんな夜のツアーで観察してきた生き物たちのご紹介です。

 

ネズミキツネザル (Mouse lemur)

ネズミ・キツネ・サルと3種類の生き物の名前を持つ非常に不思議な名前の生き物です。世界一小さなサルの仲間で、大きさは手の平に収まるほどしかありません。真ん丸な目と、しっかりとしたサルらしい手足が非常にキュートです。地域により、様々な種が生息しており現在は24種ほどに分類されるそうです。

チャイロネズミキツネザル(common brown lemur , Eulemur fulvus )

グッドマンネズミキツネザル (Goodman’s mouse lemur, Microcebus lehilahytsara )

 

アイアイ (Aye-aye  Daubentonia madagascariensis

童謡などで有名な「アイアイ」ですが、世界でもマダガスカルにしか生息しないキツネザルの仲間です。お猿さんと言っても原猿類というサル中でも原始的な仲間で我々の想像するニホンザルなどとはかけ離れた見た目でした。

アイアイ(Aye-aye、Daubentonia madagascariensis)

夜間の活動に有利な大きな目に加え、キツツキのように木に穴をあけて中にいる虫などを取り出すために非常に長く発達した中指など、独特な見た目をしており現地では以前より「悪魔」として恐れられていたため、保護活動が始まるまでは駆除されてしまうことも多かったそうです。

 

イタチキツネザル (Sportive lemur)

こちらも、イタチ・キツネ・サルと様々な生き物の名前が組み合わされていますが、英語ではSportive lemurです。木の止まる姿が、ボクサーの動きを連想されることからSportive(スポーツ)と呼ばれるようになったそうです。夜行性ですが、他のキツネザル同様に体温調節が得意ではない為、日中も寝床である木のうろから出ていることも多いです。こちらも27種ほどが確認されていて地域によって様々な姿を見せてくれます。

シロアシイタチキツネザル(White-footed sportive lemur, Lepilemur leucopus )

シロアシイタチキツネザル(White-footed sportive lemur, Lepilemur leucopus )

 

ヘラオヤモリ (Leaf-tailed gecko, Uplatus Sp.)

世界一の擬態力を持つ生き物と言えば、マダガスカルに生息するヘラオヤモリの仲間だと言っても過言でないほど擬態の名人です。そしてマダガスカルに生息する生き物で最も不思議な生き物の一つだと思います。今回は、エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)、ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)の2種類の観察に成功しました。

エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)

エダハヘラオヤモリ(Satanic flat-tail gecko, Uroplatus phantasticus)

ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)

ヤマビタイヘラオヤモリ(Mossy Leaf-tail Gecko, Uroplatus sikorae)

 

マダガスカルコノハズク (Madagascar scops owl, Otus rutilus)

マダガスカル固有のフクロウで、我々が発見した際には足に大きなトビバッタを捕まえていました。人をあまり気にしないのか、我々の目線の高さでじっと止まり木に止まっておりゆっくり観察できたのも印象的です。

マダガスカルコノハズク (Madagascar scops owl, Otus rutilus)

 

マダガスカルオオゴキブリ(Madagascan hissing cockroach)

マダガスカルオオゴキブリ、略して「マダゴキ」の愛想で親しまれる大型のゴキブリ。森林性で住宅地の近くなどでは観察することができない為、お部屋に出てくるなんてラッキーなことはめったにありません。動きは遅いですが、8cmを超える大型の個体は迫力満点でした。

昼も夜も、本当に奥深いマダガスカルの生き物たちとの出会い。続編をご期待ください!

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Oct 2023, Madagascar

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生物多様性の宝庫・マダガスカル Vol.01

生物多様性の宝庫、マダガスカル。見られる全動植物種の約90%が世界でマダガスカルにしか生息しない固有種であるため、観察場所を変えるたびにライファーと出合います。日中の観察で出会った生き物の一部をご紹介します。

 

ワオキツネザル:Ring-tailed lemur、Lemur catta

メスがグループのリーダーで、今回訪れた10月の繁殖期には子供を背中に乗せたメスが群れの先頭を歩く姿が見られました。ワオキツネザルを含む、キツネザルの仲間は体温調節が得意ではなく、早朝などは日が出ると日光浴する姿も観察できるそうです。

子供を背中に乗せたメスのワオキツネザル (Ring-tailed lemur、Lemur catta)

ベローシファカ:Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi

地面を歩くときなどは、横向きにジャンプしながら移動します。サボテンの多く存在する場所にも生息する為、人間ではとても触れないトゲの枝にもしっかりとつかまって生活する姿が印象的でした。

横向きにジャンプしながら移動するベローシファカ (Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi)

ベローシファカ (Verreaux’s sifaka、Propithecus verreauxi)

カメレオンの仲間

世界に生息する60%のカメレオンは、マダガスカルに生息しています。世界で一番重たいカメレオンである、パーソンカメレオン(Parson’s chamaeleon, Calumma parsonii)や、ゾウのように大きな耳が特徴なゾウカメレオン(Elephant Ear Chameleon, Calumma brevicorne)、地域によってさまざまな色合いを持つパンサーカメレオン(など多種多様なカメレオンたちを観察することができました。

パンサーカメレオン(Panther chameleon, Furcifer pardalis )

ゾウカメレオン(Elephant Ear Chameleon, Calumma brevicorne)

マダガスカルアデガエル :Madagascan mantella, Mantella madagascariensis 

中南米などに生息するヤドクガエルなどと同様に体に毒があることを警告する為に、非常にきれいな体色をしています。

マダガスカルアデガエル (Madagascan mantella, Mantella madagascariensis )

マダガスカルヤツガシラ :Madagascar hoopoe, Upupa marginata 

ヤツガシラの多くは、渡り鳥として有名ですが本種は渡りをしないマダガスカル固有種です。日本などで観察できるものに比べて、オレンジ色が非常に濃く色合いがとても綺麗です。

マダガスカルヤツガシラ (Madagascar hoopoe, Upupa marginata )

ルリガシラハシリジブッポウソウ:Pitta-like Ground Roller, Atelornis pittoides

英名が、Pitta-like Ground Roller(ヤイロチョウのようなジブッポウソウの意味)で、その名の通り地面の上をピョンピョンと跳ねる姿はまるでヤイロチョウのようです。きらきらと輝く青色が非常に美しく多くのマダガスカルの野鳥図鑑の表紙を飾っている鳥です。

ルリガシラハシリジブッポウソウ (Pitta-like Ground Roller, Atelornis pittoides )

ヒルヤモリの仲間

ヤモリは、夜行性の種類が多い中で昼に活動する種はヒルヤモリと呼ばれます。昼の生活でも擬態をする為、緑色をしている種類が非常に多いのが特徴的です。ヨツメヒルヤモリ (Four Spot Day Gecko, Phelsuma quadriocellata )、グランディスヒルヤモリ (Madagascar Giant Day Gecko, Phelsuma madagascariensis  )など多くの種類を観察することができました。

ヨツメヒルヤモリ (Four Spot Day Gecko, Phelsuma quadriocellata )

キリンクビナガオトシブミ :Giraffe Weevil, Trachelophorus giraffa 

キリンのように長い首を持つオトシブミの仲間です。卵を産んだ後、幼虫のえさとなる葉で卵を包み込み、木から切り離して地面に落としてしまう姿の観察にも成功しました!

キリンクビナガオトシブミ (Giraffe Weevil, Trachelophorus giraffa )

マダガスカルの動物というとキツネザルの仲間が有名ですが、日中に見られるさまざまな生き物を紹介させていただきました。次回は、夜のマダガスカルの生き物です!

 

Photo & text : Wataru HIMENO

Observation : Oct 2023, Madagascar

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海鳥の聖域天売島が海鳥たちに選ばれたわけ

天売島は、周囲12㎞ほどの小さな島で2024年の人口は250人ほど。天売島は「海鳥の楽園」と言われるほどたくさんの海鳥たちが繁殖し、その数はおよそ100万羽とも言われます。日本国内にはこのような場所は存在せず、東に3kmほどの場所には、ほぼ同じ大きさの焼尻島がありますが、こちらには海鳥はほとんど繁殖していません。いったいなぜなのでしょうか。

天売島周辺の海域では、特に冬の間は大陸側からのシベリア高気圧の影響を受け、島の北西方面からの風を受け続けます。その風が何千万年もの年月をかけて北西方面ばかり風食した結果、島の一面に崖が出来上がったと言われています。

Google Mapより

赤線部が元の島のあった場所

Google Mapより

矢印は風の向き。風が直接当たる島の北西部に崖が出来ました。

崖というのは、人間を含む哺乳類などが最も苦手とする地形の一つですが、空を飛ぶことのできる鳥たちにとってはアクセスしやすい場所です。普段は海で生活する海鳥たちは、陸上での生活は得意でないものが多く、天敵がアクセスしずらい崖での繁殖を選ぶようになりました。

崖で繁殖するオオセグロカモメ

崖で繁殖するヒメウとウミネコ

また、天売島で一番数が多いウトウの繁殖場所は、崖の上にある土のある陸上です。ウトウたちは、天敵の多い陸上に巣を作るので天敵が見えづらくなる夕方の日没と同時に一斉に帰巣しますが、高い木が生えていると暗くなった際にはぶつかる可能性が高くなります。そのため、高い木の生えていないエリアに営巣します。天売島はその強い風のおかげで、高い木が生えておらずウトウにとっても非常に良い条件が整い、世界No1の80万羽もの繁殖が確認されています。

木の無い草原に飛び込むようにして帰巣するウトウ

このように海鳥にとって最高の条件が奇跡的に重なり、沢山の海鳥が繁殖する天売島が出来上がったと言われています。海鳥の繁殖シーズンには、崖の下から海鳥や地層なども観察できるボートツアーも開催しています。

 

Text & Photography : Wataru Himeno

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マウンテンゴリラ Mountain gorilla(ブウィンディ原生国立公園・ウガンダ)


ウガンダ共和国の南西部に位置するブウィンディ国立公園で出会ったマウンテンゴリラです。

ゴリラは2種4亜種に分類されます。ヒガシゴリラの亜種(ヒガシローランドゴリラ、マウンテンゴリラ)とニシゴリラの亜種(ニシローランドゴリラ、クロスリバーゴリラ)。

今回出会ったマウンテンゴリラはアフリカ中部のウガンダ、ルワンダ、コンゴ民主共和国の3ヶ国の国境に広がるアルバータイン地溝帯のみに棲息し、近年の保護活動の成果から現在1000頭を超える数にまで増えてきています。日本の動物園のゴリラは全てニシローランドゴリラなので、マウンテンゴリラに会うためには現地に行くしかありません。

葉っぱや樹皮などを食べるマウンテンゴリラは「餌付け」が難しいので、観光客が観察できるゴリラのグループは人に慣れさせる「人付け(habituation)」という人への馴化作業が必要になります。研究者やトラッカーが初めは200mくらい離れたところから観察を始めて、だんだん距離を縮めていきます。もし近づきすぎてゴリラが威嚇してきたりした場合はもう少し距離を置いて様子を見るというのを繰り返し、完全に人に馴化するのには2~3年かかるとのことです。


マウンテンゴリラのトラッキングは片道1時間~3時間ほどかかります。
今回は1時間半ほどで出会えましたが、特に最後のゴリラに接近するあたりでは、ジャングルの中の急な斜面を草や枝をマチェットで折りながら下っていきます。


急な斜面を滑って転びそうになりながら下っていくと、ついにゴリラを追うトラッカーたちと合流。そのすぐそばでふさふさとした黒い固まりがあると思ったら、子供のゴリラでした。


そのすぐそばの2匹のメスたちは器用に指を使って毛づくろいをしていて、その姿はまるで人間のようでした。

今回出会ったマウンテンゴリラのグループは「ムクングジ(Mucunguzi Group)」というグループで、ムクングジとは雄のリーダーであるシルバーバックの名前でもあり、「救世主 Savior」を意味します。

ムクングジが別のグループのリーダーである「ビギンギ」からメス数頭を奪って(救い出し)、自分のグループを作り、現在は15頭のメンバーで1頭のシルバーバックに、7頭の大人の雌、2頭の若い雌、5頭の子供や幼児がいます。


その後、しばらくすると近くにいた雄のシルバーバックの「ムクングジ」(↑の写真左上)を発見。メスや子供たちと横になって休んでいます。


生後1年ほどの赤ちゃんゴリラが、お昼寝をするお父さんやお母さんに遊んでほしそうにちょっかいを出しています。

横になったメスの足がシルバーバックの体に乗っかっています。


観察しているとゴリラが2mほどの距離まで近づいてきました。
さらに最後にはシルバーバックも起き上がり、のそのそとこちらに向かって歩いてきました。


オスは通常8歳くらいで大人になりブラックバックと呼ばれますが、13歳を超えると背中から腰にかけて毛が灰色(シルバー)になりシルバーバックと呼ばれ、さらに18歳頃になると後頭部が盛り上がってきます。


寝起きでまだ眠いのか、大あくび。


あっという間に観察の制限時間である1時間が終わってしまいました。
野生のゴリラの寿命は野生下で35年~40年ほど、この子供が大きくなる前にはもう一度会いに来たいと強く思わされました。

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : Feb 2024, Bwindi Impenetrable National Park, Uganda

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ウガンダ・ルワンダ マウンテンゴリラ&ゴールデンモンキートレッキング

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天売島の人気者、ケイマフリの魅力

2023年の夏を天売島で過ごした姫野からのレポートです ♪

天売島で不動の人気を誇る海鳥と言えば、ケイマフリです。もともと、アイヌの言葉で足の赤いを意味するケマフレという単語から、和名もケイマフリとなりました。その名の通り、足が赤いだけでなく、口の中も同じ赤色であるため、岩場で足を見せながら口を開けて求愛する姿を観察した方はその美しさに必ずというほど魅了されます!

天売島に生息する他のウミスズメ科の鳥に比べ飛び立ちも上手なため、水面から飛び立つ時は、水面を走るようにしながら助走をつけます。(そのほかの2種ウトウ、ウミガラスは、水面で羽ばたきながら半分泳ぐようにして助走をします)

その際に見られる、天売ブルーと呼ばれる海の色とケイマフリの赤い足の輝きは非常に美しく、これを見るためだけに天売島へいらっしゃる方も。

繁殖期後期の6月後半ごろからは餌をヒナに咥えて持ち帰る姿も観察できます。

イカナゴやギンポの仲間など、多様な餌を運ぶ姿も大変魅力的です。

ケイマフリの魅力に魅せられた天売島在住の写真家・寺沢孝毅さんはケイマフリという名前の日本酒を作られたり、ご自身の船にもケイマフリを描くほどです。

皆さんもぜひ、ケイマフリに会いに天売島にお越しください。

 

Image & text: Wataru HIMENO

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天売島(北海道)の夜の生き物 

2023年の夏を天売島で過ごした姫野のレポートです ♪

天売島は北緯44度に位置するため、春から夏にかけての日照時間が長く空が完全に暗くなるのは21時ごろです。朝も3時ごろには明るくなり始めるため、夜行性の生き物たちは短い夜を世話しなく生きています。

夜行性の生き物と言えばフクロウの仲間。2023年度は、トラフズク (Long-eared Owl) の繁殖が確認できました。

トラフズク (Long-eared Owl)

春先には、3羽のヒナを確認しましたが、7月の前半からは2羽しか確認できなくなってしまいました。自然の厳しさを実感です。

日本のキーウイ(Kiwi) こと ヤマシギ (Eurasian Woodcock) も天売島には生息しています。ニュージーランドに生息するキーウイ同様、夜行性で地表近くに生息するミミズなどを捕食しますが、ヤマシギは空を飛べますので生息範囲が広いのが特徴です。また、嘴に多数の穴が開いていて、神経が通っているため、地面に差し込んだ嘴で獲物の動きなども感知できるそうです。

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

ヤマシギ (Eurasian Woodcock)

また、暖かい日の夜は天売島に生息する唯一のヘビ、マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper) も活発になります。

マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper)

夜行性のヘビとして紹介されることも多いですが、天売島では春先などの肌寒い季節にはお昼の時間帯により活発に活動している印象を受けました。爬虫類でありながら、卵ではなく子供を直接産む卵胎生であるため、春先の一日の温度差の激しい天売島で効率的に繁殖し、この島で生息する唯一のヘビになったのではないかと思います。

マムシは、日本では最も有名な毒蛇で、「マムシ=危険」というイメージが根強く車などでも轢かないように運転する意識も、他の生き物に比べて低いためか、シーズン中には幾度となく車にひかれて亡くなったであろう個体を見かけました。

マムシ (Japanese Mamushi Viper, Japanese pit viper)

天売島に生息する唯一の両生類、ニホンアマガエル (Japanese tree frog) も夜になると活動を始めます。

ニホンアマガエル (Japanese tree frog)

周囲12kmほどの小さな島であるため、安定した淡水の水場が少なく、常に水が必要な両生類の生息できる環境は非常に限られていますが、廃船にたまった雨水やわずかな湧き水の水たまりなど、海岸からほど近い場所にも関わらず数多くの個体が繁殖しています。

また夜の観察後には、きれいな星空が広がっていることも。晴れさえすれば、ほぼ確実に流れ星も確認できます。

夜の前浜港

天売にいらっしゃった際は、最後に夜空も見上げてみてください。

Image & Text: Wataru HIMENO
Observations at Teuri Island in Summer 2023

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アカミノフウチョウ Wilson’s bird-of-paradise(ワイゲオ島、インドネシア)

ゴクラクチョウ(極楽鳥)とも呼ばれるフウチョウの仲間はインドネシア東部、パプアニューギニア、オーストラリア東部に45種が生息しています。その中でも最も色鮮やかとされるのが、このアカミノフウチョウ Wilson’s bird-of-paradise のオスです。

アカミノフウチョウ Wilson’s bird-of-paradise はインドネシアの固有種で、南西パプア州のワイゲオ島とバタンタ島の丘陵地と低地の熱帯雨林にのみ生息しています。このうち、ワイゲオ島でアカミノフウチョウを観察する機会がありました。ワイゲオ島は世界でもトップクラスのダイビング・デスティネーション、”ラジャアンパット諸島”の島です。

ハイドから撮影したアカミノフウチョウの動画です。鳴き声が美しく、口の中は薄黄緑色!

自分の「ディスプレイ・コート」の葉っぱをお掃除する様子は愛らしい限りです。

訪れた保護林では付近に4か所のアカミノフウチョウが現れるディスプレイ・コートがあるとのことでした。が、熱帯雨林の道を歩くのは大変なので一番近いハイドを訪問しました。夜明け~朝9時くらいがコアタイムです。ハイドの座席に座り、出現を待ちます。木陰でオスが鳴きはじめました。

アカミノフウチョウは体長が16cmほどで、飾り尾羽を含めて21cmほどの大きさです。オスは赤と黒の羽色で、首は黄色の羽毛、青紫の足と銀紫の尾羽。頭は鮮やかな水色の皮膚に黒い羽毛が模様を作っています。胸はビロードのような光沢をもつ緑色です。

アカミノフウチョウと近縁種のキンミノフウチョウのオスは縄張りを持ち、熱帯林の一画に「ディスプレイ・コート」を作ります(このコートは別のオスが使うこともあり、長期間メンテナンスされるそうです)。コートの中央に垂直の枝があり、この枝にとまってディスプレイを行い、メスにアピールします。研究者のレポートによると、このディスプレイをメスの視点から見ると、オスは鮮やかな緑の円盤に見え、口の中の薄黄緑と相まって驚異的な色表現が行われているのだそうです。

こちらがアカミノフウチョウのメスです。他のフウチョウの仲間と同様にオスと比べると断然地味。頭は同じように青い皮膚がむき出しになっています。

アカミノフウチョウは1羽のオスが複数のメスと交尾をし、メスは一羽で子育てをします。なので、DNAをもらうだけの相手選びは慎重に行われるようです。こう見えて、オスはひたすら選ばれるためにがんばらばくてはなりません。

ハイドでの観察は、ディスプレイ・コートのまわりでオスが鳴きはじめ、そして次にコートのお掃除。落ちている葉っぱをくちばしで取り除きます。そしてメスが現れます・・・。

オスの華麗なディスプレイを「メスの視点」で見るのは至難の業ですが、森にアカミノフウチョウのオスが姿を現し、声を聞いただけでもここまでやってきた苦労が報われる出会いでした。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Nov 2023, Waigeo Island, Raja Ampat, Southwest Papua, Indonesia

※ワイゲオ島を含むラジャアンパット諸島とドベイラ半島は2022年12月に「西パプア州」から分立して「南西パプア州」となりました。

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スカーレットアイビス / ショウジョウトキ Scarlet ibis (トリニダード・トバゴ)

トリニダード島の西岸にあるカロニ湿原にて観察したスカーレットアイビス(和名:ショウジョウトキ)の群れです。

カロニ湿原のスカーレットアイビスはベネズエラとの間を行き来していると考えられています。毎朝、餌をも求めてカロニ湿地を飛び立ったスカーレットアイビスはあちこちの湿地で採餌し、夕方になると群れをなしてカロニ湿原に戻ってきます。


夕方の帰巣の様子は圧巻の光景です。


巣のある木に順番に帰ってくると、赤い実がなる木のように見えます。

カロニ湿原はおよそ103.6平方キロメートルの湿地帯です(大きさは資料により異なっています)。
マングローブ林、沼地、干潟を含むこの湿地は海水と淡水の両方の生物多様性に富んだ湿地です。ラムサール条約にも登録されています。

観察に適した時期は11~3月いっぱい。年中観察はできますが、4月の半ばごろから9月半ばは繁殖のため見える個体数が少なくなります。

マングローブ林の中にはカニもいました!
スカーレットアイビスの赤色は、餌となるこういった甲殻類に由来します。

雛は黒~灰色でまったく赤くありません。上の写真は若鳥で灰色、茶色、白色が混ざりますが、摂取する赤色のもととなる甲殻類により、成長に伴い赤色をまします。通常、巣立ちの頃に赤色が現れ、2年でほぼ真っ赤になります。

1962年トリニダード&トバゴが独立したとき、スカーレットアイビスは「国鳥」に選ばれました。

スカーレットアイビスの生息するエリアまで、マングローブ林の間をボートで進んでいくのも楽しみの一つです。
道中に様々な動物が見られます。特に鳥類は100種以上も生息します。

小さく丸まったヒメアリクイPygmy anteater。世界最小のアリクイです。
木の一部のように同化しているので見つけるのが難しいです。

水辺には、スカーレットアイビスと共にベニイロフラミンゴ American Flamingoも見られます。

夜行性のために目が大きいヒロハシサギ Boat-billed Heron。求愛行動の際はクチバシを鳴らすこともあります。

オニクイナ、こちらもスカーレットアイビスと同じく甲殻類、魚、昆虫などを採食します。

この美しい帰巣風景がいつまでも続くことを願っています。

 

Photo & text : Mariko Sawada & Wataru Yamoto

Observation : Apr 2018 & Mar 2019 , Caroni Swamp , Trinidad and Tobago

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南米に最も近いカリブの自然 トリニダード&トバゴ

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ボルネオオランウータン Bornean orangutan(ボルネオ島・マレーシア)

ボルネオ島のマレーシア側にて、ボルネオオランウータンに出会いました。
霊長類ではゴリラに次いで2番目に大きいオランウータン。

オランウータンは現在3種に分かれています。今回出会ったボルネオ島の「ボルネオオランウータン」、そのほかの2種はスマトラ島で「スマトラオランウータン」「タパヌリオランウータン」です。

母親と1歳に満たない小さな女の子に出会えました。

まだ毛が薄いため地肌が透けて見えます。

子供オランウータンが母親と生活するのは通常7~8年と言われています。

2頭で生活するのは母親とその子供くらいで、オランウータンは基本的に1頭で生活しています。霊長類の中で最も単独性が強いとも言われ、同時に複数匹見られることが珍しいです。

単独で暮らす理由としては、ボルネオ島やスマトラ島の森の果実の少なさに原因があるようです。アフリカの森に暮らすチンパンジーやゴリラは群れで生活しても、果実が十分あるため生活できます。
一方ボルネオ島やスマトラ島では餌が足りないため集団では暮らせず、ある程度離れて暮らす必要があるために単独生活をしていると言われています。

この時期は餌が少なかったのか、樹皮を食べていました。

葉っぱの根本の太い茎部分も。

ジャングルウォークをした際、オランウータンの好きな「イチジクの実」を見つけたので、少し手で皮を剥いてから食べてみました。甘酸っぱくとてもおいしかったのですが、果肉部分は非常に少ないのでオランウータンのお腹を満たすためには、一日中食べ続ける必要がありそうです。

上の写真はオランウータンのベッドです。オランウータンは世界最大の樹上生活者と言われますが、毎晩眠る前にベッドを作り替えます。”ネスティング”と言われる行動で、木の幹の股などの太めの枝の上に何重にも枝を折って土台を作り、その上にやわらかい葉っぱでクッションを作ります。

ベッドは毎日作り変えるため、オランウータンの棲息地付近にはたくさんのベッドの跡があります。オランウータン探しの目印にもなります。

オスのオランウータンにも一度出会えましたが、アンフランジ雄(劣位雄)でした。
次にボルネオに行った際には、「フランジ」と呼ばれる顔のヒダをもち、体重は90キロを超えるというフランジ雄(優位雄)ともぜひ遭遇してみたいものです。

母親に捕まる赤ちゃんの手と足!本当に可愛いらしかったです!

 

Photo & text : Wataru Yamoto

Observation : June 2023, Kinabatangan Wildlife Sanctuary & Kabili-Sepilok Forest Reserve, Sabah, Borneo, Malaysia

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ボルネオの森 キナバタンガン川ジャングルサファリ

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ザトウクジラのバブルネットフィーディング in アラスカ

久しぶりにアラスカのバブルネットフィーディングのツアーへ。温暖化で海の様子がすっかり変わってしまい、クジラの採餌海域を追いかけるのが本当に難しくなってきた今日この頃。アラスカも同じで、以前バブルネットフィーディングがさかんに行われていた海域はひっそりとし釣り人もおらず、別の場所へ移動していました。

ジュノーを出航して3日目、ようやく小さなニシンを銜えて巣へと向かう海鳥を見つけ、その海域が近いことを感じました。そして4日目・5日目は「クジラ祭り」、場所をあててくれ、こちらからは接近しすぎない良い距離感でバブルネットフィーディングを観察させてくれた船長に感謝です。

アラスカの山並みを背景に複数のブローがあがりました。この数のブローを見ると、バブルネットフィーディングの期待があがります。朝9時30分ごろ、クジラが集まっているように見えました。

そしてバブルネットフィーディング!船上でシャッター音が響き渡ります。

バブルネット・フィーディング Bubble net feeding
数頭から数十頭の群れで、魚の群れを円を描くようにまわりながら泡を吐き出して一ヶ所に追い込みます。鰭を使いながら魚を取り囲み、魚群の下からは一匹のザトウクジラが大きな声を発し、パニックになった魚を上へと追い込みます。追いこみをする群れの上では別のザトウクジラが泡を出して旋回し、バブルネットを作り、魚の群れをこの中に閉じ込め、最後には全てのザトウクジラが大きな口をあけて海面へと飛び出し、一気に捕食します。

船の上から泡が上がってくるのが見えました、船の下でザトウクジラが泡をだしてバブルネットを作ってます!!この時は、本当に至近距離に上がってくるのではないかと興奮して待ちましたが、意外と遠い場所でバブルネットフィーディングがありました。魚の動きだけでなく潮の流れもあるので距離はわからないものですね。

Photography by Seiji TACHI

魚が上がってきました!

Photography by Kiyoshi AOKI

バブルネットフィーディングは本当に突然上がってきます。周りの鳥の動きも見ながらどのあたりから起こりそうかあたりをキョロキョロして待ちます。この写真は本当に上がってきたばかりの写真で海面に小さなニシンと思われる魚がいます。

Photography by Seiji TACHI

魚もザトウクジラも必死。

Photography by Seiji TACHI

Photography by Morihiko HAYAKAWA

この日の午前中、午後ともにクジラのリーダーが良いのか、なかなかうまく統制がとれてバブルネットフィーディングが行われていました。毎回うまくいくのではなく、「え、いまの失敗?」みたいなことも何度もあります。そして、それが続くと参加クジラは嫌になるのか、群れを離れて行ったりしました。この時は同じ海域に2つのバブルネットフィーディングのを行うグループがあり、このグループ間を行き来しているクジラもいました。

▽▽船長がドローンで撮影をしてくれた動画から切り出した写真です。

Drone footage by Jonathan

船のそばでバブルネットフィーディング!左下の水面の動きは子供クジラです。母クジラがバブルネットフィーディングに参加中は、子クジラは近くでテイルスラップ(尾鰭びれバンバン)したりペックスラップ(胸鰭バンバン)して遊んでいます。この子クジラの場所も、バブルネットフィーディングの場所を探すバロメーターです。

Drone footage by Jonathan

これはとても至近距離でおこったバブルネットフィーディング。ドローンでとった動画から切り出した写真です。

クジラも近いと透けて見えますが、アラスカ・インサイドパッセージの海の透明度は良くありません。

Drone footage by Jonathan

バブルネットフィーディングが終わるとしばらくわちゃわちゃしていますが、ゆっくりとみんなで泳ぎ始めます。

Drone footage by Jonathan

魚をもとめて移動してきます。ブローに虹が🌈

Drone footage by Jonathan

そして合図があるのでしょう、一斉に潜り始めます。水中でのバブルネットフィーディングの始まりです。

Drone footage by Jonathan

空撮で見る、バブルネットフィーディング、バブル(泡)と魚とザトウクジラがが浮上してきます。

Drone footage by Jonathan

半分上がってきて、右上に円を描いているバブルネットが見えます。ザトウクジラが口を開けています。

Drone footage by Jonathan

口が閉まっていく状態のザトウクジラたち。

Drone footage by Jonathan

そして再び、魚を求めて移動です。何回も何回も繰り返し、時々新しいクジラが参加に来て、時々離団していって・・・。それにしてもかなりの重労働です。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Photography by Seiji TACHI, Kiyoshi AOKI, Morihiko HAYAKAWA

Drone footage by Jonathan

Observation: July 2023, Inside Passage – Alaska

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