カテゴリー別アーカイブ: ◇日本 Japan

奄美大島ダイビング

★Japanese pygmy seahorse 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (10)

5月の奄美大島ダイビングのレポートです。アマミホシゾラフグを狙って15ダイブのうち、10ダイブをアマミホシゾラフグのサークルづくり観察に投入しましたが、残りの5ダイブも充実の生き物観察でした。>>「アマミホシゾラフグのサークルづくり」はこちら

Broadclub cuttlefish コブシメの卵 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (5)

この時期はコブシメの産卵の季節。本来、コブシメも観察予定だったのですが、今年は数が少なく集団で産卵する様子は見れませんでした。ユビエダハマサンゴの奥にあったコブシメの卵です。中に赤ちゃんが見えてます、まだ小さいですね。

コブシメの体色変化 color change of Broadclub cuttlefish

コブシメの体色変化は本当に面白いです。私が近づいたら機嫌が悪くなり、少し移動してから擬態はじめました、笑。

奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (8)

外洋の砂地にある根にいたカシワハナダイのオス。スカシテンジクダイの群れを背景に泳ぐ姿はとてもきれいでした。

奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (7)

外洋ポイントのキンメモドキの群れ。

ゾウゲイロウミウシ Hypselodoris bullockii 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (10)

Photography by Chizuko MURATA

ゾウゲイロウミウシを赤いカイメンに乗せて撮影。和柄みたいになりました。

Japanese pygmy seahorse 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (10)

Photography by Chizuko MURATA

このポイントの嬉しいのは水深15mと浅いところにピグミーシーホース Hippocampus bargibantiがいることです。このピグミーシーホースは、黄色や赤色のウミウチワというソフトコーラルについています。擬態して同じ色になり、さらにポリプまで擬態。初めて小笠原で見たときはどこにいるのかわかりませんでしたが、回数を重ねて少しわかるようになってきました。

大仏サンゴ 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (2)

そして大仏サンゴ。大きなコモンシコロサンゴ群です。

Purple queen ハナゴイ 大仏サンゴ 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (1)

サンゴの上にはハナゴイが群れていました。

Purple queen ハナゴイ 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (12)

尻尾が黄色くなった婚姻色のハナゴイのオス。私が近づくと黄色かった尻尾が卵色になりました。興ざめしたようです。

ハナゴイ乱舞 Purple queen wild dance(Videography by Chizuko MURATA)

ハナゴイが雨のように降る光景も見れて、大変きれいでした。

Bubble Coral Shrimp 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (13)

バブルコーラルシュリンプ。卵を抱えていました。

奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (6)

そしてハイライトのアマミホシゾラフグのサークルの観察です。水底は細かい砂で巻き上げないようにかなり注意しなくてはなりません。着底してしばらくするとモクモクと濁ってきたりします。

奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (16)

天気が悪く透明度の悪い日なんてこんな感じです。深いし透明度のこともあり、しっかり観察したい人は複数回のチャンスがあったほうがいいのです。

アマミノホシゾラフグ mystery cercle Amami 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (4)

仕上げ段階のアマミホシゾラフグ。

アマミノホシゾラフグ mystery cercle Amami 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (3)

完成したサークル。このサークルを上から見ることなくこれだけ緻密に完成させるアマミホシゾラフグ、ただものではありません。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (14)

あとはメスを待つだけ、アマミホシゾラフグのオス。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (15)

翌日、卵(真ん中の灰色のもの)が産み付けられたサークル。このあと、オスは卵のお世話だけをしてサークルのメンテナンスは行いません。

奄美大島に6連泊したのですが、毎日の食事はとても楽しみでした。毎日が食べ歩きの日々。シマダコ、コブシメ、キハダマグロ、タイの仲間、夜光貝・・・。

奄美のおすすめレストラン 纏(まとい)奄美大島ダイビング Amami Oshima Scuba Diving (18)

毎日雨が降った梅雨の奄美大島でしたが、海と食を堪能したダイビング企画でした、ご参加のみなさま、お世話になったダイブシピーシーズ諏訪様ご夫妻、ありがとうございました!

 

Image & Text : Mariko SAWADA

Photographs and video provided by Chizuko MURATA

Observation: May 2022, Amami-Oshima

Special Thanks : Dive Spiecies Amami, Mr.Suwa Homare

アマミホシゾラフグのサークル作り(奄美大島)

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (2)

テレビでも番組が放映されたりして話題になった、奄美大島の「海底のミステリーサークル」。1995年に水中写真家が見つけ、だれがいったい、何のために作ったのかわかっていませんでした。それが小さななフグが作ってると分かったのは2011年のこと。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (1)

奄美大島の「海底のミステリーサークル」。水深30m付近に作られることが多く、深さのため長い時間潜って観察することもできず、また季節も潮回りも限られるため、この作り主のフグに出会うまでに16年かかったのだそうです。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (32)

これがアマミホシゾラフグ Torquigener albomaculosus のオス、サークルの作り主です。このフグは2014年に「新種」として登録されました。アマミホシゾラフグの名前は背中の水玉模様が奄美大島の夜空の星のように美しいことに由来します、本当にキレイな名前!

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (26)

私たちはこのアマミホシゾラフグがサークルを作る過程を5日間にわたって観察しました。この写真はサークルのふちを貝殻で飾り付けているアマミホシゾラフグ。大きい貝はかみ砕いたりもするそうです。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (8)

サークルづくりの最初は気に入った場所の海藻などを取り除く作業から始まります。サークルの基礎となる溝を作っていきます。外側のサークルの溝作りでは胸鰭で砂を左右に巻き上げ、その砂が両側に堆積し、より深い溝になっていきます。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (21)

サークルの真ん中の卵を産んでもらうところはお腹でやさしく浅い溝を作ります。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (29)

サークルづくりの仕上げをするアマミホシゾラフグ。最終メンテナンスに大忙しです。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (27)

あとはこのサークルを気に入ってよってくるフグの女の子を待つだけ!

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (38)

2022年の5月上旬の潮回りのときは、潜れる範囲に7つのサークルがありました。この日の朝、サークルの真ん中に卵がありました。真ん中のグレー色のものが卵です。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (36)

卵を産むとメスはすぐにいなくなってしまい、オスがせっせと卵のお世話をします。ヒレで卵と砂をかきまぜ、新鮮な海水を送ります。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (37)

卵のお世話に忙しいアマミホシゾラフグのオス。もうサークルのメンテナンスは行われなくなり、少し崩れ始めています。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (22)

で、7つのサークルのうち6つのサークルには卵があったのですが、私たちが毎日見守っていた水深30mの「フグ太」のサークルには卵がありませんでした。毎日見ていた私たちにとって「一番キレイで立派なサークル」と思っていたのですが、フグのメスに選ばれなかったのです。フグと私たちの選ぶ感覚に差があるのでしょうが、それでも「コンクールで一等確実と思ってた子が予選落ちした」感じで非常に納得いきませんでした。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (23)

健気にまだメンテナンスをするフグ太。それでも昨日ほどの元気はなく、ショボショボと作業をしていました。

アマミノホシゾラフグ 奄美大島ダイビング Torquigener albomaculosus white-spotted pufferfish mystery circle ミステリーサクル Dive in Amami-osihma (35)

フグ太。この時のサークルは最終的にメスに選ばれず、放棄されました。繁殖シーズンはあと2か月ほど続きます。次の潮回りではきっと女の子に選ばれるサークルを作ってね、と祈りながら海底を後にしました。

5日間15ダイブのうち、10ダイブをアマミホシゾラフグの観察に費やしました。サークル作り、メンテナンス、卵のお世話・・というステージを観察。相当、頭のいいお魚です。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : May 2022, Amami Oshima

Special Thanks : Dive Species Amami, Mr.Suwa Homare

神秘のマリンレイク(下地島)

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (4)

冬場の下地島は「地形ポイント」ダイビングの季節です。下地の三大地形ポイントとして「アントニオガウディ」「魔王の宮殿」「通り池」が知られていますが、この「マリンレイク」もなかなかの絶景ポイントです。

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (3)

洞窟の入り口からホールへ抜けていき、そこから地上に空いた「池」に浮上するのですが、ホールまでの間も洞窟の隙間から光が差し、その間をアカマツカサ、ミナミハタンポなど暗闇大好きな魚が泳いでいます。

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (9)

今回潜った洞窟の中でも、マリンレイクのアカマツカサの数はダントツ多かったように思います。

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (2)

こちらも夜行性で暗闇にいるミナミハタンポ。時々リュキュウハタンポも混じっているようです。

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (1)

色がとてもあざやかなウケグチイットウダイ。名前の通り、本当にウケグチで、こちらも暗闇メンバーズ。

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (4)

魚を見ながらたどり着くのがこのホール、まるで舞台のようでした。

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (5)

神秘的な光景の中をマリンレイクへ。

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (6)

マリンレイクへと通じる穴。ここを浮上します。

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (7)

マリンレイクに近づくと水の様子が変わり、まるで霧がかかったようです。これはケモクラインと呼ばれる現象で塩分濃度が違う水が混ざり合うことで生じる、不思議な景色です。

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (8)

ケモクライン現象の見られるマリンレイクをゆっくりと浮上。

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (11)

浮上したマリンレイク。このポイントは陸からもエントリーできます。

マリンレイク 下地島 ダイビング MARINE LAKE SHIMOJI ISLAND, DIVING DIVE IN OKINAWA (10)

そして再び潜航し、出口を目指しました。

地形の作り出す水中世界の美しさ、ケモクライン現象、暗闇好きのお魚たち・・・とても充実したダイビングでした。よろしければまとめ動画もどうぞ↓↓↓!

Marine Lake Shimoji Island|下地島地形ダイブ・マリンレイク

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Nov 2021, Shimoji – Irabu Islanad, Okinawa

Special Thanks : Reef Irabu  -Mr. Shimoyama  &  Ms.Yukina

伊豆大島の海・海底ジオパーク(2)

伊豆大島のダイビング、「ここにしかない景色」はケイカイの”早朝ハンマー”。

Dive in Izu oshima|テンクロスジギンポ、トラウツボ、ハンマーヘッドシャーク 伊豆大島ダイビング

エントリー場所から溶岩の海岸で、潜航していくと溶岩の流れが迷路のような水路を創り出しています。ここはまさに「海底ジオパーク」。

Underwater Geopark,Keikai Beach, Izuoshima, 海底ジオパークのようなケイカイを行くオーナー

溶岩の水路を潜航していきます。夜明けと同時でまだ海の中も暗いのです。

ハンマーヘッドシャーク ケイカイ浜 伊豆大島 Hammerhead Shark Izu Oshima keikai Beach (4)

エントリーしてすぐにハンマーの姿が。5~30匹ほどの群れで次々に現れました。水深15mくらい、しかも潮を避けて岩につかまりながらハンマーを観察。初心者の方にもハンマーチャンスがあるポイントです!

ハンマーヘッドシャーク ケイカイ浜 伊豆大島 Hammerhead Shark Izu Oshima keikai Beach (3)

正面からやってくるハンマー。しかも近い!

ハンマーヘッドシャーク ケイカイ浜 伊豆大島 Hammerhead Shark Izu Oshima keikai Beach (2)

毎朝、日の出直後の時間がハンマー遭遇チャンスとのこと。6月半ばから10月半ばくらいまで見られるそうで、我々は3回潜って3回ともハンマーに出会えました。

ハンマーヘッドシャーク ケイカイ浜 伊豆大島 Hammerhead Shark Izu Oshima keikai Beach

夜明けとともに深い海から上がってきてサメの一級漁場を目指しているのでしょうか・・・。

お祝いの飾り、ハンマーヘッドシャーク 100本記念ケーキ

そしてこちらは100本記念ダイブを”ケイカイのハンマー”で迎えたお客様のお祝いケーキのデコレーション。西遊大阪支社の前田梨恵さん作です。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2021, Keikai Beach, Izu-oshima, Tokyo, JAPAN

伊豆大島の海・海底ジオパーク(1)

ケヤリとテンクロスジギンポ Piano fanglenny 伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima (4) 王の浜

9月に行った伊豆大島ダイビング合宿のレポートです。東京からだと本当に近いのでびっくりしました。そしてフォト派にうれしい、海の生き物天国。一番の狙いは早朝のハンマーヘッドシャークでしたが、「王の浜」「秋の浜」ではいろんな海の生き物の観察が楽しめました。

伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 王の浜のケヤリ (3)

「王の浜」のケヤリという海藻です。工夫して写真を撮るとクジャクの羽根のように美しく撮れるのでフォト派に人気の海藻です。ケヤリの名は大名行列の先頭が持って歩く、鳥毛を飾り付けた「毛槍」と似ていることに由来するそうで、日本の海で広く分布していますが、黒潮があたる地域のものはより色がキレイなのだそうです。

ケヤリとテンクロスジギンポ Piano fanglenny 伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 王の浜(1)

そしてケヤリと一緒に構図に入ってくれる、テンクロスジギンポ。テンクロスジギンポは日本の太平洋側の海で見られ、体長は10センチほど。今回2回同じ場所で見ましたが、全身を見せてはくれませんでした。ケヤリを背景に顔をのぞかせる姿が大変可愛らしいテンクロスジギンポでした。

テングダイ 王の浜 伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima (2)

「王の浜」はテングダイが見られます。テングダイは50センチほどに成長する魚で、海の中で大変目立ちます。ここの個体は結構ダイバーに慣れています。

テングダイのアゴヒゲ 伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 王の浜

テングダイの名前は口(吻)がテングのように出ていることに由来します。そしてヒゲダイのように、下あごに細かいひげがあり、これは皮膚の突起だそうです。

コケギンポ 伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 王の浜

「王の浜」をエグジットするときに立ち寄った「コケギンポの岩」。打ち寄せる波に揺られながら、みなさんがんばって撮影。

野田浜 ソフトコーラル

「野田浜」のソフトコーラル。

ムチカラマツ類とガラスハゼ

今回、一番たくさんの生き物が観察できたのは「秋の浜」でした(エントリーもとても楽なポイントでみんな大好きでした)。

ムチカラマツ類についているガラスハゼです。

ニシキフウライウオの伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 秋の浜 (2)

そして少し深いところにいたニシキフウライウオ。サンゴと同化してわかりにくいですね!

ニシキフウライウオの伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 秋の浜 (1)

サンゴと同じ色で擬態するニシキフウライウオの雄。ニシキフウライウオはカミソリウオ科カミソリウオ属の仲間で、以前はカミソリウオの種内変異だと考えられていましたが1994年に独立種になりました。

ニシキフウライウオのペア伊豆大島ダイビング Diving at Izu-oshima 秋の浜

ニシキフウライウオのペアです。メスは腹びれで卵を抱いていました。ニシキフウライウオの英名はHarlequin ghost pipefish または Ornate ghost pipefishで、”Harlequin”は道化者、”Ornate”は華やかな、という意味です。和名のニシキフウライウオも素敵ですが、英名も負けていませんね!

ナンヨウハギ

ナンヨウハギの子供たち。

オルトマンワラエビ 秋の浜

オルトマンワラエビ。

トラウツボ Dragon Moray 伊豆大島ダイビング 秋の浜 Diving at Izu-oshima (2)

そしてガイドしてくださったイエローダイブの古山さんによると、外人ダイバーの見たいものリクエストの筆頭にくるのが、このDragon Morayトラウツボとのこと。

トラウツボ Dragon Moray 伊豆大島ダイビング 秋の浜 Diving at Izu-oshima

私には「トラ」には見えず(柄はどちかというと「ヒョウ」ですね)、「ドラゴン」の方が的確に思えます。いや、中国神話に現れる伝説上の動物「麒麟(きりん)」の方が近いかも・・・。

5日間で訪問した伊豆大島でしたが、最終日は台風接近のため1日切り上げて東京へ。

年齢高い目の我々には慣れない「ビーチエントリー」に少々てこずりましたが、その苦労が報われる「伊豆大島の海」でした。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2021, Izu-oshima, Tokyo, JAPAN

抱卵するオイランヨウジ Banded Pipefish(屋久島)

オイランヨウジ Banded pipefish 屋久島 (1)

屋久島一湊湾で観察したオイランヨウジ Banded Pipefishのペアです。オイランヨウジはベースの体色は白くて吻端から尾びれにかけて赤褐色の横じまがあり、まさに「花魁(おいらん)」のイメージの華やかな尾びれを持つヨウジウオ科の魚。

オイランヨウジのペア(屋久島)A Pair of Ringed pipefish

オイランヨウジ Banded pipefish 屋久島 (6)

オイランヨウジはオスが育児嚢を持ち抱卵します。100個ほどの卵を抱き、卵は10日ほどで孵化、体長6mmの稚魚が誕生します。

オイランヨウジ Banded pipefish 屋久島 (3)

オイランヨウジは動物プランクトン食。このカップルのひそむ岩の隙間の入り口は小さな小さな稚魚で溢れ、捕食に大忙しでした。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Jun 2021, 屋久島、鹿児島

Special Thanks : 潜り屋さま

ニシキフウライウオ Harlequin ghost pipefish(屋久島)

ニシキフウライウオ Harlequin ghost pipefish 屋久島 (6)

屋久島の海で出会えたニシキフウライウオ Solenostomus paradoxus のペアです。2匹で擬態する、それはそれは美しい光景でした。

ニシキフウライウオのペア(屋久島)A pair of Harlequin ghost pipefish

ニシキフウライウオはカミソリウオ科カミソリウオ属の仲間で、以前はカミソリウオの種内変異だと考えられていましたが1994年に独立種になりました。

ニシキフウライウオ Harlequin ghost pipefish 屋久島 (9)

鰭や体に多数の皮弁があり、縞模様の斑紋があります。ベースの体の色は白色透明ですが縞模様の色はバリエーションは様々。

ニシキフウライウオ Harlequin ghost pipefish 屋久島 (5)

大きい方がメス、小さい方がオスです。オスが抱卵するヨウジウオの仲間と違い、カミソリウオの仲間はメスが受精した卵を腹鰭で保護します。

ニシキフウライウオ、英名はHarlequin ghost pipefish または Ornate ghost pipefishで、”Harlequin”は道化者、”Ornate”は華やかな、という意味です。和名のニシキフウライウオも素敵ですが、英名も負けていません。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Jun 2021, 一湊湾、屋久島

Special Thanks : 潜り屋さま

 

琉球ハーピング(3)

前回に引き続き、9月末に行った「琉球ハーピング」のレポートを姫野よりお届けします。今回は、沖縄本島の森で観察したエキゾチックな生き物たちをご紹介いたします。

アカマタ(学名: Dinodon semicarinatum、 英名: Ryukyu odd tooth snake

アカマタ(学名: Dinodon semicarinatum、 英名: Ryukyu odd tooth snake

アカマタは今回沢山の個体を観察できました。本州のシロマダラ(学名: Dinodon orientale、英名: Oriental odd-tooth snake や対馬のアカマダラ(学名: Dinodon rufozonatum 、 英名:Red banded odd tooth snak )などの属するマダラヘビ属最大のヘビで大きいものでは2 mを超えます。アカマタはヘビも食べるヘビで、自分の体よりも小さければ、日本最大の毒蛇ホンハブさえも食べてしまいます。とても臆病な個体が多く近くで観察をすると首をもたげて威嚇してきます。

2,アカマタ

ヘビは、手足だけでなく耳もありません。また、目も透明のうろこで覆われているため瞼がなく視力も弱いです。その為、危険を感じると身を守るために噛むという行動に出ます。 よくヘビは噛んで危険というイメージを持たれていますが、身を守るための行動の一つであり向こうから進んで噛もうとしてくることはありません。

ホンハブ (学名 Trimeresurus flavoviridis 、 英名: Yellow spotted pit viper

ホンハブ (学名 Trimeresurus flavoviridis 、 英名: Yellow spotted pit viper)

ホンハブは。金色の体に赤色の目が美しい クサリヘビ科のヘビです。沖縄本島の中部では外来種のタイワ ンハブ 学名:Protobothrops mucrosquamatus、英名: Taiwan pit viper)が増えているため、ホンハブは生息数を減らしています。また、 体が大きく多量の 毒をもつために 、危険とみなされ 殺されてしまうことも多いです。正しい知識を付けて、ヘビにも人間にも 安全に共存できる在り方が模索されています。

4,ホンハブ

今回のハーピングでは 2 匹のホンハブの観察に成功しました。

オキナワキノボリトカゲ(学名: Japalura polygonata polygonata、英名: Okinawa tree lizard )

オキナワキノボリトカゲ(学名:Japalura polygonata polygonata、英名: Okinawa tree lizard )

オキナワキノボリトカゲは昼行性で、木に登りながらアリなどを捕食します。夜は葉や枝の上に登って休みます。

6,オキナワキノボリトカゲ

日本に生息する唯一のアガマ科のトカゲです。本州の トカゲ とは違い 、 どちらかと言うと イグアナやカメレオンなど の 近縁種になります。

ヒメハブ(学名: Ovophis okinavensis 、英名: Dwarf lancehead v iper )

ヒメハブ(学名: Ovophis okinavensis 、英名: Dwarf lancehead viper )

ヒメハブは、夜の沖縄本島北部で一番遭遇率の高い毒ヘビ。ずんぐりむっくりな体で、カエルを好んで食べるため水辺に現れることも多いです。

8,ヒメハブ

実際に、川辺で観察したこの個体ですが落ち葉に紛れて危うく踏みそうになりました。

ヤンバルクイナ(学名: Hypotaenidia okinawae 、英名: Okinawa Rail )

ヤンバルクイナ(学名:Hypotaenidia okinawae 、英名: Okinawa Rail )

世界でも沖縄北部にのみ生息する飛べない鳥。天敵から逃れるために登りにくい木を選んで寝ます。今回観察した個体は、登りにくい場所を選んで いった結果、我々からは観察しやすい場所に出てきていました。

オキナワマルバネクワガタ(学名: Neolucanus okinawanus 、英名:不明)

オキナワマルバネクワガタ(学名:Neolucanus okinawanus 、英名:不明)

オキナワマルバネクワガタは、クワガタにも関わらず、飛ぶことは無く歩いてパートナーを探します。人間によって作られたコンクリ―トの道路が彼らにとってはパートナー探しの大きな壁になっています。また、特徴的なフォルムが人気で密猟も絶えないそう。今回は、かなり大型の個体の観察に成功しこの美しい生き物の保護の重要さを再認識しました。

今回の「琉球ハーピング」では沢山の生き物の観察に成功することができました。
これからもさらなる生き物を求めて世界中を旅してまいります!

Photo & text : 姫野航 Wataru HIMENO
Observation : End of SEP, Okinawa Island “Forest of Yanbaru”

琉球ハーピング(2)

姫野による、琉球ハーピングブログ第2弾は、9 月下旬に沖縄本島のハーピングで観察した両生類たちをご紹介します。

最初に出てきたのは、日本一美しいカエルとも名高い オキナワイシカワガエルです。

1,オキナワイシカワガエル(青)

オキナワイシカワガエル (学名:Odorrana ishikawae 、 英名 Okinawa ishikawa’s frog )

絶滅危惧ⅠB 類 、沖縄県指定天然記念物、国内希少野生動植物種などに指定されていて、世界でも沖縄本島の北部にしか生息しないカエルです。今回我々が観察したのは黄色の色素が欠乏した青色の個体でした。青色の個体は時々生まれるのですが自然界では外敵から目立ちやすいため生存率がとても低く、観察できたのはとても幸運でした。

2,オキナワイシカワガエル

通常の個体は、緑色に黒ぶちの体色をしています。

3,オキナワイシカワガエル

一見こちらも派手ですが、生息地の苔の生えた岩に綺麗に擬態しています。

4,リュウキュウアカガエル

リュウキュウアカガエル(学名:Rana ulma、英名:Ryukyu brown frog )

本州のアカガエルと比べて口の周りの白くなった模様が特徴的です。真冬の1 月頃に繁殖期を迎えることが知られています。繁殖のために条件の整った渓流に沢山のリュウキュウアカガエルが集まります。 必死に鳴いてメスを呼ぶオスたち、数匹のオスにしがみつかまれ、そのまま溺れていくメスなど、懸命に生き抜くカエルの ドラマが生まれる季節です。また、エサの少ない冬ですので、ヒメハブやガラスヒバアなどのカエルを好む生き物たちも集まります。

5,ヒメハブ

水辺でカエルなどのエサを待ち伏せするヒメハブ。

6,リュウキュウアカガエル

脇をヒルに吸われるリュウキュウアカガエル。

7,リュウキュウアカガエル

ジャングルの落ち葉に綺麗にカモフラージュしています。

8,ナミエガエル

ナミエガエル(学名: Limnonectes namiyei、英名: Namie frog )

ナミエガエルも観察できました。こちらも沖縄本島北部にしか生息しないカエルです。ひし形の目が特徴の半水生のカエルで、渓流の近くに生息しています。現在は保護されていますが、以前は食用として扱われていたそう。 他のカエルとは違い、水中でカニやエビを食べている種ですので美味しいのでしょうか。

9,ナミエガエル

ナミエガエルのひし形の目!水中で餌を食べることも多いことからもわかるように、水中を滑らかに泳ぐ姿が観察されました。

10,ハナサキガエル

ハナサキガエル (学名 Odorrana narina、 英名:Ryukyu tip-nosed frog )

また、今回一番多く観察されたカエルのハナサキガエル です。綺麗に木に同化した茶色の個体。

11,ハナサキガエル

こちらは明るい色の個体。

12,ハナサキガエル

緑色の個体など様々な色合いの子がいてとても魅力的です。
奄美大島には、また色合いの違うアマミハナサキガエル、先島諸島にはオオハナサキガエル、コガタハナサキガエルなど近縁種が沢山生息しているので全種類観察し違いを確かめてみたいです。

手足がとても長いため、ジャンプ力が非常に高く、一度動くとすぐに見失ってしまいました。沖縄本島北部の固有種のうち、ハナサキガエルのみ天然記念物に指定されていないという逆に珍しいカエルです。

13,リュウキュウカジカガエル

リュウキュウカジカガエル(学名: Buergeria japonica 、英名: Ryukyu kajika frog)

リュウキュウカジカガエルとも出会いました。学名のジャポニカとあるように以前は、二ホンカジカガエルと呼ばれていたそうですが、本州にいるカジカガエルとは、全くの別種です。色合いがとて綺麗ですが、沖縄本島では全土で一般的に観察される種類です。先島諸島には、ヤエヤマカジカガエルなどの近縁種がいます。

14,リュウキュウカジカガエル

クワズイモの 茎の間で休む、リュウキュウカジカガエル 。

15,オキナワシリケンイモリ幼生

オキナワシリケンイモリの幼体

16,オキナワシリケンイモリ

オキナワシリケンイモリ(学名:Cynops ensicauda 、 英名:Fire-bellied Newts)

ウーパールーパーのようなエラのまだ生えたオキナワシリケンイモリにも出会いました。本土に生息するアカハライモリよりも陸上で生活することが多いイモリです。写真に収めることはできませんでしたが、幼生のお腹は黒色で驚きました。沢山の両生類の観察でき、沖縄の自然の豊かさを実感するハーピングでした。

Photo & text : 姫野航 Wataru HIMENO
Observation : End of SEP, Okinawa Island “Forest of Yanbaru”

琉球ハーピング(1)

西遊旅行の新しいワイルドライフ企画として始まったハーピング。初の「琉球ハーピング」ツアーの様子を、添乗員・案内人を務めた姫野航(Wataru HIMENO)よりレポートです!

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9月下旬、沖縄北部のやんばるの森でハーピングを行ってまいりました。 ハーピングとは、両生類・爬虫類学を意味する「 Herpetology 」 から派生してできた言葉で、両生類や爬虫類を観察に行くことを意味します。日本では、まだまだあまりなじみのない言葉ですが、日本にも沢山の固有種がいて、じっくり観察するととてもかわいい生き物が沢山いることに気づかされます。

今回は、中でもメインで観察を行ったクロイワトカゲモドキ (学名 Goniurosaurus kuroiwae 英名: Japanese cave gecko )のご紹介です。

1,クロイワトカゲモドキ琉球ハーピング

クロイワトカゲモドキ (学名 Goniurosaurus kuroiwae 英名: Japanese cave gecko )

クロイワトカゲモドキは、ヤモリの仲間なのですが、指の裏に鱗は無く壁に張り付くことができないうえに、瞼を持っているため瞬きができるなど、原始的なヤモリの特徴を持っています。沖縄本島北部の個体は赤い目にバンド模様が特徴的ですが、住む地域や島によって様々な種や亜種の色や模様が存在しています。

2,クロイワトカゲモドキ琉球ハーピング

近縁種の中国やベトナム北部に生息するハイナントカゲモドキ(学名:Goniurosaurus lichtenfeldi hainanensis)やペットとして人気の通称レオパ:ヒョウモントカゲモドキ(学名:Eublepharis macularius)とは違い、国内希少種に指定されていて触る事さえ禁止されています。

3,クロイワトカゲモドキ

小さな岩の上で小さな昆虫類などの獲物を待ち伏せする姿は真剣そのものです。 この個体は、野外では珍しい完全尾の個体でした。

4,クロイワトカゲモドキ(再生尾)

こちらの個体は、自切をして少し経った頃でしょうか。一度尾を自切するともう骨は生えてこないため、姿や形は全く違う尻尾が生えてきます。また、トカゲモドキの仲間は、尾に栄養をため込むことができます。その為、尾を切り離すことは栄養を貯めておいたものを捨てることにもなり、再生にかなりの体力を要します。天敵から身を守るために切り離したことが原因で栄養不足になり、餓死してしまう固体もいるようです。

5,リュウジンオオムカデ1

クロイワトカゲモドキが自切する理由として、大きな割合を占めるのがムカデの仲間です。その中でも最大級のリュウジンオオムカデ(学名:Scolopendra alcyona)に遭遇しました。正式に新種として認められて間もない種で、以前はヤンバルオオムカデと呼ばれていました。

6,リュウジンオオムカデ2

この個体は、優に 30cm を超えており、静かな夜のジャングルにリュウジンオオムカデの足音が響いていました。

7,クロイワトカゲモドキ

一見すると目立ちそうな、クロイワトカゲモドキですが沖縄北部の山の中では完全に同化していてなかなか見つけられません

8,クロイワトカゲモドキ

流木の上で、エサを待ち伏せしています。

9,クロイワトカゲモドキ

丸々と太ったこの個体。再生尾がとても丸々していて特徴的です。この個体は、他の個体から 1 時間ほど移動した地点で観察しました。クロイワトカゲモドキは移動能力も低く、限られた環境でしか生息していないため、遺伝子の細分化が進みやすく、それくらいの移動でも模様が全く違うことに驚かされます。

今回は幸運にも、たくさんの個体を観察できました。夜のジャングルの散策は、昼間には隠れている生き物たちも活発になります。とても面白いのですが、ホンハブやマイマイの仲間など沢山の有毒生物にも遭遇しますので正しい知識の下で観察を行うのが大切です。
来年の春には、他の地域にトカゲモドキを見に行くツアーも企画中です!

Photo & text : 姫野航 Wataru HIMENO
Observation : End of SEP, Okinawa Island “Forest of Yanbaru”