カテゴリー別アーカイブ: ◇日本 Japan

小笠原・鯨類との出会いを求めて(2)

水中ミナミハンドウイルカ (4)

小笠原・鯨類ツアーも後半になりました。風の影響で父島の南東側へは行くことができず、ほぼ毎日父島の島影から出ない西側海域でマッコウジラ、イルカを探しました。

小笠原 マッコウクジラ (1)

マッコウクジラは比較的ばらばらにいる感じで、深海域を往復していました。浮上してきて10分ほど休憩するとすぐに深海へ。

小笠原 オナガミズナギドリ (1)

クジラを待っている間に、船に近づいてきたオナガミズナギドリです、可愛い~♪♪

オナガミズナギドリ  Wedge-tailed shearwaterは、全長42センチ、翼開長101センチの海鳥。暗色型と淡色型があり、小笠原で観察されるのは淡色型です。日本では小笠原諸島でしか繁殖が確認されていません。

小笠原 ハンドウイルカ (1)

そしてこの日のハイライトは外洋に暮らすハンドウイルカ、大きいです!

小笠原 ハンドウイルカ (2)

船の先頭を行くハンドウイルカ。

ハンドウイルカ Bottlenose Dolphinは、ずんぐり体型で太めのクチバシ、全長3mほどでミナミハンドウイルカよりやや大きめの種です。今回の旅では4日目の午前中に出会い、しばらくの間船と一緒に遊んでくれました。ハンドウイルカは知能が高いことで知られ、2019年の京都大学の研究によれば、お互いの動きのタイミングを調整することで協力しあい、問題を解決できることが明らかになっています。笠井船長も、今年初めて出会ったというハンドウイルカ、小笠原では稀にしか出会わないイルカです。

小笠原 ハシナガイルカ

そして、ハートロック前の海域にはハシナガイルカがいました。水に入ってみると・・・

水中ハシナガイルカ(5)

水面に見えている何倍もの数が水中にいました!

水中ハシナガイルカ(4)

ハシナガイルカ Spinner Dolphinは、細長いクチバシを持つほっそり体型のイルカです。全長2mほどで、とても素早く泳ぐため一緒に泳ぐのは大変です。スピンジャンプを見せてくれることもあり、私たちが出会ったときにはお腹がピンクの子もいました。一説には興奮しているためともいわれています。

小笠原 BBQ

鯨類ツアーの最後の小笠原の夜は恒例のBBQ。小笠原のメカジキのカマとテールに牛タン、カルビ、サーロインです。

BBQ 小笠原

サーロインを程よく焼いてカットして・・・、とその時、サプライズ訪問が!

Fruit-bat02

BBQのテーブルの上のアレカヤシに、オガサワラオオコウモリが来ました!アレカヤシの実を食べていたようで、本当にびっくり、みんな食事を中断して観察です。

水中ミナミハンドウイルカ (1)

おがさわら丸出航の日は、南島のまわりでミナミハンドウイルカと泳ぐことができました。船の通信で、「寝ていて相手をしてくれないミナミハンドウが3頭います」と。

水中ミナミハンドウイルカ (2)

南島の東北の海底は白砂が広がり本当にきれいで、9月の透明度の高い海で見るイルカは最高です。

ミナミハンドウイルカ Indian Ocean Bottlenose Dolphinは、背中の体色が濃い灰色でお腹には小さな斑点があります。全長2.5m、小笠原を代表する「一緒に泳いで遊んでくれることがある」イルカ。

水中ミナミハンドウイルカ (5)

それにしても立派なコバンザメを従えていました。2頭のミナミハンドウイルカが2匹づつ、コバンザメをつけていました。

水中ミナミハンドウイルカ (4)

目を閉じて泳いでいます。片目が開いているのかはわかりませんが、半分寝てるのは間違いありません。脳の半分だけが眠っている状態で「半球睡眠」という睡眠方法です。

半分寝ながら、ドルフィンスィムにつきあうミナミハンドウイルカ・・・、寝ているところ、本当にすいません。

 

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おがさわら丸からの夕陽。二見港出航時は雨だったので、甲板では思いがけない夕陽を見ることができました。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : Sep 2021, 父島、小笠原諸島

Special Thanks :  FISHEYE 笠井船長&ビーストマスターⅢ号、スタッフのみなさま

 

小笠原・鯨類との出会いを求めて(1)

小笠原 マッコウクジラ 鯨類と出会う旅 Ogasawara Sperm Whale (1)

9月半ば、鯨類との出会いを求めて小笠原へ。海の透明度も高く、マッコウクジラとの遭遇チャンスの良い時期に設定したツアーですが、いつ台風が発生するかドキドキする季節でもあります。

おがさわら丸 オオミズナギドリ

おがさわら丸が東京湾を出ると、さっそくオオミズナギドリの姿が。御蔵島まではしっかりと観察することができました。

オオミズナギドリ Streaked Shearwater は日本のミズナギドリ科のなかでは最大種で、日本近海では北海道から沖縄・八重山諸島までの島嶼で繁殖し、春から秋にかけてよく海上で見られます。
伊豆諸島の御蔵島は、かつてはオオミズナギドリの世界最大の繁殖地で1978年の推定では170万~350万羽が島内で繁殖していたとされますが、2016年の環境省調査では推定約10万羽まで減ってしまいました。人間が持ち込んだネコが野生化して、オオミズナギドリを襲うようになり、ノネコ1匹が年間300羽を食べているという衝撃的なニュースがありました。

おがさわら丸 中秋の名月 (2)

そして、出航日の9月21日は「中秋の名月」。甲板で月の出を待つ人々。

おがさわら丸 中秋の名月

小笠原航路、太平洋ど真ん中で現れた月。「中秋の名月」とは、太陰太陽暦の8月15日の夜に見える月のことを指します。2021年の中秋の名月は8年ぶりの「満月」でした!

聟島列島 針の岩 小笠原 マッコウクジラ 鯨類と出会う旅 Ogasawara Sperm Whale (6)

翌朝、9時ごろに見えてきた聟島列島。シンボルともいえる「針の岩」です。聟島列島の小笠原航路付近も水深の深い「マッコウ海域」。過去2回、おがさわら丸からマッコウクジラを見たことがあるので、この日も期待しながら島を眺めました。

おがさわら丸 カツオドリ トビウオキャッチ (1)

マッコウクジラは見えませんでしたが、カツオドリのトビウオハンティング!

おがさわら丸 カツオドリ トビウオキャッチ (2)

ハンティングに成功したカツオドリ。

小笠原 マッコウクジラ 鯨類と出会う旅 Ogasawara Sperm Whale (8)

おがさわら丸が二見湾に入港すると、すぐにビーストマスターⅢ号で海へ。父島の西のマッコウ海域を目指しました。

小笠原 マッコウクジラ 鯨類と出会う旅 Ogasawara Sperm Whale (3)

40分ほど走ったところでマイクを入れてクリック音を確認。そしてブローが上がりました!

小笠原 マッコウクジラ 鯨類と出会う旅 Ogasawara Sperm Whale (11)

ブローに虹がかかります♪

小笠原 マッコウクジラ 鯨類と出会う旅 Ogasawara Sperm Whale (2)

小笠原到着日、7頭のマッコウクジラとの出会いがありました。クジラたちは深海域を往復しており、水面でゆっくりしている状態ではありませんでしたが、ブローの潮がかかりそうな距離で観察することができました。

初日からみなさまのクジラ運に助けられました !

 

Photo : Morihiko HAYAKAWA, Mariko SAWADA

Text : Mariko SAWADA

Special Thanks : FISHEYE 笠井船長&ビーストマスターⅢ号、スタッフのみなさま

スズメダイ、アジの大行進!冠島の海(京都、若狭湾)

スズメダイ 冠島 若狭湾 Kanmuri-jima Kyoto (2)

8月下旬、透明度の上がる日本海に期待して京都の冠島へ。京都府の北は日本海、若狭湾があります。舞鶴市の沖10キロの無人島が冠島(かんむりじま)です。

大潮の日の冠島の宮前(冠島にある神社の前のポイント)は潮流が速く、スズメダイ、アジ、イサキが行列をなしていました。

大潮の冠島 Kanmuri Jima at the flood tide

これだけの量のスズメダイはおもしろいです。

スズメダイ 冠島 若狭湾 Kanmuri-jima Kyoto (3)

日本海の金「アジ」、銀「スズメダイ」という表現をされますが、海の中は大群で光り輝いていました。ちょっと早い、秋らしい海の景色だそうです。

冠島 京都 若狭湾 Kanmuji-jima Kyoto Wakasa-bay

冠島は1924年にオオミズナギドリの繁殖地として国の天然記念物に指定され、基本的に上陸禁止の島です。まだ繁殖中の時期のはずですが、船からオオミズナギドリの姿を見ることはありませんでした。

ナヌカザメの卵 冠島 若狭湾 Kanmuri-jima Kyoto (1)

冠島の海では、これまで見たことがない生き物との出会いも。「人魚の財布」と呼ばれるナヌカザメの卵です。卵胎生のものが多いサメですが、ナヌカザメは卵を産むサメです。9~13ヵ月で孵化するそうです。

チャガラ 冠島 若狭湾 Kanmuri-jima Kyoto (5)

チャガラ。近くで観察したのは初めてでした。チャガラの名前は幼魚の群れる様子が、お茶殻がただよっているように見えることに由来します。

ゾウアメフラシ Aplysia gigantea 冠島 若狭湾  (5)

そして巨大アメフラシ、ゾウアメフラシです。60センチくらいはあったでしょうか、子犬のような大きさで活発に海底を動き回ってました。お客様も興奮して撮影。

イシダイの子供 冠島

音海半島のイシダイの若魚、シマダイとも呼ばれます。大きくなるとシマがだんだん薄くなり、老成個体と呼ばれる大物の雄は口元が黒くなりクチグロと呼ばれます。小さくても大きくても美味しい魚とか。

海の幸 潮富荘 福井県 高浜町 日引 (3)

期待していたら、夜のおかずにイシダイの幼魚の煮つけが登場。美味でした。宿泊した「潮富荘」では毎晩、集落で取れる野菜や湾内で取れる魚などが提供されました。

海の幸 潮富荘 福井県 高浜町 日引 (2)

言うまでもなく絶品のイワガキ。

潮富荘 福井県 高浜町 日引 (1)

冠島は京都府・舞鶴市ですが、福井県からもアクセスできる島です。今回滞在した内浦湾に面した集落、日引にある宿「潮富荘」は、日本海側の小さな村の暮らしを体験させてくれました。

日引の棚田 福井県 高浜町 

日引の棚田と内浦湾。大変のどかな日本海に面した集落の光景、まさに日本の景色。豊かな若狭湾の海を楽しめた、冠島の旅でした。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Aug 2021,Kanmuri-jima, Kyoto, Hibiki, Fukui 冠島(京都府)、日引(福井県)

Special Thanks : 冠島ダイビングサービスさま、潮富荘さま

ゾウアメフラシ Aplysia gigantea(冠島、若狭湾)

ゾウアメフラシ Aplysia gigantea 冠島 若狭湾  (3)

京都の日本海側、若狭湾の冠島で見た巨大アメフラシです。大きな海藻のような・・・え??と思って近づくと巨大なアメフラシがモリモリと海底を移動していました。

大きさは60センチくらいでしょうか、子犬のような大きさでした。写真と動画だけでゾウアメフラシと決めていいのかわからないのですが、調べていてゾウアメフラシAplysia gigantea の可能性が高いと思いました。ゾウアメフラシは最大70センチほどになる種で、日本、西オーストラリアで確認されている種です。

ゾウアメフラシ(冠島)Aplysia gigantea

とても活発に動くゾウアメフラシです。

ゾウアメフラシ Aplysia gigantea 冠島 若狭湾  (2)

アメフラシの名前は、刺激を与えたときに出す紫色の液体が海中で雨雲のように見えることに由来するといいます(諸説あり)。

そして英名はSea Hare =ウミウサギ。中国語でも「海兎」。この頭の2本の突起がウサギの耳にように見えることからついている名前です。

ゾウアメフラシ Aplysia gigantea 冠島 若狭湾  (5)

夢中で撮影。動きがあり、観察がとても楽しいゾウアメフラシでした。

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : Aug 2021, Kaumuri-jima, Kyoto 冠島、京都

Special Thanks : 冠島ダイビングサービスさま

天売島「海鳥塾」 海鳥のこと、環境のこと

天売島 海鳥塾  (2)

2021年の7月上旬、天売島の自然写真家・寺沢孝毅さんの案内で4日間の「天売島・海鳥塾」を実施しました。これまでも西遊旅行では天売島を目的とするツアーを行ってきましたが、4日間天売島のみに滞在し、海鳥のこと、環境・海洋ごみ問題、島の暮らしに触れる旅は初めての企画です。

4日間どうなるか心配なところもありましたが、お天気にも味方され、朝・夕のケイマフリ号からの海鳥観察、ウトウの帰巣の様子、フットパス・ウォーク、海岸清掃、漁船での釣り、島の海の幸炭火焼、寺沢さんの海鳥レクチャーと盛りだくさんでした。

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (7)

ケイマフリもたっぷり観察。 >ケイマフリの観察レポートはこちら

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (11)

オロロン鳥ことウミガラスも観察。今年は80羽を越えてるそうです。 >ウミガラス観察レポートはこちら

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (15)

ウトウもしっかり観察。今年の繁殖は、栄養価の高い魚が獲れず雛が育たなかったため危機的な状況となってしまいました。一羽でも多く巣立つことを祈るばかりです。

>ウトウの帰巣のレポートはこちら  >岩に乗るウトウのレポートはこちら

ウニ漁とウトウ 天売島 海鳥塾 (1)

この季節はムラサキウニ漁が行われています。風のない、ベタ凪の日はウニ漁船が朝6時30分に一斉に出漁します。ウトウ、ケイマフリとウニ漁船、天売島らしい風景です。

天売島 海鳥塾  (7)

これはウミネコの幼鳥を食べるオオセグロカモメです。ウミネコ繁殖地で観察していたとき、ウミネコがハシブトガラスに警戒して騒ぎ出したすきを狙ってオオセグロカモメが幼鳥を襲いました。つつかれて、やがて動かなる幼鳥。ここまで育ったのに・・・残念ですが、こうやってオオセグロカモメの命が繋がれていいます。小型の海鳥の繁殖地ではハシブトガラスやオオセグロカモメの捕食圧が気になりました。

天売島 海鳥塾  (1)

地元の漁師さんにお世話になり、水深15mほどの砂地でヒラメを狙いました。40分ほどで大きいヒラメ一匹とカレイを3匹を釣りましたが、このヒラメは5キロあり30人分のお刺身が取れます。

天売島 海鳥塾  (3)

すぐにうろこを取り、鰓を処理して締めます。取ります。スーパーの「ヒラメの刺身」しか知らない我々には、生息域から釣り上げて、締めて、解体して切り身になるまでの行程を学ぶことになりました。

天売島 海鳥塾  (4)

「天売島おらが島活性化会議」の協力も得て海岸清掃をしました。ネットや縄は岩の間に入り込んで取り出すのが大変です。次回はもっと準備して取り組もうと思いました。

天売島 海鳥塾

さえずるケイマフリ、ケイマフリが大好きな岩場にもゴミが。まずは、海鳥が繁殖する岩場のロープやネットを取り除きたいです。海に出たときに浮いているゴミも取りましたが、やはり細かくなったプラスチック<マイクロプラスチック>が浮遊していました。

天売島 海鳥塾  (2)

そして最後の夜は、「天売島おらが島活性化会議」による天売島の海の幸の炭火焼きを、「宇宙館」の庭でセッティングしてくださいました。採れたばかりの天売島のムラサキウニです。

天売島 海鳥塾  (1)

天売島の甘えびです。天売島の沖に日本海で有数の甘えびの漁場があります。お刺身と炭火、エビ汁でいただきました。

天売島 海鳥塾  (3)

いよいよ炭火焼です。天売島のホタテ貝、天売島の水だこの頭、ムラサキウニ。さらに焼尻島の「幻のめん羊サフォーク」の塩焼きとジンギスカンも加わり、天売島の食体験、すごすぎました。

天売島 海鳥塾  (4)

夕食後、島の宿・大一からの夕景を堪能。利尻富士が美しく見えました。

天売島 海鳥塾  (5)

そして天売港からの星天。

天売島 海鳥塾  (8)

たくさんの思い出と経験をいただき、天売島をあとにしました。

「宇宙館」と寺沢孝毅さん、「島の宿・大一」のみなさん、「天売島おらが島活性化会議」と島のみなさまに心より感謝です!!

 

Text : Mariko SAWADA

Photo : Mariko SAWADA, Wataru HIMENO

Observation : July 2021, Teuri Island, Hokkaido

Special Thanks : 自然写真家・寺沢孝毅さん

岩礁のウトウ(天売島)

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (5)

7月上旬に行った、天売島在住の自然写真家・寺沢孝毅さんによる「天売島海鳥塾」。朝、寺沢さん操船するケイマフリ号で海へ。赤岩の付近にウトウが上りたがる岩礁があります。

ウトウは北日本沿岸から千島列島、アリューシャン列島、アラスカ州まで北太平洋沿岸に広く分布するとされていますが、これらの地域でウトウを見るのはそんなに簡単ではありません。意外と見れる場所は少ないのです。

天売島はウトウの世界最大の繁殖地であり、繁殖中の「ツノ」がある成鳥を見られる(しかも簡単に)、世界でも貴重な場所です。

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (3)

このウトウの「ツノ」は英名がRhinoceros Aukletと「サイの角」の名がつくように、「ツノ」のような突起が繁殖期に現れます。幼鳥や非繁殖羽ではこの突起が見られません。初めてウトウを見たとき(根室海峡のマッコウクジラのクルーズ中でした)、それはそれは興奮しました。

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (8)

赤岩の付近に潮の干満で現れる岩礁があります。なぜかこの岩礁に乗ろうとし、何やら社会的アクティビティが行われているように見えるのです。中には登ってくる個体を妨害するものも。

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (1)

会話をしているかのような4羽。

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (7)

アクション。

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (11)

仲がいい?

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (12)

これも仲がいい??

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (13)

この2羽はペアですね!

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (10)

ずっと見ていられるほどおもしろいウトウの行動です。ウトウにとって大切な場所なのでしょう。

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography

赤岩の展望台から見たらこんな感じです。確実に、岩の周りにウトウが集まっています。

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (15)

観察していたら、突然、一斉に飛び立って行きました。とてもウトウの面白い行動を観察できた朝でした。2021年の繁殖状況が大変心配されるウトウ、一羽でも多くの雛が巣立つことを祈ります。

 

Text & Photo : Mariko SAWADA

Observation : July 2021, Teuri Island, Hokkaido

Special Thanks : 自然写真家・寺沢孝毅さん

夕景の天売島とウトウの帰巣

天売島 ウトウの帰巣 ウトウ Rhinoceros Auklet Teuri Island Sunset 天売島の夕陽 (2)

7月上旬に行った、天売島在住の自然写真家・寺沢孝毅さんによる「天売島海鳥塾」。この日の夕方は雲がありましたが、風がなくベタ凪。わずかに夕陽に期待してケイマフリ号で海へ出ました。やさしい太陽の光の中をウトウが群れを作って飛びます。

天売島 ウトウの帰巣 ウトウ Rhinoceros Auklet Teuri Island Sunset 天売島の夕陽 (3)

水面ぎりぎりを飛翔するウトウ。日没前に繁殖地の崖の下の海に集まり、帰巣のタイミングを待ちます。

天売島 ウトウの帰巣 ウトウ Rhinoceros Auklet Teuri Island Sunset 天売島の夕陽 (6)

ウトウがどんどん集まっています。

天売島 ウトウの帰巣 ウトウ Rhinoceros Auklet Teuri Island Sunset 天売島の夕陽 (1)

でも、いつもと様子が違うのです。お魚をくわえたウトウがほとんどいません。通常だと、巣にいる雛に与える魚をくちばし一杯にくわえて海面で待機したり、飛んでいるのに。

「今日は不漁?」と聞くと、寺沢さんが「毎日が不漁。もう雛の半分は餓死しているだろう。」と。

天売島 ウトウの帰巣 ウトウ Rhinoceros Auklet Teuri Island Sunset 天売島の夕陽 (8)

つらい現実です。繁殖の初期から栄養価の高い魚を親鳥が運ぶことができず、雛たちは餓死。巣穴付近で見た雛の死体も、この巣立ちを迎える季節なのにまだ小さく、栄養が足りてないことを物語っていました。

美しい天売の空を飛ぶウトウの姿、もう待つ雛がいない親鳥が多いのでしょう。

天売島 ウトウの帰巣 Rhinoceros Auklet Teuri Island (2)

翌日の夕方は赤岩の展望台でウトウの帰巣を待ちました。

天売島 ウトウの帰巣 Rhinoceros Auklet Teuri Island (1)

陽が沈むとウトウが鳴きながら巣に戻ってきました。やはり魚を持って帰るウトウの数は多くなく、魚を持っているウトウが見られると「がんばったね!」と、観察する人たちの間から声が上がりました。

天売島 ウトウの帰巣 Rhinoceros Auklet Teuri Island

ようやくお魚をくわえたウトウを近くで発見。例年だと、魚をくわえた親鳥が着地すると、それを横取りする他のウトウがやってくるのですが、今年はその光景もありませんでした。それほどに、雛がいないのです。

寺沢さんによると、過去にもこういうことはあったそうです。何とか一羽でも多く巣立つことを祈るばかりです。

どうして今年は魚がいないのか、海水温上昇のためなのか、潮の流れが変わったのか、どこかで誰かが獲っているのか。天売島は世界最大のウトウの繁殖地です。この天売島で繁殖ができなくなったらウトウはどうなってしまうのでしょう。気候など、私たちにどうしようもないことが原因かもしれませんが、これ以上の要因がないように、何かできることはないのか考えさせられました。

 

Text : Mariko SAWADA

Photo : Mariko SAWADA, Wataru HIMENO

Observation : July 2021, Teuri Island, Hokkaido

Special Thanks : 自然写真家・寺沢孝毅さん

ウミガラス – 天売島のオロロン鳥

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (18)

7月上旬に行った、天売島在住の自然写真家・寺沢孝毅さんによる「天売島海鳥塾」。朝、寺沢さん操船するケイマフリ号で海へ。赤岩の付近の岸壁に「ウミガラス」繁殖地があります。

サハリンのチュレニー島、千島列島、カムチャッカ半島から北極海の海にかけて広い地域で見られるウミガラス。日本国内では、以前は北海道の離島の松前小島、ユルリ島、モユルリ島にも繁殖地コロニーがありましたが、現在は天売島だけになりました。日本でたった一つのウミガラスの繁殖地なのです。

天売島へは、1960年代には8000羽のウミガラスが繁殖のために飛来していましたが、1970年代には500~1000羽、1980年代には130~600羽、1990年代は20羽~80羽、2000年代以降は30羽前後にまで減ってしまいました。

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (14)

ウミガラスの復活を目指して、1990年からデコイが設置されました。集団で繁殖する習性を利用した誘い込み作戦です。

写真はケイマフリ号から見上げたデコイの設置場所=ウミガラスの繁殖地です。左の方の穴にはデコイしかありませんが、右の方の穴にはデコイと本物のウミガラスで密になっています。

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (16)

手前の「羽毛」感があるのが本物のウミガラス。ツルっとしているのがデコイです。

ここでは繁殖個体を誘引するためにウミガラスの鳴き声をスピーカーで流しています(あまり「オロローン」とは聞こえませんが)。

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (19)

ウミガラスはどうしてこんなに減ってしまったのでしょう。1960年~70年にかけて行われたサケ・マス流し網漁などによる混獲がひとつの原因と言われています。この流し漁網に潜水するウミガラスが多数かかってしまいました。その他、大型で雑食のハシブトガラスやオオセグロカモメによる捕食圧、主食となる魚の減少(これも原因解明が難しい)などが推測されます。

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (17)

最近は個体数が少しづつ増加傾向にあり、2017年は56羽、2018年は58羽、2019年は62羽が飛来し、2021年は80羽ほどではないかとのことでした。実際に、2018年に訪問した時と比べてもしっかり観察できました。

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (12)

岩に乗っているウミガラスです!!ウトウもそばに浮かんでいて幸せな光景。

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (11)

4羽のウミガラス。

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (10)

水面を蹴るウミガラス。

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (11)

ウミガラスの飛翔。

ウミガラスがケイマフリと一緒に飛んでいる 天売島

ケイマフリに混ざって飛んでいるウミガラス。

繁殖個体が増えたウミガラスのニュースは大変うれしいことです。

 

Text : Mariko SAWADA

Photo : Mariko SAWADA, Wataru HIMENO

Observation : July 2021, Teuri Island, Hokkaido

Special Thanks : 自然写真家・寺沢孝毅さん

Reference : 「海の宇宙観」

天売島のケイマフリ Spectacled Guillemot

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (5)

7月上旬、天売島在住の自然写真家・寺沢孝毅さんの案内のもと、天売島で「海鳥塾」を開催。海鳥のことを学び、写真を撮り、環境問題を考え、天売島を満喫した3泊4日でした。

滞在中、海が穏やかな朝、寺沢さんが操船するケイマフリ号で海鳥観察クルーズへ。この時期の夜明けは4時頃で、6時の出発でも十分な明るさです。前浜漁港を出るとウトウがちらほら浮いています。ここから赤岩の方へ船を走らせます。

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (6)

赤岩付近に来るとケイマフリが飛んでいます!ケイマフリはオホーツク海沿岸、日本では青森県と北海道だけで繁殖している海鳥で、世界でも繁殖地を観察できる場所は意外と少ないのです。

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (11)

赤岩と屏風岩付近はケイマフリがいっぱいいました。ケイマフリの英名はSpectacled Guillemot でまさに「眼鏡をかけた」ような見事なアイリングです。千島列島のウミバトの中には目の周りが白っぽく「ケイマフリ?」と悩む個体がいましたが、ケイマフリのアイリングは見事。

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (3)

岩に乗るケイマフリです。寺沢さんによるとケイマフリにとって岩場はとても重要な場所。この岩場でそまざまな行動が観察され、交尾もこの岩の上で行われます。

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (1)

岩の上のケイマフリ、さえずりも聞こえます。いったいどんな会話をしてるのか、本当にずっと、見ていられる光景です。

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (4)

こちらも、2羽の会話を見守るかのよう。

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (8)

素敵なペア。右の個体の羽毛が個性的です。

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (10)

そして、あるタイミングで飛び立ちます。水面を蹴るケイマフリの赤い脚。

天売島 ケイマフリ号 海の宇宙館

ケイマフリ号は6人乗りの小型船です。あの光景をアイレベルで見れるのはケイマフリ号だけですね!この素敵なペイントは寺沢さんがご自身で描かれただそうです。

天売島日本酒 ケイマフリ 海の宇宙館 (2)

「海の宇宙館」の純米酒・ケイマフリ。旭川の高砂酒造さんの北海道産米100%使用のお酒です。そしてこのラベルのケイマフリは絵本作家・あべ弘士さんの絵です。とても素敵なラベル。

朝に美しいケイマフリを見て、夜は美味しいお酒・ケイマフリで天売島のウニをいただく・・。

●IMG_5313

「天売島おらが島活性化会議」の方々による「天売の幸炭火焼」。この季節はムラサキウニの最盛期です!ちなみに写真の上にあるジンギスカンは焼尻島の幻のめん羊サフォーク。焼尻の幸もいただいてしまいました。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Observation : July 2021, Teuri island, Hokkaido

Special Thanks : 自然写真家・寺沢孝毅さん、「天売島おらが島活性化会議」

コブダイの頼子・波左間海中公園(館山、千葉)

館山 TATEYAMA diving 頼子 Yoriko コブダイ Asian sheepshead wrasse (2)

波左間海中公園は東京湾と太平洋のちょうど境い目にあり、川から入る栄養と黒潮の影響を受けた、都心から2時間以内でこれるお魚ポイントです。そしてここを有名にしているのが、海底神社とコブダイの頼子。

YORIKO Asian sheepshead wrasse コブダイの頼子・波左間海中公園

コブダイは「タイ」とついていますがベラの仲間で、雌から雄に性転換する”雌性先熟”(しせいせんじゅく)の魚。最初に「雌」として成熟して繁殖を行った後、雄に性転換して再び繁殖に参加する魚です。

そしてこの「頼子」は、以前は「頼朝」という雄と一緒に雌でしたが、ある日縄張り争いに負けたのか「頼朝」が姿を消しました。その後「頼子」は雄化し、現在に至ります。コブダイの寿命は20年ほどと考えられていますが、「頼子」はもう30年を越えるといいます。波左間海中公園で愛され大事にされ、もう寿命なんか忘れた神秘的な存在になっているようです。

館山 TATEYAMA diving 頼子 Yoriko コブダイ Asian sheepshead wrasse

こちらが有名な波左間海中公園にある、世界で唯一の海底神社。1997年に館山の須崎神社を分社して建立された正真正銘の神社です。

館山 TATEYAMA diving Seapen ヤナギウミエラ (2)

もうひとつ、波左間海中公園で有名なのが「ヤナギウミエラの群生」。初めて見ました。潮によって砂地の表面に出ていたり、出ていないこともあるそうで、群生が見れてラッキーでした。ウミエラは英語名が”Sea pen”、まさに「羽根ペン」のような形をしていますね!

館山 TATEYAMA diving Seapen ヤナギウミエラ

群生するヤナギウミエラ。

館山 TATEYAMA diving dream

そして他にもお魚ポイントがあります。”Dream”と呼ばれる漁礁ではソフトコーラルとキンギョハナダイの創り出す美しい光景が。アカオビハナダイ、カワシワハナダイの姿も。

館山 TATEYAMA diving タカノハダイのクリニーニングステ-ション

こちらはタカノハダイ(ヒダリマキ)のクリーニングステーション。タカノハダイの名前は体の縞が「鷹の羽根」に似ていることに由来するそうです。尻尾の水玉の方も気になります。

館山 TATEYAMA diving 仲がいいミギマキ

こちらは仲のいいミギマキです。

 

Image : Mariko SAWADA

Observation : Jun 2021,Hasama Marine Park, Tateyama, CHIBA

Special Thanks : NAKAO MIKIさま – Ocean★TATEYAMA