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“スノーモンキー”として知られる地獄谷野猿公苑のニホンザル

長野県の上林温泉からほど近い地獄谷野猿公苑は、日本固有のニホンザルを間近に観察・撮影できる場所として世界的に“スノーモンキーパーク”として知れ渡り、今では訪れる観光客の8割以上は外国人。

第二次大戦後、この地域では林業が盛んに行われ、ニホンザルたちが生息する地獄谷周辺の山々も大きな影響を受けました。山林の伐採により生息地を失ったニホンザルは人間の暮らす集落へと降りてはりんご農場を荒らす様になったのです。この事がきっかけで、ニホンザルたちが駆除されてしまう事を懸念した地獄谷野猿公苑の初代苑長・原荘悟氏は、食べ物が十分にあれば彼らも畑を荒らす事はないだろうと考え、人里から離れた山の奥で彼らへ餌付けを始めたのです。警戒心の強いニホンザルの群れを慣れさせるまでに3年の歳月を要したそうですが、原氏の努力は着実に成果を上げ、1964年の地獄谷野猿公苑の開苑を迎える事になりました。

雪深い冬の間は山の中で食べ物を見つける事が困難なため、たくさんの野生のニホンザルがこの地獄谷野猿公苑に集まります。当初、人里に彼らを近づけない様にするために餌付けを始めたため、この地獄谷野猿公苑に行くには登山道を30分ほど登っていかなければなりません。冬の登山道は非常に滑りやすく、簡易アイゼンは必須アイテムです。

地獄谷野猿公苑へのトレイル

地獄谷野猿公苑を有名にしている最も大きな要素は“温泉に入るニホンザル”です。人間を除く霊長類の仲間の中で、ニホンザルは最も北に生息する種。雪深い寒冷地に生息する霊長類自体が世界的に非常に珍しいのですが、ニホンザルの生息域は長野よりもさらに北の青森県にまで及びます。ここ地獄谷には温泉が湧き出ることもあり、公苑内にはサルたち専用の石造りの浴槽が設置されています。冬の寒い日に多くのニホンザルが温泉につかり、まるで人間と同じような気持ちよさそうな表情を浮かべる事は大変興味深いものです。

ニホンザルの浸かる石造りの温泉

温泉に入るニホンザル

気持ちよさそうな表情を浮かべて温泉につかるニホンザル

気持ちよさそうな表情のニホンザル

4月下旬から6月にニホンザルは出産期を迎えますが、ちょうど初めての冬を迎える小さな子供のサルもたくさん観察することができます。好奇心旺盛で活発に動き回る子供のサルたちはとても愛らしく、ずっと見ていても飽きることがありません。また、子供を寒さから守るためしっかりと抱きかかえている母ザルの姿もとても印象的でした。

愛情いっぱいの親子のニホンザル

親子のニホンザル

好奇心旺盛なニホンザルの子供

ニホンザルの子供

苑内の見どころはこの温泉だけではありません。山の斜面や苑内を流れる横湯川沿いでも数多くのニホンザルが観察でき、毛づくろいをしたり、雪の中の餌を探したり、時には餌を巡って喧嘩が始まったりと彼らの様々な姿を観察することができます。人間に慣れているため非常に近くで観察や撮影ができる点も大きな特徴で、苑内のルールでは“1m”以内に近づく事が禁止されています。

ニホンザルが見せる様々な姿

ニホンザル

ニホンザル

ニホンザル

世界からの注目を集めた最初のきっかけは1970年、アメリカの「LIFE」誌に掲載された事。その後、1998年の長野オリンピックの際に世界中から集まったメディアによってこの地獄谷野猿公苑の存在が多くの国々に伝え、広まったのでした。今では家族連れやカップルなどの観光客から本格的な写真家まで様々な人々がこの地を訪れ、さらにその魅力を世界に発信しています。

 

Photo & Text : Kengo Yonetani

Observation : Feb 2025, Jigokudani-Onsen, Nagano, Japan

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