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雨季の沖縄ハーピング:3種のトカゲモドキと出会う

5月、雨季真っただ中の沖縄ハーピングツアーのレポートです。今回の目的は、沖縄本島北部のやんばる国立公園・沖縄本島南部・伊平屋島の3か所で3種類のトカゲモドキ(学名:Goniurosaurus sp)を探すこと。

初日に向かったのは、沖縄本島の南部です。この地域は、サンゴ礁が隆起してできた石灰岩を中心とした地形が広がるのが特徴です。生息するクロイワトカゲモドキ(英名:Japanese ground gecko、学名:Goniurosaurus kuroiwae)を石灰質のバックグラウンドと共に撮影できる貴重なポイントです。

クロイワトカゲモドキ Japanese ground gecko (Goniurosaurus kuroiwae)

天候にも恵まれ20匹を超える個体を観察できました。クロイワトカゲモドキ(英名:Japanese ground gecko、学名:Goniurosaurus kuroiwae)は、背中に伸びる模様が首ものから尻尾まで途切れずに一直線になっているのが一番の特徴です。

クロイワトカゲモドキ Japanese ground gecko (Goniurosaurus kuroiwae)

クロイワトカゲモドキ Japanese ground gecko (Goniurosaurus kuroiwae)

2日目に向かったのは、沖縄県最北端の島・伊平屋島です。伊平屋島は、日本に生息するトカゲモドキたちの中でも一番観察が難しいイヘヤトカゲモドキ(英名;Iheya ground gecko: 学名:Goniurosaurus toyamai)が生息します。

フェリーで到着後は、美しい海と島内唯一のタクシー、ハブタクシーに出迎えられました。いよいよ観察に出発です。

伊平屋島の美しい海

島唯一のタクシー、ハブタクシー

日が暮れて間もなくすると、お目当てのイヘヤトカゲモドキが早速現れてくれました。特徴的なバンド模様に薄いピンク色の体色が特徴的です。自然界では珍しい完全尾で全長は手のひらほどあろうかという大きく美しい個体でした。

イヘヤトカゲモドキ Iheya ground gecko  (Goniurosaurus toyamai)

イヘヤトカゲモドキ Iheya ground gecko  (Goniurosaurus toyamai)

その後も、沖縄諸島で最もレアなヘビの一つ、ハイ(英名:Hai Coral Snake,学名:Sinomicrurus japonicus boettgeri)の観察にも成功しました。今まで人間が噛まれた記録はありませんが、コブラの仲間で猛毒ヘビですので注意しながらの観察になりました。

ハイ Hai Coral Snake (Sinomicrurus japonicus boettgeri)

ハイ Hai Coral Snake (Sinomicrurus japonicus boettgeri)

最も興味深かった出来事の一つに、アカマタ(英名:Ryukyu odd-tooth snake、学名:Lycodon semicarinatus)との出会いがありました。この日は、合計3個体の観察に成功しましたが、沖縄本島に生息する本種より、明らかに色合いが濃くシックな色合いである印象を受けました。沖縄本島でも、大きくなると色が濃くなっていく傾向があるのですが、伊平屋島の個体群は、はるかに小さい段階で色合いが濃くなっていくのではないかという印象を受けました。アカマタだけではありませんが、ハーピングに訪れる人の少ない伊平屋島で更なる研究が進むと将来的には新種に登録される種がまだまだ見つかるのではないかと期待が持てました。

アカマタ   Ryukyu odd-tooth snake  (Lycodon semicarinatus)

アカマタ   Ryukyu odd-tooth snake  (Lycodon semicarinatus)

観察の最後には、別の個体のイヘヤトカゲモドキや、翌日の午前中にはホンハブの観察にも成功し大満足のイヘヤハーピングとなりました。

イヘヤトカゲモドキ Iheya ground gecko  (Goniurosaurus toyamai)

ホンハブ Habu (Protobothrops flavoviridis)

最終日に向かったのは、沖縄本島北部にあるやんばる国立公園です。こちらでは、2024年に新種登録されたばかりのヤンバルトカゲモドキ(英名:Yambaru ground-gecko、学名:Goniurosaurus nebulozonatus)が最大の目的でした。

ヤンバルトカゲモドキの最大の特徴は、背中に伸びる模様が途切れていることです。今回観察した個体の中には、背中の模様が繋がりかけている個体もいましたが、以前まで同種とされていた沖縄本島南部のクロイワトカゲモドキとは全く別物であることが見て取れました。

ヤンバルトカゲモドキ   Yambaru ground-gecko  (Goniurosaurus nebulozonatus)

ヤンバルトカゲモドキ   Yambaru ground-gecko  (Goniurosaurus nebulozonatus)

やんばる国立公園でのハーピングは、観察できる生き物の多さにも魅力があります。トカゲモドキの他に、リュウキュウアオヘビ (英名 : Ryukyu green snake、学名 : Cycophiops semicarinatus)
、イボイモリ (英名 : Anderson’s crocodile newt  学名:Echinotriton andersoni)、ナミエガエル ( 英名 : Namiye’s frog、学名 : Limnonectes namiyei)、などの観察にも成功し大満足のハーピングとなりました。

リュウキュウアオヘビ Ryukyu green snakes (Cycophiops semicarinatus)

イボイモリ   Anderson’s crocodile newt (Echinotriton andersoni )

ナミエガエル Namiye’s frog (Limnonectes namiyei)

ヒメハブ Okinawa pitviper (Ovophis okinavensis)

沖縄諸島は、島ごとにそれぞれ固有なHerps が生息しておりハーピングのホットスポットです。ぜひハーピングに出かけてみてください。

 

Photo &Text : Wataru HIMENO

Observation : May 2024, Okinawa Islands

★西遊旅行のワイルドライフツアー一覧はこちら

Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

 

琉球ハーピング(1)

西遊旅行の新しいワイルドライフ企画として始まったハーピング。初の「琉球ハーピング」ツアーの様子を、添乗員・案内人を務めた姫野航(Wataru HIMENO)よりレポートです!

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9月下旬、沖縄北部のやんばるの森でハーピングを行ってまいりました。 ハーピングとは、両生類・爬虫類学を意味する「 Herpetology 」 から派生してできた言葉で、両生類や爬虫類を観察に行くことを意味します。日本では、まだまだあまりなじみのない言葉ですが、日本にも沢山の固有種がいて、じっくり観察するととてもかわいい生き物が沢山いることに気づかされます。

今回は、中でもメインで観察を行ったクロイワトカゲモドキ (学名 Goniurosaurus kuroiwae 英名: Japanese cave gecko )のご紹介です。

1,クロイワトカゲモドキ琉球ハーピング

クロイワトカゲモドキ (学名 Goniurosaurus kuroiwae 英名: Japanese cave gecko )

クロイワトカゲモドキは、ヤモリの仲間なのですが、指の裏に鱗は無く壁に張り付くことができないうえに、瞼を持っているため瞬きができるなど、原始的なヤモリの特徴を持っています。沖縄本島北部の個体は赤い目にバンド模様が特徴的ですが、住む地域や島によって様々な種や亜種の色や模様が存在しています。

2,クロイワトカゲモドキ琉球ハーピング

近縁種の中国やベトナム北部に生息するハイナントカゲモドキ(学名:Goniurosaurus lichtenfeldi hainanensis)やペットとして人気の通称レオパ:ヒョウモントカゲモドキ(学名:Eublepharis macularius)とは違い、国内希少種に指定されていて触る事さえ禁止されています。

3,クロイワトカゲモドキ

小さな岩の上で小さな昆虫類などの獲物を待ち伏せする姿は真剣そのものです。 この個体は、野外では珍しい完全尾の個体でした。

4,クロイワトカゲモドキ(再生尾)

こちらの個体は、自切をして少し経った頃でしょうか。一度尾を自切するともう骨は生えてこないため、姿や形は全く違う尻尾が生えてきます。また、トカゲモドキの仲間は、尾に栄養をため込むことができます。その為、尾を切り離すことは栄養を貯めておいたものを捨てることにもなり、再生にかなりの体力を要します。天敵から身を守るために切り離したことが原因で栄養不足になり、餓死してしまう固体もいるようです。

5,リュウジンオオムカデ1

クロイワトカゲモドキが自切する理由として、大きな割合を占めるのがムカデの仲間です。その中でも最大級のリュウジンオオムカデ(学名:Scolopendra alcyona)に遭遇しました。正式に新種として認められて間もない種で、以前はヤンバルオオムカデと呼ばれていました。

6,リュウジンオオムカデ2

この個体は、優に 30cm を超えており、静かな夜のジャングルにリュウジンオオムカデの足音が響いていました。

7,クロイワトカゲモドキ

一見すると目立ちそうな、クロイワトカゲモドキですが沖縄北部の山の中では完全に同化していてなかなか見つけられません

8,クロイワトカゲモドキ

流木の上で、エサを待ち伏せしています。

9,クロイワトカゲモドキ

丸々と太ったこの個体。再生尾がとても丸々していて特徴的です。この個体は、他の個体から 1 時間ほど移動した地点で観察しました。クロイワトカゲモドキは移動能力も低く、限られた環境でしか生息していないため、遺伝子の細分化が進みやすく、それくらいの移動でも模様が全く違うことに驚かされます。

今回は幸運にも、たくさんの個体を観察できました。夜のジャングルの散策は、昼間には隠れている生き物たちも活発になります。とても面白いのですが、ホンハブやマイマイの仲間など沢山の有毒生物にも遭遇しますので正しい知識の下で観察を行うのが大切です。
来年の春には、他の地域にトカゲモドキを見に行くツアーも企画中です!

Photo & text : 姫野航 Wataru HIMENO
Observation : End of SEP, Okinawa Island “Forest of Yanbaru”