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アンデスイワドリ Andean Cock-of-the-rock(エクアドル)


アンデスの雲霧林で、アンデスイワドリ(Andean Cock-of-the-rock)に出会えました。鮮やかなオレンジ色の羽に、大きな扇形の冠羽が特徴です。

ペルーの国鳥にも指定されているこの鳥は、アンデスを象徴する存在。特にオスの派手な見た目と独特な求愛行動で、鳥好きの間では“憧れの種”とされています。

嘴が見えないのでどちらを向いているのかわからず、一瞬戸惑います。

少しだけかわいい嘴が見えることも。

一方でメスは、茶色とオレンジがかった地味な羽色。巣作りや抱卵に集中するため、目立たない姿で過ごします。実際、今回も橋の下のコンクリート壁に巣を作り、ひとりで抱卵するメスを見かけました。オスは一切営巣にかかわらないため、メスの孤独な子育てが印象的でした。

アンデスイワドリの観察といえば、やはり「レック(lek)」です。レックはオスが集団で求愛ディスプレイを繰り広げる場所で、集団求愛場とも言います。川近くの岩場や洞窟などメスが巣作りできる場所の近くにある森林です。決まった場所で毎年同じように行われます。

観察に適した時間帯は早朝と日暮れ前の1日2回。光の加減がディスプレイの行われる時間と関係していると言われています。

ガイドさんによると、ミンド周辺だけでも観察できるレック用のハイド(観察小屋)が5ヶ所ほど設置されており、その年の活動状況や季節に応じて案内してもらえます。

レックでは、複数のオスたちが激しいパフォーマンスを繰り広げます。
大きく羽ばたいたり、跳ねたり、独特な鳴き声を響かせながら、メスの関心を引こうと必死です。

今回の観察中、運よくメスが近づいた瞬間がありました。そのとたん、オスたちの動きは一気に激しさを増し、鳴き声もいっそう大きくなりました。私からはメスの姿は見えませんでしたが、オスたちの反応からメスの存在をはっきりと感じ取ることができました。

なお、オスは繁殖においてディスプレイと交尾のみを担当し、巣作りや抱卵など子育てには一切関与しません。彼らは一年中レックに現れ、求愛とその“練習”を続けているのです。

英名の「Andean Cock-of-the-rock」は、“アンデスの岩場の雄のニワトリ”という意味です。写真だけ見るとなんでニワトリと思いますが、レックでのメスへアピールする鳴き声を実際に聞けば、その名前にも納得です。

なお、近縁種としてギアナ高地に生息する「ギアナイワドリ」もいますが、アンデスイワドリとは生息域が重なっていません。

↑↑↑ は2019年にガイアナで出会ったイワドリ(ギアナイワドリ)です。

今回出会えたアンデスイワドリは、見た目も動きも、想像以上にインパクトのある鳥でした。鮮やかな羽の色や変わった頭の形はもちろん、あの全力のアピールや鳴き声まで含めて、「本当にこんな鳥がいるんだな」と思わせてくれる、忘れられない出会いになりました。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : May 2025, Mindo Valley, Ecuador

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