タグ別アーカイブ: ウトウの帰巣

海鳥の春 – 4月の天売島ワイルドライフ 2025

昨年に引き続き、春の天売島ワイルドライフのレポートです。観光客の姿がほとんどない静かな4月の天売島ですが、冬が終わり芽吹く緑、そして繁殖期を迎えた海鳥は大変活発な動きを見せ、生き物好きにはなかなか良い季節なのです。

西遊旅行の北海道2件目の宿となる「天売マフレ」開業準備のため4月12日~18日まで滞在し、その間に観察したワイルドライフの記録です。赤岩展望台からハクチョウの北帰行を見つけてくれたガイドの今堀魁人さん、天気の合間を見てケイマフリ号を朝と夕に操船してくださった寺沢孝毅さんに感謝です。小型ボートから見る海鳥の躍動はまさにスペクタクルでした。

①ウミネコ営巣地・黒崎海岸

今年さらに営巣地が拡大の様相です。4月の半ばはウミネコたちがそれぞれの営巣場所を主張しとてもにぎやか。疑似交尾?交尾?の姿も見られました。ウミネコは日本では普通種ですが、生息地が極東アジアに限られるため海外のバーダーにとっては珍しい海鳥だそうです。特に黄色い目のまわりにある赤いアイリングが際立ち、鋭い目に見えます。

繁殖地のウミネコ

冬を越したクジャクチョウ、春を感じさせる光景です

②夕方~日没後の赤岩展望台

晴れた日にはサンセット~ウトウの帰巣と2時間以上たっぷり楽しめる場所が赤岩展望台。海に沈む太陽、夕日の利尻富士を望み、そしてウトウの帰巣を待ちます。その時、聞きなれない鳥の声が。ガイドの今堀さんが「コハクチョウ」と。なんと北帰行で飛んでいるコハクチョウの声だったのです。天売島でハクチョウの北帰行を見られるとは思ってもいませんでした。
暗くなり、ウトウが戻ってきました。この時期は抱卵中で雛がかえった後のような勢いのある帰巣風景ではないですが、イタドリに覆われていない巣穴が見えるウトウ繁殖地では、戻ってきたウトウがまる見え。また雛に魚も運んでいないのですぐに巣穴に戻る必要もなく、ウトウの写真を撮りやすいのがこの季節です。
*夜8時30分をすぎると道路がウトウだらけになります、ウトウの交通事故を防ぐためにこの時間までには繁殖地を出ましょう。

今堀魁人さん撮影、夕日の赤岩展望台から見たハクチョウの北帰行

着陸してもすぐに巣穴に入らないウトウ

動かないな、と思っていたら一気に巣に入っていきました。

満月に照らされた海面を背景に、次々に戻ってくるウトウ

③朝の赤岩展望台

眼下の「天売ブルー」の海にはウミガラス、ケイマフリの姿が。ガイドの今堀さんの話ではもう間もなく、岩場で求愛するケイマフリの姿が見られるようになるそうです。

利尻富士-天売島から見る利尻富士は格別

海上のウミガラスとケイマフリ

ゴマフアザラシの姿も

④夕方のケイマフリ号

晴れて波風が穏やかな夕方にのみ実現するこのクルーズ。4月17日の夕方のクルーズで見た光景は「ここは千島列島か」と思うほどの豊かな海、海鳥の躍動。プランクトンが豊かで、そこで潜水するウトウ、上空に舞うウミネコ。列をなして飛ぶウトウの数を見て天売島の豊かな自然に感謝。

洋上を群れで飛ぶウトウ

日が落ちてもまだ海へ飛んでいきます

ウミネコも洋上に待機。ウトウ、ウミネコが舞う天売島の夕方の海

⑤朝のケイマフリ号

赤岩付近の岩場ではケイマフリの声が響きます。そしてこの日のスペシャルは利尻富士背景のケイマフリたち。一緒に撮れるチャンスを待ちましたがそんなに簡単には行かないですね。
ちょうど港に戻るとき、寺沢さんが「あの鳥はなんだ」と・・・ハクチョウの北帰行でした。利尻富士を越えサハリン方面へと飛んでいくハクチョウを見送りました。

ウミガラス  繁殖地に設置されたデコイの中から飛び出してきました

赤岩周辺の岩礁のゴマフアザラシ

シノリガモ 4月はまだ天売島にたくさんいます

愛らしいケイマフリの姿

洋上に集まるケイマフリ

利尻富士とケイマフリ

今堀魁人さん撮影、天売の海から見る利尻富士とハクチョウの北帰行、夢のような写真です!

今堀魁人さん撮影、ハクチョウの北帰行

昨年は4月15日に「群来(くき)」が天売島で起こり、今回も滞在中に「群来(くき)ったらいいね」と話していましたが、それはかないませんでした。が、4月12日と18日の2回、ハクチョウの北帰行を見れたことは、とても嬉しいものでした。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA, Photo of “Swans returning north” taken by Kaito Imahori

Observation : April 2025, Teuri Island 天売島

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Youtubeでもワイルドライフの動画を配信しています。再生リストもご覧ください。

春の天売島のウトウ – Rhinoceros Auklet on Teuri Island in spring

「ウトウの帰巣」を見に6月に天売島に来られる方が多いのですが、繁殖は3月には始まっています。その頃はまだ雪があり訪問するのはむつかしいのですが、4月に訪問した「ウトウ繁殖地」の様子をご紹介します。

>>春の天売島・ワイルドライフと70年ぶりの郡来(くき)

4月下旬のウトウの繁殖地はイタドリが芽吹いたばかりでウトウの巣が見える状態でした。そのため、ウトウの帰巣が始まると着地して巣穴に入るまでの様子を観察することができます。この時期のウトウは抱卵中のため夜の帰巣は親鳥の「交代」のためです。海に出ていた片方の親鳥が暗闇に帰ってきて、それまで1日中卵を抱いていたもう片方の親鳥は海へと出かけます。そのため育雛時期に比べると見られるウトウの数自体は少ないのですが、巣穴に出入りする様子をゆっくり見られるのはイタドリが巣穴を覆い隠す前のこの時期だけなのです。しかもイタドリは芽吹き始めると日に日に成長してあっという間に巣を覆い隠します。

赤岩展望台にて夕景を見ながら帰巣を待ちます。

ウトウの営巣地です。イタドリが一定の高さで切られたように見えますが、この高さはその冬の積雪の高さを示します。雪に埋まっていた部分だけが残り、雪から出た部分は厳しい風でなくなってしまいました。おかげでウトウの巣穴もよく見える状態です。

満月の夜でした。空気が澄んだ天売島で見る満月は大変美しいものです。

月明りで海に「光の道」ができました。

ウトウたちの帰巣が始まりました ♪♪

着地してしばらくこちらの様子を見ているのか、すぐに巣穴に向かわないウトウ。雛が生まれると、餌を銜えて戻ってきた親鳥は一目散に巣穴に入っていくのでゆっくり観察する余裕はありません。雛もお腹を空かしてまっているし、他の餌を採れなかったウトウに横取りされたりするからです。雛の誕生していないこの時期はゆっくり観察するチャンスです。

巣穴が道路の観察場所に近い個体はこちらの様子をみながら近づいてきます。私たちの足元の道路の下に巣があるようで途中から猛スピードで巣穴に走りこんでいきました。

巣穴にすぐには入らず、ゆっくりとしているウトウも。

二度目の天売島訪問の方には、この季節もお勧めです。さらに運が良ければ「群来(ニシンの産卵)」や渡り鳥たちとの遭遇もある季節です。4月の天売島の様子はこちらのブログをご覧ください>>>春の天売島・ワイルドライフと70年ぶりの郡来(くき)

 

Image & text : Mariko SAWADA

Observation : April 2024, Teuri Island, Hokkaido

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春の天売島のワイルドライフと70年ぶりの群来(くき)

2024年4月15日、北海道の天売島では70年ぶりとなる「群来(くき)」が観察されました。島の人は大喜びで撮影し、そしてニシンを収穫しました。島の宿ではニシンの煮つけと数の子がふるまわれました。今、島にいる人の中にニシンが大漁に獲れた時代を知る人はいません。

春の天売島で観察したワイルドライフをご紹介します。羽幌港から天売島への航路ではオオハム(意外と多い)、ウミスズメ、そしてウトウ、ケイマフリを見ることができました。

天売島では、ウミガラス、ケイマフリ、ウトウ、ウミスズメ、ウミネコ、オオセグロカモメ、ウミウ、ヒメウの8種の海鳥が繁殖しています。4月、もうその営みは始まっています。黒崎海岸ではウミネコが繁殖し、そのエリアを拡大中。4月20日ごろは交尾(または疑似交尾)があちこちで行われていました。

交尾(または疑似交尾)するウミネコ

ウミネコの繁殖地が拡大傾向にある黒崎海岸

海鳥観察舎からウミウの繁殖地を見ると、もう雛に給餌していました。ウミウは繁殖が早い時期に始まる海鳥ですが、早くなってきている傾向にあるようです。断崖の上の斜面ではオオセグロカモメが繁殖し、交尾している様子も見られました。それにしてもこの付近もたくさんのウトウの営巣地があります。

断崖に営巣するウミウ。ほとんどの巣に雛がいました。

前浜漁港付近ではウミアイサの姿が。ウミアイサは冬鳥として天売島へ渡ってきます。彼らももうすぐ北へと渡って行きます。

ウミアイサのペア

そしてシノリガモ。天売島で一番目にするカモの仲間です。前浜漁港付近やロンババ浜でよく見かけました。シノリガモは年中天売島で見られるそうですが、断然冬の時期が観察しやすく、そして美しいです。

シノリガモ ロンババの浜にて

風が少し穏やかになった日の朝、島の写真家・ 寺沢孝毅さんの操船する小型ボート「ケイマフリ号」で海へ出ました。小型ボートから見たのは、まさに春の天売島の景色。

港を出てすぐに出会ったトド。北海道へは冬場に千島列島方面から回遊してきます。若いオスが1匹でいました。ニシンが訪れるようになった天売島、人だけでなく野生動物も集まります。豊かな海の象徴です。

トドもまもなく北上していきます

ボートから黒崎海岸のウミネコ繁殖地を海から眺め、赤岩方面へ。ウミガラス繁殖地ではウミガラスの姿は見られませんでしたが、付近の海上を4羽のウミガラスが飛んでいるのを見ました。

岩礁にはたくさんのゴマフアザラシたちがいました。乾燥してふわふわしています。

船に注目するゴマフアザラシ

鳴き交わす美しい声が洋上に響きます、ケイマフリの声です。海岸の岩場では求愛のしぐさが愛らしいペアの姿が。

求愛するケイマフリ

営巣する断崖近くの洋上のケイマフリの群れ

愛らしいケイマフリの赤い脚

最後に、西遊旅行の天売営業所(天売島ネイチャーライブ)のスタッフが4月15日に撮影した「群来(くき)」の様子です。

「群来」で白濁したロンババの浜

産卵は春に起こり、水深 1m 以下の浅い海でメスが卵を海藻に産み付け、オスが放精して受精させます。この放精によって海水が白濁する現象を群来(くき)と呼びます。

海藻に卵を産み付けるニシン

お世話になった萬谷旅館さんで出たニシン料理。新鮮なニシンは大変美味しいものでした。

ニシンの煮つけ

ニシンの卵、「数の子」

私自身、アラスカのシトカまでニシンの大産卵に集まるワイルドライフを求めて行き、帰ってきたばかりでした。アラスカでは“Herring Run”の名のもと、シトカの海に集まるザトウクジラ、コククジラ、ハクトウワシ、トドなど生き物と遭遇するワイルドライフツアーが大人気です。

日本の「群来」もいつかHokkaido’s Herring Runとして注目を集める日が来るのでしょうか。いやいや、その前に、まず毎年ニシンが産卵に来てくれる豊かな海を取り戻すことが大切です。来年もニシンが戻ってきてくれることを願います。

 

Photo & text : Mariko SAWADA

Photography of Herring spawning : Midori KUDO

Observation : April 2024, Teuri Island , Hokkaido

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天売島「海鳥塾」 海鳥のこと、環境のこと

天売島 海鳥塾  (2)

2021年の7月上旬、天売島の自然写真家・寺沢孝毅さんの案内で4日間の「天売島・海鳥塾」を実施しました。これまでも西遊旅行では天売島を目的とするツアーを行ってきましたが、4日間天売島のみに滞在し、海鳥のこと、環境・海洋ごみ問題、島の暮らしに触れる旅は初めての企画です。

4日間どうなるか心配なところもありましたが、お天気にも味方され、朝・夕のケイマフリ号からの海鳥観察、ウトウの帰巣の様子、フットパス・ウォーク、海岸清掃、漁船での釣り、島の海の幸炭火焼、寺沢さんの海鳥レクチャーと盛りだくさんでした。

ケイマフリ Spectacled guillemot 天売島 Teuri Island 海の宇宙館 ケイマフリ号 (7)

ケイマフリもたっぷり観察。 >ケイマフリの観察レポートはこちら

オロロン鳥 ウミガラス 天売島 ウミガラス繁殖地 Common Murre Common Guillemot Teuri island (11)

オロロン鳥ことウミガラスも観察。今年は80羽を越えてるそうです。 >ウミガラス観察レポートはこちら

天売島 ウトウ ケイマフリ号 Rhinoceros Auklet Teuri Island Bird Photography (15)

ウトウもしっかり観察。今年の繁殖は、栄養価の高い魚が獲れず雛が育たなかったため危機的な状況となってしまいました。一羽でも多く巣立つことを祈るばかりです。

>ウトウの帰巣のレポートはこちら  >岩に乗るウトウのレポートはこちら

ウニ漁とウトウ 天売島 海鳥塾 (1)

この季節はムラサキウニ漁が行われています。風のない、ベタ凪の日はウニ漁船が朝6時30分に一斉に出漁します。ウトウ、ケイマフリとウニ漁船、天売島らしい風景です。

天売島 海鳥塾  (7)

これはウミネコの幼鳥を食べるオオセグロカモメです。ウミネコ繁殖地で観察していたとき、ウミネコがハシブトガラスに警戒して騒ぎ出したすきを狙ってオオセグロカモメが幼鳥を襲いました。つつかれて、やがて動かなる幼鳥。ここまで育ったのに・・・残念ですが、こうやってオオセグロカモメの命が繋がれていいます。小型の海鳥の繁殖地ではハシブトガラスやオオセグロカモメの捕食圧が気になりました。

天売島 海鳥塾  (1)

地元の漁師さんにお世話になり、水深15mほどの砂地でヒラメを狙いました。40分ほどで大きいヒラメ一匹とカレイを3匹を釣りましたが、このヒラメは5キロあり30人分のお刺身が取れます。

天売島 海鳥塾  (3)

すぐにうろこを取り、鰓を処理して締めます。取ります。スーパーの「ヒラメの刺身」しか知らない我々には、生息域から釣り上げて、締めて、解体して切り身になるまでの行程を学ぶことになりました。

天売島 海鳥塾  (4)

「天売島おらが島活性化会議」の協力も得て海岸清掃をしました。ネットや縄は岩の間に入り込んで取り出すのが大変です。次回はもっと準備して取り組もうと思いました。

天売島 海鳥塾

さえずるケイマフリ、ケイマフリが大好きな岩場にもゴミが。まずは、海鳥が繁殖する岩場のロープやネットを取り除きたいです。海に出たときに浮いているゴミも取りましたが、やはり細かくなったプラスチック<マイクロプラスチック>が浮遊していました。

天売島 海鳥塾  (2)

そして最後の夜は、「天売島おらが島活性化会議」による天売島の海の幸の炭火焼きを、「宇宙館」の庭でセッティングしてくださいました。採れたばかりの天売島のムラサキウニです。

天売島 海鳥塾  (1)

天売島の甘えびです。天売島の沖に日本海で有数の甘えびの漁場があります。お刺身と炭火、エビ汁でいただきました。

天売島 海鳥塾  (3)

いよいよ炭火焼です。天売島のホタテ貝、天売島の水だこの頭、ムラサキウニ。さらに焼尻島の「幻のめん羊サフォーク」の塩焼きとジンギスカンも加わり、天売島の食体験、すごすぎました。

天売島 海鳥塾  (4)

夕食後、島の宿・大一からの夕景を堪能。利尻富士が美しく見えました。

天売島 海鳥塾  (5)

そして天売港からの星天。

天売島 海鳥塾  (8)

たくさんの思い出と経験をいただき、天売島をあとにしました。

「宇宙館」と寺沢孝毅さん、「島の宿・大一」のみなさん、「天売島おらが島活性化会議」と島のみなさまに心より感謝です!!

 

Text : Mariko SAWADA

Photo : Mariko SAWADA, Wataru HIMENO

Observation : July 2021, Teuri Island, Hokkaido

Special Thanks : 自然写真家・寺沢孝毅さん

夕景の天売島とウトウの帰巣

天売島 ウトウの帰巣 ウトウ Rhinoceros Auklet Teuri Island Sunset 天売島の夕陽 (2)

7月上旬に行った、天売島在住の自然写真家・寺沢孝毅さんによる「天売島海鳥塾」。この日の夕方は雲がありましたが、風がなくベタ凪。わずかに夕陽に期待してケイマフリ号で海へ出ました。やさしい太陽の光の中をウトウが群れを作って飛びます。

天売島 ウトウの帰巣 ウトウ Rhinoceros Auklet Teuri Island Sunset 天売島の夕陽 (3)

水面ぎりぎりを飛翔するウトウ。日没前に繁殖地の崖の下の海に集まり、帰巣のタイミングを待ちます。

天売島 ウトウの帰巣 ウトウ Rhinoceros Auklet Teuri Island Sunset 天売島の夕陽 (6)

ウトウがどんどん集まっています。

天売島 ウトウの帰巣 ウトウ Rhinoceros Auklet Teuri Island Sunset 天売島の夕陽 (1)

でも、いつもと様子が違うのです。お魚をくわえたウトウがほとんどいません。通常だと、巣にいる雛に与える魚をくちばし一杯にくわえて海面で待機したり、飛んでいるのに。

「今日は不漁?」と聞くと、寺沢さんが「毎日が不漁。もう雛の半分は餓死しているだろう。」と。

天売島 ウトウの帰巣 ウトウ Rhinoceros Auklet Teuri Island Sunset 天売島の夕陽 (8)

つらい現実です。繁殖の初期から栄養価の高い魚を親鳥が運ぶことができず、雛たちは餓死。巣穴付近で見た雛の死体も、この巣立ちを迎える季節なのにまだ小さく、栄養が足りてないことを物語っていました。

美しい天売の空を飛ぶウトウの姿、もう待つ雛がいない親鳥が多いのでしょう。

天売島 ウトウの帰巣 Rhinoceros Auklet Teuri Island (2)

翌日の夕方は赤岩の展望台でウトウの帰巣を待ちました。

天売島 ウトウの帰巣 Rhinoceros Auklet Teuri Island (1)

陽が沈むとウトウが鳴きながら巣に戻ってきました。やはり魚を持って帰るウトウの数は多くなく、魚を持っているウトウが見られると「がんばったね!」と、観察する人たちの間から声が上がりました。

天売島 ウトウの帰巣 Rhinoceros Auklet Teuri Island

ようやくお魚をくわえたウトウを近くで発見。例年だと、魚をくわえた親鳥が着地すると、それを横取りする他のウトウがやってくるのですが、今年はその光景もありませんでした。それほどに、雛がいないのです。

寺沢さんによると、過去にもこういうことはあったそうです。何とか一羽でも多く巣立つことを祈るばかりです。

どうして今年は魚がいないのか、海水温上昇のためなのか、潮の流れが変わったのか、どこかで誰かが獲っているのか。天売島は世界最大のウトウの繁殖地です。この天売島で繁殖ができなくなったらウトウはどうなってしまうのでしょう。気候など、私たちにどうしようもないことが原因かもしれませんが、これ以上の要因がないように、何かできることはないのか考えさせられました。

 

Text : Mariko SAWADA

Photo : Mariko SAWADA, Wataru HIMENO

Observation : July 2021, Teuri Island, Hokkaido

Special Thanks : 自然写真家・寺沢孝毅さん

天売島のウトウ 夕方のケイマフリ号より

ウトウ 天売島ケイマフリ号Rhinoceros Auklet (2)

天売島の自然写真家・寺沢孝毅さんの操船するケイマフリ号で夕日の天売の海へ。6月のこの時期には巣にいる雛に魚を運ぶウトウ Rhinoceros Auklet の姿が見られます。夕方は巣に帰る時間。海にはくちばしにたくさんの魚をくわえたウトウの姿が。

ウトウ 天売島ケイマフリ号Rhinoceros Auklet (1)

ウトウの英語名はRhinoceros Aukletで、Rhinocerosはサイのこと。上くちばしのつけ根にできる突起がサイのツノのようなのです。

ウトウ 天売島ケイマフリ号Rhinoceros Auklet (4)

巣にいる雛のために魚をいっぱいくわえたウトウ。

ウトウ 天売島ケイマフリ号Rhinoceros Auklet (5)

海に沈む天売の夕日とウトウのシルエット。

ウトウ 天売島ケイマフリ号Rhinoceros Auklet (6)

最後の光を惜しみながら港へと戻りました。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Observation : Jun 2018, Teuri Island, Hokkaido

Special Thanks to Naturelive 写真家・寺沢孝毅氏 & ケイマフリ号

ウトウ Rhinoceros Auklet の帰巣・天売島

ウトウ  Rhinoceros auklet 天売島 (3)

天売島と言えば、世界最大のウトウの繁殖地。英名はRhinoceros Aukletで、その名の通り、夏羽では上のくちばしのつけ根に「サイの角」のような突起ができるウミスズメの仲間です。

日没後の天売島でウトウの子育て期にみられる帰巣風景は圧巻です。イカナゴなどの魚をくわえたウトウがものすごいスピードで巣の近くに着陸。ぶつかるのが怖いくらいの勢いです。

宿で早めの夕食(しかもこの季節は新鮮なウニ!)をいただき、ガイドの案内で赤岩の展望台駐車場へ。道の上にもウトウがいることがあるので事故がないように現地ガイドのツアーに参加するのがマナーです。車道のガードレールに観察用のライトを取り付けて、三脚を立てて撮影準備完了。

ウトウ  Rhinoceros auklet 天売島 (5)

着陸前の羽音とバタバタという移動の音、さらには魚を捕れなかったウトウが魚を持って帰ってきたウトウを追いかけるバトルの音、そして「グエッ」という襲われた時の鳴き声。魚を捕れなかった親鳥は「奪う」ことに必死。魚をくわえた親鳥は着陸してからも必死で自分の巣穴を目指します。

ウトウ  Rhinoceros auklet 天売島 (10)

魚をくわえたウトウ。追いかけられて奪われないよう、急いで巣穴に入っていきます。

ウトウ  Rhinoceros auklet 天売島 (11)

魚をくわえたウトウめがけて追いかけてきたウトウ。私の足元通過中。

ウトウ  Rhinoceros auklet 天売島 (6)

観察していた目の前の巣穴にはウトウのつがいが現れました。ラブラブです。

ウトウ  Rhinoceros auklet 天売島 (7)

帰巣風景+お魚くわえたウトウ+ラブラブつがいが観察できた、大満足の夜の赤岩展望台でした。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Observation : Jun 2018, Teuri Island, Hokkaido, Japan

Special Thanks to Naturelive 写真家・寺沢孝毅氏