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ニシツノメドリ Atlantic Puffin(スピッツベルゲン島)

スピッツベルゲンの夏を象徴する愛らしい存在、ニシツノメドリ。英語ではパフィン、子供はパフリング(Puffling)と呼ばれ、ふわふわの羽毛に包まれています。見た目はもちろん、名前まで可愛いらしいです。

ツノメドリ属には他に2種(エトピリカ、ツノメドリ)がいますが、どちらもに北太平洋に生息するため、大西洋で見られるのはニシツノメドリのみです。

ツノメ=角目と言われ、目の上の角のような模様を指しています。
特徴あるクチバシを和名に使わなかったのに違和感がありましたが、角のような模様がないエトピリカとの区別をつけるためだったのかもしれません。
英語ではその色鮮やかなクチバシから「海のオウム(Sea Parrot)」とも呼ばれます。

外見はオスとメスで大きな違いがなく、繁殖期に特有の派手な特徴もオスだけではなく雌雄で共通です。

パフィンは5月から8月初旬にかけて繁殖のためにスヴァールバル諸島へ渡ります。スピッツベルゲン島北部や周辺の小島には営巣地があり、岩の割れ目や土の斜面に掘られた巣穴で子育てが行われます。
北極の環境変化で数を減らす海鳥が多い中、パフィンはスヴァールバル諸島で個体数を増やしている数少ない鳥のひとつとされています。

スピッツベルゲン島でのつがいの数はすくなくとも1万ペアとされます。

パフィンは一夫一婦制で、生涯ペアを組む鳥です。毎年1つだけ卵を産み、親鳥は交代で温めます。雛は成長するまで頻繁に餌が必要で、親鳥は小魚をくわえて何度も巣穴と海を往復します。

鮮やかなオレンジや赤、黄色で彩られたパフィンのクチバシは、繁殖期の象徴的な姿。陸に上がると、つがい同士がくちばしをこすり合わせたり、叩いたりする「ビリング(billing)」と呼ばれる行動をして絆を深めます。

しかし冬になると、このカラフルな装飾部分は外れ、クチバシは灰色がかったくすんだ色へと変わり、顔も地味な灰色に。次の繁殖期を迎える頃、再び鮮やかな色に戻ります。

海では潜水するのに翼を使い、水中を飛ぶように泳いで魚を捕らえます。

陸上では飛び立つことが難しく、飛び立つには水上での助走が必要です。


後ろ姿もたまらないです。

鮮やかなクチバシと愛らしい姿で断崖を彩るニシツノメドリ。
夏の間だけ見られる季節限定の風景を堪能しました。

 

Photo & Text : Wataru YAMOTO

Observation : Jul 2025, Ytre Norskøya, Spitsbergen, Svalbard, Norway

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