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インドの森 ベンガルトラについて考える

Bengal Tiger - Forest of India (6)

2015年1月、インドのトラに関してうれしいニュースがありました。

インド政府の発表によると2006年に1,411頭と推定されたインド国内のベンガルトラが、2014年の調査で2,226頭に増加したというのです。

インドのサファリツアーに関わってきた私たちにはうれしい限りのニュース。実際にインドで仕事をしていて、一般のインドの人々のサファリや野生動物保護に関する意識はこの数年で大きく変ったと感じています。

Bengal Tiger - Forest of India (10)

ベンガルトラ Bengal Tigerはインドの森に君臨し、その美しさと強さ、神話にも登場する存在として人々の間で親しまれてきた動物でした。

20世紀初頭、世界に約10万頭いたトラ(ベンガルトラほか、シベリアトラなどの亜種を含む)は、今日では3000~5000頭にまで減ってしまいました。インドは現在2200頭の野生のトラが生息している世界一のトラの生息国ですが、この1世紀の間にその生息地の9割が失われたといいます。人口の増加に伴い森が開発され、人里が森の奥にまで広がりトラと人間との衝突が起こりました。トラは人や家畜を襲う害獣として殺されました。

現在では各国立公園の保護の取り組み、周辺住民への教育の浸透と研究の成果により「トラは守らなければならない対象」としての理解が広がってきています。

トラは夜行性の動物です。昼間の暑い時間帯は、草むらや岩陰などの涼しい場所で寝ています。そのため、早朝の日が高くなる前と、夕方の日が沈む前の時間帯にトラのサイティングのチャンスがあります。また、基本的にトラは単独で行動をする動物で、親子を除いて群れで行動することはありません。草むらなど視界の開けた所にはいなので、ライオンなどと違いサイティングが難しい野生動物なのです。体の縞模様は、そういた環境で体の輪郭をぼかす効果があります。

トラの習性の特徴として、「縄張りを持つ動物、Territorial Animal」であることが挙げられます。1頭のオスの縄張りが約90平方キロ、メスで20~25平方キロと言われ(環境などにより異なります)、糞や尿を撒いて主張しトラ同士の無駄な衝突を避けます。通常、オスは自分の縄張りに、3~4頭のメスを抱え込み広い縄張りを持ちます。オスは縄張り争いをし、勝ったトラは新しく手に入れた縄張りにいるメスが他のオスの子供を連れていると、その子供を殺すことで知られています。残酷な話ではありますが、これはメスを発情させて、自分の子孫を残すための自然界の掟とも言える習性です。メスの妊娠期間はおよそ3カ月半。子供は1年半~2年を母親と過ごし、その後自分の縄張り(テリトリー)を確立していきます。オスは6歳くらいの時にその縄張りを拡張し、10歳以上の支配トラの縄張りをも奪いにいきます。トラの平均寿命は15歳と言われますが、この縄張り争いの時に命を落とすトラがたくさんいます。

この縄張り争いで自分のテリトリーを探すために、保護区の森を出て、密猟者の手にかかったり人間との衝突が起こったりします。こんな小さな国立公園ではトラの個体数が増えて飽和状態。

インドでは2014年より、国立公園の80%で人間のサファリなどの活動を禁止し、サファリは20%の地域でのみ行われています。80%の森は「野生動物のためだけのものであるべき」という考えです。でも、森の面積は足りません、森自体を増やさなくてはなりません。

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暑い日の午後、水の中で休むベンガルトラ

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Observation : April 2009, May 2013, Apri 2014  Bandhavgarh, Kanha, Rnathambore  National Park – India

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インドの森 ベンガルトラの保護の歴史

Bengal Tiger - Forest of India (4)

20世紀初頭、インドには約4万頭のベンガルタイガーがいたと言われています。

現在では、約2200頭(2015年1月インド政府発表)しか残っていません。トラの個体数がこれほどまでにも減ってしまった大きな原因は森林の減少ですが、近代に行われた過剰なのハンティングや現在まで続く密猟も大きな理由です。トラは、毛皮や壁掛け、絨毯などに利用され、上流階級の人々の地位や権力を表すものでした。また、漢方薬としての需要も高く、密猟の大きな原因となってきました。かつて、日本はトラを使った漢方薬を売る最も大きな市場だったそうです。現在はワシントン条約によって絶滅の危機に瀕する動植物の取引は禁止されていますが、密猟は無くなっていません。公園内では、警備隊によるパトロールが行われ、公園関係者は「国立公園内での密猟はありえない」と言いますが、国立公園のトラの生息数・縄張りが飽和状態にあるため、新しい縄張りを探すため公園から出たトラは密猟者の手にかかり犠牲になっています。

バンダウガル国立公園の話

2010年以前、バンダウガル国立公園の周りの村では、トラは家畜や人を襲うという理由で毒を盛って殺したりする出来事がありました。しかし、村人への自然保護教育と、殺された家畜や人への保証(2014年現在、牛1頭1万ルピー)が政府により支払われるようになったため、村人の手によりトラが殺されることはほとんどなくなったといいます。地元でサファリに従事する関係者や森林局職員は、トラの保護に対する村人の理解を得るために、ノートや蚊帳、薬などを持って村を回って説明していました。2000年頃に始めた時には全く受け入れられなかったのが、2010年頃から「トラは守るべき動物」という認識になってきたと村人の意識の変化を感じると言いますが、人間とトラとの衝突が無くなることはありません。

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1972年、インドの時の首相インディラ・ガンディー女史は「このインドで最も美しい動物、トラを犠牲にしてまで我々は利益を追求しようとはしない」と、プロジェクト・タイガー(トラ保護活動)に取り組みました。まず、トラの保護区を設置し、コア・ゾーンとバッファ・ゾーン(緩衝地帯)を設定し森林伐採を制限しました。これによりインドの森林産業収入は1400万USドルも減ったといわれますが、代えることのできない価値のあるプロジェクトでした。1983年、プロジェクト開始時約2000頭だったトラが約3000頭にまで回復を遂げました。しかし、成功ばかりが強調され、失敗や残された課題に目が向けられず、また数はすぐに減少してしまったのです(もともとの個体数の確認方法にも疑問が残されています)。

保護区の設置は、水源となる流域を保全し、土壌の浸食が止まり、その恩恵を受けた人々もいますが、森の利用を制限され、野生動物が農作物を荒らすなどの被害を受けた人もいます。こういったプロジェクトを成功させるには、地域社会の理解を得ることが不可欠です。保護区や、近隣に住み昔からトラの生息地を利用して暮らしてきた人々のことを考慮しなくてはなりません。関係者と森の資源で生計を立てている人々、双方の努力と関与が必要です。トラ保護の関心を持たせ、また、生活を支える報酬も必要です。

各地の国立公園では、関係者が「トラは守るべき動物」であることの理解を深めるための教育活動を行い、また保護区での「サファリガイド、レンジャー」として公園内での仕事の提供も行っています。

Bengal Tiger - Forest of India (1)

サファリに訪れるツーリストが増えることは、収入により国立公園とその環境で働く人々を潤し、また野生動物についての知識・興味を提供し、さらなる保護へつながると、思っています。

 

Photo & Text : Mariko SAWADA

Observation : April 2009,  Apri 2014  Bandhavgarh, Rnathambore  National Park – India

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