ウダイプル② 市内観光へ! 古都ウダイプルと奥地に佇む圧倒的存在感のジャイナ教寺院

西遊インディアです。
引き続き、ウダイプルを紹介する記事・第二弾です。

前回:ウダイプル① 美しき湖と白亜の宮殿タージレイクパレス

 

ウダイプル市内の見どころは集中しており、かなり効率的に巡ることができます。今回はウダイプル市内の代表的な訪問地と、郊外に建つインド建築最高峰ともいわれるジャイナ教寺院について、ご紹介いたします。

 

▮シティパレス(City Palace)

街の創設者である、マハーラーナー・ウダイ・シン2世によって建設が始められた、ピチョラ―湖の湖畔に建つ白亜の宮殿です。増改築が繰り返され、今の姿になるまでに約400年かかったといわれています。パレスの本殿は博物館となって一般公開されておりますが、南側は、今も王族の居住区となっています(また、一部はホテルとして改装されております)。

 

シティパレス外観。あまりに壮大でカメラに収まりません
シティパレス内の美しいステンドグラスのお部屋

内部にはマハーラーナーがかつて使用していた輿やゆりかご、武器や全世界から集められた装飾品など、たくさんの宝物が展示されています。当時、マハーラーナーの体重と同じ重さの金が民衆に与えられていたという逸話からも、藩として非常に豊かであり、豪華な暮らしぶりであったことが想像できます。

テラスからは湖と街の美しい眺めを見晴らすことができます。非常に気持ちの良い場所ですので、お天気が良ければぜひ行ってください。

 

旧市街が広く見渡せます

 

▮ロークカラマンダル博物館 (Bhartiya Lok Kala Museum)

ラージャスターンの伝統芸能の1つ、操り人形劇の博物館です。ラージャスターンだけでなくインド全土の人形・化面・楽器などが集められた素朴な展示物を見学したあとは、実際に人形劇のショーを楽しむことができます。 ショーの最後には人形の動かし方を種明かししてくれることも。この人形劇は、お祭りや人通りの多い街角などラージャスターン各地で見られます。

 

 

▮サヘリーヨーン・キ・バーリー  侍女たちの庭園(Sahelyon Ki Bari)

緑が眩しいたくさんの樹々と、色とりどりの花が植えられた、噴水のある公園です。1710年に時の王様・マハーラーナ―・サングラーム・シンが侍女たちのために建てました。こちらも、噴水の建築にあたり高度な水利システムが用いられております。緑と水が大変豊かなこの公園には、今も昔も癒しと涼を求めてたくさんの人が集まっています。

 

ブーゲンビリアと噴水の広場。天気もよく、ピクニックに来ている地元のファミリーの方でいっぱいでした
大理石製の象のモニュメント
ウダイプルの伝統的な衣装を着た女性(お土産物屋の店員さんですが…)

 

▮ジャグディーシュ寺院(Jagdish Temple)

1651年創建のウダイプル最大のヒンドゥー寺院です。ヴィシュヌ神を祀る寺院で、本堂の前にはヴィシュヌ神の乗り物であるガルーダ像が置かれております。他、お堂の周りには、四方それぞれガネーシャ、スーリヤ(太陽神)、シャクティ(シヴァの神妃)、シヴァが祀られています。寺院の外壁は細かな彫刻がびっしりと施されており、とても見ごたえのある装飾です。

 

ジャグディーシュ寺院 正門
本堂
彫刻がびっしりと施された本堂の外壁

 

▮ラナクプルのアーディナータ寺院 (Adinatha temple at Ranakpur)
ウダイプル市内から北西90㎞程行った場所にラナクプルという村があり、その村からさらに奥へと進んだ場所に建つ巨大なジャイナ教の寺院が、アーディナータ寺院です。アーディナータというジャイナ教の一番目の預言者を祀っています。15世紀創建です。

 

ジャグディーシュ寺院外観 こちらも壮大過ぎてカメラに収まらない
ジャイナ教寺院の場合、細長い旗が掲げられています(ヒンドゥー教寺院の場合は三角の旗です)

寺院内部はほとんどが白大理石でできています。固い大理石への彫刻は至難の業ですが、一度施した彫刻はその後一切朽ち果てることはありません。寺院内には緻密で美しい彫刻が至る所に施されています。

 

見事な大理石の装飾

また内部には444 本の見事な装飾の柱が並んでおり、一本として同じ装飾の柱はなく、全て異なる彫刻が施されています。

(インドの建築について多数の著書がある神谷武夫氏は、「ジャイナ教の建築」という本のなかで、このアーディナータ寺院を「インド建築の最高傑作だ!」と述べています)。

 

全ての柱にびっしりと彫刻が!

天井

仏教と同時代に成立したというジャイナ教ですが、5つの戒律(不殺生、虚偽の禁止、盗みの禁止、性的行為の禁止、不所有)を持ち、不所有の考えから、商業で大成功している商人たちの寄進によって見事な寺院がたくさん建てられています。

 

こんな小さな村のさらに奥にこのような立派な建造物があるとは…驚きです。アーディナータ寺院は、アクセスは非常に悪い場所にありますが、訪問にはちょっとした秘境感も味わえます。見ごたえ十分、必見の建造物です!

 

巡礼に来ていたジャイナ教徒のおじいちゃん

その他、郊外にはチットールガル城という、2013年に「ラージャスターンの丘陵城塞群」の一つとして世界遺産に登録された城塞も残っています。

 

次回は、このチットールガル城についてご紹介します。

ウダイプル③ かつての難攻不落の城・世界遺産チットールガルフォートへ!

 

Text :Hashimoto

 

 

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ジャイプル③ ジャイプルの観光スポット!

ナマステ! 西遊インディアです。

今回は、人気の観光スポット・ジャイプルのみどころを詳しく紹介します。

 

▮アンベール城

 

山上の砦:アンベール城
山上の砦:アンベール城。左奥にはさらに古い都であるジャイガルが見えている。

アンベール城は、1727年にジャイプルの建設が始まるまでアンベール王国の都として利用されていた城。ジャイプル市街から約11㎞北東に位置し、平野部から40mほど標高の高い丘の上に建設され、周囲は堅牢な城壁で囲われています。

 

ここでは、入り口から城内部へ象のタクシーに乗ることができます。当時は象での入場は一部の上流階級にのみに限られていましたが、現在では一般の観光客もマハラジャ気分で象に乗ることができます!人の視点よりはるかに高い像の背からの景色は格別です。

 

象のタクシーに乗ってアンベール城へ
象のタクシーに乗ってアンベール城へ
象の背からの眺め
象の背からの眺め

入り口の広場で像を降り階段を上ると、広場を見下ろす場所にあるのが一般謁見所ディワニ・アームです。貴族向けではなく一般民衆に開かれた謁見所ですが、柱や欄干の細かな装飾の美しさが光ります。

 

一般謁見所(ディワニ・アーム)

 

ここからガネーシャ門をくぐると、王族のエリアとなります。細やかな装飾で彩られた門はアンベールでも最も有名なスポットのひとつ。麓から見上げると堅牢な城壁のイメージが強い城ですが、ガネーシャ門の内側へ足を踏み入れると繊細で豪奢な装飾に彩られた建築が並んでおり、当時の様子を偲ばせます。

 

ガネーシャ門
ガネーシャ門

 

鏡による装飾が美しい「鏡の間」
鏡による装飾が美しい来賓謁見所ディワニ・カースは、「鏡の間」としても知られます。

 

最奥部に位置するハーレム。壁面にはいたるところにフレスコ画の装飾が施されています。
最奥部に位置するハーレム。壁面にはいたるところにフレスコ画の装飾が施されています。

▮シティ・パレス

 

シティ・パレス 中央の建物に旗が掲げられている
中央の建物(チャンドラ・マハル)に、王族が滞在していることを示す旗が掲げられている

シティ・パレスは、1733年に完成したジャイプルの宮殿。現在でも一部で王族が暮らしており、王族が滞在しているときには、王宮にそれを示す旗が掲げられています。

 

まず中央に位置するのが貴賓謁見所のディワニ・カース。謁見の間には銀製の巨大な甕が置かれており、これは1902年に当時の王がイギリス国王へ謁見に向かう際、ガンジス川の水をこの甕に入れて運び、船の上で沐浴をしたものです、高さ1.6mのこの甕は世界最大の銀製品としても知られています。

 

シティ・パレスの一般謁見所と銀の壺
シティ・パレスの貴賓謁見所と銀の甕

このディワニ・カースの広場の周りに各施設が隣接しており、西側にはピタム・ニワス・チョークと呼ばれる中庭が広がっています。この回廊部分にクジャクの扉をはじめとする4つの装飾扉が設置されています。

 

ピタム・ニワス・ チョウクのクジャクの扉 上部の装飾
ピタム・ニワス・ チョウクのクジャクの扉 上部の装飾

また、迎賓館ムバラク・マハル、一般謁見所ディワニ・アームは現在はどちらも展示室として公開されています。残念ながら施設内の写真撮影は禁止されていますが、当時の王族が身に着けた豪奢な衣服やテキスタイル、またジャイプルの諸王の肖像画等を見学することができます。

 

 

ジャンタル・マンタル天文台

ジャイプルの街を建設したジャイ・シン2世は天文学に造詣が深く、インド各地に天文台を建設しました。ジャイプルのほかにもデリー、ウジャイン、バラナシ、マトゥラーと計5箇所に天文台が建造されましたが、ジャイプルのものが最大規模を誇ります。

 

敷地内には様々な天体観測機器が並んでいますが、最大の機器がサムラート・ヤントラと呼ばれる日時計です。基本的に日時計は高さが高くなるほど計測精度が上がるものですが、高さ27.4mのこの日時計は2秒単位の時間を計測できます。

 

ジャンタル・マンタルの巨大な日時計:サムラート・ヤントラ
ジャンタル・マンタルの巨大な日時計:サムラート・ヤントラ

インドでは占星術が非常に重視されていたため、正確な時刻や天体の位置を観測するために各地にこのような天文台が作られました。ジャイプルではラーシ・ヴァラヤ・ヤントラと呼ばれる観測器が12星座のそれぞれの方向に向かって設置されており、併設された機器と併用することで非常に正確な星座の観測を可能にしていました。

 

ラーシ・ヴァラヤ・ヤントラ
12星座を観測するラーシ・ヴァラヤ・ヤントラ。同様の小型の機器が12基並んでいます。

ジャイプルのジャンタル・マンタルには全部で16の観測儀があり、それぞれ時刻や天体の位置、日の出と日没の方向、赤道座標…など様々な観測を担っており、またそれぞれの観測結果を補正データとすることでより正確な観測が可能でした。マハラジャはこれらの機器をもとに暦の製作や天候予測を行い、政治や祭儀に活用していたといわれています。

 

天体の赤道座標と地平座標をはかるジャイ・プラカーシュ・ヤントラ
天体の赤道座標と地平座標をはかるジャイ・プラカーシュ・ヤントラ

ジャンタル・マンタルは1901年に修復が行われ、現在も正確に観測がつづけられています。イギリスの統治が始まってから欧米由来の高性能な観測機器が持ち込まれたためにその後の拡大がされることはありませんでしたが、ジャイプルの天文台は現在でも十分に機能しており、実際にその様子を見学することができる数少ない場所です。

 

ラグ・サムナート・ヤントラ
小型の日時計であるラグ・サムナート・ヤントラでは、影から実際の時刻を確認することができます。

 

 

▮風の宮殿 ハワー・マハル

1799年にジャイ・シン2世の孫:プラテープ・シンによって建設。シティ・パレスのそばの大通りに面して作られており、宮廷の女性たちが外から姿を見られずに街の様子を見られるように窓がつけられています。どの窓からも風が入るような設計から、風の宮殿と称されます。

 

風の宮殿:ハワー・マハル
風の宮殿:ハワー・マハル

前面からの姿が非常に印象的な建築ですが、背後へ回ってみると意外と奥行きの無い建物であることがわかります。出窓部分には鮮やかなステンドグラスが施されており、町の様子を一望することができます。また反対側には上述のシティ・パレスやジャンタル・マンタル、さらにアンベール城へと続く岩山まで見通すことができ、市内の絶好の展望スポットにもなっています。

 

背面から見た風の宮殿
背面から見た風の宮殿

 

出窓部分のステンドグラス
出窓部分のステンドグラス

また、ジャイプルは宝石や彫金、象牙細工、絨毯、陶器、手織物などの手工業が盛んなことでも知られています。特にブロックプリントと呼ばれる独特な手法で装飾される更紗は世界的に評価が高く、これを買うためにジャイプルを訪れる人も少なくありません。

 

ジャイプルの手芸店。美しい糸が一面に並びます。
ジャイプルの手芸店。美しい糸が一面に並びます。

 

ブロックプリントについてはこちらの記事で特集しています!ぜひ併せてご覧ください。

■ジャイプル ブロックプリント編

 

 

 

Text by Okada

 

カテゴリ:■インド北部 , インドの世界遺産 , インドの街紹介 , ジャイプル , ラージャスターン州
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ジャイプル② ラジャスタン州とラージプート族

ナマステ、西遊インディアです!

今回はラージャスターン州とこの地で長い定住の歴史を持つラージプート族について、ご紹介します。

■ラージャスターン州とラージプート族

 

前回ご紹介した通り、ジャイプルはインド北西部、ラジャスタン州に位置しています。ラジャスタン州はインド最大の土地面積を有する州であり、その名は「王(Raja)の土地(Sthan)」を意味します。もともと古代インドのサンスクリット語で「部族の長」を意味する語だった「ラージャン」は後に「王」の意に転じ、インドの支配者たちが長く用いてきました。そして、「王の子」を意味するサンスクリット語の「ラージプトラ」の俗語形がラージプートです。

 

ラージプート族は自らの部族を古代インドの栄誉ある戦士階級とされるクシャトリヤの正統な末裔であると主張します。クシャトリヤは、5世紀頃に中央アジアからインドへ入ったエフタルに伴ってインドへやってきた中央アジア系の民族や、土着の諸部族にルーツを持つと考えられています。

 

インドの歴史的な身分制度:ヴァルナ制ではバラモン(祭司)・クシャトリヤ(戦士)・ヴァイシャ(平民・商人)とシュードラ(労働者・隷属民)の4つに分けられることはよく知られています。インドの王権社会では、政治的権力をつかさどるクシャトリヤ階級、そして宗教的権力を司るバラモン階級がお互いに協力して支配者階級としての特権を維持しようとしていました。これは王権の偉大さを主張したいクシャトリヤはバラモンにクシャトリヤの宗教的な正しさを示してもらい、バラモンはクシャトリヤに宗教的な権威を与えることで自らの庇護を求める、という互助関係です。

 

あくまでバラモンは司祭階級である自分たちが最高権力であるという立場でしたが、実際には王権をもつクシャトリヤの力は強大であり、クシャトリヤとバラモンの関係も完全な協力体制ではなく微妙なバランスの上に成り立つものでした。2階級間の争いも多く、ヴィシュヌの6番目の化身・パラシュラーマの物語にもみられるように、ヒンドゥー教の神話の中でもその軋轢が描かれています。

 

クシャトリヤを殲滅したパラシュラーマ(右)
クシャトリヤを殲滅したパラシュラーマ(右) (画像出典:長谷川 明  著「インド神話入門 (とんぼの本)」新潮社)

 

ラージプート族も自らの宗教的な権威を民衆に示すためにバラモンを利用しました。8~12世紀の北西インドはラージプート時代と呼ばれ、ラージプート族がバラモンの協力を受けて神話上の英雄にまで遡る系統図を作っています。自らが英雄的な神の子孫であることを示すことで、王権の正当性を築いたというものです。

 

ラージプート族はクシャトリヤの戦士の末裔としての自負を持ち、強い結束を持った誇り高い戦士として知られています。封建的な社会で上下関係と騎士道を重んじ、女性には貞淑が求められました。独立勢力としての誇りが高かったためにラージプート族全体で団結することはありませんでしたが、その後の度重なるイスラム勢力の侵入に対しても個々に抵抗し、インドにイスラム政権が成立した後も政権に服従しながらも地方勢力として存続し、たびたび離反・独立してイスラム勢力に対抗しています。

 

ムガル帝国の弱体化した後はインドの他勢力と同様にイギリスの侵略を受け、19世紀初めまでにその多くが藩王国としてイギリスに吸収されていきます。その後、インド独立後にラージプートの諸藩王国はラジャスタン州として併合されていきました。

 

ジャイプルからは少し離れますが、同じラジャスタン州のチットールガルを舞台にした映画『パドマーワト 女神の誕生』が2018年インドで作成・公開されました。インド映画史上最高の製作費約36.4億円をかけて作成されたというこの映画は、日本でも話題となり2019年に公開されています。

13世紀のラジャスタンを舞台にした本作では、ジャイプルのジャイガル城(アンベール城の奥に控える要塞)でもロケが行われました。

 

(C)Viacom 18 Motion Pictures (C)Bhansali Productions
(C)Viacom 18 Motion Pictures (C)Bhansali Productions

 

脚本や映画の時代考証等でインド国内で大きな論争を引き起こした映画ですが、インド映画史上最も興行的に成功した映画の一つでもあり、当時のラジャスタンの雰囲気を体感できる映画です。

 

詳しくは神保監督のブログをご覧ください!

 

■パドマーワト 女神の誕生 | 700年の時を越え現代に甦る、伝説の王妃 ラーニー・パドミニー

 

 

今回は文字ばかり多くなってしまいましたが、次回は写真をジャイプルの街の見どころを写真をたっぷり使ってご紹介します!

 

 

Text by Okada

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