インドの新幹線 Vande Bharat Expressに乗ってみた!

Photo by Harshul12345 – Vande Bharat Express on track around Mumbai.(2023) / CC BY 4.0

ナマステ!西遊インディアです。
今回は、インド版新幹線「Vande Bharat Express」(ヴァンディ・バーラト・エクスプレス)の乗車体験を記事にまとめてみました。

インドの新幹線 Vande Bharat Express

インド国鉄が運営する高速鉄道。モディ首相が就任した2014年から掲げる製造業振興の取り組み「Make in India」の一環として、2019年2月15日に、デリー~バラナシの区間で運転開始されました。

運用路線は2024年2月現在で41路線。今後も30路線近くの新設が計画されており、とくに、ムンバイとアーメダバードを結ぶ総延長508kmの路線は、日本の新幹線方式と同じ専用線方式(在来旅客鉄道と軌道を完全に分離するもの)で建設中です(2024年2月現在)。

海外で日本の新幹線方式が採用されるのは、2007年に開業した台湾(台灣高鐵)につづき、インドが2か国目。
デリーを走るメトロの建設にも、計画段階から日本が資金・技術面で支援しており、インドのインフラ整備には日本が大きく関わっています。

チャンディーガル~デリー区間に乗ってみました

今回乗車したチャンディーガル~デリーの区間は、4番目に運行開始されたNo. 22447 / 22448 New Delhi – Amb Andaura(ヒマーチャルプラデシュ)路線の一部。約270kmの距離を3時間ほどで走ります。休暇でチャンディーガル観光に行ってきたので、デリーへ戻る交通手段としてVande Bharat Expressを利用してみました。
※ちなみにインドでは、カメラによる駅や空港の撮影は防衛上の理由で原則禁止されています。インド鉄道省の規定(鉄道省Webサイト)では、旅行者が思い出にスマホで撮る程度であれば本来許可をとる必要はありませんが、現場の係員には問答無用で注意されたりトラブルになる可能性もあります。そのため、世界遺産など観光地化された鉄道以外の撮影は控えた方が無難です。文中の写真も係員さんに許可をもらい、一般の観光客として見られる場所だけをスマホで撮ったものです。
 
1.チケット
チケットは事前にインド国鉄(IRCTC)のWebサイトで予約購入します。
日時、区間、座席クラス、食事などのオプションを選択し、決済するとEチケットがメールで届くので、乗車当日はそれをプリントアウトするかスマホにPDFを保存して持参します。
座席は椅子席タイプのEC、CCの2種類。今回はせっかくなので、ちょっと良い席のECクラスに乗車してみました。ECクラスは、日本でいうところのグリーン車といった感じでしょうか。座席の写真は、後述の車内設備の部分に載せていますのでそちらをご覧ください。
 
2.乗車
現在、チャンディーガルの鉄道駅は再開発中。大きな駅でなくても、余裕をもって出発時刻の30分前には駅に到着しておくと安心です。

チャンディーガル鉄道駅の西側入口

入ってすぐ左手に電光掲示板とエスカレーターがあります。電光掲示板に、列車番号、列車が駅に到着する見込み時刻、プラットホーム番号が表示されるので、確認してエスカレーターで上の階へ。プラットホームへの連絡橋に出るので、そこから自分の列車が来るホームへと降ります。
今回は、エスカレーターを上がってすぐ右のプラットホームNO.1。階段を降りてホームに行きます。構内ではホーム番号のアナウンスも流れていますが、基本はヒンディー語なので、聞き取りはなかなか難易度が高めです…!なので、エスカレーターを上がる前に電光掲示板をチェックしていくのが確実です。
 
プラットホームの上部に設置されている小さな電光掲示板に、列車番号とコーチ番号が表示されるので、自分のコーチ番号の場所で列車を待ちます。今回は中央がCCクラス、階段を降りて右奥がECクラスのE1、E2コーチでした。
駅のホーム。天井についている赤い電光掲示板にコーチ番号が表示されます

チャンディーガル駅

今回の路線は、チャンディーガル駅 15:32発 – ニューデリー駅 18:25着。列車は15:30頃に到着しました。インドの鉄道は大幅に遅れることもあるなかで、ほぼ定刻どおりの到着にちょっぴり感動です!

到着したVande Bharat。かっこいいです!色合いもどこか日本の新幹線を思い出します

乗降口は各コーチの前後に一つずつ。席番号は車内の窓の上に書いてあります。頭上の荷物棚はあっという間に埋まるので、置きたい場合は頑張って早く乗りましょう!棚に置けなくても、ECクラスは足元のスペースが広いので問題なく置けます。

列車番号、コーチ番号、出発駅~行先が表示されます

窓の上にあるシート番号の表示
お水とフットレストもあります!

3.車内
ECクラスの座席配置は2席-2席、シートはベロアのような手触りのいい素材で、リクライニングできます。足元のスペースはゆったりしていて、通路も十分な幅があります。
CCクラスは3席-2席。進行方向に対して前向きと後ろ向きの席があり、足元と通路のスペースはECよりも少し狭め。シートの材質も違います。
ですが、両クラスともに空調完備・車内スタッフも配備されているので、荷物が多くなければ、CCクラスでも問題なく快適に過ごせそうです。

ECクラス

CCクラス

列車は駅に5~10分ほど停車した後、15:40頃に出発。
出発してから15分くらいすると、車両スタッフさんが席を巡回してチケットの確認にきます。名前を聞かれるだけの場合もありますが、念のためチケットをすぐに見せられるよう準備しておくと安心です。
 
その後しばらくすると車内食が配られました。食事は、チケットを予約する時にオプションで選択できます。メニューは時間帯や路線によって異なるようですが、今回はベジのメニューのみだったので、そちらを予約してみました。事前に予約をしていなくても、追加料金を払えば車内で購入できるようです。
ジュース、カチョリ、ナッツとスナック、チーズのサンドイッチ、お手拭きとサニタイザーも

チャイ用のお湯とカップは後から持ってきてくれます
プレートに敷かれた紙もVande Bharat仕様

トイレは各コーチとの連結部にあります。和式のようにしゃがむインド式と洋式があり、洋式には備え付けのトイレットペーパーがありました。
16:15頃、アンバラ・カント駅に停車。この路線では、終点のニューデリーまでに停車するのはこの1駅のみです。到着する少し前に、英語とヒンディー語でアナウンスが入ります。

洋式トイレ
アンバラ・カント駅

しばらく停車した後、駅を出発。この後はノンストップでひたすらデリーへと走ります。はじめは幹線道路沿いを走り、しばらくすると景色は郊外の住宅地に変わります。じょじょに田園地帯や、小さな寺院、ローカルなマーケットなどに移り代わり、車窓には素朴なインドの風景が映ります。

車内の温度は、空調が効きすぎて寒いということもなく快適でした。でも少し冷える感じはするので、カーディガンやパーカーなど羽織れるものを持参するのがおすすめです。
走行中の揺れは少なく、走行音も日本の新幹線とそこまで大きく変わらない印象です(楽しそうな家族のおしゃべり声が絶えないのは、日本と違ってインドらしいところです)。
 
4.終点のニューデリー駅に到着
列車は18:40頃、終点のニューデリー駅に到着。18:25着予定から約15分遅れですが、ほぼ定刻通りの到着です!乗車した2月の日没は18:30前だったので、到着する頃にはすっかり夜に。デリーに到着後、列車は折り返しで別の行先に変わりました。すぐに次の乗客が乗車してくるので、忘れ物のないよう速やかに列車を降ります。

ニューデリー駅

今回はじめてVande Bharatを利用してみて、その快適さとスケジュールの正確さには驚きでした!
日数が限られた旅行のなかで、比較的確実性が高い移動手段として、選択肢のひとつになると思います。
 
昔ながらの長距離寝台列車で移動する旅は情緒があって良いですが、発展いちじるしいインドの「今」を感じられるひとつの体験として、Vande Bharatを利用してみるのもおもしろいかもしれません。
 
Photo & Text: Kondo

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シュラバナベルゴラのジャイナ教寺院

巨大なゴマテシュワラ像

ナマステ!西遊インディアです。
今回は、南インドの特別企画ツアーで訪れたジャイナ教寺院をご紹介します。
 
なじみのない方も多いと思いますが、ジャイナ教は仏教と同じ頃に生まれた、インド発祥の宗教のひとつです。

■ジャイナ教とは
インド発祥の宗教といえば仏教が思い浮かびますが、ジャイナ教も仏教と同時期頃に生まれたインド発祥の宗教です。紀元前6~5世紀に生まれ、開祖はマハーヴィーラ。仏教におけるブッダと同じ時代に生きた人だといわれています。
教えの特徴としては、徹底した苦行、禁欲、不殺生の実践を重んじることで知られます。5つの戒律(不殺生、虚偽の禁止、盗みの禁止、性的行為の禁止、不所有)をもち、不所有の考えをベースに商業で成功した商人たちの寄進によって、見事な寺院がたくさん建てられているのも特徴です。
とくに、生きものを傷つけない「アーヒンサー」という戒律は重要視されていて、宗派によっては空気中の小さな生物も殺さないように、マスクのような白い小さな布で口を覆う人もいます。
ジャイナ教では、今私たちが存在している宇宙的時間軸において、24人の救済者(ティールタンカラ)が出現したと考えられています。そのうちの最後の一人が、開祖であるマハーヴィーラだとされています。
 

『カルパ・スートラ』より「マハーヴィーラの誕生」(一部分)、14世紀第4四半世紀

Mahavira マハーヴィーラ(ヴァルダマーナ)座像(15世紀)

 
インド南部、カルナータカ州の州都バンガロールに次ぐ大きな都市であるマイソールから約80km。車で約2時間走ると、シュラバナベルゴラ(シュラバナベラゴラ)Shravanabelagola の町に到着します。シュラバナベルゴラは大きな町ではありませんが、ジャイナ教の人々にとっては南インドにおける最大の聖地。町にはヴィンディヤギリ Vindhyagiri 、チャンドラギリ Chandragiri の2つの大きな岩山があります。
 

ヴィンディヤギリから望むチャンドラギリの丘

高い方のヴィンディヤギリの丘(約143m)の頂上には寺院があり、約18mの巨大なゴマテシュワラ像が立ちます。
 

Photo by Hasenläufer (original:Matthew Logelin) – This photo shows the lord bahubali statue from a different view.(2017) / CC BY 3.0

この頂上寺院では12年に一度、マスタカービシェーカ Mahamastakabhisheka というお祭が行われ、信者たちが像の上から神聖なギーやミルクを注ぐことで知られます(次回は2030年に開催予定)。
 

12年に1度、牛乳や香辛料などがゴマテーシュワラ像にかけられる様子
Photo by Matthew Logelin – Offerings poured over the Jain Lord Bahubali, the world’s largest monolithic statue.(2006) / CC BY 2.0

 

伝説によると、寺院の創建は紀元前3世紀までさかのぼります。当時この地域を治めていたのはマウリヤ朝のチャンドラグプタ王。その王が師と崇める、ジャイナ教の第6代教団長・聖典伝承者のバグワン・バドラワーフ Bhagwan Bhadrabahu とともに、この地にやってきたのがはじまりといわれています。

 

寺院へとつづく脇道を進むと、岩のふもとの周囲に小さな寺院がいくつかあり、門前町のようになっています。寺院入口には土産物売りの人に加え、寺院は靴を脱いで登るので靴下売りの人もいました。頂上にある寺院へ参拝するには、ここで靴を預けて裸足になり、645段の階段をひたすら登ります。

寺院の入口につづく脇道
裸足でひたすら登ります。けっこう傾斜があります!日影がないので暑い日は水分補給をお忘れなく。12月頭でも汗だくになりました

階段を登っていると、途中からデカン高原のパノラマが広がります。頂上からも見晴らしが良いため、地元の人の中ではバンガロールからの週末のお出かけスポットとしても人気があるそうです。私たちが訪れた日も土曜日で、学生の友達グループでにぎわっていました。

岩山の頂上は広場のようになっていて見晴らしもいいです。

頂上からの見晴らし。シュラバナベルゴラの町とデカン高原の緑が広がります

ここでゴール…かと思いきや、巨像がある本殿は、ここからさらに右奥につづく階段をのぼった先。もうひと踏ん張りして、本殿に到着しました。

さらに奥へと階段がつづきます

本殿の外観

本殿についたら、中を右繞(うにょう:時計回りで寺院内を参拝すること)しました。
中を進むと中庭のような広場があり、そこに「バーフバリ」ともよばれる巨大なゴマテシュワラ像が立っています。

巨大なゴマテシュワラ像

この像は、なんとひとつの大きな花崗岩からつくられているのだとか!10世紀に西ガンガ朝の大臣であったチャームンダラーヤの命を受けて建てられたことが、古いカンナダ語の碑文からわかっています。

 

寺院の入口に彫刻(上)と、内部に古い碑文(下)がありました

寺院内部に祀られているゴンマテーシュワラ像

巨像が作られた「バーフバリ」は、一番初めの救済者(ティールタンカラ)である「リシャパ」の子供と伝えられていて、本来の名前は「ゴンマテーシュワラ」といいます。ゴンマテーシュワラは兄弟間の闘いに勝利した経緯から、その異名としてバーフバリ(バーフ:前腕、バリ(バリン):力が強い=強い腕をもつもの)とも呼ばれます。
 
ゴンマテーシュワラが一年間ヨガの修行で微動だにしなかったことで、体に蔦が巻き付いて足元には蟻塚までできたという伝説があり、バーフバリの巨像はその姿を表現しています。
なぜ裸体の姿かというと、ジャイナ教の教えで物を所有することを拒む「無所有」が美徳とされる面があるため、衣類は身に着けず裸で瞑想を続けている様を表しています。

現在、ジャイナ教徒はインドの人口の約0.4%ほどしかいませんが、白衣派・裸で修行をする派閥とも多くの分派が派生しており、白衣派の人々はグジャラートやラジャスタンなどインドの西側、裸の派閥は南インドを中心に現代もつづいています。
 
シュラバナベルゴラは、インドでも有数の数多く石碑が集まる場所。ジャイナ教が始まって以来2500年以上の間、文化・芸術・建築などジャイナ教の人々に親しまれ、今なおその歴史がつづいています。
 

 

寺院内の柱や門に彫られた装飾もおもしろいです

 
■ひとくちメモ
ジャイナ教寺院の場合、5色の旗が掲げられています(ヒンドゥー教寺院の場合は三角の旗です)

 
Text & Photo: Kondo

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オリッサの山岳民族② ドングリア・コンド族

白い民族衣装に3つの鼻飾り、たくさんの装飾品で着飾ったドングリア・コンド族

インド東部に位置するオリッサ州。山岳部族の人々は、時代の流れを無視するかのように今も独自の生活様式を守りながら暮らしています。
前回ご紹介したボンダ族と彼らが訪れる定期市につづき、今回のテーマはドングリア・コンド族とチャティコナの水曜市についての紹介、そして部族をとりまく現状についてです。
 
オリッサの部族の中で最大の指定部族であるコンド族。コンド族の言葉はドラヴィダ語に分類され、肌は黒く、オーストラロイド(オーストラリアやニューギニア、メラネシアの人々と同じ分類)と考えられています。
一口にコンド族といっても複数の部族に分かれており、谷に暮らすデジア・コンド族や、丘に暮らすドングリア・コンド族などがいて、それぞれの村で暮らしています。
 
ドングリア・コンド族は、オリッサ州南東部の密林に覆われたニャンギリ(ニオモギリ)の丘に暮らし、山神“Niyam Raja”を信仰しています。
山でジャックフルーツやマンゴー、蜂蜜、竹などを採り、畑ではバナナやパパイヤ、生姜、オレンジなどをつくります。そして、収穫した作物をチャティコナの水曜市などの定期市で売り、生活必需品を購入します。
ボンダ族と同様、ドングリア・コンド族に出会うには週に一度行われる定期市に行く必要があります。
 
ドングリア・コンド族の集まることで有名なチャティコナという町の水曜市は、彼らが暮らすニャンギリの丘から約20㎞離れた場所にあります。

ニャンギリの丘から市場を目指して歩くドングリア・コンド族の人々
何人かのグループで山から下りてきます

週に一度の市場は大賑わい

週に一度の定期市の日は、朝3時頃に家を出て森で採れるフルーツ、草などを売りにきます。
男性はサゴ椰子からジュースを取り強壮剤に。薬草の知識にも長け、山から採れる薬草でケガや病気を治療します(マラリアや蛇のかみ傷を治すという調査結果も!)。
あまり商売上手ではないドングリア・コンド族は、まず市場の手前で商売上手のデジア・コンド族に売ります。同じ民族なので彼らの言う値段を信じています。デジア・コンド族は、それを市場でもう少し高めに販売するのだそうです。

作物を売ったお金で生活必需品を買います

コンド族では女性が重要とされ、子供や男性の面倒を見るのも女性、市場でも女性が主役。

ドングリア・コンド族の外見的な特徴は、女性が白い布を巻き、髪の毛にたくさんのヘアピン、そして小さなナイフをさし、鼻に3つの輪をつけていることです。


 
コンド族の各村には、独身の男女が集う集会所があり、男性は違う村からやってきます。そこで村人が伝統やルールなどを教えていきます。女性は生涯のパートナーになると思う男性に、お手製の刺繍を渡し、受け入れられると結婚となるのだそうです。
 
豊かな山の恵みによって、何百年とシンプルな暮らしを続けてきたドングリア・コンド族。しかし、約30年にわたって彼らの生活が脅かされているのも実情です。
1997年頃、ニャンギリの丘に、アルミニウムの原料となるボーキサイトが眠っていることがわかったのです。その価値はおよそ20億ドル。イギリスに本社をもつインド最大のアルミニウム製造会社ヴェダンタ・リソーシーズは、ドングリア・コンド族の聖なる山“Niyam Dongar”に露天掘りの鉱山を開発する計画を立てましたが、2010年にインド政府は同社が法律・民族の権利を無視したとの声明を出し、開発は保留とされました。
 
しかし現在も計画は継続中で、アルミニウム産業は大規模な雇用と経済成長を生み出すことなどを理由に、オリッサには開発資源が多く、可能性を求める他企業からも注目が集まっています。
国から現地住民との協議を命じられた州政府は2023年10月にも公聴会を実施。採掘による水源の破壊や生態系に悪影響が及ぶとして、住民のほとんどがプロジェクトに反対しています。現在も解決にはいたっていません。
先住民族の生活や文化を脅かす環境開発の話には、人々の暮らしを思うと心が苦しくなります。今後も注視していきたいところです。
 

■ひとくちコラム:ダウリーとコンド族の話
ヒンドゥー教の習慣で今でも残っているダウリー(結婚持参金)。花嫁の家族から花婿とその家族に対してされる支払いのことで、経済的な負担の大きさから社会問題となっています。コンド族にダウリーはありませんが、逆に花婿の両親が、村のシャーマンが決めた贈り物(水牛数頭など)を花嫁側に贈ります。もし準備できない場合は、花婿が花嫁の父親の下で労働力として働き、その後に結婚が認められるのだそうです。

  • クッティア・コンド族の女性。トラを模した刺青が特徴的
  • チャティコナの水曜市で出会ったドングリア・コンド族
クッティア・コンド族の女性。トラを模した刺青が特徴的

チャティコナの水曜市で出会ったドングリア・コンド族

 

 

※この記事は2016年8月のものに、きんとうん43号p.11「オリッサの山岳民族」の内容を加え、修正・加筆して再アップしたものです。

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オリッサの山岳民族① ボンダ族

列になって歩くボンダ族の人々

インド東部に位置するオリッサ州。オリッサ州の西部に広がるバスタール地方には、ドラヴィダ系の少数民族の方々が昔ながらの暮らしを続けています。このようなドラヴィダ系の人々は、古代からインド全体に住んでいたと考えられていて、紀元前1500年ごろ、イラン方面からアーリア系の人々がやってきた際に、ドラヴィダ系の人々の多くはインドの南西部に移動したという経緯があります。

 

さて、オリッサの少数民族には62の部族コミュニティがあるとされていますが、インドに暮らす少数民族の中でも、色濃くその伝統を残し、外界の影響を受けずに暮らしているのがボンダ族の人々。
人口は12000人ほど(2011年の調査。乳児死亡率が高いことなど様々な要因により、現在は減少傾向にあるとみられています。)。
ボンダ族はインド政府の保護のもと、ボンダ・ヒルと呼ばれる丘に外部との接触をもたずに暮らしています。

 

特にボンダ族の男性は外部の人間に対して警戒心が強く、彼らの居住地へ入ることは簡単ではありません。彼らの暮らす土地が山にあること、そして外部の文化を受け付けず、伝統に執着するからこそ、急激に「インド化」するインド大陸において、もっとも古く、原始的な暮らしを守り続けている民族といわれています。

 

定期市に向かうボンダ族の人々

そんなボンダ族と出会うことができるのが市場。村の定期市を訪ねると、ボンダヒルの村からやってくるボンダ族と出会うことができます。
初めてこの市場へ向かって歩くボンダ族の人々を見たとき、「ここは本当にインド?」とさえ感じます。アフリカの未知の部族と出会ったような印象です。
その衣装、そしてほっそりしたスタイルも「インド」というイメージとは異なるのです。

 

市場へ向かうボンダの女性たち。壷やバスケットの中に農作物が入っていました。自分達の土地でとれる小さなじゃがいもなど、市場で他の民族とモノの交換をしたりしています。インドでも少なくなった「物々交換」の経済が残っています。

ボンダ族の伝説と暮らし

ボンダ族の服装は、インドの古代叙事詩「ラーマーヤナ」に由来していると言う伝説があります。昔、ラーマーヤナのヒロインであるシータが裸になって水浴びをしていると、ボンダ族の女性たちがくすくす笑いました。怒ったシータはボンダ族の女性たちも裸にし、さらに頭をスポーツ刈りにしてしまいました。許しを請うたボンダ族に対して、シータは彼女たちが着ていたサリーの一部を腰に巻くことを許しました。
この話は、ヒンドゥー教の人々が後から作ったものなのでは…とも思いますが、太いシルバーの首飾りや、ビーズの装飾は、森での暮らしや狩りの際、身を守るためだという説が有力です。

 

 

女性の服装は、短い布を腰に巻き、上半身は裸で、胸の前にたくさんのビーズのネックレスをたらしています。頭はスポーツ刈りで、そのまわりにもビーズを巻きつけ、真鍮のピンで留めています。

 

首には何十もの銀の輪、胸には子安貝やビーズ製のネックレスを幾重にもたらし、その下には何も身につけず、下半身は20cmほどの布を巻くのみです。裸の胸は見事な装飾品で覆いつくされています。そして腰には短い丈の織りの布を巻くだけ。
この絶妙な美のバランスに驚かされます。

 

アンカデリの木曜市では、女性は農作物を、男性は自分たちで作ったお酒を売りにやってきます。この市場ではボンダ族の男性の写真撮影は厳禁です。

 

 

ちなみに、ボンダ族の男女関係も独特です。ボンダ族の女性は、自分より年下の男性と結婚します。男性が一人前になるまでは女性が世話をし、年老いたあとは男性が女性の面倒をみます。

 

そしてボンダ族の男性はお酒が大好き。
オリッサの少数民族の市場には手作りのお酒の販売コーナーがあり、素焼きの壷に入ったお酒を葉っぱで作ったコップでたしなむ姿が見られます。椰子や米からお酒を作り、市場で売るのですが、道中自分で全部飲んでしまい、市場に着くころにはべろべろに酔っぱらってしまう人も。午後にもなると男女ともにご機嫌な人たちでいっぱいになります。「酔っ払い」はやはり万国共通ですね。

 

 

※この記事は2011年11月、2016年08月のものを修正・加筆して再アップしたものです。

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“インド版定食”ターリー&ミールスとインドのB級グルメ②

ジャレビ店
アムリトサル街かどのミターイー店

ナマステ!西遊インディアです。
前回の記事では、“インド版定食”ともいえる❶ターリーと❷ミールスについてご紹介いたしました。

今回は、インドの庶民に愛されるB級グルメについてご紹介します。

❸ B級グルメ (ストリートフード&スイーツ)

B級グルメを「安価で、贅沢でなく、庶民的でありながら、気軽に食べられる料理」と定義するなら、インドはまさにB級グルメの宝庫!
インドに来たら、ぜひ一度は庶民の味である屋台料理やスイーツにトライしていただきたいもの。
ここでは紹介しきれないほどたくさんの種類がありますが、今回は、街かどで食べられるスナックやミターイー(スイーツ)といった甘いおやつなど、ストリートフードを中心に10個に絞ってピックアップしてみました。
 

パニプリ1. パニプリ PANIPURI पानीपूरी

ピンポン玉のように揚げた生地に穴を開け、ジャガイモなどの具と甘酸っぱいスープを入れて一口でパクリ。定番のストリートスナック。

ワダ2. ワダ VADA वड़ा

ティファン(南インドの軽食)の定番。ペースト状にしたウラド豆とスパイスを混ぜて、ドーナツ状に揚げたもの。豆腐のように素朴な風味があり、どこか懐かしい味。

ジャレービー

3. ジャレービー JALEBI जलेबी

小麦粉でつくったゆるい生地をひも状にして熱した油に落として、くるくると渦巻きの形に揚げます。かりんとうのような雰囲気ですが、シロップに浸かっているので甘さは強烈!

ドーサ

4. ドーサ DOSA डोसा

今やインド全土で人気の南インドを代表するティファン。ロール型、三角形、ガレットのように四角いものなど形は色々。ピリ辛のポテトをくるんだもの(マサラドーサ)からココナッツ味まで、具のバリエーションも多彩です。

ポハ

5. ポハ POHA पोहा

ライスフレークを水でもどして、ターメリックなどのスパイスで味付けした料理。ピーナッツやタマネギを入れることもあります。スナック麺をかけるとジャンクなテイストに。レモンをかけてさっぱりといただきます。

グラブジャムン

6. グラブジャムン GULAB JAMUN गुलाब जामुन

“世界一甘いお菓子”といわれるインドの定番ミターイー。小麦粉・砂糖・濃縮乳でつくった生地を揚げて、カルダモンで香りづけしたシロップに浸します。噛むとシロップがじわっと染み出てきて、口の中に広がります。

バナナチップス

7. バナナチップス BANANA CHIPS केले के चिप्स

南インドで出会うバナナチップス。ココナッツ油で揚げた、塩味とほのかに甘みがある素朴な味。サクサクした軽い食感でいくらでも食べてしまいそう!インドらしくマサラ味もあります。

焼き芋

8. 焼き芋 SWEET POTATO शकरकंद

冬に北インドで見かける焼き芋の屋台。注文すると、お芋の皮を剥いてダイス状にざくざくと切り、マサラとレモンをさっとかけてくれます。

ウッタパム

9. ウッタパム UTTAPAM उत्तपम

南インド風お好み焼き。生地はドーサに似ていますが、こちらはホットケーキのように厚みがあり、タマネギやトマトなどの具を入れます。ココナッツとトマトのチャトニと一緒に。

マワ

10. マワ MAVA मावा 

水牛の多いグジャラート地方のミターイー。大鍋でミルクと砂糖を煮詰めると飴色になり、砕いたお米のような質感に。味はキャラメルそのものといった感じで、ひと口食べると甘みと香ばしさが広がります!

北インド、南インドの大きなくくりではまとめきれないほど、多彩な味わいのあるインド料理。もちろん地域のみならず、文化やコミュニティ、季節によっても異なります。来るたび違う表情を見せてくれるインドを、ぜひ「食」の面からも、新しい発見とともに楽しんでみてください!
 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel
 
参考図書:「家庭で作れる 東西南北の伝統インド料理」(香取薫/河出書房新社)、「知っておきたい!インドごはんの常識」(パンカジ・シャルマ[文]、アリス・シャルバン[絵]、サンドラ・サルマンジー[レシピ]/原書房)

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“インド版定食”ターリー&ミールスとインドのB級グルメ①

インドのグルメといえば、真っ先に思い浮かぶのが“インド版定食”のターリーもしくはミールスと、街を歩けば必ず目にする屋台のストリートフードではないでしょうか。
それぞれ地域やコミュニティによってたくさんのバラエティがありますが、今回は大きく
❶ ターリー(北インド)
❷ ミールス(南インド)
❸ B級グルメ(ストリートフード&スイーツ)
の3つに分けてご紹介します。

❶ ターリー Thali(北インド)

大皿に数種類のカレーやおかず、主食のお米やチャパティが盛られます。本来「ターリー」という言葉は「銀の大皿」を意味しますが、トレーに盛られた料理のことも指します。季節や土地柄で料理の内容が変わり、例えばグジャラートのものは「グジャラーティー・ターリー」のように、地域の名前を付けて呼ばれます。
様々なおかずが付くのは、アーユルヴェーダの6つの味覚(甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味)に基づくもの。多様な食材を使って6つの味覚すべてを一度の食事でとることで、栄養のバランスが整うと考えられています。
 

ターリー(北インド)
北インドのターリー(一例)

・ライス:日本と同じく、インドの大部分の地域で主食として食べられます。北から南まで、湿度、温度差、日照時間など気候の異なる地域で、様々な栽培方法で作られます。香り・色・形が異なり、種類はなんと100種類以上あるとか。
 
・ロティ(パン):小麦粉を練って薄く焼いたチャパティが一般的。タワという鉄製のフライパンで毎日家庭で焼かれます。手間のかかるナンは日常的に家庭で食べられることはなく、レストランやお祝いの席で食べられます。
 
・パパド:薄焼きせんべいのようなスナック。そのまま食べてもよし、割ってライスにかけてもよし。
 
・サブジ(野菜のドライカレー):じゃがいもなどの野菜をスパイスで炒めた汁気のないおかず。
 
・野菜のカレー:ナスやカリフラワー、グリンピースなどを具材にしたカレー。パニール(インド版カッテージチーズ)が入ることも。ベジタリアンが多いインドでは、野菜を使ったカレーの種類が豊富。主軸として具材に使われる野菜は1~2種類で、料理名にその野菜の名前が使われます。
 
・肉のカレー:ノンベジタリアンメニューの場合は、チキンやマトンを使ったカレーも。
 
・サラダ:キュウリやスライスしたタマネギ。塩とレモン汁、コショウを軽くかけて。
 
・ダヒ(ヨーグルト):口の中がリセットされるだけでなく、混ぜて食べる“味変”の楽しみも。キュウリやタマネギを加えてライタにすることも。
 
食べる順番は人それぞれお好みですが、主食がロティとライスの両方があるときは、ロティから先に食べることが多いようです。たとえば、ロティでそれぞれのカレーを味わったら、ライスにはマイルドな野菜カレーをかけて、次は辛味のあるお肉のカレーを少しかけて味変して、サラダで口の中を一旦リセット。今度はサブジで野菜の食感を味わって…など、自分なりに食事を楽しめるのもターリーのいいところ。
また、メニューは基本的に、様々な地域の料理を組み合わせることはなく、同一地域内の料理を組み合わせます。旅先でターリーを食べれば、その土地の味・おいしさを一度に知ることができるともいえます。

一口メモ:「カレー」は何語?
「ソース」を意味するタミル語の「カリ」に由来するといわれています。かつてイギリス人が英語にとり入れ、スパイスを使った料理全般を「カレー」と呼ぶようになったのだそう。

❷ ミールス Meals(南インド)

南インドではミールスと呼ばれます。ココナッツをよく使うため、北に比べると味付けはマイルド。基本的には野菜や果物を具材にしたベジタリアン料理で、おかずは、豆と野菜を煮たサンバルなどのカレーや炒めもの、すっぱくて辛いラッサム(汁物)など。カレーリーフの香りや胡椒の爽やかな辛味も特徴です。米どころの南では、主食は小麦より米がメイン。清浄で殺菌効果もあると考えられているバナナの葉に盛り付けられます。「カトリ」という小さなボウルにカレーやおかずを入れ、それらを大皿に載せて提供されることも。
 

ミールス(南インド)
南インドのミールス(一例)

・ライス、ロティ、パパド
 
・ラッサム:トマトやタマリンドなどを煮た、すっぱくて辛いスープ。
 
・サンバル:豆と野菜を煮て作ったマイルドなカレー。
 
・ポリヤル:マスタードなどのスパイスで味付けした野菜炒め。
 
・ピックル:インドの辛い漬け物。青マンゴーやニンジンなどの野菜で作ります。
 
・チャツネ:料理を引き立たせる薬味。ココナッツやトマト、ミントのものがよく出てきます。
 
・アチャール:パイナップルやマンゴーで作られた、辛くてすっぱい付け合わせ。
 
揚げ物にもココナッツオイルを使うので、北インドの料理に比べてさっぱりとしているのが特徴。海沿いでは、カニやエビ、魚もよく食べられます。
ちなみに、料理は最初からたくさん盛られるのではなく、おかわりしていく形式。揚げものやラッサム、甘いものが出されるタイミングなどは、州やコミュニティの食習慣、集まりのグレードによってさまざま異なります。ですが、いずれの場合でも、食欲が湧くよう、よりおいしく、体に良い順番で提供することを軸に考えられています。

一口メモ:地域によって違う!ターリーいろいろ

  • グジャラーティー・ターリーグジャラート
    ジャグリ(サトウキビ糖)を使った甘さと辛さが同居する味。水牛ミルクの産地なので、バターミルクとギーも添えて。
  • パンジャービー・ターリーパンジャーブ
    バターやパニールを使ったクリーミーなカレーが特徴。スパイスで味付けしたジャガイモを詰めたパラタを一緒に。
  • ベンガル・ターリーベンガル
    イリッシュという川魚や鯉、エビなどを野菜と一緒に煮たカレーは東インドらしい味。マスタードオイルの辛味も印象的。
グジャラーティー・ターリー
グジャラート
ジャグリ(サトウキビ糖)を使った甘さと辛さが同居する味。水牛ミルクの産地なので、バターミルクとギーも添えて。
パンジャービー・ターリー
パンジャーブ
バターやパニールを使ったクリーミーなカレーが特徴。スパイスで味付けしたジャガイモを詰めたパラタを一緒に。
ベンガル・ターリー
ベンガル
イリッシュという川魚や鯉、エビなどを野菜と一緒に煮たカレーは東インドらしい味。マスタードオイルの辛味も印象的。

 
南インド料理は人気があり、今やほぼインド全域といってもいいくらいに南インド料理を提供するレストランがあります。とくにデリーにはさまざまな地域料理のレストランがあるので、気軽にトライすることもできます。
ぜひ一度、その土地の味覚がワンプレートに集結したターリー、ミールスを味わってみてください。
 
次回は、ストリートフードやスイーツを中心に、B級グルメについてご紹介します。
 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel
 
参考図書:「家庭で作れる 東西南北の伝統インド料理」(香取薫/河出書房新社)、「知っておきたい!インドごはんの常識」(パンカジ・シャルマ[文]、アリス・シャルバン[絵]、サンドラ・サルマンジー[レシピ]/原書房)

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ラダックのブッダ・プルニマ Buddha Purnima

ジュレ―!西遊インディアです。

2023年5月5日は、仏陀の誕生・悟り・涅槃を祝う「ブッダ・プルニマ」の日でした。
西遊旅行の今年のGWのラダックツアーで、ちょうどお祭りの日にレーを訪れることができました。

■ブッダ・プルニマ Buddha Purnima
仏教の伝わる各地で「ウェーサーカ祭」として祝われる日。
日本では「花まつり」「灌仏会」にあたります。
仏陀の人生の中で重要な誕生・悟り・涅槃の3つがこの同じ日に起こったとされ、ラダックではチベット暦の4月(ウェーサーカ月 Visakha)の満月の日に当たるので、毎年日付が異なります。
ヒンドゥー教では、仏陀はヴィシュヌ神の9番目の化身(アヴァターラ)と考えられており、この日はヒンドゥー教徒と仏教徒の両方に祝われます。インド全国共通の祝日(Gazetted holidays)ですが、とくにラダックではダライ・ラマの誕生日に次ぐ重要な祝日です。

  • ヴィシュヌ神の10の化身。中央下段がブッダ
  • ヴィシュヌの化身としてつくられたブッダ像
ヴィシュヌ神の10の化身。中央下段がブッダ
ヴィシュヌ神の10の化身。中央下段がブッダ

ヴィシュヌの化身としてつくられたブッダ像
ヴィシュヌの化身としてつくられたブッダ像

 
「プルニマ」とはサンスクリット語で満月のこと。「ブッダ・ジャヤンティ(Jayanti = 誕生日)」ともよばれますが、ザンスカール出身の現地ガイドさんによると、「プルニマ」の方がより敬意をこめた呼称なのだそうです。ちなみに、今年は釈迦の誕生から2567年目に当たります。
 
例年レーでは、ラダックにおける仏教組織(ラダック・ブッディスト・アソシエーション)が主催し、ピース・マーチの行進と、ポロ・グラウンドでの見世物が行われます。
ピース・マーチの練り歩きは、市街中心部にあるレー・ジョカンを出発して、シャンティ・ストゥーパ、ナムギャル・ツェモの順で回り、ポロ・グラウンドをゴールとして行われます。
 
まずは市民たちが行進するピース・マーチ。シャンティ・ストゥーパから降りてくる行進の列です。


僧侶たちの列の後には、誕生日を迎えたお釈迦様がトラックに乗って移動してきます。

経典を持った人々の列が通り過ぎるとき、頭を下げると手に持つ経典を軽く叩くように頭に乗せて行ってくれました。

ピース・マーチを見た後に向かったシャンティ・ストゥーパでは、ブッダ・プルニマならではのイベントで、仏陀の人形に水をかけてきれいにし、自分の心身を清めようというブースがありました。
日本の灌仏会でもお釈迦様の像に甘茶をかける慣習があり、遠く離れたインドの地でも、共通点を感じます。

シャンティ・ストゥーパ

日本の灌仏会で見る仏像よりちょっとかわいらしい仏陀人形。
でも、日本の灌仏会と同じく「天上天下唯我独尊」の誕生仏のポーズです!
 
道中、行列に配っているハルワやサモサ、ジュースをいただきながら、広場へ向かいました。

いただいたハルワ。カシューナッツが入っていて、甘くておいしいです

レーの町の広場、ポロ・グラウンドでの見世物を見学しました。広場の真ん中に作られた壇上で、市民やお坊さんが踊りを披露していました。
ナムギャル・ツェモから見たポロ場

たくさんの見物客でにぎわっています!

仮面(チャム)を付けて踊る様子


日本の縁日やお祭りのように賑やかでした!
 
明るい雰囲気に包まれた、ブッダ・プルニマ祭のラダックの様子でした。
これからはお祭りの多い季節。ラダックは本格的な旅行シーズンを迎えます。
 
 
■おまけ
ピース・パレードで見学した色々な山車


 
Text: Kondo
Photo: Saiyu Travel

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インド料理と基本のスパイス

コショウやクローブなどのスパイス

今回は、インドとは切っても切れない存在であるスパイスについてお話しします。
 

古代より、スパイス(香辛料)は貴重品として扱われ、ギリシャやローマといった大国をはじめ、世界中から求められてきました。
“スパイスロード”や“香辛料貿易”などの言葉が生まれたことも、その需要の高さを物語っています。
香辛料に関わる歴史は複雑で壮大!インドの歴史はもちろん、世界史を語る上でも欠かせません。
インドにおいては、紀元前3000年頃からすでに黒コショウやクローブ等の多くの香辛料が使われていました。そして、それは現在に至るまで変わることなく続き、インドの人々の生活には必要不可欠の存在です。

市場のスパイス売り(シッキム)

古代からスパイスがそこまで求められた最大の理由は、なんといってもその薬効でしょう。
肉や魚を長期保存する術をもたなかったヨーロッパの人々にとって、スパイスの防腐作用は衝撃的なものでした。
未知なる東方からもたらされた、独特の香りを放つスパイス。コショウに至っては、ヴェネツィア人に「天国の種子」と呼ばれていたほど。当時は手に入れることが難しく、それゆえ彼らをますます魅了したそうです。

シナモンやウコンが入ったスパイスボックス

インドでは、そんな魅惑のスパイスがどの料理にもふんだんに使われています。その効能は、実際どんなものがあるのでしょうか。インド料理に使われる代表的なスパイスをいくつかご紹介します。

 
ターメリック हल्दी(ハルディ) 別名:ウコン
消化作用や新陳代謝を良くする働きがあります。抗酸化作用、抗炎症作用にも優れていて、体質改善や皮膚病にも効果があるとされています。
 
コリアンダー धनिया(ダニヤ)別名:香菜・パクチー
胃腸の働きを促し、新陳代謝を活性化させる働きのほか、頭痛の改善や鎮静作用など豊富な効能があります。カロチンやビタミンを豊富に含みます。
 
クローブ लौंग(ローング)別名:丁香
殺菌・消毒の効果があります。生薬・芳香健胃剤としても用いられ、胃腸の働きを高める作用があります。
 
クミン जीरा(ジーラ)別名:馬芹
健胃、消化促進、解熱などの効果があり、下痢や腹痛を緩和します。抗酸化作用があり、免疫力を上げる効果も。ガンや循環器系の病気の予防にも用いられます。
 
ジンジャー अदरक(アダラク)別名:生姜
日本でも身体を温めたり、風邪の療法に用いられます。発散、健胃、保温、解熱、消炎、沈嘔など多くの効能があります。
 
カルダモン इलायची(イラーイチー)別名:ショウズク
疲労回復や整腸作用、冷え性の改善や油分を除去する効果があります。口臭予防や体臭を消すのにも効果的です。
 
シナモン दालचीनी(ダールチーニー)別名:ニッキ
世界最古のスパイスのひとつ。樹皮から取れる精油には殺菌効果・活性作用があり、口臭予防や美肌効果まであるといわれています。
 
この他、日本でもお馴染みの黒コショウ(ゴールミルチ)やニンニク、タマネギ、ナツメグなどにも様々な効能があります。

シナモン(ダールチーニー)

これらのスパイスは個々の効能はもちろん、組み合わせによっても様々な力を発揮します。つまり、インド料理はもはや薬膳料理といっても過言ではありません。スパイスは、暑い気候のなかで暮らすインドの人々が、健康を保つために欠かせない存在なのです。

そして、スパイスを用いるのは食事だけではありません。薬草として医薬的に使用されたり、有名なアーユルヴェーダにも使われます。スパイスとともにあるインドの人々の生活は、まさに“医食同源”なのです。

スパイスをふんだんに使ったインド料理は、もはや薬膳料理といえるかもしれません!

※この記事は2015年4月のものを修正・加筆して再アップしたものです。

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ヒンドゥー教の新年を祝うお祭り「ディワリ」

毎年10月末から11月初めに、インドの最も大きなお祭りのひとつである「ディワリ」が行われます。

ヒンドゥ教の新年をお祝いするこのお祭りは、ヒンドゥ暦の第7番目の月の初日から5日間にわたって行われます。時期的に「収穫祭」の意味合いもあり、インドの人々にとっては1年で最も重要かつ盛り上がるお祭りです。

ディワリの電飾が光るショッピングモール
スーパーにもディワリ用のギフト商品が並びます

ディワリはもともと「光の祭り」とも呼ばれており、お祭りの期間中は富と幸運の神であるラクシュミーを家に招くために、夜間は無数の灯明などで家の周りを明るく照らす習慣があります。
このお祭りに向けて、人々は家中の隅々まで大掃除をし、新しい洋服を新調したり、壁の塗装などを塗りなおしたり、時には家具一式までも新調したり。気分一新、ディワリを迎えるのです。

約1週間のお祭り期間中は、夜には灯明で家の周りを明るく照らし、家族・親族が集まってお祈りをして、その後みんなでご馳走を囲んで粛々と新年を祝う、というのが昔からのスタイル…なのですが、この伝統のお祭りも、近年の経済発展とともに少し様変わりしているようです。

玄関先に置かれた灯明

ささやかだった「灯明の明かり」は、今や家をピカピカと照らす色とりどりの電飾にとって代わり、各家庭の夕食後のイベントは、夜通し行われる花火と爆竹を家族総出で見学…というのが、近年のディワリのスタイルです。

一番盛り上がるのは、ディワリの最終日。お祭りの本番は暗くなった夜7時~8時くらいから。
家々でラクシュミーに祈りをささげ、豪華な夕食を食べたら、三々五々外に出て花火を打ち上げ、爆竹を鳴らしてお祝いをします。ひとしきり鳴らし終わったら、また家に入ってデザートを食べたり、チャイを飲んでみんなでくつろぎ、家族同士の贈り物の交換などをして過ごします。それが一段落すると、また外に出て花火と爆竹…飽きたらチャイを…飽きたら花火と爆竹…チャイ…花火…これを一晩中繰り返します。

左:ディワリでにぎわう街 右:花火を楽しむ人々

家々を飾る電飾は、ご近所同士で規模やセンスを競争し合っていることもあり、年々派手になってきていて、イルミネーションと言っても過言ではないレベルのお宅も少なくありません。日本のクリスマスシーズンを彷彿とさせます。

そして、もちろん花火の派手さもご近所と競争!
隣近所に負けじと、各家々で競うようにあちこちで打ち上げます。
爆竹も、周りには負けられないとばかりに半端ではない量を一度に鳴らしたりすることも。
目の前で鳴らされると、若干気が遠くなるほどです。

ときには、それどこで買ってきたの…??と思うほど立派な、日本の花火大会で見られそうな(ちょっと大げさですが)豪華できれいな花火が打ち上がることもあります。

きれいに飾られた街で、ひっきりなしにあちこちから打ち上がる花火。
そこにこだまする爆竹の音と人々の歓声。

ディワリはまさに、年に一度の「お祭り騒ぎ」なのです。
 
※この記事は2011年11月のものを修正・加筆して再アップしたものです。

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【仏陀の道】入滅の地クシナガル

皆様こんにちは。今回ご紹介するのは入滅の地クシナガルです。

古代インドの十六大国の一つで、マッラ人の首都。仏典によれば、人々は釈尊の遺体を荼毘に付し、ここに塔を建てて祀ったと伝えられ、法顕や玄奘が訪れたころにはすでにさびれていたが、精舎や塔があり、仏陀の涅槃像が安置されていたようです。

釈尊の故郷ルンビニはクシナガルの北側に位置し、「父・母に足を向ける事はできない」との意味から「頭を北にして」涅槃に入られたとのこと。これが「北枕」の習慣の始まりだといわれます。

 

まずは、大涅槃堂。

インド政府により1956年(釈尊生誕2500年記念事業)に建立されました。内部の涅槃像は、砂岩製で5世紀、グプタ王朝期に作成され、19世紀にアレキサンダー・カニンガム(イギリスの考古学者)らが発見したもの。

大涅槃寺の周囲には、僧院跡の遺構が残ります。

 

涅槃堂からすぐ近くの場所に釈尊が最後の説法を行った場所があります。

小さな精舎の中には11世紀パーラ王朝時代の降魔成道像が安置されています。

 

そして車で5分程移動したところにある荼毘塚(ラーマーバル仏塔)

釈尊の遺体は、荼毘に付されると時、火はなかなか付かなかったが、後継者たる摩訶迦葉が500人の弟子と1週間後に到着して礼拝すると、自然に発火したという説があります。

 

クシナガルとラジギールの間に位置するヴァイシャリ。

商業都市として栄えたリッチャヴィ族の都。ジャングルの猿までが、釈尊にハチミツを供養したのもこの地だそう。

釈尊が最後の旅の途次に立ち寄った地で釈尊の死後、第二結集が行われたといわれています。

 

仏舎利が発見された八分起塔は4回ほど増築されています。発見された仏舎利は現在パトナ州立博物館にあります。

 

アショカ王柱も非常にきれいな状態。三ヶ月後に涅槃することを修行者たちに宣言された場所という説もあります。

 

柱頭の獅子像は、現存する獅子像では最古の様式です。

 

西遊旅行のツアー「仏陀の道」では、クシナガルから国境を越えて生誕の地ルンビニへと向かいます。

釈尊が誕生した場所といわれる場所に建てられたマヤ・デヴィ寺院。建物の中には、1996年に発掘された釈尊がこの地で誕生したことを記すマーカーストーンやマヤ夫人の像、紀元前3~7世紀ごろのものと考えられるレンガ造りの礎石を見ることができます。

目の前のプスカリニ池は、マヤ夫人が出産の前に沐浴し、釈尊の産湯にも使われたといわれる池です。

 

 

現在(2022年2月)、国境が開いていないので陸路での移動は難しいですが、クシナガル周辺での仏跡周遊の際は、是非お隣のネパールまで足を運んでみてください。

 

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